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19 虜 ★
しおりを挟む「……涼くん。好き」
目を潤ませ囁かれたキリエの言葉に、涼介の理性が焼き切れそうになる。
今抱きしめているキリエの身体。熱を帯びたその肉体への渇望が、血液を沸騰させるようだ。
彼女の柔らかい唇を覆うようにキスをして、舌を突き入れ、あえて乱暴にかき回す。
その激しさにもキリエは、懸命に受け入れようと舌を合わせてくる。そのたどたどしい努力がまた涼介の劣情を刺激する。
「んぶっ、んっ、ぢゅるっ……涼く、――ッん、は、ぷ……っ」
互いの背中を掻き抱いて、さらに激しく。
涼介がキリエの衣服を脱がそうとすると、キリエも真似てくる。
「キリエ、脱がせてくれる?」
唇を離してそうたずねると、キリエは小さくうなずいて従う。
「――脱がす、ね?」
キリエの手がTシャツの裾を掴んで持ち上げる。背の高さが違うので、涼介が屈んでも彼女は苦労していたが、どうにか腕を抜くことができた。
「次はキリエも」
「…………、うん」
恥じらいに迷いつつも、キリエは素直に胸を張り出して身を委ねてきた。濡れて貼りついていたブラウスを脱がせ、そっとソファの上に置く。肌のにおいが染みこんだキャミソールも。
下着姿になったキリエは、いよいよ羞恥心に耐えられなくなってきたのか――それとも彼女なりに欲情しているのか、しがみつくように抱きついてきた。
互いに雨と汗で湿った肌が密着する。
「背中熱くなってる。興奮してる?」
「りょ、涼くんだって……! 心臓、ドクドクいってる――」
「キリエほどじゃないよ」
「っ……、やぁ」
むずがりつつも、抱擁を解くどころか、キリエの腕にはいっそう力が込められる。
このままベッドに押し倒すのは簡単だが――
もう少し、このままで居てもいいかもしれない。
そんな甘い感情が涼介の胸にも染み広がる。
キリエからは興奮のためのこわばりが感じられたが、時間経過とともに余計な緊張が抜けてきた。
そうすると、しっとりと柔らかい肌の感触はいっそう甘やかなものに変わった。
彼女にさらにリラックスしてもらうために、背中に這わせた腕でゆっくりと愛撫する。
肌を擦れ合わせる快感。
キリエにも、その感覚を味わう余裕が生まれてきたらしい。
「んっ、ん……」
腕の中で、ささやかな喘ぎ声を漏らす。
涼介は、彼女の濡れ髪に鼻先で分け入って、首筋にまでたどり着く。唇でついばんで、舌を這わせる。
「やっ、――んッ、んっ」
くすぐったさによる拒絶反応は一瞬。
驚きの声はすぐに嬌声に変わる。
するとキリエも、涼介の肌に吸いついてきた。左の鎖骨。たまたま彼女の眼前にあった箇所に唇を合わせ、これも涼介の愛撫を倣(なら)うように。
――前戯の技能など持ち合わせていないキリエには、涼介の行為を真似ることが精一杯らしい。
まるで幼子にじゃれつかれているかのような口づけは、くすぐったい。
だが、これから彼女に〝全て〟を教えていくのだと思うと、そのくすぐったさも、骨の芯まで痺れるような、とびきりの快感に変わる。
「外すよ」
宣言してからブラジャーのホックを外すと、キリエの背中がビクっと震えて、豊かな胸をさらに強く押し当ててくる。
裸を見られることへの、せめてもの抵抗らしい。
「見せて――」
キリエの両肩を押し離しながら、ブラジャーの肩紐を落とす。意外と拒否反応はなく、キリエは観念したような表情で顔を背ける。
「…………っ」
するり、と下着が脱げ落ちて、豊かな膨らみが露わになる。尖った先端。涼介以外が触れたことのない、彼女の性感帯。
そっと右手を沿えてもキリエは拒絶しない。
心地よい重みの乳房は、瑞々しい弾力と、それでいて指が沈み込む柔らかさも兼ね備えている。
「やばいな、もう十分興奮してたはずなのに。もっと興奮する」
「嘘……」
「嘘じゃないって」
「――っ、や、あ、恥ずかしいんだからね、コレ……!」
そうは言いつつも、愛撫する手から逃げることもせずに、じっと耐えている姿がまたいじらしい。
けれど、親指の腹で先端の突起を軽く撫でると、
「きゃんッ、――あ、やっ……」
さすがに身をよじって甲高い声を漏らす。
「だめ、だめ……っ、涼くんの指にいじめられると、ホントに、だめだから……っ」
泣きそうな声で額を擦りつけてきたかと思うと、キリエは今度は舌を伸ばして涼介の胸板をチロチロと舐めてきた。
「――キリエ?」
「んっ、れ、ぅ……っ、涼くん、も……っ」
その舌先が、左の乳首を愛撫してくる。
「ちゅ、ぷッ、――これ、んっ……こういうふうで、いい?」
「キリエがされて、気持ち良くなるようにしてくれればいいよ」
「っっ、ばか――っ、んっ、は、むっ……ちゅぷっ、ちゅるっ」
恥じらいは見せるものの、キリエの口愛撫は、より確かな動きに変わる。乳輪に沿ってくるりと回ったり、乳首を先端から押すようにしたり、転がしたり。
「――自分がされてるところ、ちゃんと想像してる?」
「ん、んんんッ――……!」
首を振って否定するが、吸いついてくるのをやめようとはしない。
今や涼介の両手が彼女の乳房を捉えて、間断なく快感を与えていることも影響しているのだろう。
「んっ、はッ――、ちゅ、ちゅぷっ、はぷっ……、んんッ、んッ!」
そのうちキリエは胸愛撫の余裕もなくなり、膝をガクガク震わせたかと思うと、その場に崩れ落ちてしまった。
さすがに局所的に責めすぎたかと涼介は自省したが――
キリエは、思いがけない行動に出た。
膝立ちの体勢で、涼介の腰に抱きついてきた。まるでタックルのような情緒のない仕草ではあったが、続いて飛びだした言葉には涼介も首をかしげるしかなかった。
「――お、教えてよっ!」
「……ん?」
「やり方知らないから、教えてって言ってるの……!」
涼介のベルトを掴んで、切羽詰まった表情で見上げてくる。
「やり方って……」
肩を揺らして息をするキリエに、思わず噴き出しそうになる。
「アレだな、ムードとか関係ないんだな、キリエは」
「だ、だって初めてだから仕方ないでしょ……っ!」
彼女なりに、恋人同士のセックスというものを思い描いているらしい。
「――してくれるんだ、フェラチオ」
「ちゃ、ちゃんと言わないで……! うぅ……」
今更ながらに行為の意味を噛みしめているのか、早速挫けそうになっている。
だが、せっかくのこの機を逃す手はない。
こんな流れで口淫をさせた経験などあるはずもない――だからこそ余計に、この不器用な女の子に愛撫して欲しいという気持ちが昂ぶる。
キリエの両手をベルトのバックル部分まで導く。
「じゃあまず脱がせて。出来る?」
「で、出来る……っ」
慣れない手つきのキリエに脱がされていく。ベルトだけでなく、チャックを下ろすのにも彼女は手間取っていた。
そしてズボンを下ろしきり、下着だけになった下腹部を前に――今度こそキリエは、ひるんだような顔を見せた。
■ ■ ■
(わ、私……っ)
気分が高揚するままに自分から申し出たことを半分後悔しながら――しかし、未知の行為に、それも余りに淫らな行為に及ぼうとしている自分自身に、仄暗い興奮も覚えていた。
身体の火照りが止まらない。
さっきまで涼介に嬲られていた乳首は、じんじんと心地いい快感を、まだ体の奥へと送り込み続けている。
キリエの戸惑いを、涼介がどのように捉えたのかは分からないが、
「ごめんキリエ。ここまで来たら、俺もお預けはツラいかも」
「う、うん――大丈夫だから……す、するね?」
緊張と背徳感で、心臓がバクバクと跳ね回っている。
けれど、いつもはキリエのことを気遣ってくれる涼介が、いつも余裕ぶっている彼が――今はキリエに愛撫をねだっているのだと思うと、途端に感じたことのない喜びがキリエの中に広がっていた。
熱に浮かされたような、フワフワした気分と手つきで、涼介に触れる。
(こ、こんなになってるんだ……、私で、こんなに――)
脳裏には初体験の記憶がフラッシュバックする。あの時に思い知った男性の肉体。体の芯にまで灼きついた快楽の記憶が、キリエ自身を焚きつける。
「…………っ」
覚悟を決めて涼介の下着を脱がせる。
(あ、あ……っ)
眼前にしても、嫌悪感はまったくなかった。怯えはある。自分にはない男性の部分。キリエのことを貫いた、屹立したモノ。
「こ、これ……舐めれば、いいんだよね? ど、どこから――」
「下から上に――出来そう?」
「うん、やる……から……」
細かな指示はくれないので、キリエは取りあえず左手で肉の竿をそっと掴んで涼介の腹に押さえつけるようにして、その根元に恐る恐る舌を這わせた。
「んっ、え……っ」
舌の腹でその硬さを感じる。
首を動かしてツーッと先端付近まで舐め上げると、涼介の腰がびくりと反応する。
(あ、これ……いいのかな?)
互いにシャワーも浴びていないが、キリエは不思議と抵抗感を抱かなかった。それどころか、
(涼くんの……舐めてるんだ……、涼くんのにおいで、興奮してる……っ、私、変態なのかな……っ)
他人の行為を見たこともないが、なるべく〝いやらしい動き〟になるように、首を傾け、舌をうねらせて、唾液をなすりつけながら肉幹を舐め回す。
「先っぽ、咥えてみて?」
「――――っ、んっ、んっ」
涼介からの指示が嬉しい。
その声が、興奮で小さく震えているのが嬉しくてたまらない。
キリエは躊躇わず、亀頭の中ほどまでに、ぬるりと唇を覆いかぶせる。途端カウパー液が口腔内に広がり、その苦みに一瞬だけ眉をひそめるが、
「んっ、んくっ――」
その苦しさすら快感に思う。そのまま勢いで、口腔の奥まで咥え込む。
(おっきい……っ、こんなの、私の中に入ったんだ――っ、柔いのに、硬くて……熱い……っ)
思い切って首を上下させると、唇とペニスが接触する部分から、がぽっがぽっと聞いたことのないような音が出て、泡立った唾液が口の端から垂れ落ちる。
(してるっ……、しちゃってる……っ! 私、涼くんの、フェラチオしてるんだ……っ)
淫らな行いに没頭している。そのことを自覚すればするほど興奮してしまう。はしたない欲望と、胸が締め付けられるような恋慕の情がない交ぜになって、キリエを責め立てる。
――じゅぼっ、じゅぼっ、じゅぼッッ
(好きっ、好きっっ……! 涼くん、涼くん、涼くん――っっ)
訳も分からず涙すら溢れさせながら、キリエは初めての口淫にのめり込んでいく。
■ ■ ■
「キリ、エ……っ」
思いがけず激しい口淫を浴びて、涼介のほうが面食らってしまっていた。
口粘膜で扱かれる快感は格別だが、技術の面ではまだまだで、男性を絶頂させられるような動きではない。快感は高まるばかりで、けれど射精には至らない生き地獄のようなフェラチオ。
けれど――
「んっ、んっ、んッッ……ぐぷっ、ぐぷっっ!」
唇の締めつけは弱く、舌を絡ませるなどという発想もないのに、一生懸命に首を振る恋人。必死で涼介の腰を両手で掴んで、どうにか快感を与えようとしている。
口の使い方をレクチャーすることは簡単だろう。
だが――
この健気さに応えたい。初々しい口淫で、果ててしまいたい。
そんな抑え切れない衝動に駆られて、涼介はぐっと下半身に力を込める。
「キリエ、そのまま……っ」
一定の速度で繰り返されるストローク。唾液で満たされた甘い感触の口粘膜。キリエのあえぐ声。
涼介は、高まってきた射精感を自身で後押しして、一気に解き放つ。
――ぐびゅるるっ、びゅくッッ
キリエに許可を得ないままの口内発射。それも、一番深く咥え込んだタイミングで。
白濁液で喉奥を叩かれたキリエは、驚いて動きを止めたかと思うと、
「んぶッ!? んッ、んぐッッ――!?」
背中をビクビク痙攣させて身悶えた。
しかしどこで仕入れた知識なのか、どうやら吐き出されたものを口で受け止めるのが通常の行為と思っているらしく、肉体の拒絶反応を懸命に抑え込んで、射精が終わるのを耐えていた。
「――ん、んぐ、ぅ、んぶっっ……! ぷぁッ!? あ、あぐっ……!」
それも長くは持たなかった。耐えきれなくなったキリエは顔を離す。彼女の口腔内には白濁液がねっとりとこびりついていて、いかにも苦しそうだ。
ティッシュペーパーを取って与え、吐き出すように指示すると、
「ん……んぅっ、えっ、……んぷっ……、口の中、にがいっ……」
「悪い、俺勝手に――」
もともと。
涼介がキリエに接近したのは、絶望や屈辱で歪む彼女の表情に惹かれたからだった。
それが自身の嗜好のひとつでもあると自覚しているし、現に、今の苦悶するキリエにも強い劣情を覚えている。
ただ、それだけでなく、
「ホントに……っ、涼くんの、ばかっ……んっ、鼻まで来たんだから……っ!」
むくれっ面で見上げてくるいつもの怒り顔も、悪くないと思ってしまう。
この子のことを気持ち良くしてあげたい。
自分のことで一杯にしたい。
「えっ、やっ、涼くん……っ?」
座り込むキリエと目線を合わせるため、自身も屈んで口づけをしようとする。
だがキリエのほうは、自分の口が射精を浴びたばかりだと自覚しているからか、むしろ彼女のほうから避けられてしまう。
それでも溢れる衝動にブレーキを掛けることが出来ず、涼介は代わりに、キリエの首筋にかぶりつく。
「あっ、あっ……」
悶えながら後じさりするキリエの背中が、ソファに突き当たる。彼女を誘導してソファに座らせ、涼介はキスの攻勢をさらに強める。
口づけは相変わらず拒まれるので、頬や耳たぶ、輪郭や喉、鎖骨や肩に。
「やんっ、あ、んっ……! りょ、涼くんっ、キス、だめっ……」
乳房や乳首の反応は特別にいいのは当然として――次第に、唇でどこに触れようとも、キリエは甘い声を漏らし出す。
「やぁっ、だめっ、涼くんにキスされると……っ、ぜんぶ、気持ち良くなっちゃうからっ――あっ、あんっ」
入室したときには雨に濡れて、また緊張でこわばり、冷たかったキリエの肌は、もはや余すところなく火照りきって、弛緩しきっていた。
二の腕。脇腹。腋の谷間にも舌を忍ばせて。
「やぁっ、あッ、やっ、やっっ、待って……あっ、あっ!」
蕩けた声。素直な反応。
射精したばかりだというのに、涼介の興奮は鎮まらない。
一旦身を離し、キリエの左脚を抱える。
足先のソックスを脱がせて、くるぶしにも唇を付ける。それからふくらはぎへ。膝裏。しなやかな太腿。そして――
「えっ、やっ……りょ、涼くんっ――」
先ほどまでの、ポーズだけの拒否とは違う、切羽詰まった声。
キスが迫る先。
その危機感にキリエは敏感になるが、発情しきった彼女の肉体は、とびきりの快楽を前に、もう言うことを聞かないようだった。
太腿の付け根。
ほとんど臀部と言っていい、丸みを帯びた箇所。
それから、体液でぐっしょりと濡れて貼りついたショーツ。
「ここ、舐めるよ」
「だ、だめだから、そこだけは、本当にっ――! あっ!? うそ、うそ嘘ッ――!?」
舌で触れる、ぐちゅりとした感触。
濃縮された牝のにおい。舌先でなぞる、淫らなクレバスの柔らかさ。
「ひゃぅッ!? ひ、ぁ、あっ、なんでっ、そんなところ……ッ、やだっ、やだぁっ」
涼介が身体を割り込ませて両脚が閉じないようにしているし、左右の太腿を両手で押し広げているのは確かだ。
それでも、脚力でもってすれば涼介の口淫を阻むことはできるはず。
スカートの上から涼介の頭を抑えつけてくるが、その腕にもたいした力は込められていない。
「あっ――、あぁッ、だめ……、なのにッ、あ、あ、あっ――」
もはや用をなしていないショーツを舌でずらして、直に媚肉を嬲る。
愛液をたっぷり纏わせた、綺麗な肉びら。スカートの中では、キリエが放つ甘酸っぱいにおいが充満する。その発情したにおいにむせかえりそうになりながら涼介は、
「さっきのお返しだよ」
「ひぁッ!……えっ、えっ? 舌、入ってくるッ――!? そ、んなっ、……あっ、あっっ!? なか、ぐりぐりって……! んぅうッ、んッ、んんっ!」
キリエのフェラチオのような、たどたどしい動きではもちろんない。
女性器の隅々までなぞって〝弱いところ〟を見つけては、重点的に責めていく。キリエの反応が思ったとおりであれば、より長く、丁寧に、じっくりと愛撫する。
「――ッあ、ふぁあッ、あッ、あッッ……!」
キリエ自身も知らない快感を覚え込ませ、すり込んでいく。
「い、イクっ……そ、そこだめっ、あっ、あっ……、ひぅッッ、やっ、やぁああっっ!」
腰を激しく痙攣させて、キリエが果てる。
だがそれで終わらせはしない。奥から溢れてくる蜜を塗り広げ、媚肉を弄び、恋人の肉体を何度も絶頂へと連れていく。
「ひっ、ぐッ、――――あああっ、あああぁッッ!」
ここが密室だということを、意識していないにしろ理解しているからか。キリエの嬌声も遠慮はなく、その声に釣られて彼女の肉体は絶頂の快感を貪り食らう。
「はぁッ、やぁっ……あぁっ……」
絶頂痙攣する下腹部。
ひくひくと蠢く女体の割れ目。
「涼くんの、ばか……変態ッ――」
先ほど欲望を大量に吐き出したはずの肉棒は、萎えるどころかむしろ痛いくらいに膨張している。
「……キリエ」
涼介は、キリエの腰に残っていたスカートを脱がせると、身を起こして彼女の秘部に先端を押し当てる。
「え――あっ……」
「いい? 挿れるよ」
「ッッ、…………」
クンニに悶えていたときとは打って変わって、彼女はしおらしく頷く。
ドロドロに溶けているようなキリエの蜜肉。涼介はキリエの脚を持ち上げ、のしかかるようにして腰の角度を調整し、膣口へと亀頭を押しつけていく。
「あッッ、く、ぅ――ッ」
ゆっくりと体重を掛けていき、挿入を果たす。
まだまだ慣れていない、狭い膣穴。
なのに濡れに濡れた膣壁のおかげで、涼介の肉幹は奥まで侵入することができた。
「あ、う、うッ――、やぁあっ、あっ、あっ」
苦しげだったキリエの声にも喜悦がにじみ出す。大きなストロークで突くたび、その声は甲高くなっていく。
「キリエの中、ヤバい……っ、本当に、気持ちいい――」
「んっ、うッ、わたしもっ……、涼くん、気持ちいいよっ……! あっ、あっ!」
ほぐれてきた肉壺は、涼介のことを酷く締め付けてくる。抜こうとしても吸い付き、押し入れると、歓喜して纏わりついてくる。
その貪欲な性器の交わりに耐えきれず、またぞろ射精感が込みあげてくる。
じっくりと内部をかき回して様々な性感帯を開発するつもりもあったが――今は無理だ。まさか、こんなに余裕がなくなるなんて。
「涼くん、涼くんっ……! あッ、あんッッ! や、やぁッ」
キリエの身体をソファに押しつけているこの状態は、まるで無理やりに乱暴を働いているようでもあるが――当のキリエは、涼介の首に腕を巻き付けて離そうとしない。
腰を前後させるたび、ぬるりとした快感が腰奥まで走り抜けてくる。貫いてくる。
――本当なら、もっと弄ぶつもりだったのに。
キリエの肉体に翻弄されるのを不本意に思いながらも涼介は、とうとう堪えきれなくなる。
「キリエっ――」
「やっ、きゃっ、あッ、あッッ、……あああああッッ!」
腰の動きを早め、先端まで充填されていた欲望を解放する。絡みついてくる蜜穴に、危うくそのまま果ててしまいそうになるが――すんでのところで引き抜き、キリエの下腹部の上で射精する。
――どくどくッ、びゅくッ、びるっっ!
「う、く――ッ」
その衝撃に、思わず奥歯を噛みしめながら、ペニスから吐き出される白濁の塊を意識する。
――びゅるるるっ、びゅるッ!
「あ、あッ……熱いっ……ん、んぅうっ……、お、おなかに、いっぱい……っ」
柔らかなキリエの腹部に絶頂痙攣する勃起を押しつけ、脈打たせながら、快感の証をなすりつけていく。
「あ、うぅ……っ、涼くんの、こんなに……っ」
キリエは腹上に出された体液を指で自身に塗り広げて、熱い吐息をたっぷりと漏らす。
彼女の仕草を見ているだけで。
その声を聞いているだけで。
涼介は、劣情とも愛情ともつかない、強い感情に身を炙られるのを感じていた。
「続き――」
「え?」
涼介の言葉にキリエが顔を上げる。
「ベッド、行こうか」
呆然としていた彼女は、その意味を理解すると――セックスはまだ終わりではないことを悟ると、こみ上げる淫らな悦びを隠すようにしながら、
「……うん」
至極控えめに頷いた。
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