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01 快楽堕ちした牝猫の末路 ★

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 とある学校の一角で。
 男女3人による修羅場が繰り広げられていた。

「キリエには、関係のないことだろう。僕が誰と付き合おうと」
「そ、そんな! 和樹、待ってよ……!」
「――行こう、愛花あいか
「いいの? 和樹くん……」
「いいんだよ。キリエは、僕のことなんて玩具ぐらいにしか思ってないんだ。そして僕を……平気で裏切った」
「待って、待って――!」

 和樹と呼ばれた男子は、愛花という名の、ポニーテールの美少女の肩を抱いて去って行く。

「そんな……違う、違うのに……っ」

 取り残されたのは霧崎キリエ。気の強そうな目元をしているが、今はその大きな瞳も涙に暮れている。

 キリエは、和樹とは赤ん坊の頃からの幼馴染みで、気づけば彼に好意を寄せていた。鈍感でどんくさい和樹のことを、どうして好きになったのかはよく覚えていない。

 だが、いつかは彼と結ばれるものだと信じて疑っていなかった。今の学校だって、和樹の志望校と知ったから受験したのだ。本来ならもっと高ランクの学校にだって、キリエなら簡単に合格できただろう。

 勉学も、身体能力も、そしてルックスだって。
 いずれのジャンルでも、キリエは学年でもトップを争うほどの才女だ。

 ただ、キリエは、恋愛に関してはほとほと不器用で、素直ではなかった。

 物心ついた頃から『1人』のことしか見てこなかったし、相手もそう思ってくれていると勝手に確信していたような女の子だったから、その面での成長が見られないのも仕方のないことだった。

「……私、バカみたい」

 今の髪型だって。
 和樹の好みに合わせたものだった。

 ポニーテール。直接和樹から聞いたわけではなかったのだが、どうやら彼はこの髪型が好みだと知ってからというもの――小学5年生の頃から、キリエはもうずっとこの髪型だ。

「さっきの子も、ポニーテールだったな……」

 和樹が連れていたのは、志乃原愛花しのはら・あいか

 ルックスではキリエと競う美少女だが、おしとやかさの点では彼女のほうに軍配が上がるだろう。火のような勢いのキリエとは正反対な、清流を思わせる穏やかさの愛花。

 さらさらとした黒髪のロングヘアー。儚げな雰囲気。

 愛花はつい昨日まではポニーテールでもなかったし、可愛らしいシュシュも身につけていなかった。最近、和樹が愛花と急接近していたらしいことは知っていたが、まさか恋仲にまで発展していたとは。

 2人のことで思い悩んでいたキリエは、いつしか大粒の涙がポロポロとこぼれていたことに気づく。

「なんでっ、私っ……、く、悔しくなんかないっ、悲しく、なんかっ……!!」

 どうして自分は素直になれなかったのだろう。
 そう思い返すと、胸の奥が激しく締めつけられる。廊下にがくりと崩れ落ちて、自分の肩を抱きしめ、キリエは震えた。

 ――昔から何でもできたキリエにとって、和樹はどんくさい男の子だった。

 要領が悪くて、他の男子からは軽く扱われていて。誰も和樹の心根を見ようとせずにいるから、キリエにはそれが悔しかった。

 けれど一方で、他人が気づいてない和樹の本質に、自分だけが気づいているという優越感があった。また、和樹自身の自己肯定感の低さもキリエにとっての安心材料だった。

 そんなキリエの心情が、態度に表れていたのだろう。
 だからこの結末は自業自得なのだ。今になってみれば、それが分かる。

 けれど、和樹の言いぶりも酷かった。
「いつも横柄」、「高飛車」、「大嫌い」、極めつけは「裏切り者」――。

 さんざん言い募られた。どうやら初めての彼女の前で強い自分を見せたいがための態度だったようだった。

「うっ、く……えぐっ、えぐっ……!! ひっく……、うぁあっ……!!!!」

 自分が悪かった部分は仕方がない。そのことで和樹になじられるのなら、仕方がない。

 しかし、『裏切り者』という一点については断固として違った。それを訂正できなかったのが悔しい。

 和樹は、他の男子から受けた陰湿ないじめについて、キリエが手を引いていたのだと勘違いしていた。その勘違いが彼に火を付けて、キリエを責めるきっかけになってしまった。

「う、うぅっ……!」

 けれどもう。
 キリエには、その勘違いを正す気力など残されていなかった。

 涙が止めどなく流れる。せめて人気(ひとけ)のないところで良かった。こんなみじめな姿。

 ――いや、もういい。
 和樹に絶交され、恋人との仲を見せつけられて。これ以上にみじめなことが、他にあるだろうか。

 キリエは散々泣き散らしたあと、失意のままポニーテールをほどき、ようやくの思いで立ちあがって廊下をとぼとぼと歩き出した。


 すぐ近くで、一部始終を聞いていた男がいるとも知らずに。



  ■ ■ ■



「ふぅん……」

 師藤涼介(しどう・りょうすけ)は、おぼつかない足取りで去っていくキリエの背中を目で追いながら、思案する。

 涼介がこの場面に立ち会ったのはまったくの偶然だったのだが、見知った顔ばかりだったのには驚いた。

 キリエがあの男子――和樹に好意を寄せているのは知っていた。和樹のほうはそれに気づいていなかったようで、それが涼介としては信じられない。

 確かに、キリエの和樹に対する言動にはキツいものがあったが、涼介から見れば、それは好意の裏返しでしかないことは明白だった。そんな彼女の好意に気づけないのは……素朴というより、愚鈍だ。

 霧崎キリエ。文武両道、才色兼備の美少女。そして何より涼介の見立てでは、彼女は……とても『涼介の好み』なのだ。

 涼介は不穏当な笑みを浮かべて、キリエのあとを追った。


 
 ■ ■ ■


 折しも、彼らが下校する頃には強い雨が降り出していた。

 梅雨のこの時期、連日この調子だ。昼間まではそれでも曇天で耐えていたのだが、夕方になって雨は、封を切られたように空から降り注いできた。

 そんな中でキリエは、傘も持たずに下校しており、雨に打たれるままになっていた。

「…………」

 涼介は、ずぶ濡れの後ろ姿に追いつき、声をかける。

「よう、霧崎。傘持ってないのか?」

 気軽なふうに話しかけ、自分の傘を差し掛けてやる。

「っ!?…………うるさい」

 はじめ、彼女は驚いて涼介のほうを見たが――声をかけてきたのがさほど仲良くもないクラスメイトだと分かると、一瞥しただけで顔をそらしてしまった。歩みも止めない。どうやら、泣き顔を気取られるのを嫌ったらしい。

(――やっぱり。思ったとおり、いい表情だ)

 涼介の胸は興奮にさざめく。
 気が強いくせに、打たれ弱い。変にプライドは高いから、誰かに頼ったり、弱音を吐いたりできない。そんな女性を見ると涼介は性的興奮を覚えてしまう。

 さらに言えば、そんな少女の顔が、悲痛に歪むのが大好きだ。今のキリエの顔は、絶望と自己嫌悪がほど良いバランスで混ざり合っていて、実に涼介好みだった。

 けれど、彼の趣味はそれだけでは終わらない。こんなふうに弱りきった少女を自分の虜にすること。それこそが最上の娯楽だと知っている。
 
「にしても、よく降るよな」

 涼介のことを気にも留めず歩いて行くキリエに追いすがりながら、声をかけ続ける。当然のように反応はない。これは予想どおりだ。

「……あれ? 霧崎って、いつもポニーテールじゃなかったっけ?」

 白々しくその話題を振ってみると、

「…………あなたには、関係ないでしょ」

 怒気混じりの声が返ってきた。

「髪降ろしても似合うんじゃね? 明日、それで来れば?」
「――ッ、…………」

 キッと睨みつけて、キリエは早足で行こうとする。……まったく、何から何まで想定どおりの反応を見せてくれるので、涼介は不覚にも噴き出しそうになってしまう。

「怒らせたんなら謝るよ、ごめん」

 もはや涼介のことを振り返りもせず去っていこうとするキリエ。涼介は大股で歩いて彼女の前に強引に割り込む。

「なによ、構わないでっ!」
「だからごめんって。――でもせめて、これだけは持って帰れよな?」

 言って、涼介はキリエの傘をぐいっと差しだして、彼女に突きつける。
 彼女のイメージにぴったりの、真っ赤な傘。

「なんで……」

 さすがにキリエの足も止まった。

 キリエの「なんで」という問いは、なぜ涼介がキリエの傘を知って、そしてなぜわざわざ渡しに来たのか、という二重の意味が込められているようだった。

「いつもこの傘持ってたなって。ほら、窓から霧崎が帰ってくの見ちゃったんだけどさ、なんでか傘差してなかったし」

 今日の天気予報は雨。朝も小雨がぱらついていたし、この2週間ほどはずっとこんな天気だったので、傘を忘れる生徒など、まず居なかった。

「で、これが昇降口に残ってたから、もしかしてって思ってさ」
「違うし……」

 キリエは目をそらして否定する。

「私のじゃないし――」
「じゃあ、傘は?」
「……持って来てない」

 苦しい言い訳だった。
 2年生が使う昇降口に残っていた傘は少なかったし、赤色の傘は他になかった。

 ……キリエが赤を好きこのんで身につけるのも、どうせあの男に似合うとでも言われたことがきっかけなんだろう。

 涼介は、そう推測する。

「でもさ――」
「違うって言ってるでしょ!」

 よほど他人に――特に涼介のような人種に優しくされるのが許せないようだ。涼介は、キリエが自分のようなタイプに嫌悪感を覚えているのを知っている。

 なにせ、キリエの『大好きな人』とは正反対の人間だからだ。男女問わず友人が多く、恋人のウワサも絶えず、浮ついた態度で他人と接している。あの男――和樹とは、似ても似つかない。
 
 そもそもキリエは、和樹以外の男子には冷たかった。もちろん、人並みの社交性はあるので角が立つようなことはないが、こと恋愛面では、まったくの無関心。それが振る舞いに現れてしまっている。

 もっとも、その微妙な心情に気づけている男子は少ないかもしれないが。

 だから、そんなキリエだから、自分の弱っている姿を他の男子に見られるのなんて恥辱の極みだし、涼介に借りを作ることなんて、最大級の屈辱なのだろう。

「え、マジか……」

 涼介は、狼狽えたような声を出す。もちろん演技だ。

「じゃあこれ、間違えて持って来ちゃったのか……。弱ったな」

 困ったふりをすると、キリエのしかめ面に、わずかだけ罪悪感の色が浮かんだ。……ますます、涼介の嗜虐心が刺激される。

「わり。俺、これ返してくるわ。霧崎はこっち使って!」

 強引に手を取って、自分が使っていた傘を握らせ、涼介は豪雨の中を駆け出そうとする。

「ま、待って――」

 キリエが叫ぶ。

「いいから、それ使ってろ。大丈夫、俺は職員室で借りてくるからさ。返すの明日でいいからな」

 まくし立てて、走り出す涼介の背中に、キリエの叫び声がかかる。

「ち、違うの! それ、私の――!」

 驚いて咄嗟に足を止める――という演技も、涼介は上手にこなしてみせた。

「……そ、それ私のだから……こ、こんなのいらないから!」

 どこまでも素直ではないクラスメイトは、涼介の傘を突き返して、代わりに赤い傘を取り返す。

「…………っ」

 キリエはその傘を差そうとしないまま、ひたすら雨に打たれながら、黙りこくってしまう。

 おおかた、嘘をついたことが恥ずかしくて、言い訳が思いつかなくて、礼を言うこともできず――かといって、このまま立ち去るような薄情もできず、立ち往生してしまっているのだろう。

 涼介は、今度こそ本当に噴き出してしまう。

「くくっ。霧崎って、実はけっこう不器用なんだな」
「な、なによっ」
「いや、ちょっと可愛いって思ってさ」
「は、はぁ!?」

 演技の延長線上ではあったが、本心でもあった。

「霧崎って、めんどくさい性格だろ?」
「っ……」

 これは彼女にとっての図星。今しがた、深く自覚したばかりの自身の欠点。

「……悪い!? あなたに迷惑なんて……」

 かけていない、と言いかけて、今まさに迷惑をかけている最中だと思い至ったのか、キリエはまた打ちひしがれて閉口してしまう。

 とことん不器用な子だ。涼介は肩を揺らして笑った。

「笑わないでよっ! あなたって、本当にムカツク……!」
「よく言われる。――霧崎に、嫌われてるのも知ってる」
「べ、別にそんな……」
「でも俺は霧崎のこと、わりと好きだぜ?」
「な――」
「霧崎は嬉しくないだろうけどさ」
「あ、当たり前でしょ……」
「あれ? いま俺フられた? マジかぁ」

 ――そういう軽い態度が嫌いなのよ。
 キリエの表情からは、そんな感想が容易に読み取れた。

 涼介はそこで態度を切り替えて、至って真面目なトーンで、

「――ま、そんなことはどうでもいいよ。とにかく、ちゃんと傘差して帰れよな。バカは風邪引かないらしいけど……念のため、な」
「は、はぁ!? あんたには言われたくない――」
「そう。俺も風邪引いたことないんだ。くくっ」

 からかうように笑ってから涼介は、

「じゃあな、霧崎。明日、風邪で休んだら笑ってやるよ」

 キリエの大嫌いなにやけ顔をたっぷり見せつけてから、彼女の反応も見ずに帰路に就いた。キリエはなにか文句を言いかけたようだったが、涼介はもう聞いていなかった。


 
 ■ ■ ■ 


 誰もいない自宅に帰り着いた涼介がシャワーから上がったところで、ちょうど来訪者がやって来た。親はろくに帰って来ないし、姉は独立してしまった。唯一、同居している妹は、今日は部活の合宿で留守にしていた。

 彼女を伴って自室へこもり、早速ベッドでセックスをした。

「あっ、あんっ――」

 少女の甘い声が響く。彼女は、仰向けになった涼介の股間にまたがり、激しく腰を振って性交を全身で愉しんでいた。

 靴下と、制服のスカートだけを下半身に残し、ほとんど全裸になって、白い臀部を涼介のほうに向け、腰を大きく上下させて膣への挿入感を堪能している。

「やっ……、はっ……ぁんっ!!」

 恋人の淫らな嬌声と温もりを味わいながらも、涼介は、頭ではキリエの顔ばかりを思い浮かべていた。

 警戒心を露わにした野良猫のような顔。その激しい美貌の裏に見え隠れする、傷心の苦しみ。雨に打たれた長い髪。強気なまつげ。制服のブラウスが貼りついた豊かな胸のふくらみ。

 どれもが、涼介を興奮させる。

「はっ、く……、涼介くんっ、あっ、きもちいいっ、涼介くんもっ、突いてっ、おねがいっ……」

 恋人の少女は、黒いポニーテールを振り乱しながら、はしたなくおねだりをする。

 ――学校で見せる顔とは大違いだ。
 涼介は、他人事のような感想を持つ。他人事どころか、無垢だった彼女をこんなふうに変えてしまったのは、他ならぬ涼介なのだが。

「俺に動けってこと?」
「だって、だって……、涼介くんに動いてもらうと、すごく気持ちいいんだもんっ……」
「――にしてもさ。すごい姿だよな。男に尻の穴まで見せつけて、ガンガン腰振ってさ」
「や、やぁあっ……い、言わないでっ、涼介くんっ、そんないじわる、言わないでっ……!!」
「学校のみんなが知ったらどう思うだろうな――愛花・・がこんなビッチだって知ったらさ」
「――っ!! や、やだぁ……っ、みんなに教えるの、やだ……っ、こ、こんな格好見せるの……っ、涼介くんだけなんだからっ……」

 涼介の言葉で責められながらも、志乃原愛花は快楽を貪るのをやめようとしない。

 むしろ、その興奮の度合いが増したようで――

「っ……。愛花、いま想像したろ? ナカがきゅって締まったぞ」
「いっ、いやっ、ちがうっ、ちがうのっ……! あっ、あっ、あんっ」

 まったく説得力のない態度、声。
 愛花は間違いなく、はしたない妄想に溺れて、さらにそのことを責められて興奮していた。

 その証拠に、結合部からはだらしない体液がとろとろと漏れて、涼介の腹までをびしょびしょに濡らしていた。肉棒に絡みつく膣肉の感触。責めてやれば責めてやるほど、少女の肉壺は収縮を強め、射精を促してくる。

「ほんと、セックスの相手としては最高だよ、愛花は」
「やぁあっ、やぁあああっ……!!」

 涼介は愛花を、恋人扱いしない。都合のいいときに呼びだして、その瑞々しく、たおやかな裸体を思うままに弄ぶだけだ。

 けれど、愛花のほうもそれに不満を覚えていない。そういう歪な関係を作りあげたのは確かに涼介なのだが――そんな関係をいとも容易く構築できたのは、愛花にもおおいに素質があったからだ。
 
 いや、本性と呼ぶべきか。
 学校で見せる、おしとやかで優等生な顔。けれど志乃原愛花の本性は、そんなところにはなかった。

「涼介くんっ、おねがいっ、おねがいっ……!」
「分かったよ。突いてやるから……さっ」

 愛花の腰が振りおろされるタイミングに合わせて、涼介は怒張を突きあげてやる。

「んぐぅっ!? んっ、う……涼介くんのが、刺さっちゃった……っ、あっ、あっ、いくっ、いくのっ、とまらないのっっっ」

 最奥を突いた、たったその一回だけで。愛花は背中をびくびくと震わせ、絶頂に至ってしまう。

「あーあ。すぐイクよな。なあ、俺のことも気持ち良くする気あんの?」
「ご、ごめ……なさっ……、あっ!? あぅんっ」

 涼介は、まだ絶頂痙攣の最中さなかにある愛花の腰を強く突きあげて快感を送り込む。

「やぁっ! んっ、あっ、おっ、んおッ」

 尻を叩き上げるたび、びちょっびちょっと愛液が飛び散る音がする。

「濡らしすぎ。シーツ、どうしてくれんの?」
「ごめんなひゃっ、ひぅっ!? ぇうっ、んぅっ、ぉおっ?! んぉっ」 
「つーかさ」

 涼介は身を起こして、愛花の背中を突き倒す。愛花は四つん這いになって、涼介のペニスを受け止める体勢になった。

「あいつ……なんだっけ? 和樹だっけ。幸野こうの和樹。おまえ、あいつと付き合ってるの?」

『彼氏』の名前を出されて、愛花が慌てて首を振る。涙目で涼介のことを振り仰いで、

「あれは……あの人が勝手にっ! わ、私は……そ、そんなつもりじゃ……」
「思わせぶりな態度で、童貞くんを弄んだわけ? 最低だな」
「そ、そんな――っ」

 自身のことを棚上げにして責める涼介に、しかし愛花の反論は弱々しい。なぜならば――

「押されたら簡単に股を広げる女だもんな、愛花は」
「ち、ちがうのぉ……っ、信じて、しんじて? 涼介くんっ……」

 こうして、涼介からなじられるのを待っているからだ。

 そして実際彼女は、和樹とのあいだにハッキリとした交際関係を持っているわけではない。恋心の告白めいたこともなく、ただ勝手に和樹が舞い上がっているだけ――なのだが、愛花は、それすらも涼介に言い訳しない。

 ……そのほうが、気持ちいいから。

「か、和樹くんとは、何でもないのっ、ごめんなさい、ごめんなさいっっ」
「関係ないのに、なんで謝るんだよ。どうせ、あいつともこういうことしたくて堪らないんだろ?」
「し、したくないっ……あ、あんな人とっ……涼介くんだけなのっ、こういうことしたいのはっ……、だ、だからっ」
「――そんなこと言って」

 涼介は、愛花の後ろ頭で揺れるポニーテールを引っつかんで、ぐいっと引っぱる。

「んぎっ!?」
「こんな髪型、してなかっただろ? あいつに好かれたくて、こんなことしたのか?」
「ち、がうっ……!! どうしてもって言うからっ……! そ、それ……、シュシュ、渡されちゃって、断れなくって……!!」
「おまえさ。断れなかったらセックスもしちゃうんだろ。どうせ、俺と寝たのだって――」
「ちがうっ……!」

 今度は本気の否定だった。
 愛花は、後背位で膣を散々突かれながらも、涼介に哀願する。

「涼介くんだけなのっ、涼介くんが……、好きなのっ! 他の人となんてしたくないっ、涼介くん以外のおちんちんなんてっ、欲しくないっっっ」
「ははっ。ウケるな。じゃあ、あの童貞くんは愛花とセックスできないわけだ。せっかく付き合ったのに」
「――っんぅ!? はっ、はっ、っ……ぁんッ!!!!」

 再び絶頂が近くなったのか。愛花はもう言葉らしい言葉を発する余裕もなくしていた。

「ああ、そういえばさ」

 涼介は、キリエのことを思い浮かべる。

「霧崎キリエって知ってる? 俺と同じクラスの。俺、あいつに告白してフられたんだよ」
「――えッ!? あっ、ぁんっ! な、なん、でっ……! んぅっ、んぁっ!!」
「あいつのことが……和樹のことが好きなんだってよ。おまえらが見せつけたせいで、霧崎のやつ、そうとう落ち込んでたぜ。それでも、まだあいつのことが好きみたいだ」

 突然キリエのことを持ち出されて、愛花は混乱しきっているようだ。しかし彼女はその混乱を整理するいとまもなく、ひたすらに男性器で膣奥を叩かれ、快感にその身を貫かれている。

「――えぅっ、んぅっ、んぉッッ」
「でもさ。俺やっぱり、霧崎のこと好きだわ。だから……あいつと付き合うことにするよ」
「ひぅっ、やらっ、やらっ、だめっ、んっ、んっ、んぉっ、ぁぐっ?!」
「安心しろって。まだおまえには飽きてないから。こうやって、まだセックスしてやるからさ」
「――――ッ、ンっ、ンぅっ……!!」

 酷い言葉を浴びせかけられて、むしろ発情している。涼介には、ペニスを通じてそれが分かってしまう。

「――ほんっと、こんなことで興奮するとか。最低の牝猫だよな」
「あッ、んぅッ、ごめんなさ、ごめんなさぃッ!!!!」
「いいよ。許してやるよ。これからも可愛がってやるから」
「~~~~ッッ、りょうすけくんっ、あ゛ッ、んぅ゛ッ、ひゃう、やぁっ……イクっ、イクッ」

 牝肉が、いっそう切なく、きゅぅっと締めつけてくる。

「愛花。射精すぞっ。このドMまんこに、いっぱい射精していいかっ?」
「はひッ、んひッ!!……は、はいッッ」
「それじゃあ、おねだりは?」
「――あ、愛花の、牝ビッチおまんこにッ、涼介くんのせーしっ、だしてっ、いっぱい――だしてぇっ!! わ、わらひのおまんこにっ、せーえきびちゃびちゃってぶっかけてっ、こわしてぇっ……! んぃッ!? あッ、あッ、ぁああああああッッッ!?」

 愛花の絶頂に合わせ、涼介も肉幹に充填されていた精液を思い切り解き放つ。熱く、粘りのある白濁液が少女の膣にごぷごぷと流し込まれる。

「んぃいいいいっ……あ゛ッ、きてるっ、きてるっ……あっ、ゃっ、んぅううううッッ……!!」

 身を震わせ快楽絶頂に溺れる愛花の腰を押さえつけ、更に深いところで最後の一滴までを搾り尽くしながらも涼介は――脳裏に次の獲物のことを思い浮かべて、体の芯まで気持ち良くなっていた。
 

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