最年少ダンジョン配信者の僕が、JKお姉さんと同棲カップル配信をはじめたから

タイフーンの目

文字の大きさ
上 下
109 / 116
第7章 ハーレム旅行ってマジですか?

第109話 木更津ダンジョン1階層

しおりを挟む

 ■ ■ ■


「ここを渡るわけ……?」

 蓮は、遠くにそびえ立つ木更津ダンジョンに目を見開いた。
 ビル群の中に建っていた四ツ谷ダンジョンも異物感が強かったが、ここもまた異様な光景だった。

 遠浅の海岸。
 そこから伸びる一本の桟橋。
 その200mほど先で、巨大な塔が空へと伸びているのだ。

 ダンジョンは陸地にだけあるのではない。海にダンジョンも存在する。その話は知っていたが、実物を見るのは初めてだった。

 よく晴れた青い海面に、灰色の塔がむしろ映えて見える。

 ダンジョンが発生してしばらくは人が寄りつかなかったが、今ではダンジョンを眺めながら楽しめると人気だとか。確かに魅力的な観光スポットではあるだろう。

「やっばー☆ ここで動画撮ってみたかったんだよね~」

 みんなで桟橋を歩いていく。キラキラした水面に囲まれて不思議な気分だ。

「まぶしい……、しぬ……」
 
 蓮ですら高揚感を覚えているが、引きこもりには刺激が強すぎるらしくシイナはげっそりとしている。

「シイナ先輩、よく起きられたね。梨々香先輩と配信できるから?」
「もちろん……、はぁあ、そうじゃなかったこんなとこ、絶対来ない……あぅう……」

 弱っているとまだ可愛げのある先輩を励ましつつ、ダンジョンに入場。

 四ツ谷と同じく木更津ダンジョン1階層は配信者と一般人が入り交じるフロアだ。
 ただし客層(?)は、観光客らしき人たちが多い。

「ここは海外のマーケットを参考に開発したフロアなんですよ」

 衛藤が解説してくれる。

「広場なんかで露店が並ぶアレです。小型の店舗がズラリと並ぶ様子が人気で」

 気軽に寄りつきやすく、見た目にも面白い。もちろん露天に並ぶのは果物や野菜といった食料品ではなく、ダンジョン必需品である武器や防具、アイテムの数々だ。

 この街並みを気に入ったらしい結乃や梨々香は、あちこちの露天に顔を出しながら店主との会話を楽しんでいる。蓮とシイナはそれを後方から見守るだけで満足する――これがもはやお決まりのフォーメーションになりつつあった。

「シイナ先輩は何か買わなくていいの?」
「いい……、し、知らない人のお店とか、疲れるし、見るだけで買わなかったら怒られそうだし……」
「同意……」

 結乃たちみたいにフランクに話しかけて、商品について会話して、そのまま笑顔で去っていけるのなんて、あれはもはや――

「スキルだよね、あれ」
「ユニークスキル……、私には、千年かかっても無理……」
「わかる……」

 そろって、『ふぅ』とため息をついた。


 ■ ■ ■


 梨々香とともに露店めぐりを楽しんでいた結乃の背中に、声がかかった。

「ねえねえお姉さんたち、もしかして配信者?」
「ここ初めて? オレらが案内してあげよっか」

 地元の配信者らしき男性2人組だった。

「いいで~す、パス~☆」

 ナンパされ慣れているのか梨々香は怪訝な顔ひとつせずにさっさと行こうとする。結乃も、笑顔は崩さないまま、しかし男たちとは一切目を合わせずに自然と立ち去ろうとする。

 だが諦め悪く、

「え~~っ、オレってさ、登録者9000人いるんだぜ! コイツは8000人!」
「オレらとコラボしようよ。お姉さんたちもバズるよ?」

 こちらが無視しようともお構いなしだ。

「そんでさ、打ち上げもいい店教えてあげるから」
「観光? 泊まりで来た? 泊まりだったらホテル飲みしない? オレらも泊めてよ~、なんて♪」

 一切心が動かない誘い文句に、再度キッパリと断ろうとしたその瞬間。

 ――ヒュガッッッ
 ――ジャカッッッッ

 空気を裂く気配とともに、

「――――結乃に何か用?」
「梨々香ちゃんに話しかけるな、下衆ゲス
「「ひ、ひぃっ!?」」

 男たちそれぞれの首筋に、蓮が引き抜いた刃の切っ先と、シイナの銃口とが突きつけられていた。

「何の用って聞いてるんだけど?」
「え、えっっ!?」

 蓮の冷たい声と鋭い殺気に、男の顔は一瞬で青ざめて声が震える。

「つ、つーかこの人たちって、もしかして……アイビスの!?」
「と、遠野蓮!? 登録者120万人の!? う、嘘だろ――」
「お前! はやく気づけよ!?」
「てめぇが声かけようって言ったんだろ!」

 ――ゴリッッ!

「誰の許可を得てしゃべってるの? 梨々香ちゃんと同じ空気を吸うなんて、重罪よ?」
「そ、そんなぁ……!? ひぎっ!?」

 見ると、シイナのもう一丁の拳銃が男のこめかみに押しつけられていた。
 さらに蓮のほうは、黒翼が禍々しく展開していて、

「説明できないの? どうして? さっさと説明して」
「梨々香ちゃんを見たら殺す。1階層でも殺す。2人ともミンチにしてあげる」
「それいいね。説明できないなら殺そうか」

「せ、せつめい……っ」
「しゃべるな、殺す――」

「「~~~~~~~ッッ!?!?」」

 理不尽な2人の要求に、男たちはついには泣き出して、

「「す、すびばせんでしたぁ~~~~ッッ!!」」

 命からがら逃げ出した。

「うっわぁ……ガチビビりしてたね~。もう、レンレンもシイナちゃんもやりすぎ~。梨々香たちがあんなのに付いていくわけないのに――」

 と、梨々香が言うが、蓮とシイナは何だかため息をついて、

「はあ……、人多すぎだよね……」
「うん……だからあんな変な輩も……、うぅ、陽キャだらけだぁ……、疲れる……、やだ……」

 オンオフの激しすぎる2人に、結乃は梨々香と顔を見合わせ、

「レンレンたち、なんか意気投合してるね~」
「蓮くんに息の合うお友達が出来てよかったです」
「あーわかる~☆ 保護者の気分だよね~」

 言って、苦笑した。

 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

処理中です...