最年少ダンジョン配信者の僕が、JKお姉さんと同棲カップル配信をはじめたから

タイフーンの目

文字の大きさ
上 下
106 / 116
第7章 ハーレム旅行ってマジですか?

第106話 温水プール(後編)

しおりを挟む

 ■ ■ ■


 そして。

「水の中では私が教えるね」

 プールサイドで待っていたのは結乃だ。
 白いビキニ姿がやっぱりまぶしい。

「ゆ、結乃は泳ぎうまいの……?」
「いっつも蓮くん師匠に教えてもらってばっかりだからね。今日は恩返しだよ」

 そんな結乃に手を引かれて入水。

「これが流れるプール……」
「初めて?」
「うん」
「実は私も初めて」

 結乃ははにかんで、

「はい、両手持って? バタ足しよ」

 蓮の手をそっと握った結乃は、流れに逆らって後ろ向きに歩き始める。体が自然と浮いて楽にバタ足ができるけれど、

(けっこう恥ずかしい……、それに……!)

 顔を前に向けると、結乃の笑顔。そして水面に浮かぶのは結乃の豊かな胸元。白ビキニに包まれたバストが、ちゃぷちゃぷとプールの波に撫でられている。

「あっ、蓮くん横向いちゃだめだよ、バランス崩れちゃうから。前見て? 大丈夫だからね」

(大丈夫じゃないんだよ……っ!!)

 これは新手の拷問なのかもしれない。

「そうだよ、すっごい上手いね蓮くん。やっぱりあっという間に泳げちゃうね。――こういうセンス、戦闘で磨かれてるのかな?」

 蓮が泳げないのはその機会を逃していただけで、泳いでいる人間の真似をするのはそう難しいことではなかった。

「みんな分かってて蓮くんをからかってたんだろうね」
「……結乃もね」
「うっ。バレた? あはは……だって、こういうときでもないとお姉さんっぽいことできないし」

 バツが悪そうに笑う。

「……そんなことない」
「え」
「そんなことないよ、結乃にはいつも助けられてる」
「私も早く強くならないと。蓮くんに追いつけるように――は、無理でも。付いていけるようにはなりたいな」

 先日のクエストがあってから、結乃は特にそう痛感しているようだった。
 結乃のレベルアップといえば――

「そうだ。あの人から聞いておいたよ」
「あの人?」
「水魔法のこと」
「ああ、お義母さ……アーカーシャさん?」

 魔法のスペシャリストである荒巾木アーカーシャ。彼女に言わせると結乃は水魔法の才能に秀でているという。

「あの人が言うには、水魔法の本質は『同調』なんだってさ。――結乃を見てると、それは僕も同感だって思う」
「『同調』……」
「他人に共感して、歩調を合わせられる――」

 それこそ蓮が身をもって知っていることだ。結乃といると心地いいし、自分の考えとは違っても彼女の価値観をすんなり受け入れられる。

 今も、握った手で繋がっているような感覚がある。

「僕が個人的に…………、個人的に好感を持ってるってのはあるけど、それだけじゃないと思う。魔法って、使い手の性格っていうか、本質みたいなのが関係してるらしいんだ」

 まだ理論立てて立証されているわけではないが、最先端の研究に携わるアーカーシャも支持している意見だ。

「私の場合、水魔法で、『同調』で……ってこと?」
「うん」

 蓮の場合は重力魔法と炎魔法。
 得意魔法を活かしたスキル【創造の炎プロメテウス】にも代表されるように、壊し尽くして燃やし尽くして、そのくせすべてを自分に取り込んでしまう。

 たとえば梨々香なら光魔法、底抜けに明るい彼女の性格そのままだ。
 シイナは風魔法で、誰も寄せつけない孤高の強さを持っている。

「それで考えたんだ……結乃、【魔獣使いテイマー】を目指してみない?」
「えっ、それって――」

 ゲームのように明快な『ジョブ』みたいなものはないものの、ダンジョン配信者は得意分野であるていど分類できる。梨々香は魔術師、シイナは銃手。蓮はオールラウンダーだが、あえて分類するなら魔法剣士だろう。

魔獣使いテイマー】、それはモンスターを手懐け使役する種類の人間を指す。

「すごくレアな技能だよね、モンスターを飼い慣らすって」

 結乃が言うとおりダンジョン配信者の中でも特に希少な人種だ。

「結乃ならできると思う。水魔法で同調してモンスターと意志を通わせて、味方にするんだ」
「ええ、出来たらいいな……! 難しそうだけど」

 実際、難易度は高いだろう。
 そして人によってその方法論は異なるはずだ。例えば蓮がやろうとすれば、力尽くで従えることになる。重力魔法で動きを封じて炎魔法で脅して屈服させる――まあ、そんな単純な方法かはともかく、そういう方向性になるだろう。

 でも結乃の場合はもっと穏便に、水魔法を介して心を通わせることができるに違いない。そう、今のように――

「…………猛獣ぼくを飼い慣らしてるくらいだから、簡単だよきっと」
「ん?」
「なんでもない」

 荒みきっていた蓮の心を潤わせてくれるのは結乃だ。

「こうやって誰かと旅行に来るなんて……配信始める前の僕だったら考えられなかったし。結乃がここまで連れてきてくれたんだよ」
「蓮くん……。そんなことないよ。全部蓮くんが頑張ったからだよ。でも――蓮くんが言ってくれるんだし、私やってみようかな」
「僕ももちろんフォローするよ」
「うん、頼りにしてる!……あれ?」

 結乃は小首をかしげる。

「泳ぎを教えるつもりだったのに、何だかいつも通り『蓮くん師匠』だね。ふふっ」

 伸ばした腕の先で屈託なく笑う結乃を見ると、胸の底からじんわりと幸せが広がるようだ。
 絶対に守るし、頑張ってくれるのなら彼女の強さを引き上げたいと思う。

「結乃、ずっと一緒にいよう」
「ふぇっ?」

 つい漏れた本音を聞いて、結乃が目をぱちくりさせる。

「あっ!? いやダンジョンでも一緒にって意味で……! いやそれ以外もだけど!」
「れ、蓮くん――」

 しゃべるほどドツボにはまっている気がする。結乃も口をパクパクさせて動揺しているのが、それこそ水魔法なんて介さなくてもバッチリ伝わってきてしまう。

「か、体熱くなっちゃうよ私っ――、わっ!?」

 と、結乃が足を滑らせる。
 流れるプールに後ろ向きで歩いていたせいで、そのままズルッと水の中に落ち込んでしまう。

「結乃っ――!?」

 咄嗟に蓮は潜水し、流れに逆らって水をかき分ける。彼女の背後に回り込んで抱きかかえ、水面まで引き上げてプールサイドに泳ぎ着く。

「あ、ありがとっ……、また助けられたっていうか、蓮くんプロ並みだね!? ライフセーバーさんにもなれるよ!?」

 確かにもう苦手意識はまったく無くなっていた。
 結乃を助けないとと思った瞬間、過去のトラウマなんて一瞬で吹き飛んでしまっていた。

 水着の彼女に、背後からいつまでも抱きついていたはマズいと思って腕を解こうとするが、結乃の手がそれをそっと制する。

「……待って。もうちょっと、このまましてて……いいかな?」
「えっ、う、うん……」
「ありがと。蓮くんにギュッとされるの、幸せ……」

 こっちこそ、と、小声でつぶやき返すのが精一杯だった。


 ■ ■ ■


「あー、レンレンたち帰ってきた! どうだった?」

 結乃のレッスンも終わりみんなと合流する。
 しかし梨々香は蓮たちの姿を確かめると、目を見開く。

「……――って。なになに!? 2人とも、距離さらに近くなってない!?」
「「えっ?」」

 そういえばプールから上がっても手を繋いだままだった。腕と腕、肌もぴったり密着していて。
 梨々香はバッとメンバーを振り返って、

「結婚だよこれもう! みんな聞いて! レンレンと結乃ちゃん、目を離した隙に結婚してた! 水着でイチャイチャ婚してたーっ!」
「「してないっっ――!?」」

 なんて叫びながらも2人は手を離せずにしばらくそのままでいたし、プール客たちからはもちろん『死ぬほど仲の良い年の差カップル』『はよ結婚しろ』なんて認識されていたりした。
 

 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...