最年少ダンジョン配信者の僕が、JKお姉さんと同棲カップル配信をはじめたから

タイフーンの目

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第6章 世界のピンチも救っちゃいます

第85話 半分カップル配信

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 四ツ谷ダンジョン20階層。
 今日の配信はここからだ。

 先日ナイトライセンスを取得した蓮は、ダンジョンの転移魔法陣を使えるようになった――1階層の魔法陣を踏めば、この20階層までは一瞬だ。

 蓮の実力ならこのくらいの行程は散歩するほどの労力しか掛からないが、それでも時間短縮になるのはありがたい。

 いくら夜探索も解禁されたとはいえ、蓮は中学生。深夜まで働き続けるのは事務所的にもNGだ。

 ナイトライセンス取得に反対する派閥がいたのもこの事情のためだった。
 ダンジョン配信が一般的になったとはいえ法規関係がすべて整備されているとはいえず、だから蓮が夜までダンジョン配信をするのは法律的にグレーゾーンだったりする。

『あー、あー、蓮くん聞こえる?』

 と、イヤホンから結乃の声。いま彼女は1階層にいる。

「うん。感度良好」
『良かった』

 先述の夜配信の問題。
 反対派というか過保護な人たちは配信についてだけでなく、「ダンジョン配信で疲れた中学生が夜遅くに1人で帰宅するなんて」とまで言ってきているらしい。

 ダンジョンと寮は近いし、蓮にはガードマンも付いているし……何より『遠野蓮』を危険な目に遭わせられるものなんてほとんど存在しない――余計なお世話もいいところなのだが、これ以上イチャモンを付けられないためにもポーズだけでも取っておく必要がある。

 本来ならマネージャーの衛藤の出番なのだが、彼女は彼女で忙しい。
 元から多忙な身だったが、蓮の人気が右肩上がりになってからはさらに業務が増えているらしい。だから――

『衛藤さんみたいには出来ないけど、頑張ってサポートするね』

 そこで結乃の出番となった。
 彼女だって蓮と同じく未成年だが、ダンジョンから家まで――どころか、ベッドまで寄り添ってくれるわけで。

『声だけ配信に乗るんだよね? これはこれで緊張するね』 

 本日は金曜日、時刻は夕方5時。
 初めてナイトライセンスを活用した配信で、ゴールデンタイムと言われる時間まで続け、夜9時に終了の予定だ。

 結乃には帰りに迎えに来てもらうだけで良かったのだが、せっかくならナビゲートと、カップル配信までやってしまおうということになったのだ。

 結乃は緊張すると言うが、彼女の声が耳から入ってくるとそれだけでリラックスする。

(……――いや、衛藤さんもいいんだけど!)

 衛藤はときどき興奮しすぎてなにを言っているか分からなくなることがあるくらいで、基本的に彼女のサポートには感謝している。
 

 カメラの調子を確認してから蓮は、

「配信、始めるよ」
『うん。こっちもオッケーだよ』

 配信を開始した。

・はじまった!!
・蓮くん!
・夜更かしRTA配信てマ?
・夜まで蓮くんと一緒だ
・もう夕飯準備しておいたぜ!

 今日の企画はSNSでも告知済み。
 
『今日もたくさん来てくださってありがとうございます』

・えっ、この声
・ゆのちゃんだ!
・万病に効く癒やしボイスきちゃ!

『声だけ参加の、ゆのです』
「――蓮です」
『【れんゆの】です☆』

・相変わらずここ、蓮くんの声聞こえんw
・【れんゆの】って結乃ちゃんだけがゆってるw
・はよ共同作業してもろて
・恥ずかしがってんだよなぁ
・それがまたいい

 と、いつものチャットに混じって、

・蓮くん、ナイトライセンスおめでとー!
・ソードセラフ!!
・いきなり特殊称号もらえるとか破格だよな
・蓮くんさんならそれすら軽いくらいだよ
・ソードセラフって剣の熾天使って意味だよね
・強さは魔王級だけどな!
・ファンアートもめっちゃ増えてたな

「……ありがと」

・素直!
・ゆのちゃんの教育の賜物!
・ママかよw
・ママだよ

「……えー。今日はこの20階層から、4時間でどこまで上に行けるか試します」

・やったぜ!
・待ってました!
・なにそれ、ダッシュすんの?
・攻略するんだよ
・モンスター全滅しちゃわない!?
・蓮くんが各階層をぶっ壊しまくるってコト?

「全部じゃなくて。エリアボスを倒したら次に進めるってルールにしようかなって」
『蓮くんが本気で戦ったら……カメラが追いきれないから』

・たしかにw
・ああなるほどw
・アイビスのカメラって凄いって聞いたけど?
・それ以上なのよ蓮くんさんは
・ひらすらブレた影だけを映す耐久配信になっちゃうか
・それはそれで需要が??
・ないわw
・蓮くん的には『ゆっくりと急いで攻略する』って縛りプレイなわけか
・それ分かりやすい

『あとはですね、エリアボスを誰かが倒していて、まだ復活が確認されてない階層はスルーします』

 ダンジョンのモンスターは、コアを破壊されて倒されたら、同じ階層でリスポーンする。

 だが即時復活するものばかりではなく、特にエリアボスと呼ばれる個体……その階層でもっとも強力で1体しか存在しないモンスターを人間がそう呼んでいるが、強力であるが故なのかリスポーンに時間がかかることがある。

・ボス討伐の報告は義務だっけ?
・努力義務だね、でも配信者的には戦果の報告とか華だから。99%報告が上がってくる。
・エリアボス倒しすぎたら炎上しない?他の人の獲物を横取りして
・弱肉強食や、先に取られるのが悪い
・それはそう

「あとは――」

 蓮が言いかけたそのとき、背後に黒い影が迫った。

・あっ
・なにか

 ――スパンッ
 ――ヒュガッッ

・えっ?
・倒した?

 どさりと、背後の影が崩れ落ちる。

・今のなに⁉︎
・何が起きた⁉︎
・速すぎて見えんかった
・蓮くん⁉︎

「なにって……」

 蓮は地べたに倒れた(倒した)モンスターを無造作に見やって、

「黒くて毛むくじゃらの……シャドウ・ワーウルフ、かな」

・そうじゃなくて!
『そういう意味じゃないよ蓮くん⁉︎』

 総ツッコミを受けた。

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