最年少ダンジョン配信者の僕が、JKお姉さんと同棲カップル配信をはじめたから

タイフーンの目

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第5章 夜も激しくなりそうです

第75話 試験③

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「シイナの代名詞、【夜嵐】を前に遠野蓮の【荒ぶる海神の槍ポセイドン】、すべて撃墜されました!!」

 配信で実況の声が響く。

・マジかよ蓮くんの必殺が
・これがシイナ様よ!!
・豚ども歓喜感涙です!!!
・遠野だけじゃなくてこっちも魔王だな
・魔王vs魔王やんこんなの!
・アイビスってこんなレベル高いんか……!? 知らんかったわ……!

「形勢逆転、今度は遠野蓮が防戦一方です!」

 膨らみ続ける風の結界による殴打、斬撃。飛来する瓦礫。そして何より、シイナの双銃から放たれる風の凶弾。

「いやいや、よく防いでいるでござるよ!」

 解説のキューゴも興奮しっぱなしだ。

「夜嵐は乱戦に向いたスキルでござるが、1対1でも当然脅威! あの暴力がすべて1人に向かうのですからな!!」
「大きなダメージを負っていない遠野蓮も、また化け物ということですね……! しかし、反撃の糸口は掴めるのでしょうか!?」

・蓮くんさんならやってくれる!
・いやもう充分やっただろ、ここで負けても試験は合格ちゃう?
・そんな性格じゃない、っつーか蓮くんが負けるワケない!
・信者さんたち吠えてるねぇw 若いうちから敗北を知るのは大事だぞ?w

【双銃の舞踏家】の称号を持つシイナ。嵐の中の激しい舞踏に合わせ、次々と発砲する。

 蓮は回避行動を取る。
 重力魔法を活用した瞬動。黒翼を触腕のように使い、地面を掴んで体勢を変え、片手剣を振るい、四方八方からの攻撃に対処するが――

・ジリ貧やな
・まあようやったよ
・最強とか言われてたから見て見たけど、普通だったな
・上位陣には敵わんよね
・お!? シイナが……!

 乱流の中でシイナが、その細い腕をぐんと伸ばして銃口を揃え――キリキリと照準を合わせる。

「【夜嵐】――――」

 シイナの双銃は、風魔法を一定以上の威力で安定させられる特注武器。最低ラインの威力を担保する武器だ。だが、

凶星きょうせい

 双銃から放たれる、最高威力の弾丸。
 標的を追尾し必ず撃ち抜く、2つのまがつ星。

「――――ッ!」

 蓮はとっさに足を止めて防御態勢に移行。
 顔の前で剣を縦に構え、さらに黒翼で前方を覆ってガード――そこに、2発の弾丸が直撃する。

「………………ッッ!?」

 黒翼を貫き、ブロードソードの刀身を、。弾丸はそれで逸れたものの――

・なんだ今の!?!?
・ひぇえ!?
・剣が欠けてるが……!?
・よく防御しきったけど……さすがに終わりか

「フン――――」

 シイナは何事もなかったかのように夜嵐を維持する。

「武器破壊まで――!? これは遠野蓮、万事休すか!」
「シイナ殿はまだまだ余力はあるでござるからな。あの銃弾、いくらでも撃てそうでござるよ!」

「……ハ、アハハ」

「!? 遠野蓮、笑ってますか?」
「むむむ!?」

・蓮くん壊れちゃった?
・やっと敗北を受け入れた感じか
・受け入れられずにバグってんじゃね?w

 だが蓮は、欠けたブロードソードの切っ先をシイナへとかざして、

「――やっぱり、接近するほうが早いかな」

・なんでまだイキってるんだ
・万策尽きたんだろ

 マキ・テクノフォージの工房から提供されたこの剣は、ひたすら魔力伝導率だけを追求した一振りだ。つまり、蓮の魔力を余すことなく隅々まで行き渡らせることができる。

 そこへ、蓮は――

「【創造の炎プロメテウス】」

 の魔法を注ぎ込む。

・なんだ!?
・剣が、燃えてる!?

 炎が片手剣を丸ごと包む。その灼熱は、鋼鉄をも溶かす。

 ――ガィンッ、ギィンッッ

「こ、これは何の音でしょうか!?」
「金属音……!?」

 ――ガインッッ、ガギンッッ

「ブロードソードの形が……炎の中で変わっていきます!?」

 工房で閃いた新たなユニークスキル。
 鍛冶――とは少し要領が違うが。

「炎魔法は分かりますが――」
「……まさか、重力魔法でござるか」
「え」

 鉄を鍛える火造槌ひづくりつちの代わりに、重力魔法の打撃を加える。

 創造の炎。
 片手剣を基礎として、新たな武器を造りあげる。

 だが、それを待ってくれるシイナじゃない。瓦礫と銃弾を蓮へとけしかける。

「炎の剣で――斬る! 斬り払っています!!」
「ま、待つでござる!? 刀身が、大きくなってござらんか!?!?」

・あれって瓦礫も溶かしてね!?
・取り込んでるんか!
・蓮くんの得意属性! 重力と炎だ!
・蓮くん、夜嵐に突っ込むぞ!?

「遠野蓮、炎の刃で夜嵐を切り裂いていきます! 止まらない、止められないぞぉッ!?」

 防御は黒翼で。【創造の炎プロメテウス】で道を切り拓く。

「…………~~~~ッッ!?」

 蓮の炎は、シイナの銃弾すら食う。
 切り裂いた風も、その魔力を取り込んで自身の刃に変える。戦えば戦うほど、戦い続けるほど強大になる蓮の刃が――シイナに届く。

 夜嵐の中心部へと地を蹴り、【創造の炎プロメテウス】を振るう。

「くッ!」

 その斬撃を、シイナは渾身の蹴りで迎撃した。

 ――ギャリィンッ!

 蓮のスキルで酷使され限界が近かったブロードソードが折られ、【創造の炎プロメテウス】が消滅する。だがシイナのピンヒールも折れたうえ、蹴りに全霊を込めたために【夜嵐】も解除された。

「――――っ!」
「――――ッ!」

 着地は同時。バランスを崩して膝を突いたシイナの、右腕が跳ね上がる。拳銃の銃口が蓮を向く。

 左の手刀でシイナの手首を打ち据え、
 
 ――【スタンスティール】

 電撃に開かれ硬直したシイナの指から、拳銃を奪い取る。

 シイナの反応も速かった。
 もう片方の拳銃で、躊躇なく蓮の顔面へと発砲――風の弾丸はしかし、蓮の皮膚すら切り裂けなかった。首をひねってかわした蓮の、黒い髪だけが虚空を舞う。

 その刹那の間に、蓮は奪取したシイナの銃を眉間に突きつけていた。見よう見まねで生成した風の銃弾を装填して。

「…………」
「…………」

 しばし互いに無言で視線をぶつけ合ったが、やがてシイナが小さくため息を吐き出した。

 厳しい表情のまま、けれど、どこか憑《つ》き物《もの》が落ちたような顔で言った。

「…………私の、負け」

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