最年少ダンジョン配信者の僕が、JKお姉さんと同棲カップル配信をはじめたから

タイフーンの目

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第5章 夜も激しくなりそうです

第59話 初夜(もちろん健全)

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「こんばんは、ゆのです!」
「れ、蓮です……」
「れんゆのです、よろしくお願いします!」

 その晩。
 2人の部屋からの、初めての配信を開始した。寮に帰って着替え、夕食を終えて準備を整えて、20時からの配信だ。

 ここで配信することは、結乃も、結乃の母も、そして聖華女子校からも――そして寮の沙和子からも了承を得ている。

 ダンジョン外ではいつもの配信用の球形カメラは使えないので、スマホを三脚で立ててのアナログなセッティングだ。2人で並んでベッドに座っていて、その前に三脚があるので、ちょっと距離が近い。

 中空に表示させたウィンドウに、チャットがズラッと流れる。

・ホントにきたぁあああ!
・お部屋! 2人とも体操服だ!?
・当然だけど2人学校ちがうのね
・れんゆの待ってました!
・座っても身長差あるのいいな
・ベッドに座ってるんか?
・蓮くんやっぱガチガチになってるなw
・あいだに挟まりたい私←

「えへへ、なんか恥ずかしいね」

 さすがに結乃もこのシチュエーションには照れと緊張があるようだ。ここはダンジョンと違って完全なプライベート空間。

 だからこそリスナーにも新鮮に映るのだろうけれど。

「こっちは蓮くんのベッド。私たち、いつもここで――」
 
・いつも!? ここで!?
・ベッドで何してるんですか!?
・蓮くんのほうに……ゆのちゃんから行ってるのか!
◎助かる

「え、えええっ!? 座ってお話してるだけだよ!?」

・そりゃそうだ
・いや一瞬ガチであっちかと思ったw
・待て待て、いつも並んで座って話してるのか? 羨ましすぎるが?
・こんなん恋人やん
・カップルだからな、そりゃそうよ

「そ、そうかな? 普通にこうしてたから……ね?」
「えっ。う、うん。もうこれが落ち着くっていうか、日課というか――」

・やっぱ羨ましいわ
・初々しいなw
・付き合いたてっていいよね!
・ああ、脳が本格的に壊れりゅ……
◎ご祝儀
・もはや新婚さんまである
・死ぬほど悔しいが……この2人は祝福せざるを得ない!

「あ、あれっ? こういう流れになるって思わなかったかも……っ? わ、わたし顔熱くなってる……!」

 結乃の照れ顔。
 大きな眼の長いまつげが揺れて、サラサラの髪から覗く耳までを赤くして、ほっぺたを手で覆って――

「蓮くんっ?」

 反射的に蓮は、自分の枕をひっつかんで、結乃の顔をカメラからガードしていた。

「……あんま見るの、やめろ」

・彼氏くんが守ったぞw
・いつもより私たちに攻撃的な蓮くんw
・ヤキモチか? ヤキモチなんか? んんん?

「じゃ、じゃあこうするね?」

 結乃は一度画角から外れると、ピンク色のマスクをして戻ってきた。

「ちょっと声は籠もっちゃうけど、これなら……どうかな?」

・いやこれはこれで……
・マスクしてもしなくても美人だからな
・マスク好きって一定数いるよね
・お前らそのくらいにしとけ、蓮くんがムスっとしてきたぞw
・配信切られるってww

 オープニングトークからドタバタしてしまったが、そうやって初めてのお部屋配信は始まった。

 あらかじめ考えていた内容は、リスナーとの一問一答。普段のダンジョン配信ではゆっくりと時間が取れないので、ここでもっとリスナーと絡んでみようという思惑だった。

 こういう配信になると、落ち着いた結乃は強い。

 適度にコメントを拾って、センシティブな質問はスルーし、黙りがちな蓮にもトークを振ってくれる。

 配信においても安定感というか、『防御力』が高い印象だ。

 蓮のチャンネル登録者数は、右肩上がりに増えている。これは結乃のおかげもあるだろう。蓮のトーク力をカバーしてくれたり、結乃自身の魅力だったり。

 ただ時々、興が乗りすぎることがあるようで、

「寝起き? うん、蓮くんは寝起きいいほうだよ。でも、寝癖がぴょーんって跳ねてることあってね、私、1回写真撮ってから洗面所に連れて行って、水とドライヤーで――」
「い、いいって結乃、そういうのは……!」

 なんて、慌ててストップをかける必要があったりもしたが――しかし総じて配信は上手く進んでいた。

 ……結乃が多くのリスナーに、特に男性に注目されるのには思うところが無いではないが、もともと彼女は配信者志望だ。遅かれ早かれリスナーの前には出る。

 それを蓮が制止する権利なんてあるはずないし、彼女の夢は応援したいとも思っている。このカップル配信がその手助けになるのなら、蓮としても本望だ。

「――ということで、今夜はこれくらいにしたいと思います。最後に……蓮くんからお知らせがありまーす!」

・おっ?
・今日は告知多いね
・なんだなんだ
・また案件きたか?

 スマホのカメラに向かって、蓮は、

「……挑戦権、もらえることになった」

・なんの?
・挑戦って?

「ナイトライセンス……。試験を受けられるって」

・おおおおおお!
・やっとか!
・夜も蓮くんのダンジョン配信見られるようになるんだ!
・中学生って、夜だいじょうぶか?
・もうみんな試験通る前提やなw
・当たり前だろ、蓮くんさんやぞ
・実力的には試験官になってもいいくらいだもんな
・がんばって!

「……どうも」

 夜配信をメインにすることはないが、選択肢が増えるのはいいことだ。リスナーも喜んでくれているし。

「試験の経過はまた配信でも報告するんだよね?」
「うん。できるだけ」

 告知も無事終了。21時になったので今日の配信はここまでだ。

「これからも蓮くんのチャンネルをよろしくお願いします!」
「……お願いします」
「それでは、おやすみなさーい。ね、蓮くんも手振って?」
「う、うん――」

 カメラに向かってそろって手を振り、配信を締めくくった。

「ふぅ……」

 緊張から解放されて蓮は、空中ウィンドウを閉じて配信を終えた――

 つもりだった。

 というのも、普段使っている配信用カメラはこのウィンドウを閉じると連動して映像と音声をシャットアウトしてくれるのだが、今夜はスマホを使って配信している。

 ウィンドウは消えても、スマホのカメラとマイクはまだ機能したままだ。

「はー、なんか汗かいちゃった。お風呂、後にしておいて良かったね」

・あれ? まだ繋がってる?
・映ってますよー
・お風呂!?
・これもしかして気づいてない?

 と、切り損ねた配信でチャットも流れているのだが、肝心のウィンドウを閉じてしまっていて蓮たちは気づけない。

「なんか最初、うまくしゃべれなくてゴメンね?」
「そんな――僕のほうこそ。いつも結乃のおかげでやれてるし」
「ううん。蓮くんのがんばりがあって、そのおかげで私も配信に出させてもらってるんだよ。……それに」
「?」
「また守ってくれたね。恥ずかしい顔……蓮くんがガードしてくれた」

・これ、俺たち聞いてていいのか?
・事故らないかドキドキしてきた
・もう事故ってる定期
・蓮くん、配信より明らかにリラックスしてるね

「――見られたくなかったし」
「うん?」
「結乃の顔……なんか、みんなに見られたくなかった」
「ふふ。そっか。……ありがと。蓮くんはいつも格好いいね」

・蓮くんストレート!
・おいおい良い雰囲気だぞ
・おっぱじめちゃわない!? 大丈夫!?
・蓮くんさん、攻めるねぇ!
・ゆのちゃんのカウンターもエグいて

「蓮くん、先にシャワー浴びる? もう大浴場は終わってるだろうし」
「結乃が先でいいよ」

・シャワーとな!?
・大人の時間だぁああああああ!
・俺の人生で言ってみたいセリフNo.1をあっさりと…(血涙)
・マジでやばくね?w
・運営に知らせるか

「それじゃあ先に入っちゃおっかな。すぐに出るから、待っててね蓮くん」
「ゆっくりでいいよ」

・ガチ同棲やったんやな
・蓮くん、そこ代われ
・ゆのちゃんそこ代わって
・もうこうなったら結婚式まで生配信して欲しいな
・ギフチャが凄いことになりそうだなww

「ん。ありがと。お風呂上がったら……いつもみたいにマッサージしようね」

・ま、まままマッサージ!?!?
・詳しく
・えっっっっっ

「なんか、いつも僕ばっかりしてもらってるけど」
「いいんだよ。でも――……蓮くんも、してくれるの?」

 お風呂用の着替えを胸に抱きしめながら、流し目でそう言う結乃。照れと色気が混じった、熱っぽいまなざし。

「っっっ! ゆ、結乃がいいなら……初めてだし、最初は手加減できないかもしれないけど」
「そんなこと言って、蓮くんはこういうのもすぐに上達しそうだよね……マッサージし合いっこ、楽しみだね……」

・はいギリギリアウト!!
・これが男子中学生のプライベートってマジ? 羨ましすぎるが??
・なにが始まるんです!?
・配信に年齢制限かからない!? 大丈夫!?

 と。
 恥じらう2人が見つめ合っていると、三脚に設置したままのスマートフォンが鳴動した。

「ん……? 衛藤さん?」

 手に取り画面を見て、通話に応答する。

『れ、蓮さんっ!?』

 いつになく慌てた衛藤の声。

『配信続いてますよ⁉︎ お二人のカップル配信! 私の鼻血も出そうですっっ! ピンチ、ピンチです!……う"ゥッ!?』
「鼻血? 気をつけたほうが――え、配信?」

 スマホを確認する。配信が……ONになったままだ!

「う、うわぁっっっっ!?!?」

 今日イチの大声をあげて、慌てて配信を切った。


 その夜。配信切り忘れパートがバズって、チャンネル登録者数は一夜のうちにさらに爆増した。

 そして通話音声も乗っていたので、衛藤は『鼻血カプ厨変態マネージャー』として認知された。


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