53 / 116
第4章 ギャルお姉さんにも好かれています
第53話 反響:ニック
しおりを挟む
◆日本 東京都 現地時間 21:18
「みんな聞いてくれ!!!」
彼――米国のライブストリーマー・ニックは、四ツ谷ダンジョン近くの公園で配信を開始した。
・やあニック!
・おや? その景色は……
・やはりこの日程だったか
・もしかして東京かい?
「そうだよ東京だ! 憧れの街さ! そして僕はとんでもない経験をしたんだ!」
・アイビスのレンに会えたのか
・とんでもない経験だって?
・念願の記念撮影か
「【ニンジャ】だ! ニンジャは居たんだよ!!」
・??
・レンはニンジャだったのか?
・日本の配信者にはそういうクラスがあるということだろうか
「違うんだ! レンには会えなかったけどニンジャだ! 僕はニンジャされたんだ!!」
・ニンジャされた、とは?
・まずは落ち着くんだ
・興奮しているということだけは分かる
「そうだね、順を追って話そう……! 僕とニンジャの話をね!」
・レンはどうした?
・これは期待していいのか困惑すべきなのか
・LMAO
・いつも以上の奇行だね
ニックは先日、蓮の配信を見てから訪日を決め、実行に移した。
成田空港に着くなりまずはSNSをチェック。蓮がちょうど本日開催のイベントクエストに参加することを知り、急いで四ツ谷ダンジョンに直行したのだった。
「東京観光もしたかったんだけどね、まだ早朝だったし、何よりレンに会うのが先決だと思ったんだ」
・それは間違いない
・ニックにしては正常な判断だ
・ここまではニンジャが割り込む隙はないね
「そこでニンジャさ!!!!」
・それが分からない
・彼は時差ボケなのか?
・きわどい薬を服用しているという噂もある
「いやね、僕は始発電車に揺られて【ヨツヤ・ダンジョン】に到着したのさ! そしたら……これは運命だと思うんだが、トーノ・レンがダンジョンに入るところだったのさ! そこで僕は走ったね。スマートフォンを片手に、彼へとアタックをかけた!」
・不審者だね
・危険人物とみなされる
・目に浮かぶよ、狂喜しているニックの姿が
「するとだよ!? 歩道を走っていた僕の体が、ふいに細いビルの隙間へと引き込まれたんだ! 僕自身すら気づかないほどに、スルリとね!」
・ほう?
・警察か?
・日本の治安は良いと聞いていたけれど
「驚くことに、僕の体は逆さ吊りになっていた! あらためて言っておくが、そこはダンジョン内部ではない、普通の町並みさ。なのに僕は『何者か』の手によって、あっさりと拉致されて、空中に浮かされていた!」
・夢でも見ていたのでは?
・まさかそれが……
「そうさ、ニンジャさ! 相手はおそらく1人! しかも姿も見せないんだ! 早朝の路地裏、薄暗いその空間のどこかに溶け込んで、僕がどれだけ叫んでも、目をこらしても……まったくわからない! でも相手の声だけは響くんだ――『おはようございます、ミスター』とね!」
・その人物も配信者か?
・話を聞いていたかい、そこはダンジョン内ではないんだよ
・魔力を使わず、そんな芸当が可能なのか?
・ニンジャは〝ニンジュツ〟を使えるらしい
「まさにニンジュツ! 僕を宙づりにしたその彼は――いいや、男性なのか女性なのか、日本人の声を生で聞く機会は少ないから判然としないけれど……ともかくその人物は続けたんだ。『マスター・トーノを応援するのは構いません。ですが節度を守って。約束できますか?』、と!」
・クールなニンジャだ
・紳士だね
・命までは取られなかったか
「ああ! これも驚くことに、そんな乱暴をされたのに、宙づりから解放された僕の体には、ひとつの傷もなかったんだ! ひとつもだよ!? かすり傷さえね!」
・神業だ
・日本人らしい気づかいだ
「僕は感動してしまったよ! その人物は、トーノ・レンに忠誠を誓っているニンジャだったのさ! やはり彼は只者じゃなかった……!」
・肝心のダンジョンはどうなったんだ?
・レンのストリームは?
「ああ、そっちも最高だったよ! 無謀にもレンに挑んできた下品なヴィランがいたんだけれどね、見るも哀れに撃退されていた!」
・僕も見たよ
・あれは痛快だった
・テクニカルだったね、物量ではなく技量で上回っていた
・あれこそ、実力の何割も使っていなかっただろう
「レンなら、目をつぶっても勝てる相手だったね。ヴィランのやつは本当にもったいない。あんな良い装備を持っているのに! 僕はああいうタイプが一番嫌いだね! 宝の持ち腐れさ。しかしレンには、もっと骨のあるライバルが現れてくれるのを望むよ……そんな相手がいればだけどね!」
・アイビスのシイナなら面白い戦いをしてくれるかもしれない
・彼女の乱数戦闘は、スタンピードを制したレンともいい勝負になりそうだ
「うんうん、そうだね。……そうだ、今度はアイビスの事務所にでも突撃してみようかな? 日本の素晴らしいストリーマーがそろっているからね!」
・彼はまだ懲りていないようだ
・またニンジャされるぞ
・グッバイ、ニック
「いやぁ、今からワクワクが止まらないね! 次こそはライブストリームでこの興奮をみんなに届けるよ! じゃあね!!」
これが彼の最期の言葉に……なったりならなかったりしそうだった。
「みんな聞いてくれ!!!」
彼――米国のライブストリーマー・ニックは、四ツ谷ダンジョン近くの公園で配信を開始した。
・やあニック!
・おや? その景色は……
・やはりこの日程だったか
・もしかして東京かい?
「そうだよ東京だ! 憧れの街さ! そして僕はとんでもない経験をしたんだ!」
・アイビスのレンに会えたのか
・とんでもない経験だって?
・念願の記念撮影か
「【ニンジャ】だ! ニンジャは居たんだよ!!」
・??
・レンはニンジャだったのか?
・日本の配信者にはそういうクラスがあるということだろうか
「違うんだ! レンには会えなかったけどニンジャだ! 僕はニンジャされたんだ!!」
・ニンジャされた、とは?
・まずは落ち着くんだ
・興奮しているということだけは分かる
「そうだね、順を追って話そう……! 僕とニンジャの話をね!」
・レンはどうした?
・これは期待していいのか困惑すべきなのか
・LMAO
・いつも以上の奇行だね
ニックは先日、蓮の配信を見てから訪日を決め、実行に移した。
成田空港に着くなりまずはSNSをチェック。蓮がちょうど本日開催のイベントクエストに参加することを知り、急いで四ツ谷ダンジョンに直行したのだった。
「東京観光もしたかったんだけどね、まだ早朝だったし、何よりレンに会うのが先決だと思ったんだ」
・それは間違いない
・ニックにしては正常な判断だ
・ここまではニンジャが割り込む隙はないね
「そこでニンジャさ!!!!」
・それが分からない
・彼は時差ボケなのか?
・きわどい薬を服用しているという噂もある
「いやね、僕は始発電車に揺られて【ヨツヤ・ダンジョン】に到着したのさ! そしたら……これは運命だと思うんだが、トーノ・レンがダンジョンに入るところだったのさ! そこで僕は走ったね。スマートフォンを片手に、彼へとアタックをかけた!」
・不審者だね
・危険人物とみなされる
・目に浮かぶよ、狂喜しているニックの姿が
「するとだよ!? 歩道を走っていた僕の体が、ふいに細いビルの隙間へと引き込まれたんだ! 僕自身すら気づかないほどに、スルリとね!」
・ほう?
・警察か?
・日本の治安は良いと聞いていたけれど
「驚くことに、僕の体は逆さ吊りになっていた! あらためて言っておくが、そこはダンジョン内部ではない、普通の町並みさ。なのに僕は『何者か』の手によって、あっさりと拉致されて、空中に浮かされていた!」
・夢でも見ていたのでは?
・まさかそれが……
「そうさ、ニンジャさ! 相手はおそらく1人! しかも姿も見せないんだ! 早朝の路地裏、薄暗いその空間のどこかに溶け込んで、僕がどれだけ叫んでも、目をこらしても……まったくわからない! でも相手の声だけは響くんだ――『おはようございます、ミスター』とね!」
・その人物も配信者か?
・話を聞いていたかい、そこはダンジョン内ではないんだよ
・魔力を使わず、そんな芸当が可能なのか?
・ニンジャは〝ニンジュツ〟を使えるらしい
「まさにニンジュツ! 僕を宙づりにしたその彼は――いいや、男性なのか女性なのか、日本人の声を生で聞く機会は少ないから判然としないけれど……ともかくその人物は続けたんだ。『マスター・トーノを応援するのは構いません。ですが節度を守って。約束できますか?』、と!」
・クールなニンジャだ
・紳士だね
・命までは取られなかったか
「ああ! これも驚くことに、そんな乱暴をされたのに、宙づりから解放された僕の体には、ひとつの傷もなかったんだ! ひとつもだよ!? かすり傷さえね!」
・神業だ
・日本人らしい気づかいだ
「僕は感動してしまったよ! その人物は、トーノ・レンに忠誠を誓っているニンジャだったのさ! やはり彼は只者じゃなかった……!」
・肝心のダンジョンはどうなったんだ?
・レンのストリームは?
「ああ、そっちも最高だったよ! 無謀にもレンに挑んできた下品なヴィランがいたんだけれどね、見るも哀れに撃退されていた!」
・僕も見たよ
・あれは痛快だった
・テクニカルだったね、物量ではなく技量で上回っていた
・あれこそ、実力の何割も使っていなかっただろう
「レンなら、目をつぶっても勝てる相手だったね。ヴィランのやつは本当にもったいない。あんな良い装備を持っているのに! 僕はああいうタイプが一番嫌いだね! 宝の持ち腐れさ。しかしレンには、もっと骨のあるライバルが現れてくれるのを望むよ……そんな相手がいればだけどね!」
・アイビスのシイナなら面白い戦いをしてくれるかもしれない
・彼女の乱数戦闘は、スタンピードを制したレンともいい勝負になりそうだ
「うんうん、そうだね。……そうだ、今度はアイビスの事務所にでも突撃してみようかな? 日本の素晴らしいストリーマーがそろっているからね!」
・彼はまだ懲りていないようだ
・またニンジャされるぞ
・グッバイ、ニック
「いやぁ、今からワクワクが止まらないね! 次こそはライブストリームでこの興奮をみんなに届けるよ! じゃあね!!」
これが彼の最期の言葉に……なったりならなかったりしそうだった。
121
お気に入りに追加
588
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる