44 / 116
第4章 ギャルお姉さんにも好かれています
第44話 迷惑系(後編)
しおりを挟む男性配信者がリスポーンし、装備品や持ち物の扱いになっていない、ウィムハーピーの金羽根だけがその場に残された。こればかりは、アイテムポーチに入れていても避けられない現象だ。
配信者の持ち物として認定されるには、1階層であらかじめ魔力でリンクさせておかなければならない。
「うしっ、うっっっし!!」
興奮して鼻息を荒くしたたくぼうは、その『遺留品』を無造作に掴み上げると、
「はい楽勝~~~~~っっ! 3枚目ェ~~~っ!!」
自分の配信カメラに向かって誇らしげに宣言する。
ここに来るまで既に2枚、同じように攻撃を仕掛けてハーピーの金羽根を奪い取っていた。
・うわ~~w 最悪ww
・言いがかりでボコすの草
・殴りたいだけ定期
・さすがに引くんだけど…
・いいんだよこれで、チャラ男は4んでいい
・あースカッとした
たくぼうの蛮行を、しかし一部のリスナーは大いに喜ぶ。
・弱い方が悪いんだよ!
・結局実力の世界だからな、止められるもんなら止めて見ろって話
・女とイチャついて鍛えてないからこうなるんだろ
・たくぼうもほぼほぼ装備のおかげだけどなw
・それも含めて強さじゃん
・は? 中身も強いし
・たくぼう通報した。さすがに胸糞
・↑俺はお前を通報したぞ
・アンチは消えろ
どれだけアンチがいようと関係ない。
いやむしろ――
「通報? どうぞどうぞ! 炎上ゴチで~~っす!」
注目を浴び続けられるなら、敵対者はむしろ歓迎だ。
自分が悪者になるのも、『悪者を作る』のも、彼にとっては日常茶飯事。
例えば悪友に依頼して、配信外で不倫ネタをでっち上げるなんていうことだって、平気でやってのける。そういう努力を、彼は惜しまない。
「おいらは正義の味方だかんね! ぐだぐだ言ってるアンチも、いつか開示請求で身元掴んで、ぶん殴りに行きま~~~っす!」
・怖っw
・ヒェ~~~~っww
・たくぼうを怒らせんなよ? 消されるぞ?
◎どんどんやってくれ! 正義の鉄槌!!
・ギフチャいいぞ
熱心な信者で周りを固め、他人の迷惑を顧みず、ひたすら刺激的な配信をし続ける。もともと親のおかげで経済的に困っていないし、これでさらに収入も増えるのだから――
(世の中、チョロすぎっ! これだから配信は止められないんだよなぁ)
今日のイベントクエストも、真っ当な手段でクリアするつもりなどない。
ハーピーとの交渉?
クソ真面目に取り組む必要なんてない。プレイヤーキルで奪い取ればいいだけだ。
もっとも、1位の景品など、クエスト報酬に頼らなくてもたくぼうなら簡単に入手できるが、それはそれ。
せっかく配信者が大勢集まって、多くのリスナーから注目を浴びるイベントだ。このチャンスを利用しない手はない。
……しかし。
弱小配信者にばかりチマチマ絡んでいても埒《らち》が開かない。
人気者で、与《くみ》しやすそうな、ちょっかいを出せばリスナーからの反応が大きそうな獲物を狙うべき――。
(…………っ! いたいた、そうだよアイツだよ!)
遠くに、とある配信者の背中を見つけて、たくぼうは舌なめずりをした。たくぼうとは対照的なほど小柄で、背の低い、最年少配信者の背中を――
「そういえばさ、おいら、あの人気配信者くんにイチャモン付けられたんだよね。今日、イベクエ始まる前にさぁ……! 調子乗りすぎてると思うんだよね、チヤホヤされて!」
こんなもの、すぐにバレる嘘だ。だがあの現場の一部始終を見ていたのは同じアイビスの梨々香だけ。
身内の証言はあてにならない、と喚けばしばらくは『疑惑』を維持できる。
それに、あとで糾弾されたとしても、謝罪動画でも出せばまた注目を集められる。
リスナーたちだって、
・たくぼう、また言いがかりっぽいなw
・勘違いしてイキってるんだろ
・世の中の厳しさを教えてやれ
・生意気なオスガキをボコボコにしてください
・真の強者の偉大さと恐怖を教え込んでやるといい!
本気で信じている者、暇つぶしになれば何でもいい者……。こういう連中を煽るだけ煽って、騒ぎを大きくする。それだけでいいのだから、楽なものだ。
(いい声で鳴けよ、クソガキィ……!)
仮に本当に戦闘巧者だったとしても構わない。殺されたって1階層でリスポーンするだけだ。ダンジョン内での死など、恐れるに足りない。恐怖なんて感じるわけがない。
イベントクエストの勝敗も気にしていないので、集めた金羽根を失っても大したダメージにはならない。
もしそうなった時でも、自分のことは棚に上げて『クエストの邪魔をする卑怯者だ!』などと吹いて回ればいい。こっちは好感度なんて気にしていない。イメージを傷つけられるのはあちらだけだ。
それにたくぼうを殺そうとするなら、唯一、剥き出しになっている頭部を狙うしかない。だが、プレイヤーキルは許可されていても、頭部への攻撃はどうしたってショッキングな映像になるので、仕掛けたほうの好感度は落ちてしまいがちだ。
もちろん、それを狙っての装備構成なのは言うまでもない。
「そんじゃ行きますかね、正義の鉄槌を振るいに! ヤラセ配信者の遠野蓮くんを、これからボッコボコにしまっっっす!!」
たくぼうは、小さな背中に向かって踏み出した。
……それが、自身の配信者人生を終わらせる、転落への第一歩だとは知らずに。
130
お気に入りに追加
588
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる