最年少ダンジョン配信者の僕が、JKお姉さんと同棲カップル配信をはじめたから

タイフーンの目

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第4章 ギャルお姉さんにも好かれています

第43話 迷惑系(前編)

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「よーし! 金羽根ゲットしましたーーーっ!」

 イベントクエストに参加中のとある男性配信者は、ウィムハーピーとの交渉に成功した。金色に染まった1枚の羽根を手に、リスナーたちに見せつける。

・おおおおおおお!
・はっっや!
・一番なんじゃない?

 ウィムハーピーの中でも特に美意識の高そうな個体に出会った彼は、この12階層では滅多に見かけない、希少な紫色の花を一輪つんで来て贈った。

 それが見事に『彼女』の好みに合致していたらしいく、満足そうに花を受け取ったウィムハーピーは、自分の体をくちばしでまさぐって、1枚の羽根をついばみ渡してくれた。

 赤色しかなかったはずの羽根の中で、それは、黄金色に染まって輝いていた。

・さすが既婚者w
・新婚さんは女性の扱いがうまいね

「いやいや! そういう問題じゃないって」

 照れ笑いを浮かべる。
 彼は大学時代に付き合っていた彼女と、卒業してすぐに結婚。配信者としても軌道に乗り出し、妻との仲も円満だった。

 ついつい配信でノロケてしまうので、リスナーからはこんなふうにからかわれがちだ。

 彼は話題を逸らそうと、ハーピーの羽根に話を戻す。

「この金色の羽根、普通のものと比べると魔力伝導率が高いらしいんだよ。今日のイベクエの主催、武器製造で有名なマキ・テクノフォージだから、魔術師向けの装備に使いたいのかもしれないね」

・へぇ~
・この調子で集めまくろう!
・行けるよ、1位狙える!

 リスナーの反応を一通り確認してから、カメラに見せつけていた金色の羽根を丁寧に【アイテムポーチ】に仕舞う。

 モンスターの死体だけでなく、モンスターの体から離れた部位は、時間が経つとリスポーンの対象となり消滅してしまう。魔力の源たるコアから分離されたり、コアが破壊され魔力の循環が失われてしまうからだ。

 その消滅を避けるために、こうしたアイテムポーチが用いられる。モンスターコアとの魔力経路を遮断して、リスポーンに巻き込まれずに素材を保存できるのだ。

「うっし、じゃあ次の――」

 彼がカメラへと笑顔を向けたところで、左肩をうしろから、と掴まれた。

「へっ?」
「よお、こんちわ」

 大男が立っていた。
 プレートアーマーを着込んで、大剣を担いだ男。無駄に豪快な笑顔を浮かべているこの配信者は――

・うげ、たくぼうじゃん
・やばい逃げて!
・嘘だろ絡んでくんなよ!

「リスナーの皆さんもおっす! おいらは正義の味方、そしてみんなの味方の【たくぼう】っす!!」
「お前、なんで――」

 迷惑系で有名な配信者だ。
 配信者同士、突発的なコラボはあり得るが、この男と接触するのはマイナスにしかならない。

 手を振り払って逃げようとするが、

(こいつ……っ!? 力強っ――)

 もともと体格がいいうえに、魔力で強化されている筋力。この迷惑男の厄介なところは性格だけでなく、上位クラス【重戦士《ヘビーファイター》】の称号を授かるほどの戦闘力にもある。

「つーか皆さん知ってますよねぇ? この配信者さん、不倫男だってこと」
「――――っ!?」

 そして何より、が厄介すぎるのだ。

・もうそのネタいいだろ
・ガセだったじゃん
・誰かがネットで流したデマだったんだよ

「ハァ!?!? ふざけんなよ雑魚リスナーども!!!!」

 チャットを盗み見てたくぼうは、それまでの笑顔から一変、憤怒の形相に。その落差もだが、ほんの一瞬で表情が入れ替わるのが恐ろしい。ある程度は演技なのだろうが、ナチュラルに『相手にしてはいけないヤツ』だと感じさせてくるのだ。

「お前らがさァ、そうやって甘やかすからこういうクズが出来上がるんだろ!?!?」
「だから誤解だって――!」

 根も葉もない噂だ。

 既婚者である彼は、妻一筋で浮気なんて考えたこともない。噂を流したのはタチの悪いアンチか、または、彼の活躍や私生活をうらやむライバル配信者かもしれなかった。

「アァん!?!?」

 肩に、太い指がギシッと食い込む。

「この雑魚リスナーどものギフチャが、お前の不倫相手のクソ女に渡ってるんだぞ!?!? 共犯だ共犯!!!!」
「勘違いだ! ネットに載った画像は俺の妹で――」
「はい出たー! そういう言い訳、定番すぎて吐き気がするわ! マンションから仲良く出てきてただろ!?!? あんなの不倫に決まってる!!!!」

 ネットにばらまかれたのは、妻と妹と自分の3人で食事会をした夜のものだ。決してやましいものではない。
 なのに、この大男は、聞く耳を持とうともしない。

「こういうクズが一番嫌いだわ! ガチクズ!」
「話を聞けって――、あぐッッ!?」

・うわっ!?
・殴らないで!
・なんだよコイツ、頭おかしいんか!?
・おかしいんだよこいつは!

 痛覚は『1』に設定してあるが、たくぼうの拳は重く、その衝撃に立っていられず転倒してしまった。悔しいが、戦闘では敵いそうにない。

 だがそれに飽き足らず、

「倒れるなよザコ!!」

 鎧の大男は、馬乗りになってさらに殴りかかってくる。

「鉄槌、鉄槌っ! 正義の鉄槌ぃいいいッッッ!!」

 とっさに顔面を両腕でかばうが、それでもお構いなしに何度も殴りつけられ、やがてガードも崩れて直接顔を――それも鋼鉄のガントレットで、拳だけでなくエルボーまで叩き込まれて――

「――――――――っっっ」

 肉体が限界を向かえ、死亡。
 リスポーンの開始。

 肉体が、装備品ごと魔力の粒子に変換される。同じく持ち物としてリンクされていた配信用のカメラもともに、1階層へと転送されていき、この場から消え失せた。
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