最年少ダンジョン配信者の僕が、JKお姉さんと同棲カップル配信をはじめたから

タイフーンの目

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第4章 ギャルお姉さんにも好かれています

第37話 大浴場

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「…………」

 広い脱衣所。
 ここもミーティングルームと同じく30人ほどが同時に使えるほどの規模だ。脱衣カゴの並ぶ棚と、横長の洗面台。

 いつもは、ここで結乃たちが――

(……っ! 僕は変態か⁉︎)

 妄想しそうになるのを頭を振って食い止める。
 なるべく無心になり、汗で張り付いた体操服を脱ぐ。

「裸になって……いいのか?」

 女子風呂で自分が全裸になる。他に誰も居なくてもヤバいことをしている気分になってしまう。

(考えるからいけないんだ……!)

 そう。これはただの入浴。邪なことを考えるから変な気分になる。
 無心になって蓮は衣服をすべて脱ぎ去り、浴室へと続く引き戸を開ける。

 当然、誰もいない。
 だが、警戒は怠らない。
 五感をこれまでにないくらいに研ぎ澄ませる。

 もし誰かが入って来ようとしてもすぐ気づけるように。

 万が一にも、『偶然入って来たお姉さんたちと全裸で鉢合わせになる』とか『出るに出られなくなって裸を目撃してしまう』とか――そんなトラブルだけは避けねばならない……!

 脱出経路の確認もバッチリだ。高いところにある窓。蓮の体格なら、あそこから脱出できる。危険を感じたらすぐさま外へと飛び出よう。

 シャワーを浴びながらも臨戦態勢は崩さない。……臨戦というか、逃走準備だが。だいぶこの女子寮にも慣れてきたが、さすがに大浴場《ここ》はアウェー。超アウェーだ。油断はできない。


 とはいえ、大浴場のシャワーは確かに、カナミの言うとおりに心地よかった。ほどよい強さで髪と肌を洗い拭ってくれる。

 このシャワーで結乃や、他のお姉さんたちが――

(だから違うって――!!)

 なんて、本能と理性の狭間で葛藤していたが、

(……人が来る)

 鋭敏になった蓮のセンサーが、誰かの接近を感じ取る。

 まだ脱衣所の位置。
 人数は1人だ。
 一瞬、腰を浮かせて逃走を考えたが、

(この気配は――さっきの?)

「あのぉ~……」

 浴室のガラス戸越しに、声が聞こえた。
 三条麗奈だ。

「お、お着替え、運んで来ましたわ」

 一度蓮たちの部屋に行って、着替えを持って来てくれたらしい。蓮は部屋を出る前、トレーニング後にすぐシャワーを浴びられるよう、タオルと一緒に着替えの衣服をまとめておいた。

「ど、どうも……わざわざ部屋まで」
「いいえっ」

 蓮も緊張しているが、麗奈も人見知りなところがあるのか、どうにも会話がたどたどしい。

「私も、お2人の愛の巣に並々ならぬ興味がありましたので……ではなくて! 私も次から教えを請う立場になりますので、お安い御用ですわっ!」
「? ありがとう――」
「とんでもございませんわ! こちらこそご馳走様でした!」
「はあ……?」

 何か不穏な言葉が聞こえた気もしたが、ここは素直に礼を述べておく。

「それに、今後は私にも手取り足取り……肉体的なレッスンを施していただけるということですし、これくらいのことはさせてください」
「ああ、うん、まあ……?」
「日曜日の【イベントクエスト】も応援に行こうと、先ほど話していたところなんです」
「ダンジョンまで?」
「ええ。1階層はお祭りのようになりますし。大きなモニターで遠野さんの活躍も拝見できるのですから」

 結乃、カナミ、麗奈の3人が四ツ谷ダンジョンまで応援に来てくれるらしい。……あまり彼女たちの視線を意識しすぎると硬くなってしまいそうだけれど。

「あ、シャワーのお邪魔でしたわね。それでは、ごゆっくりと体を清めてくださいですわ」

 言って、大浴場から出て行った。
 彼女はどこか上ずった声のままだったが、裸で鉢合わせるタイプのアクシデントには見舞われずに済んだようだ。

 ごゆっくり、とは言われたが今日は平日。蓮もあまりのんびりとはしていられない。さっさとシャワーを済ませて上がる。

 麗奈が持って来てくれたバスタオルを手に取って、体を拭こうとしたとき、

 ――パサッ

 タオルにくるまれていた下着が床に落ちた。
 反射的に拾い上げる。

 白いレースのあしらわれたブラジャーと、そして……

「なっ――――!?!?」

 手にした女性用の下着に、目が釘付けになってしまう。
 と。
 足音。
 ドアの開く音。

「れ、蓮くん! もしかして私の――っ」 

 動揺していても、危機センサーだけは全開にしていて良かった。直前に結乃の接近に気づけたおかげで、かろうじて蓮は腰にバスタオルを巻くことができた。

「あっ!? わっ、ごめんねっ!?」
「い、いや別に――」

 半裸の蓮に顔を赤くする結乃だが、彼女も急いで降りてきたのか、まだ髪は濡れたままだし、慌てて着たらしいTシャツとホットパンツは肌に張り付いている。

 手には、蓮の着替え一式を大事そうに抱えていた。

「麗奈ちゃんが、私と蓮くんの間違えて持っていっちゃったみたいで……!」

 そういえば、結乃も部屋を出る前に同じように着替えを準備していた。室内のシャワールームそばにある、小さな棚の上にそろって置いておいたから、麗奈が取り違えてしまったらしい。

 届けてくれた麗奈はさっきからずっとフワフワした調子だったし、バスタオルは蓮と結乃で同じものを使っているから、見間違えても仕方のないことではあるが。

「蓮くん……」

 結乃がおずおずと尋ねてくる。

「み、見た……?」
「えっ!? いや」

 見たか、見てないかで言えばガッツリと……。今は下着は棚に突っ込んで目をそらしているが、まぶたの裏にはしっかりと焼き付いている。

「ごめん、見た……」

 せめて、ここは正直に告白しておこう。

「そ、そっか。ごめんね、変なもの見せちゃって……! もっと可愛いのも欲しいんだけど、なかなかサイズが合わなくて……っ! れ、蓮くんに見せるときまでには他のも買わなきゃって思ってたんだけどねっ?」

 結乃も動揺していて、よく分からないことを口走っている。

「と、とにかくこれ、蓮くんの着替え! じゃあ、あとでねっ」

 いそいそと蓮の衣服を押しつけてきて、足早に去っていった。

「はぁ、また汗かいた……」

 ダンジョンでどんなモンスターに出会っても冷や汗ひとつかくことはないが、この女子寮ではどれだけ焦らされてきたたことか。
 しかし、もうシャワーを浴びる時間はない。仕方なくタオルで拭うだけにしておこう。

「…………ん?」

 ふと、考える。
 結乃は急いで降りてきてくれた。おそらく、体もろくに拭かないうちに。そして彼女の下着は、さっきまでここにあった。

 じゃあさっきの、あのTシャツとホットパンツの下は……?

「っっっっっっっ!?!?」

 さらに汗が溢れてきて、やっぱり女子寮《ここ》はダンジョンより危険な場所だと、改めて痛感するのだった。

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