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第3章 配信でイチャついていいんですか?
第33話 反響:海外リスナー
しおりを挟む◆米国ロサンゼルス 現地時間 15:09
「やあリスナーのみんな……」
・やあニック
・元気がないね?
・知らない人が多いようだ、昨日ニックはトラブルに巻き込まれていたのさ
「その通りだ……」
ダンジョン配信をノリノリで紹介しているときとは、あまりに落差のあるテンションで彼――ニックはリスナーに向かって語りかける。
「昨日、【シルバーレイク・ダンジョン】の周りで友人とライブストリームの準備をしていたのさ……そうしたら、向こうから2人組の警官がやって来たんだ……」
・ほう、それがトラブルの元かい?
・警官とニック……相性は悪そうだね
「……彼らは僕たちに尋ねたのさ。『撮影の許可は得ているのか?』ってね。僕はすぐさま友人のほうを見た。彼が申請しているはずだったからね。ところが――」
・まさか
・話が見えてきたよ
「――そう、許可なんて取っちゃいなかったんだ! とはいえ、僕らも撮影する気マンマンだったからね。逆に言ってやったよ、『君たちこそ、誰の許可を得て僕たちのカメラに入って来てるんだい?』ってさ」
・またケンカを売ったのか
・恐れ知らずだ
「そこから言い合いになっちゃってね、友人がついカッとなって手を出したものだから……僕らはカメラどころかスマートフォンさえ取り上げられて、一晩中、ネットからも隔離された狭い部屋に拘留されたんだ!!」
・それで落ち込んでいるのか
・ニックらしくない
「いやそんなことはどうでもいいんだ! ファ●キンポリスのことなんて、どうでもね!!」
・落ち着くんだ、ニック
・そんな調子ではまた警官の厄介になるぞ
「でもそのせいで、見逃してしまったんだよ!」
・??
・ああ、察しがついたよ
・なるほどね、例のライブストリームか
・どういうことだ? 何を見逃したんだい?
「アイビスの【レン】さ! 昨日は彼の配信があったんだ!! 釈放されてからアーカイブで見ざるを得なかったんだけれど…………あんなエキサイティングな配信を、生で! 見逃してしまったんだ!! フ●ッッッック!!!」
・あまり叫ぶとまた通報されるぞ
・気持ちはわかるよ、僕だって仕事で見られなかったからね!
・あれは実に驚きだった、あんなユニークスキルを隠し持っていたなんて
「そうだ、【ヘカトンケイル】! 重力魔法をあそこまで見事に操るなんて! 信じられない!! しかも12歳の少年がだぞ!?」
・ヘカトンケイル……彼はギリシアにゆかりのある人物なのかい?
・いいや、おそらくスキル名を名付ける際に参考にしただけだろう
・日本にはあるのさ、一定の年代の少年少女が、そういったネーミングに凝ることが。神話の創造物をスキルや武器に付けたがるような、ね。
・我々も身に覚えがあるんじゃないか?
・どこの国でも共通なんだね
「あああ、僕は自分の見込み違いを謝罪しなければならない!」
・見込み違い?
・謝罪とはどういうことだ
「前の配信での彼を見て、実力の70%ほどで戦っている――なんて見当違いの発言をしてしまったのさ! 僕が間違っていた! 彼の実力はそんなものじゃない!」
・なるほどそういうことか
・確かに、凄まじいポテンシャルを秘めていそうだね
「ヘカトンケイルにも興奮したが、彼はそれだけじゃない! あのスタンスティールの熟練具合、いくつものバトル・ストリームを見てきたが、あれほど華麗に決めてみせたのは彼が初めてだ!」
・剣を振るっていた、パートナーの少女が素人だったからでは?
・彼女もキュートだったね
「それを差し引いても、だよ! あらゆる属性の魔法を操り、一流の戦闘技術を持ち、パートナーのためならその行使をいっさい厭わない……!! レンこそ、次の時代を引っ張って行くストリーマーになるね、断言する!!」
・うん、異論はないよ
・ダンジョンの構造体を崩壊させるほどだった。その点も注目だね。
「…………、決めたよみんな! 僕は東京へ行く!」
・!?
・彼に会いに行くのか?
「まさにそうだ! レンに会って、謝罪をし、一緒に写真を撮って、サインをもらうんだ!!」
・lol
・それが目的か
・ただの熱狂的なフォロワーだ
・いいね、ぜひその様子を配信してくれ
・今度はきちんと〝許可〟を取るようにしたまえ
「そうと決まったら僕は行くよ! 次の配信を楽しみにしていてくれ!!」
・ああ、楽しみだ!
・よい旅を、狂犬ニック
・レンによろしく!
そうして彼は早速、日本行きのフライト予約を入れたのだった。
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