最年少ダンジョン配信者の僕が、JKお姉さんと同棲カップル配信をはじめたから

タイフーンの目

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第3章 配信でイチャついていいんですか?

第31話 反響:新規フォロワー

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 深夜0時。
 東京のとあるマンション――

 アイビスのマネージャー・衛藤は自室のデスクで、まだパソコンに向かっていた。
 半分は仕事だが半分は趣味の範疇だ。

「いい感じですね【れんゆの】……! 蓮さんのチャンネル登録者数も25万人超え!」

 エゴサーチをまったくしない蓮に代わって衛藤はネットの海を片っ端から巡り、情報収集とアンチ対策を行っている。

 そんな衛藤のスマートフォンが鳴動する。発信者名を確かめてから、電話を取る。

「お疲れさまです」
『うん、お疲れ
「……それ、蓮さんたちの前では呼ばないでくださいよ修羅」

 ため息を吐きつつ応答する。

『つれないね。幼なじみの仲じゃない?』
「高校からって、幼なじみに当たります?」
『あの頃のサキは幼かったからね。まだ世の中のことも知らなくって……』
「あーイタズラ電話でしたか。――切りますよ?」
『ごめんごめん』

 このホストめいた警備員《ガードマン》は、仕事中には仏頂面で無感情に振る舞っているくせして、素になるとすぐこうだ。

「蓮さんたちのほうはもう安心、と思っていいですか?」
『夕方からこっち、2名ほど排除したよ。さっそくマスターたちを撮影しようとしていた素人と、もう1人はフリーの記者。女子寮に踏みいる前にお帰り願ったよ』
「……物騒なことは?」
『してないよ。相手の脅威度によって対処方法を変える――それがキミからのオーダーだろ? 心得てるさ』
「それならいいんです。ご苦労さま」

 彼女のような一流の暗殺者……もとい、優秀な警備員を確保できたのは、ひとえに衛藤自身のコネのおかげだ。コネというか、ただの旧知の間柄というだけだが。

 旧知――

 まさか高校の同級生が学校生活と並行して裏家業に手を染めていたなんて、出会った当時は思いもしなかった。
 ……もっとも、名字は普通なのに下の名前が『修羅』だなんて、そこはエキセントリックだなとは思っていたけれども。

 それから色々とあって――彼女の本性だとか仕事のことを知って、青春時代に大冒険を経て――今の関係に落ち着いた。

 ちなみに、修羅は同姓からすこぶる人気があるし、2人の会話もこんな調子なので、周囲の女子からは「恋仲なのでは?」と疑われて嫌がらせを受けることも多かったが、お互いにそういった感情は一切ない。

 背中を預け合える戦友、というのが一番しっくり来る。

「くれぐれも蓮さんたちのことお願いしますね」
『…………』
「修羅?」
『マスター遠野、ね。……ボク、本当に必要かな?』

 含みのある言い方だ。
 
『ダンジョンを出たあと、ボクは姿を隠して彼らのあとを付いていった。気配も消してね。だけど彼、ボクの居る位置を正確に察知していたんだ――』

 ふふっ、と自嘲気味な声。

『正直、自信なくしちゃったよ……。気配を完全に消しすぎたかな? おそらく、その不自然さを見抜かれたんだろうね。……彼、いったい何者なんだい?』
「企業秘密です」

 本当は修羅には伝えても支障はないのだが、珍しく本気で落ち込んでいる様子が面白くて、つい意地悪をしたくなってしまう。

『ダンジョン内ならともかく、外の世界でもここまでとは思っていなかった。彼は素人がどうこうできる相手じゃないよ。警備なんて必要なさそうだ。――いつか、手合わせ願いたいくらいだね』
「修羅? いくら貴女でも、蓮さんに危害を加えたら許しませんよ?」
『くくっ、もちろん。そんな気はないよ。マスター遠野とサキを同時に敵になんて回したくない。マスター柊にも嫌われたくないしね』

 そう言いながらも、蓮と戦いたくてウズウズしているのが声からも伝わってくる。

 ――修羅にここまで言わせるなんて。
 やはり蓮という少年は人を惹きつける何かを持っているのだと改めて確信する。

「何を考えてもいいですけど、警備はきちんとしてくださいね? いくら蓮さんでも盗撮盗聴のたぐいを全て防げるわけじゃないし、結乃さんが1人になるタイミングでは貴女が頼りなんですから」

 彼女は、蓮のボディーガードというより結乃のボディーガードであり、物理的に防ぎにくい危険から2人を守るのが主な任務だ。

 常識で考えると、配信者を守るために修羅を配置するなんて過剰戦力もいいところなのだが――衛藤にとっては妥当なラインだ。

『抜かりなく。ボクのプライドと、サキからの厚い信頼に賭けて、ね』
「はいはい」

 ウィンクでもしてそうな修羅の軽口を、衛藤はキーボードを叩きながら軽く流す。

『でもサキ、いいのかい?』
「なにがです?」
『マスター遠野にご執心なのに、マスター柊との仲を応援できる?』
「? 当たり前じゃないですか」

 まさに愚問。
 衛藤の辞書に、『同担《どうたん》拒否』などという言葉はないのだから。

「蓮さんの幸せに繋がるなら私は何だってしますよ。蓮さんと結乃さん、どう見たって相思相愛でしょう? 応援するに決まってるじゃないですか」

 話すうちに気持ちが乗ってくる。

「――そして、全人類は蓮さんのことを知るべきだし、魅力に気づくべきです! 人類皆兄弟……いいえ、皆姉弟きょうだいになるべきなんです!! 蓮さんは戦いに強いというだけじゃなくて、あんな過去があるのに人に優しくできて、自分のことなんて顧《かえり》みなくて、なんだかんだ言いながら私たちスタッフのことも考えてくれてて――でも本当は寂しがり屋さんで、無愛想なのは感情の表し方を知らないだけだし、そんな蓮さんが結乃さんの前では抑え切れずに感情が溢れ出すのがもう尊くて尊くて……!!」

『サキ、早口早口』

 電話口の修羅にたしなめられる。

「う。いいじゃないですか、たまには……」
『たまに?』

 声音だけで、修羅が肩をすくめて笑う様子が目に浮かぶ。

『サキにそこまで言わせるマスター遠野……ますます気になって来たよ』
「修羅も、蓮さんを推してみませんか?」
『それ布教ってやつかい?……うん、やってみようかな』

 意外と素直に乗ってきた。
 仕事以外のことには滅多に興味を示さない彼女が。

『まずは観察から始めてみるよ。くくっ。まさか、ボクが男の尻を追いかけることになるなんてね。推し活か……初挑戦だ。ワクワクするね』

 電話の向こうで修羅は、今度は心底たのしそうに笑っていた。

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