最年少ダンジョン配信者の僕が、JKお姉さんと同棲カップル配信をはじめたから

タイフーンの目

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第3章 配信でイチャついていいんですか?

第27話 カップル配信③

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 水魔法を応用した【スタンスティール】。
 それを見た結乃とリスナーは、そろって疑問符を投げかけてくる。

「ええっ――!? 今の、どうやって」

<チャット>
・いやホンマにそれ!
・なにが??
・水魔法使ったのはわかるが…
・蓮くん師匠、教えて!!

 結乃とリスナーに問われた内容を――今の一連の動作を説明すると、右手を濡らした結乃と、リスナーたちがそろって驚愕の声をあげる。

・うっそだろ!?!?
・水魔法でこんなの初めて見たが!?
・どーいう精度だよww
・これ、ダメージ与えないって点でむしろ上位技じゃん
・でも意味ある?
・雷が効かない敵にはいいよね
・つか蓮くん、水魔法も使えるんだ
◎勉強になりました!練習してみます!
・くそ、俺もクレカあればギフチャ投げるのに…!
・ワイ水属性勢、歓喜

「あのさ、蓮くんもしかして……」

 結乃が戦慄したふうに聞いてくる。

「水以外もできるの? 風とか、土とか」
「え、うん。炎はちょっと別の方法になるけど……だいたいできる。でも使うのはやっぱり雷が多いかな、手っ取り早いし」

 答えつつ、掌の上でいくつかの属性を披露して見せる。

「…………っ!?」

・全属性マスターなん!?
・待って理解が追いつかないんだけど
・はえー、それじゃ俺でもスティール使えるかな?
・くっそムズいぞこれ
・一瞬すぎるんよ
・地味スキルとか言ってたやつ誰だよ
・スキルは地味なんだよ、蓮くんがおかしいんだ

 敵の戦力を削ぎつつ、最小限の力で倒す。多様な属性の魔法が使えるようになったのは……そうならざるを得なかったのは、あらゆる種類の、あらゆる属性の敵と戦って来たからだ。

「ねえ蓮くん、炎の【スタンスティール】も見てみたいな」
「……それは、ダメ」
「?」
「炎は剣を熱して手放させるやつだから……」
「うん?」
「……結乃に熱い思いさせるし、火傷させるから。痛覚遮断もあるしキズ薬も買ったけど……結乃にそういうことするのは、嫌だ」
「蓮くん――」

 結乃は頬を赤らめて、蓮のことを見つめてくる。

「蓮くん、優しいよね」
「い、いや別に……」
「ありがと」
「うん……」

・こいつらw
・隙あらばイチャつくなww
・披露宴はいつですか?
◎ご祝儀
・分かった、これレッスンという名のデートだな?w
・師弟プレイってことかぁww
・おいおいカップル配信かよ!? あ、カップル配信だったわ
・出会ってすぐなのに何でそんな雰囲気なんだよ?w
・やっぱ前からの知り合い?

「あー……」

 チャットの反応に、結乃と顔を見合わせる。

「やっぱり、言ったほうがいいかな?」
「……かも」

・なんだなんだ?
・まだ何かあるのか?

「私たち実は……一緒に住んでて」

・ハァ!?!?
・急展開www
・な、なんだってー!?!?

「学校の寮なんだけど。同じお部屋で……」

・うぇえええええええええ!?
・同棲中かよ!
・きゃあああああああ
・蓮、お前……(血涙)
◎今度こそ脳が破壊されました。でも2人を応援しています。ゆのちゃん、蓮くんをよろしく。
・毎日イチャつけるのかよ、羨ましすぎんだろ!

 この告白は事務所とも打ち合わせ済みだ。顔と名前をさらして配信している以上、住所もバレるのは時間の問題だ。いくらセキュリティを固めたとしてもそれは避けられない。

 ならば、あとから暴露されて白状するより先手を打っておくべきだろう、との結論に至ったのだ。


 ――とはいえ、さすがにチャット欄は収集が付かなくなってきた。結乃も、どのコメントを拾うべきか迷っている。

《蓮さん、結乃さん――》

 通信が入った。マネージャーの衛藤だ。今日は別の仕事があったので蓮たちより遅れて1階層に到着しており、配信の途中からサポートに入っていた。

《だいたい予想通りの反応ですね。ここは、この勢いのまま配信を終了すべきかもしれません。あとは配信ではなく、文章で正式に伝えるのがベターでしょう》

 さすがに冷静だ。同じ音声が伝わっている結乃とアイコンタクトを交わすが、彼女も異存はなさそうだ。

「えっと、それじゃあ今日はこのくらいで――」

 と、結乃が締めくくろうとしたその時。
 蓮は、ふいに不穏な気配を察知した。

「――結乃っ!」
「えっ!?」

 グイッと手を引っ張る。直後、結乃の立っていた位置にボトリと粘性の高い液体が落ちてきた。

「天井!?」
「何かいる――」

 薄暗いダンジョンの天井付近がざわざわと揺れたかと思うと、今度は大きな塊が落下してベシャリ、と地面で音を立てた。

 それはイノシシほどの大きさをしていたが、フォルムはまったく異なる。たとえるなら――そう、木の根をひっくり返したような形状。茶色く、ぬめった体表。

・うおおおお!?
・ビビった!
・おっとこいつは
・レアモンスターきた!
・撮《と》れ高《だか》さんだ!
・撮れ高触手先生!? 撮れ高触手先生じゃないか!

 正式名称――【グリムテンタクル】。

 無数の触手が特徴で、戦闘能力は特に高くないのだが、迷宮の隅に隠れ潜んでいるため滅多に遭遇することのないレアモンスターだ。

 シルエットは反転させた切り株だが、根に当たる部分は伸縮自在の触手になっていて、もちろんその表面もヌルヌルとした体液で覆われている。

 ……ちなみに、『女子が選ぶ嫌いなモンスター』で10年連続№1を獲得している。

 見た目の気持ち悪さだけでなく、その触手で人間を絡め取って弄ぶ習性があることから敬遠されているのだが――それが配信では、ときに『撮れ高』になることもある。

 リスナーたちがはしゃいでいるのはそのためだ。

・ぐへへ
・撮れ高先生×ゆのちゃんってコト……!?
・オラ、ワクワクが止まらねぇぞ
・ゆのちゃん逃げてー!
・触手ー! がんばえー!
・応援すなww

 悪ノリするチャット欄と、蠢く触手モンスター。

「グシュルルルルル……ッ!」

 胴体の中央にある大きな口が、唾液と腐臭を垂れ流し、触手の先端はなぜか結乃のほうを向く。

・さっすが撮れ高触手先生、わかってる!
・なんでコイツ、いつも女ばっか狙うんだろうな?w
・異世界転生したお前ら説
・ドロドロになるゆのちゃん……あると思います!!
・あ
・おい待てっておまえら
・蓮くんさんを煽るんじゃない!


「…………」
「ッッグシュゥウウウ、じゅる、ジュルっ……!」

 蓮が結乃をかばうように立ちはだかると、グリムテンタクルも触手をざわめかせて威嚇する。
 
 ……もしも、この触手が結乃の手足に絡みついたら。
 この汚らしい粘液が衣服や肌を濡らしたら。紫色のぶ厚い舌が、結乃の顔を舐め回したら。嫌がる結乃を、この化け物が嬲ったならば――


「――――――――ッッッ!」

 蓮の怒りが、一瞬で頂点にまで達する。
 だがその激情とは対照的に、顔は無表情になり、全身は脱力する。手にしていた剣が石畳の床に落ちて、ガランと音を立てる。

・やっべ、蓮くん我を失ってない!?
・ブチ切れモードきちゃああああああ
・剣なし?
・待って蓮くん、先生だけは勘弁してくれ!もっと見たいんだ!
・やっちゃえ蓮くん!!
・セクハラモンスターとか討伐しちゃえ!


「結乃に触れるな――」

 ゆらり、と、端《はた》から見れば無防備にモンスターへと一歩を踏み出す蓮。だが彼の全身には、もっとも得意とする属性――重力魔法がいつでも発動できる状態で充満している。

 たんっ、と軽く石畳を蹴ると、重力操作された蓮の体が不自然に宙に舞い、グリムテンタクルを見下ろす高さに。

「グジュルルルルッッ!」

 邪魔者を排除しようと、不気味な触手が蓮に殺到する。が、蓮のほうが明らかに早かった。

 両の拳を握る。照準を合わせる。
 狙うのは――すべて。敵のすべて。


「スキル――――」


 圧殺。滅殺。悉《ことごと》くを排除する。


「――――【百の拳の巨鬼神ヘカトンケイル】」


 重力魔法を圧縮させた拳をモンスターへと叩きつける。一発や二発では済まない。十を超えても、二十を、三十を超えてもまだ止《や》まない。その一撃一撃が、オウガ系のモンスターすら瞬殺する威力でありながら。

「グジュッ!? ゴッ、…………――ッッッ!?!?」

 グリムテンタクルの断末魔はほんの一瞬だった。刹那のあとには叩き潰され、ただの肉塊に。その次の瞬間には、拳と床にすり潰されて肉片すら残らない。

・えええええええぇえ!?
・先生ぇええええええええ!?!?
・もう触手の1本すら…!
・ヘカトンケイル?
・ユニークスキルか
・床壊れるって!
・ダンジョンの床、削れてない!?
・外壁と同じなんだろ、なんで崩れるんだよ!?

 重力魔法独特の黒い閃光が、幾つもの落雷のように降り注ぎ、その黒雷は迷宮の床を叩いて轟音をあげる。

・はわわわわわ!?
・もうやめて! ダンジョンのHPはゼロよ!?
・オレらのHPもゼロだよ!
・跡形もなさすぎぃ!!
・こんなレベルのモンスターに使うスキルじゃないだろww
・運営さん! 蓮くんが2階層ぶっ壊しそうです!
・俺たちはこんな化け物を煽ってたのか…

 百に達する鉄槌を振り下ろしてから、ようやく蓮は着地した。もはや、そこにいた痕跡すら残っていない、グリムテンタクルのいた場所へと。

「…………はぁ」

・ため息だけ!?
・また息ひとつ切れてないんですが!?
・ダンジョンの床が壊れるの初めて見た
・地味とか言ってごめんなさい、凄すぎました……
・謝っとけ謝っとけ
・ゆのちゃんにセクハラしたらアカンな、すり潰されるで
・これ、ゆのちゃん引いてない?大丈夫?
・あ、やばいかも……
・え

 蓮が振り返ると、結乃は怯えたような顔で青ざめていた。

「れ、蓮くん……、今の……」

 声が震えている。
 まるで、恐ろしいものを眼前にしたかのように。

 彼女は、たたっ、と駆け寄って来たかと思うと蓮の手を取って――

「大丈夫だった!? 手、痛くない? あんなに激しかったもんね! 湿布《しっぷ》いる? 私の水魔法で冷やそっか!?」

・そっち!?!?
・そっちの心配!?
・うっそだろww

「結乃は? あのネバネバ、当たってないよね」
「うん。蓮くんが守ってくれたから……蓮くんって、ほんと優しいよね」

・もうええてw
・ダメだこの2人もう手遅れだ!w
・これが『れんゆの』、か……(震)
・色んな意味で最強だなこいつらww
・私らの入る隙間ないねコレw
・それはそうw

 こうして無事(?)、蓮と結乃のカップル初配信は終了した。


 
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