最年少ダンジョン配信者の僕が、JKお姉さんと同棲カップル配信をはじめたから

タイフーンの目

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第3章 配信でイチャついていいんですか?

第26話 カップル配信②

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 結乃になだめられ、蓮も落ち着いた。を見つけると暴走気味になってしまう。そんな自分を抑えてくれる存在がいるのはありがたい。

 ……だがチャット欄は、すでに別の話題で盛り上がりを見せていた。

<チャット>
・さっき「ゆの」って呼んでたよね?
・ゆの呼びなんですか?
・もうそういう関係……ゴクリ
・蓮くん意外と亭主関白か?
・配信用の設定だろ

 そう指摘するコメントを、結乃が拾う。

「私が頼んだんです。『ゆの』って呼んで欲しいって。配信用とかでもなくて……えっと、私が距離を縮めたくて、蓮くんにお願いして」

・ほうほう?
・あらまあ
・もうキスしたんですか!?
・『蓮×ゆの』じゃなくて『ゆの×蓮』だったのね! 公式アナウンス助かります!
・ゆの呼び刺さるわ~

「キスはですね。――そうだ、そろそろレッスンお願いしてもいいですか? 蓮くん師匠」
「ああ、うん」

・レッスンって、戦闘レッスンか
・そういやそうだったw
・雑談枠かと錯覚してたぜw
・イチャイチャ雑談枠な
・それも需要あるある
・ゆのちゃん、今さらっと……
・蓮くんのレッスン楽しみ!

「なにを教えてくれますか、蓮くん師匠?」
「……それじゃ、スキルを」
「スキル? いきなりいいの?」

 ダンジョンでは、武器やスキルによる攻撃や、魔法による攻撃に加え、それらを組み合わせた必殺技を【スキル】と呼んでいる。広く伝わっている汎用性の高いスキルから、開発した本人しか扱えない尖ったユニークスキルまで様々だ。

「剣とか魔法を教えてもいいけど、時間かかるから。……学校でやってる?」
「うん。探索科の授業で。練習用の武器を使ってやってるよ。魔力はダンジョンの中でしか鍛えられないけど――」

 リスナーも知っていることを、結乃はあえて口にしているようだ。トークの流れを作ってくれるので、蓮も説明しやすい。

「――このあいだ蓮くんに助けてもらった日も。春休みだったけど学校の特別実習に参加してたんだ」
「どういう実習?」
「ダンジョン探索の初歩と、魔法の基礎トレーニングだね」
「そういうの、時間かけるしかないし。配信でやっても地味かなって」

・確かに
・ゆのちゃんのトレーニング姿なら…アリか
・汗だくになる女子高生!?
・蓮くんにしごかれるゆのちゃんとか最高やん
・基礎トレでおっぱい揺れますか?


「…………」


・あっ、また蓮くんがw
・目が据わってるって!
・おまえらそのくらいにしとけww
・わたし、蓮くんに睨まれるとゾクゾクするようになってきた……これが恋?
・それは性癖や

「……まあだから、学校で教えてもらってないスキルの練習がいいかなって」
「私にできるかな? どういうスキル?」
「【スタンスティール】、とか」

・お、初歩スキルやね
・スタンスティールか
・しょぼスキル
・地味なやつじゃん
・渋い。マイナーなの選んできたな
・なにそれ、どんなやつ?
・雷魔法の応用で武器を奪うスキル
・それだけ?
・強い魔法とか使えないんですか?

「【スタンスティール】って、雷魔法で痺れさせて武器を奪うんだよね。聞いたことあるけど見たことないな」
「実演するのが早いかな。――結乃、この剣使って」

 蓮は腰にしていたブロードソードを抜いて結乃に渡す。

「これで僕に斬りかかってきて。片手持ちで、振り下ろす感じで」
「え? 蓮くんのこと斬れないよ」
「大丈夫。結乃の剣にやられることはないから」
「あっ、言ったね、蓮くん……!」

・ナチュラル煽リスト・蓮くん
・バトルになると強気だなw
・いやこれは自信だろ、普通に
・てかスムーズにしゃべれてる、ゆのちゃん効果か?

 結乃はぷくっとむくれて見せながら、剣を片手に構える。

 ちなみに、今日は2人とも配信者用のアラートはミュートにしてある。いくら互いに躱《かわ》し、寸止めするつもりでも、機械的に判定するアラートはそこまで汲み取ってくれない。レッスン中にあの音が鳴り続けたら集中できないからだ。

「いくよ――!」

 振り上げて、斬りかかってくる。当然ながら殺気は籠もっていないし、剣速も初心者のそれだ。だが剣筋はいい。学校で教わった通りの動きを実直に実践しているんだろう。

「――――」

 蓮は、斬撃に向かって一歩踏み出す。結乃の懐に入り、振り下ろされる右手の手首を、左の手刀で受け止め、ごく微弱な雷魔法を流し込む。

 柄を握る結乃の手が電流を受けて小さく痙攣する。その一瞬を逃さず――蓮は手首を回してスルリとブロードソードを奪うと、そのまま流れるような動きで結乃の胴体へと刃を振った。

 無論、寸止め。
 その気になれば致命の一撃だって与えられるが、天地がひっくり返ってもそんなことをするわけがない。

「これが【スタンスティール】」
「え? うそ……」

 結乃は目を白黒させる。

「止められたと思ったら……逆にやられてた……」

 信じられない、といった様子で自分の手元と、奪われた剣を交互に眺める。

「雷魔法、使ったんだ?」
「少しだけどね」

・おお、さすがにスムーズ!
・鮮やか
・これもスキルって呼ぶんか? 力尽くのような…
・立派なスキルやぞ、魔法と武術の合わせ技や
・雷魔法で痺れさせるからスタン
・使ってる配信者あんま見ないけどな

「蓮くん、もしかしてこの前のスタンピードのときも、これ」
「うん。ゴブリンの武器を奪うときに使ってた」

 力尽くで奪うより、こちらの方が早い。

「じゃあ……こうしたら、どう?」

 結乃はもう一度剣を受け取ると、今度は横薙ぎに振った。

 やることは変わらない。
 間合いを計り、相手に向かって踏み込み、武器を持つ手を狙って、今度は打ち払うようにして奪う――奪うと同時、すでに攻撃を仕掛けるのは、蓮の体に染みついた習慣のようなものだ。

「わ!? 強く握ってたのにあっさりだね。便利なスキル……なんでみんな使わないんだろ?」
「武器を持ってるモンスターにしか使えないから、じゃない?」

・やっぱ地味だから?
・配信映えしないもんね
・それは下手なやつの場合だろ、これだけ洗練されてたら見応えあるわ
・スローで見たいね
・アーカイブ視聴確定案件
・これをあの高速戦闘でやってたってマジ? 魔力の加減難しいだろ?

「――だってさ、蓮くん。使ってるのは弱い魔法だけど、やっぱり難しいのかな?」
「慣れれば簡単」

・上手い人が言うやーつw
・ベテランの「慣れればいい」は鬼なんよw
・つっても、蓮くん12歳やぞ?
・どんだけ修練したんだマジで

「じゃあ、慣れるまではどう?」

 チャットの疑問や不満を汲んで、結乃が代わりに質問する。

「……ん。それは……間合いを詰めるのが最初は難しい」
「攻撃してくる相手に向かっていくんだもんね」

・あーね
・敵の動きを見切らなきゃだしな
・つか、それができれば普通に攻撃した方が早いまである

「そっかぁ、確かに蓮くんくらい強ければ【スタンスティール】使わなくても倒せちゃうよね。なのに、どうしてこのスキルをよく使うの?」

 そう言われてみれば、あまり自分の戦い方について考える機会はなかった。なぜか、と問われたら――

「……このほうが、長く戦えるから」

 としか言いようがなかった。

 蓮の魔力だって無限じゃない。特に御殿場ダンジョンに囚われていたときは、どうにか出口を探す必要があった。モンスターの群れをどこまでも突き進んで行くには、能力の根源たる魔力を節約する必要があったのだ。

 蓮の事情を知っている結乃は、すぐに合点がいったようで、

「省エネで、武器も奪えて、敵を弱体化させられるから長く戦えて……ってこと?」
「うん、まあ」

・スタンピード戦もそうだったもんな
・継続戦闘が前提のスタイルってわけか
・あー、俺もこれ覚えよっかな
・長く潜りたい人にはいいね

「私も使えるようになるかな?」
「そのためのレッスンだし。……結乃の得意属性ってなに?」
「風魔法も適性あるけど、一番は水かな? 蓮くんは?」
「重力と炎」

 人にはそれぞれ、魔力の性質から得意な属性がある。魔法は、魔力を変質させて放出する技術だ。得意属性であるほど、精密なコントロールと強大な威力を手にしやすい。

「んじゃ、次は【スタンスティール】してみるから」
「え?」

・どういうことだ?
・水で?
・スタンスティールって雷魔法のスキルでしょ?

「はい、剣持って」
「う、うん」

 戸惑いつつも結乃は、最初と同じように振りかぶって斬撃を向けてくる。

 蓮の動作は同じ。

 違うのは、雷魔法の代わりに水魔法を使うこと。手刀で受け止め――結乃の掌と剣の柄のあいだに、魔法で水を発生させる。結乃の手は内側から膨れあがる水に圧されて、剣を放してしまう。

 ――ここまで、一呼吸もない間に。

「これが水の【スタンスティール】」

 奪った剣をヒュン、と振るうに併せて、水飛沫が弧を描いて舞った。


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