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第3章 配信でイチャついていいんですか?
第23話 撃退(後編)
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蓮がツーブロックの上級生を一撃のもとに下したのを見て、しかし鰐野《わにの》は、
「ギャハハ先輩エグいっす! さすがっ…………、あぇっ??」
何が起きたのかすら認識できていなかった。手を叩いて喜んでいた顔が、その間抜けな表情のまま固まる。
「え? あれ……っ?」
無様に地面に倒れているのは蓮ではなく自分の先輩だったと、そう理解するまで数秒を要していたが、ようやくその鈍った頭が回転し出したようだ。
「な、なにやってんだよお前!? は? なに? なにやって?」
……いや、大して回っていなかったらしい。驚くべきか、怒るべきか、恐れるべきか。その判断すら付かず、狼狽するばかりだ。
「うそっ、先輩どしたんですかっ? 鰐野、なにがっ?」
腹山《はらやま》も同様だ。蓮が殴られる決定的瞬間を撮影しようとスマホを構えていたのに、状況が飲み込めずにうろたえている。
唯一、
「こ、のッ、チビっ……!」
と、声を震わせながらも動いたのはひょろマッシュだったが、それは勇敢と呼ぶより、愚かと評すべきだろう。ケンカにはまったく不慣れなようで、不格好に両手を振り上げて蓮に掴みかかろうとしている。
無論、そんなものに捕らえられるはずもなく、最小限の動きで躱《かわ》して太ももに鋭い膝《ひざ》蹴りを入れる。
「う、ぁあアっ!?」
「さっきのお返し。……ん、アンタじゃなかったっけ? まあいいや」
長身の頭が下がったところに、横合いから顎《あご》を掌底で打ち抜く。ひょろマッシュも、それで倒れた。
「なっ……、っっ!? く、くるな、来るなよぉっっ!?」
もはや恐慌状態に陥っている鰐野に向けて、蓮は素早く間合いを詰める――だが、今にも泣き出しそうな鰐野はスルー。その横をすり抜けて、背後に隠れようとしていた腹山へと肉迫する。
「えッ――!? い、いやッッ!?」
腹山は咄嗟に頭をかばうような動きを見せるが、蓮の標的はもとよりそこではない。
回し蹴りを食らわせるのは、腹山の右腕。
「ぅぎゃっ、ぃいいいいっっ!?」
大げさな悲鳴をあげて、セーラー服の腹山は地面に倒れた。
「て、てめっ、女子を蹴るとか」
言いかけた鰐野が、蓮に視線を向けられるだけで青ざめる。
「いっ!? ひっ……」
「関係ある、それ? まあ一応、筋力差とかあるから手加減はしてるよ」
腹山は倒れた拍子に、セーラー服のスカートがめくれ上がり下着が丸見えになっているが、蓮は一顧《いっこ》だにしない――たとえばダンジョンで、裸体のゴブリンが床に転がっていたとして、興味を引かれることなんてあるだろうか。それと同じだ。
「目的はこっちだし」
蓮は、接触時に腹山から奪ったスマホを鰐野に見せつける。撮影中の録画を削除してから、ポイと腹山に投げて返す。
「ひッ!? ひぃいッッ!? ご、ごめんなさい、ごめんなさいィっ……!」
怯えきっている腹山は、蓮から放られた自分のスマホを、まるで爆弾でもあるかのように忌避してうずくまり、震えて泣いた。
「アンタらが言うように、こういうのバラまかれるの面倒だし。事務所の人の手を煩わせることになるから……。ある意味、アンタらの命を助けてやったんだよ」
こんなものがスタッフの目に留まって、その逆鱗に触れてしまったら、この同級生たちの心身にどんな危害が及ぶか……それを考えると、この蓮の反撃は生ぬるいくらいだ。
「でも。アンタらまた同じようなことしそうだし――、これ」
ポケットから自分のスマホを取り出す。腹山に呼び出されたタイミングから、念のため録音を開始していたスマホだ。
「一部始終が入ってるから。次やったらこれを出すことにするよ。……状況、わかった?」
「な、なんだよそれ、意味わかんねェよ! う、うぐ、くっそ、クソぉおおおおおっっ!」
恐怖と混乱で限界を超えてしまったのか、鰐野ががむしゃらに突進してきた。無様な特攻だったが、その勢いで蓮の手中にあったスマホを奪うことに成功した。
「は、はははッ、どうだよ! 俺が本気出したらこれくらい! いいか? これからずっとお前のことイジメてやるからな!? 今日で終わりとか思うなよ!? 俺が……、あっ?」
「はあ――」
蓮は、鰐野に向かってもう1台のスマホを見せつける。
「2台持ち。そっちは仕事用。両方で録音してるから」
イジメだと明言した鰐野の言葉すら、こちらのスマートフォンにはバッチリと記録されている。
「これ、改竄《かいざん》できない保存形式で録ってるから、あとで『編集された音声だ』とか喚《わめ》いても無駄だよ」
不埒者への対策は、やや過保護なマネージャーからいくつも仕込まれている。これはそのうちの1つだ。まさかこんなに早く出番がくるとは思っていなかったが。
「これからもやるって言うなら、そのときは警察に突き出すから。アンタらの犯罪行為を全部」
「……う、う、うぅッ」
鰐野はとうとう泣きべそを掻き始めてしまった。勝手にこちらを襲ってきておいて、何を今さらという感じだが。
だがそんな蓮にも、1つだけ誤算があった。
「う、ぉおおおおおっっ!」
最初に無力化したはずの上級生が意識を取り戻し、足をもつれさせながらも蓮に襲いかかってきた。
「へえ――」
上級生としての意地なのか、体力バカなのか、それとも蓮が加減を間違ったのか。なにしろ、ダンジョン外での戦いなんて初めてだ。鰐野が言うような『人間を壊す方法』とやらには馴染みがない。モンスターならいくらでも壊せるのだが。
――なんてことを考えていたのも悪かったのだろう。
捨て身の突進は難なく躱《かわ》し、上級生は地面に這いつくばる形になったのたが、その際に、男の指先が蓮のスマートフォンにかすって触れていた。
「――――」
プライベート用の。
結乃の連絡先が入ったスマートフォンに。
この男の指が触れた。
「おら鰐野っ! さっさとコイツのスマホ奪《と》れッッ!」
「ひっ、ひぐぅうんッ……!」
上級生から指示が飛び、鰐野はもはや泣きじゃくりながら意味もわからずに向かってくる。しかしそんな哀れな敵に対して、蓮はもう手加減をしなかった。
「…………」
鰐野のほうを見ることすらしない。四つん這いの上級生を見据えたまま――片手で鰐野の攻撃をいなし、全力で横腹を蹴り抜く。
「うごぼへッ――!?」
もんどり打って倒れる鰐野には一瞥《いちべつ》もくれず、蓮は上級生の肩口をつま先で蹴り飛ばし、仰向けに転がした。
「うっ――!?」
「……あのさ」
スマホを手に上級生を見下ろす。この男に触れられてしまったのは蓮の不覚だ。自分で自分に怒りを覚える。
……だから、これはただの八つ当たりだ。
「別に、殴られるのはどうでもいいんだけど。これに触らないでくれる?」
「な、なにをっ」
「訊《き》いてるんじゃない。宣告してるんだ。もし次これに触ったら――」
蓮は男の顔面の真上で、左足を振り上げ、靴底で照準を合わせる。
「ま、待て!? わ、悪かったって、俺が悪かっ――」
「…………」
「う、うぅっッ!?」
蓮はここに至って初めて、視線に殺気を籠めた。ツーブロックの上級生は、ようやく誰を相手にしているのかを悟った。世の中には、敵に回していい相手と、そうでない相手がいる。
「や、やめてっ……」
震えて情けない声を上げる男の顔面に向かって、蓮は思い切り左足を踏み降ろした。
「う、うぁあッッッ!?」
地面を揺らすかのような衝撃が、男の顔のすぐそばに落ちた。
「あ、あ、あ……」
「分かった?」
冷たく見下ろす蓮に、命拾いした上級生は両目に涙を溜め、かろうじてコクコクとうなずき、そのまままた意識を失った。
■ ■ ■
――後日。
「羽美《うみ》先生、お疲れさま」
「あ、お疲れさまです――」
「大変だったわね」
「はい。残念です……」
「まさか4月のうちに『転校』が決まるなんて、異例中の異例よね」
羽美が受け持つ1年2組から、一身上の都合による転校が2名も発生してしまった。鰐野という男子生徒と、腹山という女子生徒だ。
「……何かに悩んでいたんだとしたら、私が気づいてあげてれば」
「羽美先生のせいじゃないわよ。入学式含めて、たった2日でしょ? 無理よそんなの」
先輩教師のフォローは慰めでもあるだろうが、もっともな話でもある。
初日の振る舞いから『要注意かも』と目は付けていたが、3日目から不登校になり、そのまま接触もできないうちに転校が決まるなんて予想できるはずもない。
「他のクラスと、3年生にもカウンセリングに通ってる子もいるわ。小学生の頃からそのメンバーでつるんでたらしいから、何かの事件に巻き込まれたのかも」
「本人たちは親御さんにも何も話してくれないらしいですけどね……何を聞いても『自分が悪かった』ばかりで」
だからとにかく転校したいのだと、そう必死で訴えかけていたらしい。
「とはいえ、転校した2人には私たちにできることはもうないでしょ。あとは親御さんと、向こうの先生たちに任せるしか……羽美先生、引き継ぎまでしたんでしょ?」
先日転校先を訪れていき、あちらの教師には2人のことで分かることは伝えたつもりだ。
「貴女はそれより、残った生徒たちのことをよく見ててあげなさい」
「……そうですね」
いつまでも凹んでいて、他の生徒のことを疎かにするわけにはいかない。
「はい! 気を引き締め直します……!」
羽美は自分の頬を叩いて、1年2組の教室へ向かうのだった。
「ギャハハ先輩エグいっす! さすがっ…………、あぇっ??」
何が起きたのかすら認識できていなかった。手を叩いて喜んでいた顔が、その間抜けな表情のまま固まる。
「え? あれ……っ?」
無様に地面に倒れているのは蓮ではなく自分の先輩だったと、そう理解するまで数秒を要していたが、ようやくその鈍った頭が回転し出したようだ。
「な、なにやってんだよお前!? は? なに? なにやって?」
……いや、大して回っていなかったらしい。驚くべきか、怒るべきか、恐れるべきか。その判断すら付かず、狼狽するばかりだ。
「うそっ、先輩どしたんですかっ? 鰐野、なにがっ?」
腹山《はらやま》も同様だ。蓮が殴られる決定的瞬間を撮影しようとスマホを構えていたのに、状況が飲み込めずにうろたえている。
唯一、
「こ、のッ、チビっ……!」
と、声を震わせながらも動いたのはひょろマッシュだったが、それは勇敢と呼ぶより、愚かと評すべきだろう。ケンカにはまったく不慣れなようで、不格好に両手を振り上げて蓮に掴みかかろうとしている。
無論、そんなものに捕らえられるはずもなく、最小限の動きで躱《かわ》して太ももに鋭い膝《ひざ》蹴りを入れる。
「う、ぁあアっ!?」
「さっきのお返し。……ん、アンタじゃなかったっけ? まあいいや」
長身の頭が下がったところに、横合いから顎《あご》を掌底で打ち抜く。ひょろマッシュも、それで倒れた。
「なっ……、っっ!? く、くるな、来るなよぉっっ!?」
もはや恐慌状態に陥っている鰐野に向けて、蓮は素早く間合いを詰める――だが、今にも泣き出しそうな鰐野はスルー。その横をすり抜けて、背後に隠れようとしていた腹山へと肉迫する。
「えッ――!? い、いやッッ!?」
腹山は咄嗟に頭をかばうような動きを見せるが、蓮の標的はもとよりそこではない。
回し蹴りを食らわせるのは、腹山の右腕。
「ぅぎゃっ、ぃいいいいっっ!?」
大げさな悲鳴をあげて、セーラー服の腹山は地面に倒れた。
「て、てめっ、女子を蹴るとか」
言いかけた鰐野が、蓮に視線を向けられるだけで青ざめる。
「いっ!? ひっ……」
「関係ある、それ? まあ一応、筋力差とかあるから手加減はしてるよ」
腹山は倒れた拍子に、セーラー服のスカートがめくれ上がり下着が丸見えになっているが、蓮は一顧《いっこ》だにしない――たとえばダンジョンで、裸体のゴブリンが床に転がっていたとして、興味を引かれることなんてあるだろうか。それと同じだ。
「目的はこっちだし」
蓮は、接触時に腹山から奪ったスマホを鰐野に見せつける。撮影中の録画を削除してから、ポイと腹山に投げて返す。
「ひッ!? ひぃいッッ!? ご、ごめんなさい、ごめんなさいィっ……!」
怯えきっている腹山は、蓮から放られた自分のスマホを、まるで爆弾でもあるかのように忌避してうずくまり、震えて泣いた。
「アンタらが言うように、こういうのバラまかれるの面倒だし。事務所の人の手を煩わせることになるから……。ある意味、アンタらの命を助けてやったんだよ」
こんなものがスタッフの目に留まって、その逆鱗に触れてしまったら、この同級生たちの心身にどんな危害が及ぶか……それを考えると、この蓮の反撃は生ぬるいくらいだ。
「でも。アンタらまた同じようなことしそうだし――、これ」
ポケットから自分のスマホを取り出す。腹山に呼び出されたタイミングから、念のため録音を開始していたスマホだ。
「一部始終が入ってるから。次やったらこれを出すことにするよ。……状況、わかった?」
「な、なんだよそれ、意味わかんねェよ! う、うぐ、くっそ、クソぉおおおおおっっ!」
恐怖と混乱で限界を超えてしまったのか、鰐野ががむしゃらに突進してきた。無様な特攻だったが、その勢いで蓮の手中にあったスマホを奪うことに成功した。
「は、はははッ、どうだよ! 俺が本気出したらこれくらい! いいか? これからずっとお前のことイジメてやるからな!? 今日で終わりとか思うなよ!? 俺が……、あっ?」
「はあ――」
蓮は、鰐野に向かってもう1台のスマホを見せつける。
「2台持ち。そっちは仕事用。両方で録音してるから」
イジメだと明言した鰐野の言葉すら、こちらのスマートフォンにはバッチリと記録されている。
「これ、改竄《かいざん》できない保存形式で録ってるから、あとで『編集された音声だ』とか喚《わめ》いても無駄だよ」
不埒者への対策は、やや過保護なマネージャーからいくつも仕込まれている。これはそのうちの1つだ。まさかこんなに早く出番がくるとは思っていなかったが。
「これからもやるって言うなら、そのときは警察に突き出すから。アンタらの犯罪行為を全部」
「……う、う、うぅッ」
鰐野はとうとう泣きべそを掻き始めてしまった。勝手にこちらを襲ってきておいて、何を今さらという感じだが。
だがそんな蓮にも、1つだけ誤算があった。
「う、ぉおおおおおっっ!」
最初に無力化したはずの上級生が意識を取り戻し、足をもつれさせながらも蓮に襲いかかってきた。
「へえ――」
上級生としての意地なのか、体力バカなのか、それとも蓮が加減を間違ったのか。なにしろ、ダンジョン外での戦いなんて初めてだ。鰐野が言うような『人間を壊す方法』とやらには馴染みがない。モンスターならいくらでも壊せるのだが。
――なんてことを考えていたのも悪かったのだろう。
捨て身の突進は難なく躱《かわ》し、上級生は地面に這いつくばる形になったのたが、その際に、男の指先が蓮のスマートフォンにかすって触れていた。
「――――」
プライベート用の。
結乃の連絡先が入ったスマートフォンに。
この男の指が触れた。
「おら鰐野っ! さっさとコイツのスマホ奪《と》れッッ!」
「ひっ、ひぐぅうんッ……!」
上級生から指示が飛び、鰐野はもはや泣きじゃくりながら意味もわからずに向かってくる。しかしそんな哀れな敵に対して、蓮はもう手加減をしなかった。
「…………」
鰐野のほうを見ることすらしない。四つん這いの上級生を見据えたまま――片手で鰐野の攻撃をいなし、全力で横腹を蹴り抜く。
「うごぼへッ――!?」
もんどり打って倒れる鰐野には一瞥《いちべつ》もくれず、蓮は上級生の肩口をつま先で蹴り飛ばし、仰向けに転がした。
「うっ――!?」
「……あのさ」
スマホを手に上級生を見下ろす。この男に触れられてしまったのは蓮の不覚だ。自分で自分に怒りを覚える。
……だから、これはただの八つ当たりだ。
「別に、殴られるのはどうでもいいんだけど。これに触らないでくれる?」
「な、なにをっ」
「訊《き》いてるんじゃない。宣告してるんだ。もし次これに触ったら――」
蓮は男の顔面の真上で、左足を振り上げ、靴底で照準を合わせる。
「ま、待て!? わ、悪かったって、俺が悪かっ――」
「…………」
「う、うぅっッ!?」
蓮はここに至って初めて、視線に殺気を籠めた。ツーブロックの上級生は、ようやく誰を相手にしているのかを悟った。世の中には、敵に回していい相手と、そうでない相手がいる。
「や、やめてっ……」
震えて情けない声を上げる男の顔面に向かって、蓮は思い切り左足を踏み降ろした。
「う、うぁあッッッ!?」
地面を揺らすかのような衝撃が、男の顔のすぐそばに落ちた。
「あ、あ、あ……」
「分かった?」
冷たく見下ろす蓮に、命拾いした上級生は両目に涙を溜め、かろうじてコクコクとうなずき、そのまままた意識を失った。
■ ■ ■
――後日。
「羽美《うみ》先生、お疲れさま」
「あ、お疲れさまです――」
「大変だったわね」
「はい。残念です……」
「まさか4月のうちに『転校』が決まるなんて、異例中の異例よね」
羽美が受け持つ1年2組から、一身上の都合による転校が2名も発生してしまった。鰐野という男子生徒と、腹山という女子生徒だ。
「……何かに悩んでいたんだとしたら、私が気づいてあげてれば」
「羽美先生のせいじゃないわよ。入学式含めて、たった2日でしょ? 無理よそんなの」
先輩教師のフォローは慰めでもあるだろうが、もっともな話でもある。
初日の振る舞いから『要注意かも』と目は付けていたが、3日目から不登校になり、そのまま接触もできないうちに転校が決まるなんて予想できるはずもない。
「他のクラスと、3年生にもカウンセリングに通ってる子もいるわ。小学生の頃からそのメンバーでつるんでたらしいから、何かの事件に巻き込まれたのかも」
「本人たちは親御さんにも何も話してくれないらしいですけどね……何を聞いても『自分が悪かった』ばかりで」
だからとにかく転校したいのだと、そう必死で訴えかけていたらしい。
「とはいえ、転校した2人には私たちにできることはもうないでしょ。あとは親御さんと、向こうの先生たちに任せるしか……羽美先生、引き継ぎまでしたんでしょ?」
先日転校先を訪れていき、あちらの教師には2人のことで分かることは伝えたつもりだ。
「貴女はそれより、残った生徒たちのことをよく見ててあげなさい」
「……そうですね」
いつまでも凹んでいて、他の生徒のことを疎かにするわけにはいかない。
「はい! 気を引き締め直します……!」
羽美は自分の頬を叩いて、1年2組の教室へ向かうのだった。
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