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第2章 トラブル対応したら海外までバズりました
第16話 弟子
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蓮はシャワーを終えるとざっくりと髪を乾かし、食堂へと下りていった。
結乃は、夕飯の配膳係として先に食堂へ行っている。あんなことがあった後だけに顔を合わせるのが気恥ずかしいが、そうも言っていられない。
しかし階段を下りるや、他の女子たちに捕まってしまった。
「あー! 今日の配信見たよ!」
「凄かった!」
「ウチらの先生より絶対強いよね」
「カッコ良かった!」
「ねぇ、今度戦い方教えてよ」
「食堂の場所覚えてる? こっちこっち」
(に、逃げられない……!)
お姉さんに囲まれたまま食堂へ連行される。
トレイを持って配膳の列に並んだところで、
「やっほー中1くん。結乃は? ああ、今日は配膳係だっけ」
結乃の友人、カナミだ。
ツインテールの黒髪ギャル。結乃に負けず劣らず距離感が近いうえに、タイプは違うが美少女だ。
「おー、いたいた」
カウンターの向こうに結乃を見つけ、カナミが手を振った。結乃は部屋着にエプロン姿。バンダナキャップで髪をまとめている。
(可愛い……)
と、素直に感じる。
けれど直視できない。ついさっきまで、この結乃と部屋で抱き合っていたのだ。その感覚がまだ体に残っていて、意識せずにはいられない。
「あ――」
シャモジを手にしていた結乃もこちらを見るが……ふい、と照れたように目をそらしてしまう。
そんな蓮たちの様子にカナミが、
「なに、早速ケンカでもした? 結乃だめだぞ、年上なんだから優しくしないと~」
「そ、そんなんじゃ……」
「もっと男の扱い上手くならないともったいない……、んん?」
言いかけて、カナミは2人の顔をまじまじと観察する。そして自分の思い違いに気づき、
「……え? これもしかして……ヤったあとの空気? 2日目にして!?」
「やってないよ!?」
「な、何を――!?」
これはたぶん、周囲に聞かれてはマズい会話だ。
結乃も慌てて、
「れ、蓮くんお椀貸して? は、はい、たくさん食べてね」
大盛りに白米を盛ってくれた。
いそいそと他のおかずもトレイに乗せて、蓮はさっさと席に着く。
すると朝と同じようにあっという間に人が集まってくる。
カナミは、まるで当然かのように左隣に。他の女子たちも、こぞって同じテーブルに着席してくるが、示し合わせたように右隣だけは空席のまま。結乃のために空けているんだろうか。
特に今日の配信を見たお姉さんたちが多かったようで、まだ見ていないという同級生に蓮のアーカイブをオススメしていた。
……顔見知りに見られるのはかなり恥ずかしいが、事務所からも報酬をもらう配信者としては、一応アピールはしておかなければ。
「あ、……よ、良かったらチャンネル登録を」
「えー! もちろんしたよー!」
「わー配信者っぽーい」
「もう配信ぜんぶ追うって決めてるし」
「人気者なんですよ、遠野くん」
「ど、ども……」
と控えめに謝辞を述べると、どういうわけかキャーという歓声が沸く。
そんな会話を交わしつつも、気になるのは結乃のことだ。
向こうを見ると、配膳は済んだようでエプロンを外し、バンダナキャップを取って髪を整えている。遠目に見るその姿からも、視線を外せない。
「……中1くん」
「ふわっ――!?」
突然耳元で囁かれてビクっとする。
カナミの気配を察知できないのは、少なくとも彼女を『敵』だとは認識していないからだが、今後は多少気をつけたほうがいいかもしれない。心臓がもたない。
「ああ見えて結乃、彼氏いたことないしフォローしてやってよ。中1くん、年下だけどいざって時は頼りになるみたいだし」
「は、はあ」
なにをどうフォローすればいいのか皆目見当がつかないが。
「頼りになるかは――」
「結乃が言ってたよー。昨日からずっと、学校でもキミの話を嬉しそうにさ」
「そ、そう……」
「あの子が自分から男の話をするとか、すごい成長だよマジで。めちゃくちゃモテて告白されまくるくせに、まともに男友達すらいないから。心配になるレベル」
そんな感じはなかったが。
「むしろグイグイと攻めていくタイプかと」
「はー、キミの前ではそうかー。ほー」
「なに話してるのカナミ?」
気づけば背後に結乃が立っていた。
ちょっとだけ、自分のことを避けて遠くに座るかもと心配していたが、結乃はごく自然と隣に座ってきた。
――かと思うと、ふいに耳打ちをしてきた。ごく至近距離で。
(さっきのこと……2人だけの秘密だからね? いいかな?)
(~~~~っ、……!)
耳朶《じだ》をくすぐる優しい声音に、蓮は無言でコクコクとうなずいた。
■ ■ ■
「ふー、美味しかったね」
部屋に戻った結乃は、すっかり普段通りだった。……まあ、『普段』と評せるほど長い時間を過ごしてはいないのだが、リラックスしているのは間違いないみたいだ。
「味は、うん、たぶん……」
まだ場に慣れなさすぎて、食事を味わう余裕がない。
結乃が振り返ってたずねてくる。
「私のよそったご飯が、一番美味しかった?」
「う、うん」
からかうような視線。イエスしか選択肢のない問いかけだ。
今度こそ自分のベッドに腰掛け、蓮もひと息つく。結乃は、棚上げしていたダンボールの荷物を開封していた。
(……良かった)
自身の生い立ちを告白すること自体は、蓮にとってこれまでは心重いことではなかった。けれどそれは、聞かせる相手が『仕事』だったからだ。
ダンジョンから脱出した際に保護された国の機関で。それから、D財団の施設で職員やカウンセラーを相手に。
ちょっと特殊な経歴に疑いをかけてくる者もいた。恐ろしい目に遭った子どもが、現実と妄想の違いを認識できなくなったのだ――と。
施設の職員は基本的には性根の優しい人間たちで、同情して大泣きする者もいた。とはいえ中には、表面上は平静を装っていても、まるで恐ろしいモノを見るかのような目色に変わる者もいた。それも無理からぬことだろう。
心理カウンセラーはさすがに心得ていて、ほどよい距離感を保ってくれてはいたが、それこそまさに彼らの業務の一環にすぎない。
――まだ相手を信用できず『敵』だと認識していた蓮は、そういった態度をつぶさに観察していた。
そのうち、『仕事』でしかない彼らにどう思われようと気にしないことにした。
けれど今日は……結乃が、どんな反応を見せるのか不安に感じていた。
なぜだろう。彼女が蓮と同室しているのは、他に空き部屋がないから。ただの同居人というだけの、それだけの関係性だ。なのに。
(――拒絶されたくない)
なぜこんなふうに思うのか、蓮自身もまだよくわかっていない。
話を聞いた結乃はさすがに驚いていたが、自然と受け入れてくれた。
化け物かもしれない自分のことを恐れも、憐れみもせずに、壊れてしまっている蓮の心を無理に慰めようともせずに。
それを今は、ありがたく思う。
理由はわからないままだけど、それでいいんだと思うことにした。
「そうだ、蓮くん」
結乃が、思いついたようにこちらを見る。
「私もさ、教えてもらっていい?」
「? なにを」
「えっとね……連絡先」
チラリ、と自分のスマホを見せてくる。
「大事な連絡は沙和子さんにするだろうし、それで十分だと思うけど……私も一応同居人だしさ。私が遅くなるときも連絡できるし。ほら、そしたら蓮くんも、ゆっくり1人でお風呂に入れるでしょ?」
「全然いいけど」
これから配信業が忙しくなれば、夜にはならなくとも遅くなることはあるだろう。緊張せずに1人で過ごせるのも、それはそれで貴重だろうし。
「――じゃあ」
蓮は机に置いた自分のリュックを開けて、スマホを取り出す。
「あれ?」
結乃が首をかしげる。
「さっき見たのと違うような……そんな機種だっけ?」
「ああこれ、プライベート用だから」
「?」
「さっきのは業務用、事務所に持たされてるやつ」
もう1台のスマホを見せる。
アイビスが所属する配信者に配っている業務用のスマートフォンだ。マネージャーからの連絡もこちらに来るし、沙和子にもこのスマホの連絡先を教えてある。
もっとも、プライベート用と言っても連絡先はまったく登録されていないが。
「プライベートか……そっかぁ」
指摘されて気づいた。厚かましかっただろうか? と不安になったが、
「はい交換、交換」
結乃は見るからに嬉しそうだ。メッセージアプリの相互フォローを終えた自身のスマホ画面を眺めてから、
「ありがと。いっぱい連絡してね蓮くん」
「……き、気が向いたら」
言われて、蓮はスマホをいつも以上に丁寧に机の上に置いた。
「あ、あのさ、結乃さんが……」
そして少しだけ、距離を詰めてみようと勇気を振り絞る。今夜は、なぜかそんな気分だった。
「結乃が、良かったら」
「――――! いいよ、なに?」
「たまに戦闘を教えるとか……してもいいけど。強くなりたいって言ってたし……」
結乃の目指す理想像が変わっていないのなら、誰かを助けるための強さは必要だ。彼女がいま持っている強さとは別種の、蓮の得意分野である戦闘能力が。
「え、ダンジョンで? いいの!?」
「事務所にも聞いてみるけど――」
許可さえ下りれば仕事の合間で、結乃もダンジョンに潜っているタイミングなら可能だろう。
「……嫌ならいいけど」
「嫌なわけないよ! 蓮くんに教えてもらえるなら、最高だよ!」
結乃が子どもっぽく目を輝かす。
きっと、配信画面にかじりついて興奮していた幼少期もこんな感じだったんだろう。
「じゃあ同居人で、プライベートで、師匠と弟子だね。ふふ、色々増えてくの、嬉しいね」
結乃が笑顔を見せてくれると、景色が輝いて、胸の中がじんわりと温かくなっていくのを感じた。
明日からが楽しみだ……なんて、いつぶりか覚えていない感情に、少し戸惑う蓮だった。
結乃は、夕飯の配膳係として先に食堂へ行っている。あんなことがあった後だけに顔を合わせるのが気恥ずかしいが、そうも言っていられない。
しかし階段を下りるや、他の女子たちに捕まってしまった。
「あー! 今日の配信見たよ!」
「凄かった!」
「ウチらの先生より絶対強いよね」
「カッコ良かった!」
「ねぇ、今度戦い方教えてよ」
「食堂の場所覚えてる? こっちこっち」
(に、逃げられない……!)
お姉さんに囲まれたまま食堂へ連行される。
トレイを持って配膳の列に並んだところで、
「やっほー中1くん。結乃は? ああ、今日は配膳係だっけ」
結乃の友人、カナミだ。
ツインテールの黒髪ギャル。結乃に負けず劣らず距離感が近いうえに、タイプは違うが美少女だ。
「おー、いたいた」
カウンターの向こうに結乃を見つけ、カナミが手を振った。結乃は部屋着にエプロン姿。バンダナキャップで髪をまとめている。
(可愛い……)
と、素直に感じる。
けれど直視できない。ついさっきまで、この結乃と部屋で抱き合っていたのだ。その感覚がまだ体に残っていて、意識せずにはいられない。
「あ――」
シャモジを手にしていた結乃もこちらを見るが……ふい、と照れたように目をそらしてしまう。
そんな蓮たちの様子にカナミが、
「なに、早速ケンカでもした? 結乃だめだぞ、年上なんだから優しくしないと~」
「そ、そんなんじゃ……」
「もっと男の扱い上手くならないともったいない……、んん?」
言いかけて、カナミは2人の顔をまじまじと観察する。そして自分の思い違いに気づき、
「……え? これもしかして……ヤったあとの空気? 2日目にして!?」
「やってないよ!?」
「な、何を――!?」
これはたぶん、周囲に聞かれてはマズい会話だ。
結乃も慌てて、
「れ、蓮くんお椀貸して? は、はい、たくさん食べてね」
大盛りに白米を盛ってくれた。
いそいそと他のおかずもトレイに乗せて、蓮はさっさと席に着く。
すると朝と同じようにあっという間に人が集まってくる。
カナミは、まるで当然かのように左隣に。他の女子たちも、こぞって同じテーブルに着席してくるが、示し合わせたように右隣だけは空席のまま。結乃のために空けているんだろうか。
特に今日の配信を見たお姉さんたちが多かったようで、まだ見ていないという同級生に蓮のアーカイブをオススメしていた。
……顔見知りに見られるのはかなり恥ずかしいが、事務所からも報酬をもらう配信者としては、一応アピールはしておかなければ。
「あ、……よ、良かったらチャンネル登録を」
「えー! もちろんしたよー!」
「わー配信者っぽーい」
「もう配信ぜんぶ追うって決めてるし」
「人気者なんですよ、遠野くん」
「ど、ども……」
と控えめに謝辞を述べると、どういうわけかキャーという歓声が沸く。
そんな会話を交わしつつも、気になるのは結乃のことだ。
向こうを見ると、配膳は済んだようでエプロンを外し、バンダナキャップを取って髪を整えている。遠目に見るその姿からも、視線を外せない。
「……中1くん」
「ふわっ――!?」
突然耳元で囁かれてビクっとする。
カナミの気配を察知できないのは、少なくとも彼女を『敵』だとは認識していないからだが、今後は多少気をつけたほうがいいかもしれない。心臓がもたない。
「ああ見えて結乃、彼氏いたことないしフォローしてやってよ。中1くん、年下だけどいざって時は頼りになるみたいだし」
「は、はあ」
なにをどうフォローすればいいのか皆目見当がつかないが。
「頼りになるかは――」
「結乃が言ってたよー。昨日からずっと、学校でもキミの話を嬉しそうにさ」
「そ、そう……」
「あの子が自分から男の話をするとか、すごい成長だよマジで。めちゃくちゃモテて告白されまくるくせに、まともに男友達すらいないから。心配になるレベル」
そんな感じはなかったが。
「むしろグイグイと攻めていくタイプかと」
「はー、キミの前ではそうかー。ほー」
「なに話してるのカナミ?」
気づけば背後に結乃が立っていた。
ちょっとだけ、自分のことを避けて遠くに座るかもと心配していたが、結乃はごく自然と隣に座ってきた。
――かと思うと、ふいに耳打ちをしてきた。ごく至近距離で。
(さっきのこと……2人だけの秘密だからね? いいかな?)
(~~~~っ、……!)
耳朶《じだ》をくすぐる優しい声音に、蓮は無言でコクコクとうなずいた。
■ ■ ■
「ふー、美味しかったね」
部屋に戻った結乃は、すっかり普段通りだった。……まあ、『普段』と評せるほど長い時間を過ごしてはいないのだが、リラックスしているのは間違いないみたいだ。
「味は、うん、たぶん……」
まだ場に慣れなさすぎて、食事を味わう余裕がない。
結乃が振り返ってたずねてくる。
「私のよそったご飯が、一番美味しかった?」
「う、うん」
からかうような視線。イエスしか選択肢のない問いかけだ。
今度こそ自分のベッドに腰掛け、蓮もひと息つく。結乃は、棚上げしていたダンボールの荷物を開封していた。
(……良かった)
自身の生い立ちを告白すること自体は、蓮にとってこれまでは心重いことではなかった。けれどそれは、聞かせる相手が『仕事』だったからだ。
ダンジョンから脱出した際に保護された国の機関で。それから、D財団の施設で職員やカウンセラーを相手に。
ちょっと特殊な経歴に疑いをかけてくる者もいた。恐ろしい目に遭った子どもが、現実と妄想の違いを認識できなくなったのだ――と。
施設の職員は基本的には性根の優しい人間たちで、同情して大泣きする者もいた。とはいえ中には、表面上は平静を装っていても、まるで恐ろしいモノを見るかのような目色に変わる者もいた。それも無理からぬことだろう。
心理カウンセラーはさすがに心得ていて、ほどよい距離感を保ってくれてはいたが、それこそまさに彼らの業務の一環にすぎない。
――まだ相手を信用できず『敵』だと認識していた蓮は、そういった態度をつぶさに観察していた。
そのうち、『仕事』でしかない彼らにどう思われようと気にしないことにした。
けれど今日は……結乃が、どんな反応を見せるのか不安に感じていた。
なぜだろう。彼女が蓮と同室しているのは、他に空き部屋がないから。ただの同居人というだけの、それだけの関係性だ。なのに。
(――拒絶されたくない)
なぜこんなふうに思うのか、蓮自身もまだよくわかっていない。
話を聞いた結乃はさすがに驚いていたが、自然と受け入れてくれた。
化け物かもしれない自分のことを恐れも、憐れみもせずに、壊れてしまっている蓮の心を無理に慰めようともせずに。
それを今は、ありがたく思う。
理由はわからないままだけど、それでいいんだと思うことにした。
「そうだ、蓮くん」
結乃が、思いついたようにこちらを見る。
「私もさ、教えてもらっていい?」
「? なにを」
「えっとね……連絡先」
チラリ、と自分のスマホを見せてくる。
「大事な連絡は沙和子さんにするだろうし、それで十分だと思うけど……私も一応同居人だしさ。私が遅くなるときも連絡できるし。ほら、そしたら蓮くんも、ゆっくり1人でお風呂に入れるでしょ?」
「全然いいけど」
これから配信業が忙しくなれば、夜にはならなくとも遅くなることはあるだろう。緊張せずに1人で過ごせるのも、それはそれで貴重だろうし。
「――じゃあ」
蓮は机に置いた自分のリュックを開けて、スマホを取り出す。
「あれ?」
結乃が首をかしげる。
「さっき見たのと違うような……そんな機種だっけ?」
「ああこれ、プライベート用だから」
「?」
「さっきのは業務用、事務所に持たされてるやつ」
もう1台のスマホを見せる。
アイビスが所属する配信者に配っている業務用のスマートフォンだ。マネージャーからの連絡もこちらに来るし、沙和子にもこのスマホの連絡先を教えてある。
もっとも、プライベート用と言っても連絡先はまったく登録されていないが。
「プライベートか……そっかぁ」
指摘されて気づいた。厚かましかっただろうか? と不安になったが、
「はい交換、交換」
結乃は見るからに嬉しそうだ。メッセージアプリの相互フォローを終えた自身のスマホ画面を眺めてから、
「ありがと。いっぱい連絡してね蓮くん」
「……き、気が向いたら」
言われて、蓮はスマホをいつも以上に丁寧に机の上に置いた。
「あ、あのさ、結乃さんが……」
そして少しだけ、距離を詰めてみようと勇気を振り絞る。今夜は、なぜかそんな気分だった。
「結乃が、良かったら」
「――――! いいよ、なに?」
「たまに戦闘を教えるとか……してもいいけど。強くなりたいって言ってたし……」
結乃の目指す理想像が変わっていないのなら、誰かを助けるための強さは必要だ。彼女がいま持っている強さとは別種の、蓮の得意分野である戦闘能力が。
「え、ダンジョンで? いいの!?」
「事務所にも聞いてみるけど――」
許可さえ下りれば仕事の合間で、結乃もダンジョンに潜っているタイミングなら可能だろう。
「……嫌ならいいけど」
「嫌なわけないよ! 蓮くんに教えてもらえるなら、最高だよ!」
結乃が子どもっぽく目を輝かす。
きっと、配信画面にかじりついて興奮していた幼少期もこんな感じだったんだろう。
「じゃあ同居人で、プライベートで、師匠と弟子だね。ふふ、色々増えてくの、嬉しいね」
結乃が笑顔を見せてくれると、景色が輝いて、胸の中がじんわりと温かくなっていくのを感じた。
明日からが楽しみだ……なんて、いつぶりか覚えていない感情に、少し戸惑う蓮だった。
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