上 下
33 / 43
3:ローパー~ノーム〜王子〜???

第33話 肉体労働らしいので得意分野ですきっと!

しおりを挟む

 俺はメディたちを連れて長いトンネルを掘り進んだ。

「入口を増やすってどーゆーこと?」

 ニューがたずねてくる。

「入って来るとこ増えたら、マズくない?」
「ダミーを作るんだ。入口も、ダンジョンも」

 隠せないなら、もっと目立つものを作ってやればいい。できるだけ遠くに。いま俺が掘り進んでいるのは、入口とは反対方向だ。

「マインたちの街づくりみたいに、新しくダミーのダンジョンを作って人間をそっちに誘導する」
「めでぃたちのダンジョンに、人は来ない?」
「なるべくな。どうしても嗅ぎつける人間は出てくるだろうけど――」

 これで完全にシャットアウトできるなんて思っていない。
 あくまで確率を下げるというだけだ。

 そして、もしやばいレベルの相手――たとえば【神級】の英傑なんかも、そっちで対応できれば被害を最小限に抑えられる。……かもしれない。

「……あと、やっぱ俺も街づくりしたくなったっていうか」
「?」
「なんでもない」

 楽しそうに建設するノームを見て、ああいう大規模なのもやりたくなった、って理由もある。

「まあ、使わずに済むならそれが一番いいよ。人間なんて入って来なければそれでいい。……このくらい進めばいいか」

 掘削作業を中断する。壁の感触から、『外』が近いと感じたからだ。

「こっちのダンジョンづくりにも、みんなのアイデアをもらうから。よろしくな」
「うんっ」
「はーい」

 さて、目星はついしマインたちのところへ戻るか。

「……けっきょう距離あるよな。そうだ、《クリエイト》」

 通ってきたトンネルに新しい設備を付ける。

 それは機械仕掛けの通路だ。動力は魔力だけれど。2人が並んで乗れて、左右に手すりがあって、床が自動で進む――

「『動く歩道』だ」

 でかい空港や駅にあるやつ。これなら移動時間も短縮できる。

「さあ戻るぞ」
「わー、楽ちーん」
「はやく走れる!」
「こらメディ、ダッシュしないダッシュしない」

 はしゃぐメディたちと元の建設現場に戻る。作業中のノームに声をかけて、マインと朧の居場所を聞くと、彼女たちは何やら新しい施設を作ろうとしているらしい。

 見に行くと、すでに建築中だった3階建ての前に2人はいた。朧があれこれと提案して、マインはメモを取りながら聞いている。

「なにやってんだ?」
「おおあるじ殿! よくぞ戻られた」
「社長! ご視察はいかがでしたか?」
「上々だったけど……ここを何にするつもりだ」

 すると朧は、むっふーと勝ち誇ったような顔をして、

「これはあるじ殿のための施設じゃ。これからも夫人候補は増えていくであろう? あのベッドだけでは足りんだろうと思ってな」
「?」
「ゆえに……ここに娼館しょうかんをつくる!!!」
「なに言ってんだ」

 娼館――つまり、男が通うアレなお店のことだ。
 ホントになに言ってんだこいつ。

「おおっと、勘違いするでないぞあるじ殿よ。むろん、金など取らぬ!」
「そういうことじゃないんだが」
「部屋という部屋に女たちをそろえ、あるじ殿にいつでも奉仕できる体勢を整えるのじゃ! のう、マイン?」
「はい! 私も一生懸命にご奉仕させていただきます!」
「意味わかって言ってる?」

 いたって真面目な顔のマインは、

「夜の労働? ですよね、朧さんが教えてくれました。内容はこれから勉強しますが、なんであろうと力いっぱい励む所存です。肉体労働らしいので得意分野ですきっと!」
「そっちの教育係、ちょっと面貸せ」
「む、無知シチュじゃぞあるじ殿? 大好物であろう? 良くないか? 良くないじゃろうか?」

 マインに悪影響が及ぶ前に朧を叱りつけ、首根っこを掴んで家へと帰った。

 
 ■ ■ ■


 翌日。
 イメルダとキアが訪ねてきた。

 この盗賊コンビのことはある程度信頼しているので、家の前まで通してやった。

「こんなものまで作ってんのかい……改めて驚くね」

 洞窟内に普通の――こっちの世界基準でいうと高級な一軒家がことに困惑していた。

「それに、あの通路はなんだい? 何かの罠かと思ったよ」
「ああ、動く歩道な」

 ダミーダンジョンへ向かう道と同じように、こっちにも敷設してみた。村娘ちゃんを追い返すにも役に立つしな。

「ホント、常識外れだね」

 ため息をつくイメルダだが、あれからすっかり風呂好きになったらしく、オリーブ色のロングヘアーにも手入れが行き届いている。
 同じく小綺麗にしたキアは俺のことを見ると、何だかはにかんで、

「お、おっす、ひさしぶり……だね」

 髪にはヘアピンまで付けて色気づいている。さすがに年齢的に妹って感じなんだが――

 そういえば。
 俺にも妹がいた。こっちでの妹だ。

 王宮に居たころ、兄弟の中で唯一俺の味方だったジェリダ。あまり自己主張が強く性格だったし、あの権力争いのひどい王宮の中で、無事にやれてるだろうか。今ごろは16歳になっているか。彼女も相当な美少女だったよな。

「……なんか、他の女のこと考えてそうな顔してんだけど……」

 さすが盗賊。勘が鋭い。
 ここは話題を変えたほうが良さそうだ。

「で。今日はどうしたんだ?」
「ちょっと不穏なウワサを聞いてね。念のため耳にいれておこうかと――アンタ、ここに人が増えちゃ困るんだろ」
「ああ」

 イメルダたちは、盗賊としてあちこちで情報収集をしている。義賊である彼女たちは、ターゲットである貴族連中の情報を特に求めているんだ。

「レイモンド王家の第3王子が行方知らずのまま――って話は知ってるかい? 国家反逆罪の王子様さ」
「…………。知ってるよ、な」

 第3王子、アルト・レイモンド――もちろん俺のことだ。

 イメルダたちに正体は明かしていないが、俺は偽名を使っていないし、メディたちは普通に『アルト』と呼ぶし……この鋭い盗賊たちは、薄々勘づいているのかもしれない。

「その王子を探して、第2王子のユーバーが動き出したって話だ。2年も経つ……普通ならその辺で野垂れ死んでるだろうけどねぇ」

 正解。
 ダンジョンで野垂れ死んで、いまは美少女たちとイチャイチャやってます。

「懸賞金もかかってるんじゃないか? いいのか、そいつに先を越されて」
「ふん。金のためだけに盗賊やってるんじゃないよ」

 イメルダは腕を組んで、

「アタシの勘では、そのユーバーって王子のほうが怪しいね。いいウワサも聞かない。第3王子が本当に罪を犯したのかすら疑わしいね」
「ウチら、悪い貴族とか王族は許さないし。逆にそいつらにハメられたってゆーなら……そっちの味方をしたい、って思うし」
「そうか」
 
 捜索範囲が広げられれば、このダンジョンを発見されるかもしれない。そして、もしもそこにが潜んでいれば危険が及ぶ……。

「情報助かるよ。ありがとうな、イメルダ、キア」

 人間に完全に心を許す気はないが、見ていて面白い村娘ちゃんや、この信頼できる盗賊コンビはそこまで嫌いになれない。

「な、なんだい。素直で気持ち悪いね」
「っっ、照れるじゃん……」
「お礼代わりに、風呂入るか」
「「っっっ!?」」

 このあとメチャクチャ風呂に入った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ
ファンタジー
「ちょっと冬馬君。このプレゼン資料ぜんぜんダメ。一から作り直してくれない?」 万年ヒラ社員の冬馬弦人(39歳)は、今日も上司にこき使われていた。 地方の中堅大学を卒業後、都内の中小家電メーカーに就職。 これまで文句も言わず、コツコツと地道に勤め上げてきた。 彼女なしの独身に平凡な年収。 これといって自慢できるものはなにひとつないが、当の本人はあまり気にしていない。 2匹の猫と穏やかに暮らし、仕事終わりに缶ビールが1本飲めれば、それだけで幸せだったのだが・・・。 「おめでとう♪ たった今、あなたには異世界へ旅立つ権利が生まれたわ」 誕生日を迎えた夜。 突如、目の前に現れた女神によって、弦人の人生は大きく変わることになる。 「40歳まで童貞だったなんて・・・これまで惨めで辛かったでしょ? でももう大丈夫! これからは異世界で楽しく遊んで暮らせるんだから♪」 女神に同情される形で異世界へと旅立つことになった弦人。 しかし、降り立って彼はすぐに気づく。 女神のとんでもないしくじりによって、ハードモードから異世界生活をスタートさせなければならないという現実に。 これは、これまで日の目を見なかったアラフォーおっさんが、異世界で無双しながら成り上がり、その実力がバレて世界に見つかってしまうという人生逆転の物語である。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

二度目の異世界に来たのは最強の騎士〜吸血鬼の俺はこの世界で眷族(ハーレム)を増やす〜

北条氏成
ファンタジー
一度目の世界を救って、二度目の異世界にやってきた主人公は全能力を引き継いで吸血鬼へと転生した。 この物語は魔王によって人間との混血のハーフと呼ばれる者達が能力を失った世界で、最強種の吸血鬼が眷族を増やす少しエッチな小説です。 ※物語上、日常で消費する魔力の補給が必要になる為、『魔力の補給(少しエッチな)』話を挟みます。嫌な方は飛ばしても問題はないかと思いますので更新をお待ち下さい。※    カクヨムで3日で修正という無理難題を突き付けられたので、今後は切り替えてこちらで投稿していきます!カクヨムで読んで頂いてくれていた読者の方々には大変申し訳ありません!! *毎日投稿実施中!投稿時間は夜11時~12時頃です。* ※本作は眷族の儀式と魔力の補給というストーリー上で不可欠な要素が発生します。性描写が苦手な方は注意(魔力の補給が含まれます)を読まないで下さい。また、ギリギリを攻めている為、BAN対策で必然的に同じ描写が多くなります。描写が単調だよ? 足りないよ?という場合は想像力で補って下さい。できる限り毎日更新する為、話数を切って千文字程度で更新します。※ 表紙はAIで作成しました。ヒロインのリアラのイメージです。ちょっと過激な感じなので、運営から言われたら消します!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

処理中です...