鳳朝偽書伝

八島唯

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第1章 歴史への旅

炎上する『左豊宮』

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 眩しい。ただ眩しかった。
 いままで黄伯氏の部屋にいたはずなのに、まるで水の中に放り込まれたように不思議な感覚が続く。
 そして太陽の様な白い光の玉。それが、ゆっくりとあたりが広がっていく。
 目を開ける灰簾カイレン。頬に木の床の感触がする。
 あたりを見回すとそこはもう、黄伯氏の家ではなかった。
 懐かしい廊下。そこは最初にこの世界に降り立った後宮の廊下である。
 ただ、状況は大きく違っていた。
 あちこちから煙が上がり、そして獣のような凶声が聞こえてくる。
『時は励磁八年。廃残帝 隆靭リュウジンと宰相 鹿範ロクハンの悪政に耐えられなくなった貴族がこれを倒す。それによって鳳朝が新たに成立するのだ。『左豊宮』はそれら貴族によって攻められ、三日三晩燃えたらしい』
 翔極ショウゴクの声にあたりを見回す灰簾カイレン
 ということは......
『そう今お前がいるのが励磁八年の『左豊宮』。陥落寸前の宮殿内ということになる』
「ふざけんな!」
 走りながら灰簾カイレンはそう叫ぶ。走りにくい宮女の格好で懸命に。
 矢が飛んでくる。
 行く手を炎が塞ぐ。実際にジリジリと熱い。やけどしそうなくらいに。
亜理斯アリスの業では死ぬことはない。安心しろ。ただし実際に痛みは感じるので、気をつけるように』
「どう気をつけるんだよ!戻せ!」
『死ねば戻る。もしくは、真実にたどり着けば』
 悲鳴を上げる灰簾カイレン
 途中、敵らしき鎧姿の兵士に遭遇する。
 全力で逃げ出す灰簾カイレン
 それを追ってくる兵士たち。
 気がつくと、灰簾カイレンは宮殿のかなり奥の方まできていた。
 人気が無い。
 ここまではまだ火の手はきていないらしい。
 床には箱がいくつも転がっている。中はからだった。そばに落ちている数粒の宝石が、宝箱であることを伺わせた。
 まだここまで敵はキていないはずである。
 だとすればこの箱の中身を略奪したのは――
 人気のない大きな部屋に入る。天井が高く、いくつもの布が垂れ下がっている。
 眼の前には木の階段が広がっていた。
 どうやら、多くの人が集まる広場のようである。
 天井には虎の絵が堂々と描かれていた。
『虎は隆王朝の印。だとすればそこは』
 翔極ショウゴクの説明。
「ここが、宮殿の最深部なのか。後宮の更に奥、っていうことは...」
 灰簾カイレンははっと上を向く。
 階段の上、そこには大きな御座がこちらを向いていた。
 黄金があしらわれ、その中には大きな玉座が据え付けられている。
 その玉座には――一人の男性が座っていた――
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