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第2章 ローマとトルコ
脱出
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エスファーノは林の中をゆっくりと馬を巡らせる。
後ろにはほとんど意識のないリウィアをのせて。
林の外は敵が包囲しているだろう。しかし、先程その敵の指揮官を狙撃することに成功した。一時的かもしれないが、敵の動きが今は鈍くなっているはずだ。
となれば
いまこそが、脱出のチャンスと言うべきであろう。
林の中にはまだ戦える『ローマ』の兵士たちもいるはずである。それらを集約して、最後の活路を開くことができれば――
『これを......役に立つはずだ』
エスファーノの手の中には、大きめの矢じりが握られていた。それは、リウィアが苦しい息の中で手渡してくれたものであった。
その矢じりを『アルテミスの弓』につがうと、空めがけてそれを発射する。ひゅう、という音とともに空に消える矢じり――少しの後、爆音とともに赤い花火のような光が空を包んだ。
信号、である。
『各自、撤退せよ』
の非常命令の信号であった。『ローマ』の指揮官が持つ、最後の手段でもあった。
この信号で林の中にいる『ローマ』の兵たちは撤退を開始することだろう。
一方でオスマン兵もこの信号に気づいたかもしれない。
エスファーノは馬の手綱を引き上げる。
くるりと方向を変え、一直線に林の中を突っ切る。
それは、先程の狙撃した場所へと。
地面にはブルトの死体。その上には布がかけられていた。それを見守る一人の兵士。他の兵は先程空で破裂した何かを確認するために、林の中へ移動していた。留守番、というところであろう。
所在なくあたりを見回していた番兵であるが、遠くから馬のかける音が聞こえる。
構えるが、すでに遅かった。番兵の頭は体から切り離され、ブルトの死体のそばに転がる。
血濡れの剣をそっと払うエスファーノ。
馬上からの一撃では、歩兵は避けるべくもない。ましてや『ローマ』の刀の切れ味とあっては。
その剣の刃をみやると、ゆっくりと鞘にエスファーノは納めた。
(まさか、敵の指揮官を狙撃した場所に再び、戻ってくるとは考えもしないだろう)
思考の穴をエスファーノはつく。ましてや遠くで大きな音が空に響き渡れば、そちらに注意が行くのは当然のことである。
周りを見回すエスファーノ。
地形は先程リウィアが持っていた地図で確認済みであった。
手綱を全力で引くと、馬が前足を上げいななく。
走り出す、一頭の馬。
他の『ローマ』の兵も同じく、逃げることに成功していることを祈りつつエスファーノはただ走り続ける。
無事に『ローマ』にたどり着いたのは、次の日の朝のことであった――
後ろにはほとんど意識のないリウィアをのせて。
林の外は敵が包囲しているだろう。しかし、先程その敵の指揮官を狙撃することに成功した。一時的かもしれないが、敵の動きが今は鈍くなっているはずだ。
となれば
いまこそが、脱出のチャンスと言うべきであろう。
林の中にはまだ戦える『ローマ』の兵士たちもいるはずである。それらを集約して、最後の活路を開くことができれば――
『これを......役に立つはずだ』
エスファーノの手の中には、大きめの矢じりが握られていた。それは、リウィアが苦しい息の中で手渡してくれたものであった。
その矢じりを『アルテミスの弓』につがうと、空めがけてそれを発射する。ひゅう、という音とともに空に消える矢じり――少しの後、爆音とともに赤い花火のような光が空を包んだ。
信号、である。
『各自、撤退せよ』
の非常命令の信号であった。『ローマ』の指揮官が持つ、最後の手段でもあった。
この信号で林の中にいる『ローマ』の兵たちは撤退を開始することだろう。
一方でオスマン兵もこの信号に気づいたかもしれない。
エスファーノは馬の手綱を引き上げる。
くるりと方向を変え、一直線に林の中を突っ切る。
それは、先程の狙撃した場所へと。
地面にはブルトの死体。その上には布がかけられていた。それを見守る一人の兵士。他の兵は先程空で破裂した何かを確認するために、林の中へ移動していた。留守番、というところであろう。
所在なくあたりを見回していた番兵であるが、遠くから馬のかける音が聞こえる。
構えるが、すでに遅かった。番兵の頭は体から切り離され、ブルトの死体のそばに転がる。
血濡れの剣をそっと払うエスファーノ。
馬上からの一撃では、歩兵は避けるべくもない。ましてや『ローマ』の刀の切れ味とあっては。
その剣の刃をみやると、ゆっくりと鞘にエスファーノは納めた。
(まさか、敵の指揮官を狙撃した場所に再び、戻ってくるとは考えもしないだろう)
思考の穴をエスファーノはつく。ましてや遠くで大きな音が空に響き渡れば、そちらに注意が行くのは当然のことである。
周りを見回すエスファーノ。
地形は先程リウィアが持っていた地図で確認済みであった。
手綱を全力で引くと、馬が前足を上げいななく。
走り出す、一頭の馬。
他の『ローマ』の兵も同じく、逃げることに成功していることを祈りつつエスファーノはただ走り続ける。
無事に『ローマ』にたどり着いたのは、次の日の朝のことであった――
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