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第1章 セドラーク王国への旅路
重なる影
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ゆっくりと階段を下りていく三人。さきほどまで張り付いていた護衛も、最後の扉でその役目を終え今は王女と峻一朗、ナージの三人である。
後世の人が見たらそれを核シェルターとでも思うかもしれない。通路とさらにいくつもの通路が有機的に絡まりあいまるで地下の迷宮のような感じすら受けた。
三人は広い空間へと至る。あまり人の手が入っていないような大きな洞窟、といった雰囲気である。
ナージは暗闇に目を細める。
洞窟のはるか上に、いくつかの人工的な物体――それはまるで鉄塔のようなものに気づく。
「目がよろしいことで。ここは地上とつながっています。人間は出入りできませんが、あのクレーンを使って外のものをここまで下すことができます」
そういいながら王女リーディエは正面の大きな鉄の扉を指さす。扉、というよりはそれは城門のようにも見えた。王女リーディエはその城門の隣の壁面に、そっと自分の手を押し付ける。壁はまるで粘土のようにへこみ、手形が壁面に現れる。
その瞬間。大きな音とともに扉がゆっくりと開き始めた。
それにはさして驚かない峻一朗とナージ。完全に扉が開いたのを確認してから三人は中へと入る。
——あふれ出る光。それはまるで地上の、そして夏をも思わせる強い光。洞窟の中であるのに天井はどこまでも遠く、まるで本物の空がここに現れたような感じがした。
地面には芝が生い茂る。ところどころには噴水も。そしてなにより、それとは不釣り合いの鉄製の機械らしきものが延々とそこには並べられていた。
「わが王国の最高機密。『セドラークのオルガン工場』ですわ」
髪をかきわけ王女リーディエはそう告げる。
「オルガンね」
峻一朗がそう言いながら、機械の一つに近寄る。王女リーディエはとがめるでもなくそれをただ、眺める。
機械は止まっていたが、その端からいくつも山になった部品があふれ出ていた。その一つをつかみ、峻一朗はナージへと手渡す。
部品——何やらネジらしきものを眼帯のついていないほうの左目で見つめるナージ。そして一つの答えにたどり着く。
「銃の部品ですね。かなり小さいですが、とても精巧です」
ふん、と王女リーディエは息をつく。
「そこではないのですよ。すごいのは」
いつの間にか王女リーディエの手には大きな写真がぶら下がっていた。それも二枚。
「これは同じ製品で違うネジを超大型に拡大した写真です。これを重ねて――」
写真を二枚ぴたりと重ねてそれを天にかざす。強い日の光が写真を突き通し彼女に降り注ぐ。
それを下から覗き見る峻一朗とナージ。あることに気が付く——それは二枚の写真がまるで、一枚であるかのように完全に合致している事実。
「これは......!」
さすがの峻一朗も息を呑む。拡大率から言っても一ミクロン単位の誤差も存在しないようなレベルである。
「疑うのなら、実際に取り直しても構いません。トリックでもなんでもないですよ」
首を振る峻一朗。全くそのとおりである。こんなはったりに意味はない。
「このネジや様々な部品はある工作機械で作られました。それは『聖パトリックのオルガン』。今を遡ること一二〇年前、現在の五代前の王妃ヴィクトリエ=ホーエンツォレルン=スタニェクのお話です」
そう語り始める王女リーディエ。それはセドラーク王国の百何十年にわたる秘密の物語であった――
後世の人が見たらそれを核シェルターとでも思うかもしれない。通路とさらにいくつもの通路が有機的に絡まりあいまるで地下の迷宮のような感じすら受けた。
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ナージは暗闇に目を細める。
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そういいながら王女リーディエは正面の大きな鉄の扉を指さす。扉、というよりはそれは城門のようにも見えた。王女リーディエはその城門の隣の壁面に、そっと自分の手を押し付ける。壁はまるで粘土のようにへこみ、手形が壁面に現れる。
その瞬間。大きな音とともに扉がゆっくりと開き始めた。
それにはさして驚かない峻一朗とナージ。完全に扉が開いたのを確認してから三人は中へと入る。
——あふれ出る光。それはまるで地上の、そして夏をも思わせる強い光。洞窟の中であるのに天井はどこまでも遠く、まるで本物の空がここに現れたような感じがした。
地面には芝が生い茂る。ところどころには噴水も。そしてなにより、それとは不釣り合いの鉄製の機械らしきものが延々とそこには並べられていた。
「わが王国の最高機密。『セドラークのオルガン工場』ですわ」
髪をかきわけ王女リーディエはそう告げる。
「オルガンね」
峻一朗がそう言いながら、機械の一つに近寄る。王女リーディエはとがめるでもなくそれをただ、眺める。
機械は止まっていたが、その端からいくつも山になった部品があふれ出ていた。その一つをつかみ、峻一朗はナージへと手渡す。
部品——何やらネジらしきものを眼帯のついていないほうの左目で見つめるナージ。そして一つの答えにたどり着く。
「銃の部品ですね。かなり小さいですが、とても精巧です」
ふん、と王女リーディエは息をつく。
「そこではないのですよ。すごいのは」
いつの間にか王女リーディエの手には大きな写真がぶら下がっていた。それも二枚。
「これは同じ製品で違うネジを超大型に拡大した写真です。これを重ねて――」
写真を二枚ぴたりと重ねてそれを天にかざす。強い日の光が写真を突き通し彼女に降り注ぐ。
それを下から覗き見る峻一朗とナージ。あることに気が付く——それは二枚の写真がまるで、一枚であるかのように完全に合致している事実。
「これは......!」
さすがの峻一朗も息を呑む。拡大率から言っても一ミクロン単位の誤差も存在しないようなレベルである。
「疑うのなら、実際に取り直しても構いません。トリックでもなんでもないですよ」
首を振る峻一朗。全くそのとおりである。こんなはったりに意味はない。
「このネジや様々な部品はある工作機械で作られました。それは『聖パトリックのオルガン』。今を遡ること一二〇年前、現在の五代前の王妃ヴィクトリエ=ホーエンツォレルン=スタニェクのお話です」
そう語り始める王女リーディエ。それはセドラーク王国の百何十年にわたる秘密の物語であった――
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