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第4章 会議は踊る

ザマの戦い

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 あわただしい喧騒。それもそのはずである。今まで日和見を決めていた毛利勢が一斉に動きを見せ始めたのだ。それも——この東軍——徳川方に牙をむくような動きを見せ始めていた。
戸板に片足を上げて横になり、煙管をたしなむ宗世。おおよそ女子高生らしからぬ行為だが、嫌にその所作が板についていた。目を閉じて何やら思索をめぐらしているようにも見える。ふうとため息をつき、かつん!と煙管の雁首を強く叩きつける。火花が散り、地面に舞う。
 すっと立ち上がる宗世。首を二、三度左右に動かし肩のほぐれをとる。
「やるじゃ……ないか」
 視線を虚空に移す。そこにはフィジカルウィンドウが呼応するように表示される。顎に手をやり、前かがみにそのウィンドウを見やる宗世。数分考えたのちに、うんとうなずく。
「これは陽動だな」
 指で空中にまるで陣を描くように、空を切る。そのたびごとに東軍——徳川本隊の陣形が変化していく。
「狙いはこの——俺、徳川内府一人を仕留めに来たか。多分小早川隊を壊滅させたのと同じ手で——甘く見られたものだな、あんなのと一緒にされるとは——よろしい、みせてやろうか、この宗世の一撃を——!」
 その刹那、宗世は抜刀する。鎧の下のスカートが翻る。音もなく二つにちぎれる背後の旗。きれいに『厭離』と『穢土』の文字が二つに切り裂かれる。
「——そもそもあまり好きな言葉じゃぁない——こんな嫌な役は早く御免にさせてもらうぜ……なあ……」
 その宗世の手元から光の矢が放たれる。それは虚空をとらえ、闇へと突き刺さる。立ち上がるフィジカルウィンドウ。
『暗殺者を撃退。暗殺者=安国寺恵瓊の手のものとおもわれます』
 暗闇には刺客と思わしき兵士の姿が倒れていた。
 にっとまがまがしい笑みを浮かべる、宗世。
「そういう、小細工は通じねぇって。一年生よう。」
 ざっと身をひるがえし、宗世は前線の映像を呼び出す。
 前線——それは南宮山の毛利勢ではなく、中山道に布陣する西軍本隊である。今まで距離を隔てていた陣が一気にその距離を詰めてくる。いくつも見える火柱と煙。そしてそのあとにまた土煙が舞う。小早川隊を撃滅した奈穂の三兵戦術である。
 整地された街道という条件もあり機動力は極めて高い。騎馬隊の突進である。
「奈穂——」
 前線で指揮を執る島左近——墨子。
「これで矢玉は尽きた。一回だけのチャンスだな。絶対、あのいけ好かない眼帯のねーちゃんの首、とって見せるぜ——もちろん、絶対に——戻るから——」
 そういいながら、右手の槍を強く握りなおす。そして左手の手綱をぎゅっと引き上げる。前足を上げる騎馬。
「島隊、全軍突入せよ!」
 おう、という掛け声とともに一斉に徳川本隊に突っ込む墨子。この時、第二次関ケ原合戦——南宮山麓の戦いは決したかに見えた。時はまだ正午になろうとしていた頃合いであった——
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