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第4章 会議は踊る
三部会の招集
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「新入生の皆さん、お食事中失礼いします」
右手をあげながら但馬がそう、呼びかける。年齢は——二十代くらいだろうか。『副校長』という肩書にはあまりに若々しく感じられた。
普通の高校なら、新任の教員といってもおかしくはない外見だ。
「皆さんの、シミュレーション——見せていただきました。アリストテレス=システムの——戦いをね」
にこっ、と笑う但馬。シミュレーション——二夜にわたる激闘。
「え……それは……」
副校長に情報が筒抜けだったことに、奈穂はたじろぐ。そんな奈穂をほほえましく見守る副校長。
「別に、悪いことではありませんよ。入学して間もないのに本当に勉強熱心と——副校長の立場からも、ほめさせていただきます」
副校長の左目が鈍く点滅する。どうやら、透明式情報端末コンタクトを装着しているらしい。
「知恵=ベルナルディさん……一人のプレーヤーとしてもさることながら、サポートの能力が素晴らしい。先日の『キューバ危機』では『大統領特別補佐官』として、百点以上の働きをしましたね。まさに『参謀長』、これからも、その能力を伸ばしてほしいものです」
知恵のほうから、今度は墨子のほうに振り返る副校長。
「孫墨子さん。一見猪武者に見えますが、孫氏の兵法と同じく、押すところは押し、引くところは引く。硬柔に優れた指揮をとれる戦術家。何より前線にあっても、いかんなくその能力を発揮できる実行力には、脱帽です」
いやぁ、といいながら照れる墨子。さらに副校長は続ける。
「大須桃さん。さすがは、わが校の主席入学。シミュレーションになれば段違いの強さを誇る能力の持ち主です。戦略級の冴えをいかんなく発揮するその構想力は、大学生でもかなわないと思いますね」
小さくなってしまう桃。そっと、肩を奈穂のほうに寄せる。
「最後に——宍戸奈穂さん——まあ、守秘義務があるのでここでは言えませんが、本校に偶然に入学された——そういった状況であなたのような人材を迎え入れられたのは、まったくもって本校にとって幸運なことです。あなたは、そう『英雄』というやつですね。あらゆる方面に能力を持ち、そしてカリスマも持ち——運も持ち合わせる。もちろん、それを支える人がいなければうまくいかないこともあるのでしょうか。だからこそお願いしたいことがあります」
少し間をおいて副校長はきりだす。
「あなた方四人を、新たに編成されるクラス『巨人連隊』に編入します。そして——私の目の前でいずれその成果を見るため、シミュレーションに参加してもらいます。それをもって定期考査になります。ご了承を」
そこまで述べると、くるっと踵を返す、副校長。
「定期考査の成績が悪ければ、まあそんなことはないと思いますが、留年もしくは退学ということになりますね。そうしたら、転学なんてことは——まず不可能だと思いますよ、奈穂さん」
奈穂がびくっ、と反応する。右手をそっと上げ副校長はその場から立ちさっていった。
奈穂たちに、また新しい課題が課せられることとなる
右手をあげながら但馬がそう、呼びかける。年齢は——二十代くらいだろうか。『副校長』という肩書にはあまりに若々しく感じられた。
普通の高校なら、新任の教員といってもおかしくはない外見だ。
「皆さんの、シミュレーション——見せていただきました。アリストテレス=システムの——戦いをね」
にこっ、と笑う但馬。シミュレーション——二夜にわたる激闘。
「え……それは……」
副校長に情報が筒抜けだったことに、奈穂はたじろぐ。そんな奈穂をほほえましく見守る副校長。
「別に、悪いことではありませんよ。入学して間もないのに本当に勉強熱心と——副校長の立場からも、ほめさせていただきます」
副校長の左目が鈍く点滅する。どうやら、透明式情報端末コンタクトを装着しているらしい。
「知恵=ベルナルディさん……一人のプレーヤーとしてもさることながら、サポートの能力が素晴らしい。先日の『キューバ危機』では『大統領特別補佐官』として、百点以上の働きをしましたね。まさに『参謀長』、これからも、その能力を伸ばしてほしいものです」
知恵のほうから、今度は墨子のほうに振り返る副校長。
「孫墨子さん。一見猪武者に見えますが、孫氏の兵法と同じく、押すところは押し、引くところは引く。硬柔に優れた指揮をとれる戦術家。何より前線にあっても、いかんなくその能力を発揮できる実行力には、脱帽です」
いやぁ、といいながら照れる墨子。さらに副校長は続ける。
「大須桃さん。さすがは、わが校の主席入学。シミュレーションになれば段違いの強さを誇る能力の持ち主です。戦略級の冴えをいかんなく発揮するその構想力は、大学生でもかなわないと思いますね」
小さくなってしまう桃。そっと、肩を奈穂のほうに寄せる。
「最後に——宍戸奈穂さん——まあ、守秘義務があるのでここでは言えませんが、本校に偶然に入学された——そういった状況であなたのような人材を迎え入れられたのは、まったくもって本校にとって幸運なことです。あなたは、そう『英雄』というやつですね。あらゆる方面に能力を持ち、そしてカリスマも持ち——運も持ち合わせる。もちろん、それを支える人がいなければうまくいかないこともあるのでしょうか。だからこそお願いしたいことがあります」
少し間をおいて副校長はきりだす。
「あなた方四人を、新たに編成されるクラス『巨人連隊』に編入します。そして——私の目の前でいずれその成果を見るため、シミュレーションに参加してもらいます。それをもって定期考査になります。ご了承を」
そこまで述べると、くるっと踵を返す、副校長。
「定期考査の成績が悪ければ、まあそんなことはないと思いますが、留年もしくは退学ということになりますね。そうしたら、転学なんてことは——まず不可能だと思いますよ、奈穂さん」
奈穂がびくっ、と反応する。右手をそっと上げ副校長はその場から立ちさっていった。
奈穂たちに、また新しい課題が課せられることとなる
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