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第3章 ブリュメールのクーデター

グラスノスチ、始まる

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 テレビカメラに向かい、演説を続ける奈穂。ソ連がミサイル基地をキューバに建設していること。それがアメリカひいては、西側世界の安全保障上、大きな問題になることを何度も繰り返す。グロムイコ外相との会談の内容も、余すところなく公開する。
 奈穂の考えはすべてを国民に訴えること、知らしめること。そのうえで自分が下す決断が必然のものであることを理解してもらうためであった。
 知恵がカメラから見えないように、ハンドサインを奈穂に送る。先程帰投した墨子の写真が公開可能になった、という知らせである。
『いやーまいったね。飛行機の右翼、穴だらけになってたわ。わかってたら急降下撮影なんかしなかったぜ。よくもってくれたわ……あとは任せたぜ!』
 墨子の必死の努力により入手された写真が、ウィンドウに準備される。奈穂は一呼吸おいて、紹介する。
「——こちらが、キューバに設置されたミサイルの航空写真です」
 まずは『U―2の』写真。ぼんやりとしてあまり見分けはつかない。
「次に、この写真を見てください」
 墨子の撮影した写真。
「はっきりと見えるのが我がステイツに標的が向けられている核ミサイル——ソ連の準中距離弾道ミサイル『SS―4サンダル』と思われます。残念ながら核攻撃の準備に関しては、ソ連がいま一歩先んじている状況と言えます——核弾頭が、積まれていれば」
 一呼吸また置く奈穂。
「現在、我が国の精鋭たる海軍の臨検隊がキューバに対する海上封鎖を行っています。核弾頭の持ち込みを絶対に許さないためにも。問題となるのは、このあとの『道』です。このまま緊張がエスカレーションして戦争、そのまま核戦争に発展するのか——」
 奈穂の後ろのスクリーンが立ち上がる。ミサイルポッドからミサイルが射出される映像。それが、世界各地の主要都市をめがけて飛んで——最終的には炸裂する。あまりに大きな火球が大地をつつみこむ。
「私はここに提案をします。経済体制の違いをイデオロギーとして戦争にまで、核による地球滅亡まで導こうとしているこの状況を、改善するためのプランを。国民にこれを示すと共にこれを見ている東西を問わない全世界の皆さん。そしてソ連の指導者の方々。耳を傾けてください」
 そう言いながら、別なウィンドウを奈穂は開く。そのウィンドウに映されていたもの——それがこの局面の、最後の一手になるはずだった。
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