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おまけ小話。

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 あの初夜の翌日。旦那様が愛人関係を全て清算した、そーだ。

「アリシア、今までの非礼をわびる。どうか、私の唯一の人として側にいてほしい」

 膝をつき懇願するイケメンに、私は何度も目を瞬かせた。

 え? 愛人と別れた? なんしてんの?

 旦那様はイケメンでも残念な微筋肉。美筋肉は私の中でも絶対的な魅力の一つ。その魅力が欠けた旦那様なんて…………。しかし私は旦那様に微笑みます。

「えぇ、旦那様のお側にいますわ」

 美筋肉、イケメンオヤジな愛人は作りますけどね?





 夫婦となって初めての夜会。
 私は楽しみで楽しみで仕方ありませんでした。

 王宮での夜会と言えば、要人の護衛にあたる実用騎士美筋肉たちが、間近で愛でられるうえに、ここには旦那様に愛人関係を切られたマダムたちも集まるのだから。旦那様へ未練を残した彼女たちから、どのような嫌味の応酬となるか。前世を思い出して、手がワキワキと興奮を抑えきれないでいました。

「アリシア、綺麗だ」
「ふふ、旦那様も素敵ですわ」

 眺めるには目に良い、観賞用イケメンな旦那様。
 そんな旦那様に並んでも見劣りしないほど、私も着飾らせてもらいましたわ。

 会場に入り真っ先に目につくのは、騎士の制服を着ていてもわかる分厚い大胸筋。見事な上腕二頭筋。

「あぁ……」

 ゴクリと、溢れるものを飲み込み、吸い寄せられるように向かう私を、ぐいっと現実に戻すのは微筋肉の旦那様。

「アリシア、君には私がいるだろ?」

 不足です。の言葉は飲み込めましたわ。

 目の端に美筋肉を捉えながら、私は見つけました。旦那様の愛人その一。
 まだ青年の域にある男性のエスコートに、愛人歴二年のロアーズ夫人! ドキドキワクワクして旦那様と愛人を見比べていれば……、何ということでしょう……。互いに目礼だけ。

 二年も愛人関係にありながら、あっさりした  やり取りに物足りなさを感じつつ、愛人その二を発見。

 愛人歴一年七ヶ月のサリー夫人! 愛人その一と同様、自分の歳の半分ほどの男性を連れての入場。こんどこそ! と期待に見比べていれば、これまた旦那様に対して目礼だけ。あららー?

 と、次! 愛人その三と、四! 未亡人のなんたら~夫人と、なんたらら~夫人。やっぱり、二人とも若々しく細っこい青年を連れての入場。そしてやっぱり目礼だけ。あーれれー?

 なんだろう、旦那様に対するこの未練のカケラの無さ。四人ともパートナーと二人きりの世界に入ってますよ?

 私は旦那様と元愛人を見て、一つの可能性に気づいてしまいました。

 その後、愛人その五、六、ラスト、七人目と、出会うことができたのですが、やはり皆揃って、旦那様よりも若々しく、青臭い青年をパートナーに現れていたのです。

 やはり彼女たちの瞳に、旦那様に対する未練はカケラも見れませんでした。

 もう可能性は確信へ。

 旦那様の愛人は皆が何処かの婦人や未亡人です。経験値の低い年下の男性を捕食する肉食獣上級者

 別れを切り出されればあっさり次。
 そう、彼女たちにとって、旦那様は未練たらしく縋るほどの価値はなかったのです。

「……………………あら、いい美筋に、うっ」
「ア リ シ ア ? 君には、私が、いるだろ?」

 耳元で囁く旦那様にきつく、きつく抱きしめられました。

「愛してるよ、私の唯一」
「ひぃっ!!」




 美筋肉の愛人をぜったいに作るんだからっ! と心に固く誓った私と旦那様の攻防は始まったばかり。





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