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「マルティナ様、セルジュ様からラズリエル様宛てに服が届きましたが?」
「……あ、はい」
服に靴に一式入っているだろう箱を受け取った。
「で? これは、一体、どういう、こ、と、で、しょうかぁぁ? さぁ、包み隠さず全てこのタマオにお吐きなさいましっ!」
「うひっ」
重く痛む頭を抱え、ベッドの住人となっているアズラエルは二日酔いというものになり、本日の王太子との親睦会はお休み。王太子から体調を気遣う丁寧なカードとお花が届いた。
そんなことになった状況を、うちの王太子も頭が上がらない乳母であり、侍女頭のタマオに包み隠さず全て話した。
△堂の残りチョコレートはお土産としてもらったのでタマオ含め、侍女たちへとおすそ分けした。が、「未成年の飲酒禁止!」と、怒られた。
「ラズリエルとしてセルジュ様とお会いするのも禁止です! ラズリエルなんて従妹などいないと知られたら、どうなさるおつもりですか!」
「あー、待っ、頭ひびく……」
頭を抱えるアズラエルに、二日酔いでもないのに同じように頭を抱えるタマオ。
「アズラエル様……我らハシノ国の存続はあなたの行動にかかっているのです、お願いでございます。これ以上軽率な行動はお控えくださいませ」
「うん、あぁ、ごめん、ごめんなさい」
そう言って、セルジュ様から届いたカードを見せた途端、タマオの顔が引きつった。
──明日十三時、東屋で待ってる。昼食を抜いて待っててほしい──
「こぉの、くそバカ王子! なんてことしやがったんだ!」
「うひぃ! ごめんなさぁい!」
昨夜は本当に気分が良かった。ふわふわと気持ちが良く、高級チョコレートはいくつでも食べれるほど口の中でとろけ、オレンジの香りがする紅茶との相性も良く、楽しくて、楽しくて、色々な話をした気がする。
「ラズリエル譲は昼間何をして過ごしているんだ?」
「図書館で本を借りてきてもらって読んでるだよ、他の婚約者候補と会ったりしたらめんどくさそーだし」
「そうだな、君は出ない方がいいだろう」
「ほんとは城下街とか行ってみたいんだけどね、来るとき驚いたよ、人もめっさ多くてー、帰る時ゆっくり店見て帰ろうって、皆で話してるんだ」
「帰る時、か……ラズリエル譲、帰る時じゃなくても、私が街を案内しようか?」
「え? 外出てもいいの?」
「君は王太子の婚約者候補ではないからね、案内しよう」
「やった! オルガ技師のいるカラクリ工房に行きたいんだ!」
「え……」
興奮から身前のめりになるアズラエルに驚くセルジュ。「君は、カラクリ時計に興味あるのか?」と問われ笑顔で頷いた。
「王都に来たのは工房を見たかったからなんだ!」
「そうか、工房ならよく知っているから案内しよう」
「いいの!? ありがとう!」
なんて、セルジュの両手握ってブンブンしてさ。
やった、じゃないし、ありがと、じゃないし、自分、なんであんなこと言ってしまったんだ、お酒とはここまで正常な判断ができなくなるのか、恐ろしい、お酒こわい。
叔父さんも言ってたな、他人がいる席で飲みすぎるなって、あぁ、酔っ払っての失敗談なんて、叔父さんからもめっさ聞いてたのに、一夜を共にした相手が、朝には自分より濃い髭生えてた、なんて話は震えが止まらなかったのに。
「はぁぁぁ……」
重い頭で身体を起こし、ちびちびとトマトジュースを舐めながら、二度とお酒には手を出さないことを誓った。
昼近くになって体調もいつも通りとなり、思考が戻れば、益々自分のやらかしたことに落ち込み枕に顔を埋めた。
「はぁぁぁぁー…」
一人反省会は続く。
「……あ、はい」
服に靴に一式入っているだろう箱を受け取った。
「で? これは、一体、どういう、こ、と、で、しょうかぁぁ? さぁ、包み隠さず全てこのタマオにお吐きなさいましっ!」
「うひっ」
重く痛む頭を抱え、ベッドの住人となっているアズラエルは二日酔いというものになり、本日の王太子との親睦会はお休み。王太子から体調を気遣う丁寧なカードとお花が届いた。
そんなことになった状況を、うちの王太子も頭が上がらない乳母であり、侍女頭のタマオに包み隠さず全て話した。
△堂の残りチョコレートはお土産としてもらったのでタマオ含め、侍女たちへとおすそ分けした。が、「未成年の飲酒禁止!」と、怒られた。
「ラズリエルとしてセルジュ様とお会いするのも禁止です! ラズリエルなんて従妹などいないと知られたら、どうなさるおつもりですか!」
「あー、待っ、頭ひびく……」
頭を抱えるアズラエルに、二日酔いでもないのに同じように頭を抱えるタマオ。
「アズラエル様……我らハシノ国の存続はあなたの行動にかかっているのです、お願いでございます。これ以上軽率な行動はお控えくださいませ」
「うん、あぁ、ごめん、ごめんなさい」
そう言って、セルジュ様から届いたカードを見せた途端、タマオの顔が引きつった。
──明日十三時、東屋で待ってる。昼食を抜いて待っててほしい──
「こぉの、くそバカ王子! なんてことしやがったんだ!」
「うひぃ! ごめんなさぁい!」
昨夜は本当に気分が良かった。ふわふわと気持ちが良く、高級チョコレートはいくつでも食べれるほど口の中でとろけ、オレンジの香りがする紅茶との相性も良く、楽しくて、楽しくて、色々な話をした気がする。
「ラズリエル譲は昼間何をして過ごしているんだ?」
「図書館で本を借りてきてもらって読んでるだよ、他の婚約者候補と会ったりしたらめんどくさそーだし」
「そうだな、君は出ない方がいいだろう」
「ほんとは城下街とか行ってみたいんだけどね、来るとき驚いたよ、人もめっさ多くてー、帰る時ゆっくり店見て帰ろうって、皆で話してるんだ」
「帰る時、か……ラズリエル譲、帰る時じゃなくても、私が街を案内しようか?」
「え? 外出てもいいの?」
「君は王太子の婚約者候補ではないからね、案内しよう」
「やった! オルガ技師のいるカラクリ工房に行きたいんだ!」
「え……」
興奮から身前のめりになるアズラエルに驚くセルジュ。「君は、カラクリ時計に興味あるのか?」と問われ笑顔で頷いた。
「王都に来たのは工房を見たかったからなんだ!」
「そうか、工房ならよく知っているから案内しよう」
「いいの!? ありがとう!」
なんて、セルジュの両手握ってブンブンしてさ。
やった、じゃないし、ありがと、じゃないし、自分、なんであんなこと言ってしまったんだ、お酒とはここまで正常な判断ができなくなるのか、恐ろしい、お酒こわい。
叔父さんも言ってたな、他人がいる席で飲みすぎるなって、あぁ、酔っ払っての失敗談なんて、叔父さんからもめっさ聞いてたのに、一夜を共にした相手が、朝には自分より濃い髭生えてた、なんて話は震えが止まらなかったのに。
「はぁぁぁ……」
重い頭で身体を起こし、ちびちびとトマトジュースを舐めながら、二度とお酒には手を出さないことを誓った。
昼近くになって体調もいつも通りとなり、思考が戻れば、益々自分のやらかしたことに落ち込み枕に顔を埋めた。
「はぁぁぁぁー…」
一人反省会は続く。
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