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07・しましまさんの縁結びー3
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「にゃぁーん」
十七時を知らせるサイレンに、しましまさんが帰ってきた。
「おかえりなさい!」
するんと身体をすり寄せてくれてから、拾い物をお座布の上に置きに行く。
待ってた封筒に飛びついた。差出人の名にやっぱりにやけてしまう。
「しましまさん、ありがとう!」
「にゃぁ」
律儀に振り返り応えてから、ごはんを食べに台所へ向かった。
『雪へ
庭の朝顔と同じ浴衣がとても似合っていたね、祭には浴衣を着て行ってほしいです』
「……浴衣?」
そうだ、最後に着たのは六年前、この町を出る前に、三人で行った天神祭に着たのが最後だった浴衣。
押入れの中のボックスを開けてみた。それは痛みもなく、六年前の綺麗なままで、
「朝顔……」
自分でも忘れていた浴衣の存在。その柄は、庭に咲いた朝顔と同じ、白地に青色が鮮やかに咲いた浴衣。
市販の浴衣は私の身長には大きすぎて、おはしょりが長くお尻を隠すので、桐矢くんのおばあちゃんが、私の身長に合わせて縫い直してくれた浴衣だった。
着たのはたった一回。私の浴衣に合わせて、総司くんも桐矢くんも浴衣を用意して祭に行ったんだっけ。
覚えててくれたんだ……。
込み上げてくるものくるものをこぼさないよう、浴衣を抱きしめた。
でも。
「…………祭に着て行ってほしいって」
もやり感に、色々な思いが引いていく。
「にゃ?」
ご飯を食べ終わったしましまさんが首を傾けていた。
でも、それってっ!
浴衣を胸に、奥の襖を勢いよく開けた。
「総司くん! 桐矢くんとのデートを勧めるってどーいうこと!?」
総司くんが小さな枠の中で、へらりと笑ったような気がした。
十七時を知らせるサイレンに、しましまさんが帰ってきた。
「おかえりなさい!」
するんと身体をすり寄せてくれてから、拾い物をお座布の上に置きに行く。
待ってた封筒に飛びついた。差出人の名にやっぱりにやけてしまう。
「しましまさん、ありがとう!」
「にゃぁ」
律儀に振り返り応えてから、ごはんを食べに台所へ向かった。
『雪へ
庭の朝顔と同じ浴衣がとても似合っていたね、祭には浴衣を着て行ってほしいです』
「……浴衣?」
そうだ、最後に着たのは六年前、この町を出る前に、三人で行った天神祭に着たのが最後だった浴衣。
押入れの中のボックスを開けてみた。それは痛みもなく、六年前の綺麗なままで、
「朝顔……」
自分でも忘れていた浴衣の存在。その柄は、庭に咲いた朝顔と同じ、白地に青色が鮮やかに咲いた浴衣。
市販の浴衣は私の身長には大きすぎて、おはしょりが長くお尻を隠すので、桐矢くんのおばあちゃんが、私の身長に合わせて縫い直してくれた浴衣だった。
着たのはたった一回。私の浴衣に合わせて、総司くんも桐矢くんも浴衣を用意して祭に行ったんだっけ。
覚えててくれたんだ……。
込み上げてくるものくるものをこぼさないよう、浴衣を抱きしめた。
でも。
「…………祭に着て行ってほしいって」
もやり感に、色々な思いが引いていく。
「にゃ?」
ご飯を食べ終わったしましまさんが首を傾けていた。
でも、それってっ!
浴衣を胸に、奥の襖を勢いよく開けた。
「総司くん! 桐矢くんとのデートを勧めるってどーいうこと!?」
総司くんが小さな枠の中で、へらりと笑ったような気がした。
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