しましま猫の届け物

ひろか

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03・しましまさんの拾い物ー3

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 まだ陽の高い空に十七時を告げるサイレンが響いた。

「うにゃーん」

 この音に遊びに出ていたしましまさんが戻って来た。拾い物を定位置のお座布の上に置き、ゴロゴロとごはんをねだって体をすり寄せてくる。

「おかえりなさい、しましまさん!」

 拾い物は一通の封筒。

「ありがとう! しましまさん」

 封のされていない封筒の差出人は、“総司”。
 取り出した便箋には、見慣れた右上がりのクセのある文字。

『雪へ
 キュウリの漬物は、おむすびと甘い卵焼きと一緒に食べたいですね』

「ふふ」

 おむすびはやっぱり炊き立てで作りたいから米を研ぎ、水に浸しておく。
 頂いた卵は三つとも卵焼きにしよう。フライパンを熱して油を引く。砂糖と出汁を入れ、よく混ぜる。

「しましまさん、そんなとこで寝てたらしっぽ踏んじゃうよ」

 台所に立つと、いつもしましまさんは喉を鳴らしながら足の間で寝っ転がる。時々しっぽを踏んでしまうのはしょうがないと思うのだけど。

「にゃっ!」
「ごめーん!」

 ほら、やっぱり踏んでしまった。
 卵焼きは今までで一番の出来。ふわふわ綺麗な黄色で焼きあがった。
 カットして端っこをつまみ食いしてみる。

「うん、あまあまおいし!」

 炊きあがったごはんをボールに取り、多めのお塩をふりかけ混ぜる。

「あちあちっ」

 小さめ三角おむすびを四つ作りそれを味のりで挟んで、皿に盛る。
 冷蔵庫から取り出したキュウリの漬物をつまみ食いしつつ、水気を切り、おむすびの横に盛り卵焼きも置いた。

「できた」

 お皿を抱えて奥の襖を開けた。

「総司くん! 見て見て、今日の卵焼きは今まで一番キレイに出来たんだよ」

 小さな枠の中で微笑む総司くんに、おむすびが転がらないように、卵焼きを見せて、仏壇に供えた。

「総司くんのせいだよ。卵焼きは塩だったのに、今じゃ、甘くないと美味しく感じないんだから」

 『僕のせいですね』そんな声が聞きたくて、セミの声がする中で、しばらく耳を澄ましてしまった。





「にゃああーん」

 ゴロゴロと喉を鳴らし体を寄せるしましまさんを撫でて思い出した。

「あ、ごはんだったね、ごめんねしましまさん!」





 しましまさんの拾い物には意味がある。

 ──それを私は、誰にも言うつもりはない。
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