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4巻

4-2

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 それから更に数日が経った。
 その日も俺は、既に日課となった柵暖房への魔力マナ供給のために、学校の後で栽培実験場を訪れていた。
 今日はどういう訳か、ミーシャたちが付いて行くと言い出したので、ここには俺を含めたいつもの六人が揃っていた。どうやら、俺がしていることに興味が湧いたらしい。子どもってのは、何にでも興味を示すからな。
 別に、断る理由はないのだが、かといってこの子たちが喜ぶような、何か面白いことをしている訳でもない。
 なので、〝付いて来ても退屈かもしれない〟ということを断ったうえで同行を許可した。あとで、ひまだ退屈だ、と騒がれてもかなわんからな。
 で俺は早速、いつものように柵暖房に魔力マナを供給すると、草の育成具合を確かめるために柵の内側へと入り込む。
 途端、柵の外の寒さが嘘のように、周囲の空気が暖かいものに変わる。厚着をしているせいで、むしろ少し暑いくらいだ。
 俺は適当な場所に進むと、おもむろに膝を突いた。

「おっ? 新しい草が生え始めてきてるな……」

 茶色の枯草を掻き分けてみれば、そこにはぽつりぽつりと真新しい緑の草が顔を覗かせていた。
 一応は順調……と、見ていいだろう。この調子のまま育てば一、二週間後にはヤムたちが食べられる最小サイズくらいには成長すると思う。
 一度、そこまで育ててみて問題ないようなら、この柵暖房を量産して牧草の大量生産だ。
 流石にこの広さだけで、村の全てのヤムを賄えるとは思っていない。ここはあくまでちゃんと育つかどうかの実験場でしかないのだ。
 そうして、俺が実験場の観察を続けていると……

「うおっ! なんかここだけ暖けぇー!」

 突如、そんなタニアの声が背後から聞こえてきたので振り返ってみれば、奴は枯草の上でゴロゴロと転がっていた。
 何してんだこいつは?
 気付けばぞろぞろと、残りの面子メンツも柵の中へと入ってきている。
 皆、反応はタニアと似たようなもので、不思議そうにあちらこちらをキョロキョロとしていた。流石に、枯草の上にダイブするような奴はタニア以外にはいなかったがな。
 この子たちにはこの実験場に来る道中で、俺が今何をしているのかをざっくりと説明しておいた。だからなのか、不思議には思っているようだったが、特にこれといって驚いた様子はなかった。
 なんというか、俺が〝理解できない不思議な物を作る〟というのは、既に村では皆の共通認識になっているふしがあった。
 多少、彼らが不思議に思う物を作ったとしても、もう誰も驚かなくなってしまっていたのだ。
〝まぁ、ロディフィスあいつならそれくらいのこともするだろう〟みたいな感じで。
 別に、皆を驚かせるために魔道具を作っている訳ではないのだが、最近はリアクションが薄くなってきていて、作ってる側としては少し寂しい気もしていた。
 と、そんな感じであっちをウロウロ、こっちをウロウロしている子どもたちを尻目に、俺は実験場の観察を続けたのだった。
 それからどれくらいの時間が経っただろうか……

「おーい! そろそろ帰るぞ!」

 ひと通りの観察を終えた俺は、皆に向かってそう声を掛けた。のだが……

「えー……もうちょっと遊んでいこうよ」

 不満たらたらといった感じで返事をしたのは案の定タニアだった。
 どうやら、グライブとリュドと一緒に追いかけっこをして遊んでいたようだ。
 走っていて暑くなったのか、三人とも先ほどまで着ていた上着を脱いでいた。で、脱いだ上着はどこへやったのかと思えば、近くの柵に引っ掛けられているのが目に付いた。
 ちなみにミーシャとシルヴィは、少し離れた所で枯草を引き千切っては何かを編んでいるようだった。

「追いかけっこなら、ここじゃなくてもどこでもできるだろ?」

 と、問う俺にタニアは、

「寒いの嫌だ!」

 と即答だった。
 子どもというのは風の子ではないのか? 寒いのはへっちゃらではないのか?
 なんて思う俺だったが、皆の顔は一様に不満を示していた。
 あまり自分の意見を表に出さないあのミーシャでさえ、いやいやと首を振っているくらいだ。
 ……お前たちそんなに寒いの嫌いか。まぁ、俺も嫌いだけど。
 という訳で、ここでの目的は終わったのだが、この子たちが満足するまで今しばらくこの場に滞在することになった。
 で、俺は一人何をするでもなくぼーっとしていると……

「なぁ? ここだけが暖かいのは、この柵があるからなんだよな?」

 追いかけっこに飽きたのか、リュドが近づいてきてそんなことを聞いた。
 いつもこういうことを真っ先に聞いてくるのはグライブなのだが、珍しいこともあるものだ。
 俺が、そうだと答えると、リュドの奴……

「だったらさぁ、この柵で村をぐるっと囲めば、村の中はずっと暖かいままなんじゃねぇーの?」

 なんてことを言い出した。
 確かに、理論上は可能だが……

「そんなことをしたら大変なことになるぞ?」
「大変? どんな?」
「考えてもみろ? いくらラッセ村が小さい村だっていっても、そこを魔術陣で囲うとなればやっぱり広い。それだけの範囲を満たす魔術陣を発動させようと思えば、必要になる魔力がどれだけになるのか俺には見当もつかん。それこそ、人一人の魔力を吸い尽くして起動するかどうか……」

 魔力マナは生命力だ。魔力マナが尽きれば、それはつまり死を意味する。
 そこから導き出される結論は、村を暖かく保つために、毎日死人が出る、という凄惨せいさん極まりない事態だ。
 俺が言いたいことを理解したのか、リュドの奴は〝ああ、そりゃ無理か……〟と小さく呟いていた。で……

「だったら、家だけでも暖かくできないか? 俺、寒いの苦手なんだよ」

 どうやら、これが本音らしい。俺は寒いのも暑いのも苦手なので、リュドの気持ちは分からなくはない。
 一応、冬に向けて魔道具の暖房利用についての考えはあった。が、どういう物を作るのが効果的なのか、思案の最中だ。
 できれば手間は掛けたくないし、とはいえ効果は大きい方がいい。
 さてさて、どうしたものか……

「それに関しちゃ今考え中だな。雪が降り出す前には何とかしたいが……まぁ、期待しないで待ってるんだな」
「そうか。んじゃ、頼むぜ小さな大鬼リトル・オルガ

 俺が答えると、リュドの奴はほっとしたような顔でグライブたちの所に走って行ってしまった。期待をするなと言ってるのに……
 それからしばらくして、走り回るのに疲れたのかタニアが帰ろうと言い出したので、お開きとなった。
 柵から一歩外に出ると、冷たい風に身がすくんだ。
 うー寒っ! こりゃ、カイロみたいな携行暖房具も考えた方がいいかもしれないな……


 リュドとの一件もあったので、魔術陣を用いた暖房器具の本格的な開発に取り掛かって数日が経った。
 窓から日の光が差し込む中、俺は教会の書庫で机に向かい黙々と魔術陣を書いていた。

「ふぅー……よし、取りあえずはこれで完成だな」

 俺は手にしていたペンを置くと、一度体を大きく伸ばす。
 机の上に広げられた紙には、びっしりと魔術陣が書き込まれていた。そのサイズは、大体大学ノートの見開き一ページ分といったところか?
 俺が今まで書いてきた単一構成の魔術陣の中では、比較的大きい部類に入る。
 というのも、長時間の稼働を目的とした場合、最低限これくらいのサイズはないと魔力マナを賄うことができないのだ。
 本来、魔力マナとは生命力であり、それを人為的に一所ひとところとどめておく、ということはとても難しい。
 まぁ一応、魔石という魔力マナを貯蔵できる宝石もあるにはあるが、これは自然によって作られた産物であり、人の手で作ることができないので例外だ、例外。
 だがそんな不可能を、魔術陣は二通りの方法で可能にしていた。
 一つは、触媒に無理やり魔力マナを詰め込む方法だ。これは主に、村でよく使われている魔術陣式のランプなどが該当する。
 この方法の特徴の一つとして、構造が単純である、ということが挙げられる。
 体積によって蓄えることができる魔力マナの量が決まるので、触媒を大きくすればしただけ蓄える量を増やすことができるのだ。
 半面、魔力マナ量が体積に依存するため、出来上がった魔道具が大型化する傾向にある、というデメリットも同時に存在してしまっている。
 また、魔力マナの保持力が弱く、一度マックスまでチャージしても翌日にはすっからかんになってしまうのも欠点の一つだ。
 もう一つは……これは今まであまり使わなかった方法なのだが、書かれた魔術陣の中に、魔力マナを閉じ込めておく、という方法だ。
 この方法では貯蓄量は体積ではなく、魔術陣の面積に依存する。
 だが面積式は、魔術陣を構成している魔術回路の組み方次第で、同じ面積でありながら蓄える量を増やすことができる優れ物だ。
 しかも、体積式に比べて蓄えられた魔力マナの保持力が強く、自然減衰しにくいという特性もある。
 これなら、一度蓄えた魔力マナを無駄なく有効利用できる。
 そしてこれが真に意味するところは、魔道具の小型化、並びに日数単位での長時間使用を目的とした魔道具の制作が可能になる、ということだ。
 しかし、この面積式貯蔵法、決していいことばかりではない。
 とにかく構造が難しいのだ。要は作るのが大変だってことだな。
 その魔術陣で本来行いたい処理に加えて、魔力マナを蓄えるための魔術回路を別途用意しなくてはいけないうえ、この貯蔵用の魔術回路の構成如何いかんでは本来の処理を阻害し機能不全を起こしてしまう。
 しかも、今までの俺の技術レベルでは蓄えられる魔力マナの量もたいして多くなかったっていうね……
 故に、今まではあまり触れてこなかった分野だったのだが、折角なので自己への挑戦も兼ねて今回はこの面積式貯蔵法による魔術陣に挑戦してみることにした。
 これがうまくいけば、今までの魔道具に革命が起こるな……失敗したら、まだ早かったと諦めていつもの方法に戻そう。
 ふと視線をずらせば、随分と日の光が部屋の中に入り込んでいることに気が付いた。日の加減からして、そろそろ昼といったところか……
 ここには朝イチから来ていたので、かれこれ三時間近く作業に没頭していたことになる。我ながら大した集中力だと自画自賛してしまう。
 今日は学校が休みの日なのだが、ここは色々と都合がいいので、休みの日でもよく利用させてもらっている。
 邪魔が入らないので、じっくり作業をしたい時などには打ってつけなのだ。
 家だと妹たちからの遊んでコールがなぁ……別に、嫌な訳ではないのだが、個人的にやりたいことがある時などはちょっと困りものだったりする。

「今度は何を作ったのですか、ロディフィス?」

 そう俺に声を掛けてきたのは、いつもの席に座って本を読んでいた神父様だった。
 手にしていた本が読み終わったのか、それとも興味の対象が俺へと移ったのか……
 神父様は、持っていた分厚い本をぱたりと閉じた。

「はい。ちょっとした暖房具を作ってみました」
「暖房……ですか?」

 神父様は椅子いすから腰を上げると、そのまま俺の近くに歩み寄り、出来上がったばかりの魔術陣を覗き込む。
 そんな神父様に、俺はこの魔術陣がどういうものであるのかを軽く説明した。

「……つまり、この紙一枚で部屋が暖かくなると?」
「結果だけ言ってしまえばそうですね。まぁ、それもうまく起動すれば……の話ですけど。何しろこれはまだ試作品ですから。という訳で、今からレッツら実験です!」

 俺は机の上に置かれていた魔術陣の書かれた紙を手に取ると、書庫の中央へと足を運んだ。そして、出来上がった魔術陣を床の上に置き、魔力マナを供給。
 今回は実験ということで、範囲と温度はあらかじめ設定済みだ。
 最終的には、自由に温度設定できるものにしたいところだが、それはこの実験が成功してからでいい。まずは確実に稼働するものを作ることが最優先だ。
 ちなみに、設定範囲は書庫が収まる程度、温度は三〇度前後と多少高めに調整している。
 これくらい高く設定しておけば、魔術陣が機能したのがはっきりと分かるはずだ。

「それでは、スタート! ぽちっとな……」

 と、俺が魔術陣を起動させた途端……

「うおっ!」

 顔に、熱をはらんだ空気がぶつかってきた。

「これは……?」

 神父様が立っている所まで熱が伝わったのか、神父様は見えない何かを掴むように宙で手を振った。

「起動はうまくいったみたいですね。想定していたより温度が若干高いような気もしますが……概ね成功と言っていいと思います」

 あとは、このまま放置してどれだけ持続するか、だな。
 この魔術陣式暖房は、サイズ比率から見た魔力マナの消耗量が、今まで作ってきた魔道具の中でもずば抜けて多い。
 銭湯に使っている大型魔道具を除いた、個人用魔道具の中では最大級のものだ。それこそ、時間単位当たりの消耗量は洗濯槽よりも多い。
 一応、消費魔力マナの効率化、貯蔵できる魔力マナの改良など、今俺が持てる技術のすいを集めて挑んではいるが、はてさてどうなることか……
 コンコンッ。
 なんて話を神父様としていると、扉をノックする音が聞こえてきた。
 神父様が、どうぞ、と答えると扉はゆっくりと開き、そこから姿を現したのはシスター・エリーだった。

「神父様、昼食の用意……が? なんだかこの部屋だけ妙に暖かいですね? 暖炉を使い始めたのですか? あっ、でもこの部屋に暖炉なんてありましたっけ?」

 神父様に昼食の時間を知らせに来たらしいシスター・エリーだったが、扉をくぐるなりその表情に疑問の色を浮かべていた。
 この世界で使われている暖房装置といえば、暖炉が一般的だ。それはこの村とて例外ではない。
 気の早い人なら今の時期から既に使い始めている暖炉だが、生憎とこの部屋には設置されていなかった。
 ここは書庫だ。保管している物が物だけに、暖炉などの火の気は一切置かれていない。なのに、ここが外より暖かい、ということにシスター・エリーは疑問を感じたのだろう。
 確かに、シスター・エリーの言うように、魔術陣式暖房を起動させて幾ばくか経った今となっては、この部屋は暖炉をいた時のような温かさに包まれていたからな。
 シスター・エリーが感じた疑問も、もっともなことだ。

「はは、違いますよシスター・エンリケッタ。実はですね……」

 神父様は疑問符を浮かべたままになっているシスター・エリーに、魔術陣式暖房について話し始めた。何故か、神父様が妙に得意げに話していたのが気になったが……まぁいいか。

「……へぇ、火を使わない暖房、ですか? 手間も掛からず、まきも必要としないというのは実に魅力的ですね。それに場所を選ばず、どこでも使えるというのが素晴らしいと思います。この季節は、朝が寒くて起きるのも辛いですから……」

 神父様からの話を聞き終わったシスター・エリーが、ちょっと照れたように笑いながらそう言った。
 もしや、シスター・エリーは低血圧な人なのだろうか?
 俺自身、別に朝に弱いということもないのでよく分からないのだが、低血圧な人は冬の朝が相当にキツイと聞くからな。
 シスター・エリーもそのクチなのだろうか。

「いつも思うことですが、貴方はすごいですね。私も陰ながらではありますが応援しています。そして、願わくば貴方の才が、あまねく人のために向けられることを、私は望みます」

 やたら小難しい言い回しをするシスター・エリーだが、要は独り占めせず皆のためになることを考えてください、ってことだな。

「分かってますって。ちゃんと村の人たちも手に入れられるようにしますから」

 とはいえ今はまだ試作品なので、完成して実際に村に出回るのはもう少しだけ先のことだ。
 俺がそう答えると、シスター・エリーから〝それでは、楽しみにしていますので、是非がんばってください〟と熱いエールを頂いた。
 美人のねーちゃんからのお願いだ。この不肖ふしょうロディフィス・マクガレオス! 本気を出さない訳にはいくまいて!
 リュドみたいなガキに頼まれるより、一〇〇倍くらいやる気が増した。


「あっ! そうでした。神父様、昼食の用意が出来たので食堂へどうぞ。ロディの分も用意してありますので、よかったら召し上がっていってください」

 本来の目的を思い出したのか、シスター・エリーは胸元でパチリと手を合わせると、やや早口でそうまくし立てた。

「えっマジ!? ゴチになりますっ!」

 ということで、シスター・エリー謹製のお昼ごはんをご馳走になり、それからしばしの談笑を楽しんだ後で、暖房用魔術陣の様子を見に書庫へと戻ると……

「ぶわっ! なんだこれっ! 暑っ! てか、熱っ!」

 部屋が完全に蒸し風呂状態になってしまっていた。てか、完全に温度調節機能に不具合があるだろこれっ!
 これは早めに修正しないとな。
 なんてことを考えながら、俺と神父様は慌てて部屋中の窓を全開にして回ったのだった。


 三話 新しい事業、始めました

 魔術陣式暖房具の試作品を作ってから数日。
 試作を繰り返し、ようやくそれなりの機能のものが完成した。
 正直、まだまだ改善の余地を多分に含んではいるものの、取りあえずのところはこれでいいだろう。まずは、基本的な機能を持つことが重要なのだ。
 あわよくば、冷房の機能まで取り入れてエアコンにしようかと思ったのだが、そこまでは流石に無理だった。時間を掛ければなんとかなりそうな気はしている。
 まぁ、煮詰めるのはこれからでも十分できる。追求し出すとキリがないから、ここらを一応の目処めどとしようではないか。
 で、完成した魔術陣式暖房具の基本機能はというと……
 まずは、一度の魔力マナ供給で、最大約三時間の連続稼働が可能だ。最初に作った試作品が二時間持たなかったことを考えれば、随分な進歩だと思う。
 魔力マナの消費量が他と比べて多い魔道具ではあるが、一度に一〇個、二〇個と同時に起動させない限りは体の負担になるようなことはないだろう。
 次に、温度の調節機能だ。当初は、細かい温度設定をできるようにしようとしたのだが、どうにも思うようにいかず、結局五段階の切り替え式にした。
 試作品が暴走したのも、どうやらこの温度調整部分の回路が悪さをしているようで、まだ原因の解明には至らず場当たり的な手法で誤魔化ごまかしている。とはいっても、現状で何か問題がある訳でもないので、改善するのは追々だな。
 とまぁこんな感じで仕上がった。これからこれをどうするかといえば、当然量産する。
 今は一枚一枚、俺が手書きで作っているのだが、流石にアホらしくてやっていられない。勿論、そのための方法はしっかりと考えてある。
 今俺は出来上がった暖房用魔術陣を片手に、とある場所に向かっている最中だった。
 そろそろ試作品の第一号品が完成する頃なのである。
 村を出て、一〇分程歩くと目的の建物が見えてきた。
 ここは村からちょっと離れた元平原。だが、今やそこは戻り組の人たち向けの住宅密集地となっていた。
 何故こんな所に家が建っているのか?
 別に、戻り組の人たちをハブって村の外に追い出しているとか、そういう訳ではない。こうしなければいけない理由がちゃんとあるのだ。
 そもそも、村の中に家を建てようにも、手頃な平地は全て畑になってしまっているので、家を建てられるような空き地などない。だからといって、新たに整地をする程の時間も労力もない。
 だったら元々平地の場所に家を建てるしかない、ということで、元平原だったこの場所が選ばれたのだ。
 で、俺はそんな中にある、他の建物よりひと回り大きな一棟の中へと入って行った。

「うぃーすっ! じーちゃん、頼んでた試作品ってでけた?」
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