最弱で最強な人形使いの異世界譚

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん

文字の大きさ
321 / 353

三二二話

しおりを挟む

 調査の結果、思った通り一番状態が酷かったのが頭部で、大破一歩手前の中破といった感じだった。
 あのまま戦闘が長引いていたら、もしくは大きなダメージを受けるような攻撃をまともに食らっていたら、空間拡張術式にまで影響が出て、頭部に保管していた内容物によって内側から爆発四散していたところだった。
 それ以外は、脚の数本が僅かに曲がっていたり、外装が多少歪んだりと、小破というのも烏滸おこがましい軽微な損傷が沢山、といったような状態だ。

 胴体に損傷が少ないのにハッチが開かなくなったのは、おそらく頭部を攻撃された衝撃が玉突きの様に節を伝搬したことで、全体的に少しずつ歪んだでいった結果ではないだろうか? と見ている。
 事実、頭部に近い節ほど損傷の度合いが大きく、そして離れるほど小さくなっているからな。

 精密に作っている分、多少の歪みでもこういうことが起こってしまうのだ。
 ゲームのシステム的な意味でも、素材的な意味でも、そもそもが歪むなんてこと自体を想定していなかったからな。
 今後はこういう事態も考えて、一度設計を見直す必要がありそうだ。
 非常時の脱出手段を設けなり、多少の歪みを想定してクリアランスを設けるなり……まぁ、その辺りは追々考えていくことにしようか。

「ただいま~」
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ~……」

 と、状況確認をしつつ、修理箇所の点検をしているとマレアとセレスが戻って来た。
 戻って来たということは、例のミニゴーレムを捕まえたのだろう。
 思ったよりお早い帰還である。

 マレアは先ほどと何も変わった様子はないが、隣に立っているセレスは立っていることすら辛いといわんばかりに、息も絶え絶えといった様子だった。
 足など、生まれたての小鹿よろしくぷるぷるしているしな。

 だが、反面。胸に抱えたビンだけは、決して話さないとばかりに力強く抱えていた。
 抱えている所為で俺からはビンの中身は見えないが、捕まえたミニゴーレムが入っているのだろう。

「その様子から見ると、ミニゴーレムは捕まえられたみたいだな」
「まぁ、あたしにかれば楽勝ね」

 と、マレアが無い胸を張る。その一方、声も発せないほど息が上がっているセレスはコクコクと首を縦に振るだけだった。

「で? そっちはどんな感じなの?」
「動かせるには動かせるが、いつ壊れてもおかしくない状態だな。特に頭部の状態が悪い。
 先に進むにしても、戻るにしても、一度ここで修理はした方がいいのは間違いない」

 いつ爆発するかも分からない時限爆弾を抱えたまま移動なんてしたくはないのは当然だが、それ以上に頭部が壊れかけている、という方が今は問題だろう。

 というのも、【傀儡操作マリオネット・コントロール】を使用する上で、人形の頭部というのは非常に重要な要素になっていた。
 そもそも、【傀儡操作マリオネット・コントロール】はどんな形状でも好きに操れるわけではなく、現実生物、幻想生物問わず、とにかく生き物と認識出来る形状に近くないと操ることは出来ない、という縛りがあるのだ。

 そういう意味では、頭部というのは生物性を保つ上で非常に重要な要素の一つとなっており、その頭部が破損した途端、生物性が失われ、制御が出来なくなってしまうのである。
 
 いってしまえば、頭部とは【傀儡操作マリオネット・コントロール】において一番の弱点だともいえる場所となっていた。

 ちなみに、俺が所持している人形の一体に“鉄腕28号くん”という、外見的には頭を持たない人形がある。
 以前、自由騎士組合の依頼で街を囲う石壁、街壁を修理した巨大な人形だ。
 ただ、この鉄腕28号くんも本当に頭がないわけではなく、厳密には胸部と頭部が一体化した形状をしているだけなのだ。
 例えるなら、頭から直接胴体へと繋がっていて、頭の両サイドから手が生えているといった感じだ。

 一昔前にいた、天を突破するロボットみたいなアレだ。

 なので、人間らしい頭ではないが、ちゃんと頭部という部位は存在しているのである。

 で、その肝心な百貫百足の頭部が現状、大破寸前なわけだ。が、今からならまだ応急処置で十分対処可能だった。
 次に同等の戦闘を可能とするほどの修復は見込めないが、普通に動かす、つまり、自壊しない程度に修理するくらいなら問題ないだろう。
 
 このまま放置して、もし大破しようものなら即行動不能だからな。流石に、大丈夫だろうと楽観視もしていられない。 

 ちなみに、ここで頭部が大破した場合、頭部を一から作り直すまで、俺達はこの遺跡に閉じ込められることになる。
 地図はあるので、一応、徒歩でこのダンジョンから出られなくもないが、距離を考えるとな……
 入り口からここまでの直線距離は十数キロメートルといったところだろうが、内部が入り組んでいるために実際の移動距離はその数倍……下手をしたら十倍以上となる。

 正直、そんな距離を歩きたいとは思わんよ。

 ということを、二人に説明したうえで、俺は早速修理を開始。
 これにより、本日のダンジョンの探索は中断、再開も百貫百足の修理が終わってからというととなった。

 ♢♢♢ ♢♢♢ ♢♢♢ ♢♢♢

 修理を始めて数時間が経った。
 ぶっちゃけ、このダンジョンの特殊空間の所為で【形状変化シャープ・チェンジ】がまともに機能しない以上、百貫百足の直接的な修復は事実上不可能となっていた。

 ちなみに、リペアツールも試してはみたが、マキナバハムートの時同様、俺が思った成果は得られなかった。
 リペアツールの能力が、復元、ではなく損耗率の回復なので、破損した場所が破損した状態のまま、耐久度だけが回復してしまう、という状態になりあまり意味をなしていなかったのだ。

 ならば、どうやって修理しているか、だが、あくまで直接修理が出来ないだけなので、今は間接的な修理を行っている。
 
 まぁ、【形状変化シャープ・チェンジ】が機能しないのは、今のところアマリルコン合金のみに対してなので、破損したパーツなどを別の素材で代用して作り直しているというわけだ。
 使えるパーツは極力使い回し、曲がっている部分は黒騎士で無理やり叩いて板金加工、破損して使えない部分だけを別の素材で代替していく。
 
 しかし、そうした代替物は、当然アマリルコン合金より性能的が劣っている素材を使わざるを得ないのだが……
 取り敢えずは動いて壊れなければヨシっ! としよう。
 
 また、この修復作業により、空間拡張術式周りのパーツがごっそりと交換となったため、修復後はただの頭部となる予定である。

 ちなみにだが、百貫百足の頭部に収納していた瓦礫は、修復作業では邪魔になるので作業前にここから少し離れた所にすべて吐き出し、山積みにしていた。
 作業中に爆発でもしたら、たまったものではないからな。
 
 で、そうして俺が百貫百足の修復に勤しんでいる間、セレスとマレアの二人が何をしているかというと……

 セレスは、足り回って汗だくとなったからシャワーを浴びる、と帰って来て早々、居住エリアへ向かっていった。
 あくまで壊れかけているのは百貫百足の頭部だけであり、胴体の方には何の問題もないため、そちらの設備は正常に稼働中である。

 で、今はシャワーからも出て、リビングを我が物顔で占領してミニゴーレムについて研究している。
 さっき、小休憩を取りに居住区に戻ったら、テーブルの上にミニゴーレム入りのビンを置き、カリカリと何かを書き留めているセレスの姿がそこにあった。
 あまりに真剣だったっので、その時は特に声を掛ける様なことはしなかったが、あれはほっとくと、またいつまでも研究してそうなので、あれは適当なタイミングで無理やりにでも切り上げさせないとダメそうだな。
 
 一方、マレアの方はというと、特にすることもないからと、この大広間から先のダンジョンの様子を、先行偵察しに行っている。
 今まで流れから察するに、特に変わり映えもなく同じような迷路が続ているだけの様な気もするが……

 こればかりは、マレアの報告待ちである。
 
 それからまた少し時間が過ぎ、取り敢えずの応急修理の目途が立ち始めた頃……

「ただいまぁ~」

 と、マレアがふらっと帰って来た。

「お疲れさん。随分と遅かったが、何か目新しい発見でもあったのか?」

 マレアの身体能力を考えれば、特に心配などはしていなかったが、帰りが遅かった理由を聞いてみる。
 流石に、この期に及んでサボりとかではないと思うが……
 
「いやぁ~、それがさぁ! 大発見も大発見! この先、すんごいことになってるからっ!」
「すんごいこと?」
「まぁ、それはセレっちも含めて後で話すから楽しみにしてなって。
 で、そっちの方はどんな感じなのかな?」
 
 マレアの言葉がかなり気にはなるが、後で話すと言っているのだからここで追及する意味もないだろう。
 
「そうだな。急ぎでやれば今夜中には応急修理が終わって、明日からは活動が再開出来るってところだな。
 ただ、機体性能……特に防御面ではかなり低下するから、今回みたいな戦闘はもう無理だ。
 仮に、この先にここと同じようなゴーレムがいた場合は、その時点で撤退になるだろうよ」

 と、現状を報告。

「ああ、それなら問題ないかも。ここから先にはもう迷路はなかったから」
「迷路がない? てーと、ダンジョンはここまでってことか?」
「そっ。つまり、ここが迷宮の終点ってわけ」

 ならこの先には何が……
 マレアは一体何を見て来たっていうんだ?

「んじゃ、あたしも見て来たことを話すから、スグミくんも一旦手を止めて着いて来てくれるかな?」

 そういうマレアに、分かった、と頷いて作業の手を止めると、マレアと着いて居住エリアへと向かうことにしたのだった。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

処理中です...