最弱で最強な人形使いの異世界譚

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん

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二五八話

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 ……なんてことを話している間に、目的地である王宮内の会議室前までやって来た。

「はい、どーぞ」

 で、マレアは特にノックをすることもなく、ガチャリと思いっきり扉を開く。

「フューズ卿の所にはさっき人を送ったから、来るまで少し待っててね」

 王宮に入った直後辺りで、マレアが通りかかった侍女を捕まえて何か話していたことを思い出す。
 あれがその使いに出した侍女なんだろうな。

「あいよ」

 俺はそう軽く答えると、マレアが開けてくれた扉を潜り中へと入る。と……

「おはよう。昨日ぶりね」

 会議室へと入るや否や、突然、聞き覚えのある声でそう話し掛けられた。
 視線を声の方へと巡らせると、案の定、そこには見知った顔の女の子が椅子に座っている姿が目に付いた。

「セレス? なんでここに?」
「さぁ? 私もよく分からないのよね」

 そう言うと、セレスは肩を竦めて困った様に首をかしげて見せた。

「昨日、スグミと別れた後、研究室に帰って来たら、今日、ここに出頭するように連絡が残されていたのよ。
 ただ、召喚理由が分からなくて……多分、詳しいことは今から聞かされるのだと思うけど……」
「へぇ~、そういうこと普通にあることなのか?」
「いいえ。少なくとも私は初めての経験ね。……で、隣にいるその子は?」

 そこまで話して、セレスの視線が隣へとずれる。
 その視線の先を追うと、俺の隣でちょこんと立っているマレアへと辿り着いた。

「あっ? あたし? あたしは、女王陛下付近衛侍女隊所属の侍従騎士、マレアちゃんですっ! マレアちゃんって呼んでねっ♪」

 んで、キラッとでも効果音が付きそうな、どこぞのアイドルのようなキメポーズをとる。
 
「侍従騎士様っ! アンジェリカ様と同じ部署の方だっとはっ! 知らずご無礼な物言い、誠に申し訳ございませんでしたっ!」

 そういうと、セレスは座っていた椅子から飛び上がり、深々と頭を下げる。

「あはははっ、そんな畏まらなくてもいいよ~。あたしはアンジーみたく貴族ってわけでもないし、実際、いう程偉くもないしね」

 そんなガチガチに畏まるセレスに対し、マレアの方はといと実にあっけらかんと笑っているだけだった。

 まぁ、セレスがこういう反応になる気持ちも分からなくはないがな。

 というのも、以前、セレスから聞いた話しだと、セリカやマレアといった女王に付き従っている騎士を侍従騎士というそうなのだが、彼女達侍従騎士は、王宮内でもかなり高い地位にいるエリート中のエリートなのだと、そう言っていた。
 セレスが初めてセリカにあった時にもガチガチになっていたのは、そういう理由があるからだそうだ。

 これを無理やり俺にも分かりやすい感覚に置き換えるなら、セリカやマレアはいうなれば、大企業の本社の重役、といった感じで、セレスが支店の課長とか部長といった感じだろう。

 で、今のセレスの状況を、これに当てはめるなら、高々支店の課長、部長程度の人物が、顏を知らなかったからと本社の重役に対して、誰だこいつ? っと言った様なものなのである。
 そりゃ、冷や汗流しながら平謝りもするわな……

 しかもマレアの場合、見掛け小学生だからぱっと見は見習い侍女だと思ってもこれは仕方がないことだ。
 というか、むしろ見かけがコレなマレアが悪いといえなくもないしな。

 そんなわけで、一応、マレアはこう見えて自称一七歳の二三歳で、人間でではなくハーフコビットという種族であることを、セレスに軽く補足説明しておく。
 見たままの年齢だと誤解したら大変だからな。

「あたしはあんまり身分の話しとか好きじゃないから、はいっ、この話しはここまでね。
 で、えっと、キミが最年少で学部長になったっていうセレスちゃんだよね?」
「あっ! はいっ! お初にお目に掛かります。セレス・マクレーンと申します。存じて頂いていたこと、光栄に思います」
「あはは……だから、そんなに硬くならなくてもいいって。セレスちゃんとはこれから同僚として働くことになると思うし」
「えっ? 同僚とはどういう……」
「まぁ、そこも含めて追々説明されるから」
「はぁ……?」

 何とも中途半端な説明に、セレスの顔に疑問符が浮かんでいた。
 マレアの言動から察するに、どうやらセレスも今後の俺に関係して来るみたいではあるが……
 マレアのケースとは違い、セレスがどういう関わり方をしてくるのかは、まったく見当もつかないな。
 なんて考えていると……

「で……」

 そこで言葉を切ると、マレアがニヤリと何かを含んだような嫌らしい笑みを浮かべて俺を見る。

「この子が、スグミくんが頻繁に人気のない森に連れ込んでいる子、だと?」
「だから言い方」
「痛ったぁーい!」

 そう言ってニヤニヤ笑うマレアの頭部に、教育的指導も兼ねて俺はペシリと軽く手刀を落とす。
 中学生くらいの女の子に下ネタかますとか……何考えてんだこいつは……

「?」

 ただまぁ、当の本人はマレアの言ったことの意図が理解出来ていないようで、こっちを見たままただポカーンとしているだけだったのは幸いか。
 まぁ、そりゃ、さっきの話しを知らなければそうなるわな……
 
「……もうっ、痛いじゃないっ!」
「変なことを言うお前が悪い。てか、言う程強くは叩いてないだろ? 大げさな……」 

 女の子に手を上げるとは何事だっ! みたいな抗議をするマレアを軽くいなし、溜息を吐く。
 そもそもモヤシな俺の手刀だ。それもかなり力を抜いているので痛いわけがないだろうに。

 ガチャ

 なんて遊んでいたら、扉が開く音が室内に静かに響いた。
 三人揃って扉へと目を向けると、ちょうど軍服に身を包んだいぶし銀なナイスミドル、ラルグスさんが部屋に入って来るところだった。
 その後ろに、従者? 秘書? らしき、同じ軍服を着た若いイケメンが続く。

 で、ラルグスさんが部屋に入って来るのを見るなり、セレスとマレアが腰を折りこうべを垂れて、空かさず礼の姿勢を取る。
 おっと、これは俺もやらないといけないヤツだな?
 と、思いセレス達の真似をしようとしたところで……

「公式の場というわけでもないのだ。そう畏まる必要はない」

 と、先に言葉と手で制された。
 それを機に、セレスとマレアも下げていた頭を上げる。

「どうやら全員揃っている様だな。では掛けたまえ」

 ラルグスさんは俺達を軽く見回すと、秘書らしきイケメン君が引いた椅子に腰を下ろした。
 俺達もそれに倣い、椅子に座る。
 座席位置は、マレア、俺、セレスで対面にラルグスさんといった感じだな。
 イケメン秘書君はラルグスさんの後ろに立ったままで、座る様子はない。
 
 そうだっ! イケメン野郎ははそのまま一生立っていればいいんだ! 椅子に座ろうだなんて一〇〇年早いんだよっ! 
 ……おっと、暗黒面に支配された持病のシャクが発病してしまった……

 ちなみに、持病のシャクとは、漢字では“癪”と書き、主に胸や腹の痛みのことを言う。
 なので、俺の持病とはなんの関係もなかったりする。

 なんて、アホなことを考えている場合でもなかったな。
 俺は全員が座ったところで、さっそくラルグスさんに本題を切り出すことにした。
 
「で? 今日はどういったご用件で?
 軽くはセリカから聞いてますが、詳しくは何も聞いてないものでして」

 と、口に出した途端。
 両隣のセレスとマレア、それとラルグスさんの背後に控えていたイケメン秘書君がざわ付くのが肌身で感じ取れた。
 何だ? 俺、何かしたか?

「ちょっとスグミくんっ! こういう場では、一番暗いが高い人が呼び出した内容を話すまで、下の者は話したらいけないって常識でしょ!」
「えっ? そ、そうなのか?」

 で、その雰囲気に困惑していたら、マレアが横から小声でそう説明してくれた。
 いや、知らんがなそんなん……

「でも、前に呼び出しくらった時は、そんな感じてもなかったんだが……」
「いや……あれは、異例中の異例な出来事だったから……」

 と、今度は逆サイドのセレスからそう言われた。
 いや、知らんがなそんなん……

 そんな中、ラルグスさんがすっと手を上げ、そんな二人に待ったを掛けた。
 
「気にしなくてもよい。先も言ったが、ここは公式の場ではないのだ。
 そもそも、スグミ殿は我が国の臣民ではない。そのような者に、この国の作法についてとやかく言うのは筋違いというものだ。
 むしろ、こらちが先の一件で彼に借りを持つ身なれば、我らこそが礼を尽くすのが必定というものだろう」

 何かしらんが、ラルグスさんから作法無視でオッケーという許しが出たっぽい、ということだけはなんとなく分かった。
 流石は公爵の言葉。二人もならばと、言葉にこそ出さないが納得した様子ではあった。

「では、今回の要件についてたが……」

 というわけで、何か一悶着あったが、こうしてラルグスさんから今日の呼び出し理由の詳細について説明を受けることになったのだった。
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