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二二五話
しおりを挟む「さて、んじゃ帰るか……って、帰っちゃいかんのか」
そういえば、セレスが外で転がっているベルへモス(仮)の死体の調査がしたいと、そう言っていたことを思い出す。
「思い出してくれたようで何よりだわ」
と、そんな俺にやや呆れた様子のセレス女史からお褒めの言葉を頂いた。
というわけで、俺達は三人揃ってドラグバハムートの外へと出ることにした……のたが……
「なっ、なっ、なんじゃこりゃああ!」
俺は、変わり果てたドラグバハムートの姿を見て、太陽にほえたデカ並みに絶叫した。
元は金属光沢のような美しい紅い光を放つ外装が、今は全身焼け爛れたように変色と変形をしており、元の美しさなど見る影もない……
「ほぉ~、姿が変わった、とは聞いていたが、今はこんな姿になっていたのか。
こうして見ると、まるで鎧をまとった巨大な騎士だな」
「何をどうしたら、ドラゴンから人型になるのか、非常に興味が湧きますね」
で、物見遊山な二人が、背後で初見となるドラグバハムートについて好き勝手な感想を述べていた。
それにしても、だ。
これは酷いな……
ゲーム時代は、武器や防具がどれだけダメージを受けたとしても、耐久力が少なくなるだけで外見的な変化は殆どなかった。
まぁ、一部、ダメージによって形状変化する類のもはあったが、それらは例外だな。
とにかく、だ。
ゲーム時代なら、どんな激戦だったとしても、パーツ自体が破損、変形などすることはなく、喩えパーツにダメージあったとしても、リペアツールという修復アイテムを使えば、ちょちょいと叩くだけで簡単に耐久力を回復させることが出来たのだが……
出来るか? これ? 無理臭いよなぁ~、一応試してはみるけど……望み薄である。
というわけで、チェストボックスからハンマー型のリペアツールを取り出し、早速損傷した外装を叩いてみたのだが……
うん。変形した状態のまま、耐久力だけが回復しました。
意味無ぇ……意味無ぇよそれは……
俺はその場に膝から崩れ落ち、絶望するのだった。
にしても、とんでもないことになったな……
おそらく、最後にベルへモス(仮)が放ったゲロビでこのザマである。まともに攻撃を受けたのって、あの一回だけだからな。
特に頭部、両肩、両足、体の中心部から遠い部分の損傷が非常に激しく、一部は装甲ごと吹っ飛んでいる場所もあった。
これもゲームから現実化した影響なのだろうが……どうすんだこれ?
ドラグバハムートは、その内部に人体を模した骨格が作られており、その外側に装甲を被せる、というインナーフレーム構造になっている。
この骨格であるインナーフレームと、外部装甲を可動させることで、人型からドラゴン型、ドラゴン型から人型への複雑な変形を可能にしていた。
ちなみに、このインナーフレーム構造は黒騎士も同様である。
なので、最悪、いくらガワが吹き飛んだり傷ついたりしたとしても、外装の張替えだけなら、簡単……とはいわないが、修理は可能だった。
ただ、問題なのは肝心の中身の方……なんだよなぁ……
ドラグバハムートの骨格を形成しているメインフレームは、複座な変形を可能にするため、かなり精密に作られていた。
仮に、インナーフレームにも損傷、歪などが出来ていたら、すべてをバラしてのオーバーホールが確定する。
ドラグバハムートはこのサイズだからな……
すべてをバラしての修理となると、どれだけの手間が掛かるか分かったものじゃない。
一応、戦闘後も問題なく動いていたので、インナーフレームの方は無事……だと信じたいが……
こればっかりは、一度確り調べてみないと分からんよなぁ……
余談だが、体の外側の損傷に対して中心部の損傷が軽微なのは、間違いなく“極光壁”のおかげだろう。
“極光壁”があのゲロビを弾き、耐えてくれていたからこそ、
この程度のダメージで済んでいるのだ。
“極光壁”を使っていなければ、もしくは“極光壁”がゲロビに負けていたら、コクピット周りも無事で済んだかどうか……
そう思うと、今更ながらにぞっとする話しだ。
で、俺がドラグバハムートの修理をどうしようかと頭を悩ませている傍らで、こちらの気も知らないと、セレスが嬉々として早速ベルへモス(仮)の調査に取り掛かっていたのだった。
♢♢♢ ♢♢♢ ♢♢♢ ♢♢♢
「もっと上っ! 上っ! 上っ! はいっ! ストップっ!」
ドラグバハムートの手の平にセレスとセリカを乗せ、俺は言われるがままにドラグバハムートを操作する。
ベルへモス(仮)の調査を行っていたセレスだったが、調査は直ぐに難航してしまった。
というのも、調査対象のベルへモス(仮)があまりにも大きすぎたからだ。
地面から調べられることなど限られており、セレスの身長では、というか、人の身長では調べられる場所など、本当に極僅かしかなかったのだ。
そこで、セレスが目を付けたのがドラグバハムートだった。
ドラグバハムートで持ち上げてもらい、本来、人の目の、手の届かない所を調べようと考えたらしい。
思い立ったが吉日と、セレスがベルへモス(仮)の調査をしているその裏で、ドラグバハムートの修理方法について頭を悩ませていた俺を無理やり担ぎ出し、こうして人型重機として調査に協力させられている、というのが現状である。
ちなみに、さっきからドラグバハムートの各種関節からギシギシと変な抵抗が感じられていた。
いや、まだ……まだ慌てる時間じゃない……
肘とか膝が、ちょっとだけ曲がってしまっているという可能性だってある。
まだ、オーバーホールが確定したわけじゃない……大丈夫、大丈夫。
そう自分を言い聞かせながら、使いっぱしりヨロシク、セレスに顎で使われること約二時間……
「どうだ? 満足したか?」
「満足か、と聞かれれば大いに不満ね。まだまだ調べたいことがいくらでもあるもの。
でも、まぁ、ここでの調査はこんなものかしらね。どのみち、これ以上詳しく調べるには、私一人じゃ到底無理だし、そもそも機材もなにもない今の状況では出来ることもないもの」
一応の調査は終了したとセレスが言うので、そう聞いてみたら不満が噴出した。
「こんな場所じゃ、調査員を連れてまたやって来る、なんて無理だろうし、本当に残念だけど、この検体は置いて行くしかないわね……」
と、心底残念そうにセレスが言う。
そういえば、なんか伝説級とかに珍しい珍獣なんだっけ、こいつ。
日本風に例えるなら、山奥でツチノコを見つけて捕らえたはいいが、デカすぎて一人じゃ運べない、みたいな状況なんだろうな。
世紀の大発見だから、持って帰りたいのはやまやまだがその手段がない、とまぁ、そんなところか。
「なんだ? 欲しいなら持って帰るか?」
なんだかその様子が可哀そうになり、軽く俺がそう声を掛けると……
「出来るのっ!?」
「だから、近い近い……」
相も変わらず、凄い勢いで詰め寄って来るセレスをやんわりと押し退ける。
「お前が亜空間魔術を使えるのは知っているが……このサイズだぞ? いけるのか?」
で、今度はセリカがそう聞いて来る。
「まぁ、いけるだろ」
ただ、消費MPが凄いことになりそうではあるが……
俺のスキル【亜空間倉庫】は、単一アイテムであるなら、MPを対価にどんな大きさのアイテムでも収納することが出来るスキルだからな。
そして、死んだモンスターならアイテム扱いとしてインベントリないし亜空間倉庫に収納出来ることは、ロックリザードやアーマジロで実証されている。
なので、このサイズでも問題ないはずだ。
というか、実はこいつよりデカい物が、既にいくつか亜空間倉庫の中に入っていたりするんだよなぁ……
昔、どれくらいの大きさのものまでしまえるか、実験をしたその名残である。
しまったはいいが、出すにも膨大なMPが必要で、それが面倒になりそのままになっているっていうね……
というわけで、ほいっとベルへモス(仮)を亜空間倉庫へと収納する。
うおぉ……ドラグバハムートの一〇倍くらいMPを持っていかれたな……
激減したMPは、MP回復ポーションで即座に回復しておく。
「……これで本当にしまえたの?」
目の前でベルへモス(仮)が消失するのを見てから、セレスがそう尋ねて来た。
「ああ。ただ、消耗するMP……魔力が尋常じゃないから、証明の為にわざわざまた出す、なんてことはしないけどな」
「まぁ、こいつが“出来た”と言うのなら、そうなんだろう。以前から我々の常識など、軽く蹴り散らす男だからな、こいつは。
だから、セレス殿も安心するといい」
半信半疑。そんな様子のセレスにセリカが自信を持ってそう言うのだが……
それは褒められているか? それとも、貶されているのか?
まぁ、どっちなのかは分からんが、取り敢えず褒められたのだろうと思うことにした。
と、そんなこんなで、セレスの調査も終わり、俺達は王都への帰路につくことにしたのだった。
ただ……
帰りはメッチャ時間が掛かったがな……
帰りは王都まで一直線、とはいえ、ドラグバハムートからマキナバハムートへと変形する際、上手く稼働しない場所があったり、速度を上げると途端にバランスを崩して墜落しそうになったりと……そりゃもう散々な状態だったのだ。
これ、絶対インナーフレーム逝ってるぞ? はい、オーバーホール確定ですねっ! チクショーがっ!
どうすんだよ、マジで……
おかげで、ゆっくりゆっくり安全運転での飛行となり、帰るのに三時間も必要としてしまった。
王都に着いた時には、すっかり夕方になってしまっていたのだった……
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