最弱で最強な人形使いの異世界譚

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん

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一九六話

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 こればっかりは、免許書や保険証のような簡単に年齢を証明出来る物がない以上う、信じてもらう他はなく。
 一応、種族的に若く見られがちだという話しはしたが、マレアには中々信用してもらえなかった。
 しかも散々、二七には見えないっ! と言われたが、お前が言うなやといいたいよ、俺は。

「なんかこっちも色々順序がおかしくなっちまったけど、俺はスグミ。セリカから色々と話を聞いてるかもだが、一応、銀級の自由騎士をやってるよ。
 今日は、その仕事関係で相談したい事があって、セリカを尋ねて来たんだ」

 で、なんだかなんだあって、遅ればせながらこっちも軽く自己紹介をしつつ、ここに居る目的も話しておく。

「ああ、やっぱりキミがあの“スグミ”だったんだ。
 アンジーが“スグミ”って呼んでたからもしかして、とは思ってたけどさ」

 そういうと、マレアはごく自然な流れでセリカの隣に腰を下ろす。
 どうやら自分の仕事に戻るつもりはなく、このまま話をする気満々のようだ。
 仕事はいいのか? 

「えっと……スグミ殿? で、いいのかな? かな?」
「呼び方はお好きにどうぞ」
「んじゃ、割と年が近いからスグミくんで。キミにつてはアンジーから色々聞いてるよぉ~。
 国宝級の魔道具を大量に、しかも無償で騎士団に寄贈したとか、あのクッソ生意気なギュンターをボコにしたとか、一枚ン前千万ディルグもする白金貨をメッチャいっぱい持ってるとか一枚くださいっ!」
「……やらねぇよ」

 何さらっと流れるように強請ねだってんだこいつは……

「ちっ、このケチンボめ……」
「ケチとかそう言う話しじゃないだろ……」
「えー、でもアンジーには金目のものをいっぱいあげてんじゃん! 
 あたしは知ってんだぞ! だから、あたしにも何かちょうだいっ!」

 と、唐突にその小さな手をずいっと俺へと向かって突き出すマレア。
 こいつ、薄々は感じていたが、中々にいい性格をしているらしい。

「あれは、騎士団の代表としてセリカに渡しただけで、セリカ個人に渡したわけじゃないの」
「そうだぞ。スグミから渡された物は、すべて陛下に献上したのをマレアも見ていただろ?」

 と、俺の言葉に首を縦に振りながら同意するセリカ。

「むぐぐぐ……んじゃんじゃ、あたしも騎士団の為に使うからさぁ~、ねぇ~?」
「ダメです」
「もぉ~、しょうがないなぁ~。この欲張りさんめっ♪ それなら今晩、じっくり付き合ってあげるからぁ~、ね?」

 そう言って、マレアが体をクネクネさせて品を作りつつ、チラチラ上目遣いで俺を見る。
 要は、夜のお誘いだ。が……

「俺はボンとしてキュとしてバンなのが好みなんでな。寸胴体形に興味はありませんので、別の種族に転生してから改めて出直して来てください」

 と、そんなマレアを俺は一刀両断で斬り伏せた。
 いくら中身が大人とはいえ、見た目小学生から迫られてもな……
 俺にそっちの方の趣味は無い。

「ちょっ、いくら何でもそれは酷くないかな? かなぁ~? いたっ!」
「悪ふざけもそこまでにしておけ」

 俺の発言に抗議をするマレアの後頭部に、ポスンっと静かにセリカの手刀が突き刺さった。

「悪いなスグミ。根は悪い奴ではないんだが、少し悪乗りする悪癖があってな……」
「まぁ、途中からなんとなくそんなんじゃないかなとは思っていたよ」

 本心からの言葉、というよりは友達感覚の軽いノリ、みたいなのは感じていた。
 人懐っこいというか、フレンドリーというか、まぁ人好きのする性格、というやつだ。
 これでもしマレアが、一般的な人間の・・・成人女性だったなら、小悪魔女子として、さぞ勘違い男を量産していたことだろう。
 それを考えると、ある意味今のコビット族? でよかったのかもしれないと思う。これなら流石に被害に遭う男もいまいて……いない、よな?

「もぉ~、アンジーちゃんっ! お姉さんはそうやってすぐ暴力に訴えるのは良くないと思いますっ!」
「誰がお姉さんだ……ならばたまには年相応の振舞を見せたらどうだ?」
「え~! このあたしから滲み出ねお姉ちゃんオーラを感じられないなんて、アンジーちゃんもまだまだ子ども……オーケー、マイシスター……取り敢えずその振り上げた手をゆっくりと降ろそうかな? かな?」
「まったく……腕は立つのに、どうしてこいつは真面目にしていられないのか……」

 へぇ~、やっぱり王女の側仕えというだけあって、これで優秀な人材ではあるらしい。
 セリカがそう言うのなら、間違いはないのだろうが……
 ただ、マレアがどういう風に、腕が立つ、のかはイマイチ想像出来んよな。
 体格的に、セリカみたく刃物を持って切った張ったをするようには見えん。
 となると、魔術士方面として優れている、ということだろうか?

 まぁ、そこまでマレアという女性に興味があるわけでもないので、詳しく聞くようなことはしないけど。
 しかし、だ。
 その優秀な側仕えが、何故、談話室で給仕仕事をしているのは非常に気になるところではある。 
 女王陛下の護衛はいいのか?

「まったく、アンジーは冗談が分からんちーな子なんだから……」

 そんなセリカに、今度はマレアが、やれやれ、と言わんばかりに肩を竦めて見せた。

「あっ、でもでも! 本当に何かくれるっていうなら、あたしは何時でもウエルカムだからね! 期待してるよ、スグミくん♪」

 で、すぐさま俺へとパチリとウインクを飛ばす。

「はぁ~、仕方ないな。それじゃこれでもやろうか……」
「えっ!? マジでなんかくれるの!? やったー! 何かな? 何かな?」

 そう言ってワクテカしているマレアの目の前に、俺はインベントリにたまたましまってあったある物を取り出し、マレアへとそれを手渡した。

「はい、お嬢ちゃんにはこれを上げよう」 
「わーい! リヨンだぁ! あたしこれだいすき~! ハグハグハグハグハグっ!」

 俺が渡したのは、真っ赤な色をした手の平サイズの果物だった。 
 マレアが言ったリヨンとは、この果物の名前である。ちなみに、リヨンとはリンゴによく似た果物だ。
 これはつい先日、たまたま八百屋で買った物の残り物である。
 そうして、俺からリヨンを受け取ったマレアは、まるで親の仇の様に渡したリヨンをムシャムシャと豪快に食べ始めたのだった。
 最早、やけくそみたいなノリだな。実際、目が少しムキになっている感じがする。
 なんだかんだ言って来たが、俺はこういうノリのイイ奴は嫌いじゃないんだよなぁ~。 

「ごちそうさまでしたっ! はいっ!」

 猛烈な勢いでリヨンを喰い尽くしたマレアが、意趣返しとばかりに残った芯をずいっと俺へと突き返す。
 これを俺にどうしろと? にしても綺麗に食ったな……本当に芯の部分しか残ってない。

 さて、この残骸をどうしたものかと悩んでいたら、セリカが「控えている侍女に片付けさせよう」とメイドさんを呼んで片付けてくれた。

「そういえば、仕事の話しって言ってたけど、もしかしてまたエルフ関連?」

 メイドさんが残骸を片づけてくれた後、リヨンの繊維が歯にでも挟まったのか、歯の隙間に爪を立ててシィーシィーしていたマレアがそんなことを聞いて来た。
 てか、年頃の女性がするこっちゃないだろ……
 お前はおっさんか? 俺でもそんなことはしないぞ?

「いや、先日話した銀狼族の幼生の件だ」
「ああ、アンジーがワカイイカワイイって、ベタデレしてた子ね」

 ベタデレって何だよ……と思ったが、まぁ、なんとなくニュアンスは分かる。
 きっと、べた褒めのデレ版、とかそんな感じだろう。
 しかし、普段から凛としているセレカがベタベタにデレているところは、ちょっと見てみたい気がするな。

 そんなわけで、俺が報告した内容をセリカがマレアにも掻い摘んで説明する。
 
「うえっ、なんか大事になってんじゃん……
 で? 王都に潜入したのってその二人で全部なのかな? かな?」
「さぁな。昨日の段階では他に仲間がいる様子はなかったな。取り敢えず、それも含めて今後、事情聴取すれば分かることだろ」

 そんなマレアの疑問に、俺はそう答えた。
 他に仲間がいる可能性については、俺も考えていた事ではある。
 俺の方と、セリカの方で二手に分かれたという可能性だ。

 しかし、話を聞けばセリカの方ではまったく何も起きていなかったことから、その線は薄いのではないかと思っている。
 とはいえ、あくまで可能性の話しだ。

 こうして俺が宿屋を離れている間に、もしかしたら、捕まった仲間を助けるために、他の奴がイースさんとミラちゃんがいる宿屋を襲うのではないか? とも思ったのだが、流石に人目の多い昼に襲撃するようなこともないだろうと、考えを改め、こうしてセリカのところへと足を運んでいる、というわけだ。

 一応、もしもの為の保険とし、煙玉(催涙弾)などの護身アイテムをミラちゃん達にいくつか渡して来ていたが、使わないで済むのならそれに越したことはない。

「なるほどね……さてっと、それじゃあたしはそろそろ戻らないとかな。これ以上サボってると、また侍女長からお説教されて、懲罰労働が増えちゃうからねぇ~
 非番出勤で手当なしとか、マジありえんてぃ~」

 って、やっぱサボてやがったのかこいつ。
 てか、懲罰労働って……つまり何か? 何か粗相をして、その罰としてメイドとして働いているってことか?
 マジでなにしてんだよこいつ……

「……自業自得だろうが。それに、懲罰なのだから手当など出なくて当然だ」

 そんなマレアの愚痴に、セリカがそう冷たく言い放つ。

「はいは~い、お客様、お説教はご遠慮くだいさぁ~い。
 ああ、そうだ。この件に関しては私からアテンツァ侍女長に報告しておくから、アンジーはゆっくりしていていいよ~」
「どうせサボっていた口実にでも使うのだろ?」

 アテンツァ侍女長というのが、おそらくマレアの上司なのだろう。
 その人に、大事な話しを聞いていたから、戻るのが遅くなった、と言えば、まぁ確かに体裁は整うだろうからな。

「そゆこと~、それじゃね♪ スグミくんもまったねぇ~♪ 今度また何かちょうだいね♪」

 そう言うと、マレアは手を振って談話室を出て行ったのだった。
 なんというか……セリカとは何もかもが対照的な奴だったな。
 なんとも騒がしいうえに、割と不良騎士でもあるようだ。
 
 そんなマレアが退室した後、俺達も出された飲み物に口を付けつつ、これからの予定について少し話しを詰め、その後、談話室を後にした。
 ここからは例のワーウルフ二人組を移送する為、俺は準備の為に宿へと戻り、セリカは移送用の馬車を用意する為に一度実家に戻ることに。
 そのため、セリカとは一旦ここでお別れである。
 まぁ、とはいえすぐに合流することになるんだけどな。 
 
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