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一二〇話
しおりを挟む俺は、ノマドさんから差し出された木箱をそっと受け取った。
木箱の蓋に、何やら薄っすらと文字らしきものが書かれているが、色が薄過ぎることと、それと擦れもあって読み取ることは出来そうもない。
俺は木箱の蓋に手を掛け開くと、そこには大きな赤黒い石の様な物が一つ入っていた。
これが竜の血? 俺が知っている竜の血とは随分と違うな。
俺が知っている竜の血は真っ赤な液体で、また、それを精製して作った竜血晶はルビーの様に紅く透き通った宝石にも似た結晶体だった。
ノマドさんに竜の血だと言って渡されて物は、そのどちらにも似てはいなかった。
一見しただけでは、石の様にも見えるし、何かしらの鉱物の様にも見える。
とはいえ、このまま眺めているだけでは始まらないので、それを手に取り、スキル【材質鑑定】を起動する。
まずは、これが何なのかをはっきりさせないとな。
で、ARウインドウに表示されたのは……
【竜血晶・品質6】
と、出た。
……マジか。
「……これ、正真正銘の竜の血ですよ。しかも、精製済みの竜血晶です」
「本当かいっ! 良かった……これであの子は助かるんだね?」
俺の言葉に、ノマドさんは満面の笑みを浮かべる。
「え、ええ。そうなんですけど……竜血晶を一体何処で?」
まさか、この世界で『アンリミ』産のアイテムが手に入るなんて……
手に入るとは思っていなかったので、半ば、秘薬丸を作ることは諦めかけていたからな。
「それは、私も分からないのです」
「は? それってどういう……」
「実は、この蔵は私の御師様が、薬材を保管するのに使っていた場所なんですよ。
スグミ殿から竜の血の話しを聞いて、昔、御師様が酒の席でした自慢話を、ふと思い出しましてね。もしかしたらと思い、こうして蔵を浚ってみた、というわけです。
正直、“若い頃、竜の血を手に入れる為に大陸中を旅してようやく手に入れた”なんて話し、今の今まで御師様の与太話だと思っていたのですが……
私自身、本当に出て来るとは思いもしませんでしたよ」
自分自身が半信半疑だったから、特に誰に話すでもなく一人黙々と捜していた、ということらしい。
幸運にも、その時の自慢話に外見の特徴も多く語られていたそうなので、後は特徴に合致するものをひたすら探し続けていた、ということだった。
ちなみに、この蔵が今の今までまったくの手付かずになっていたのは、ノマドさんの師の教えが関係しているらしい。
「生薬とは、採取する場所、季節、その年の天候など様々な要素が、薬効に大きな影響を与える物なのです。
なので、薬師は自分の目で見て、自分の手で採取した薬材以外を信用してはいけない。というのが師の教えでした」
ということで、喩え師匠が集めた薬材であったとしても、ノマドさんは師の教えを守り、それらには一切手を付けていなかったというのだ。
そのお師匠さんも、随分前に現役を引退し、その時に、この診療所を師から受け継ぎ今に至る、ということらしい。
元々は診療所関連の建物しかなかったのだが、診療所に常に薬師が居た方が村の人達も便利だろうと、ノマドさんがここに住居を併設。
その結果、ノマドさんの家に師匠の蔵がある、という状況になっているようだ。
しかし、その師も一〇年ほど前に老衰で他界してしまったと言う。
もし生きていれば、もっと簡単に見つかったかもしれないな。
まぁ、見つかったので、結果オーライか。
「それじゃあ、材料も揃ったので、早速調合を始めましょうか。
何処か、作業が出来る様な場所を貸して頂きたいのですが?」
「それなら私の調薬小屋を使って下さい。
それで……不躾を承知でお願いしたのですが、後学の為にも調薬するところを拝見させて頂けないでしょうか?」
そう言うと、ノマドさんは俺に向かって深々と頭を下げた。
別に見られて困る物でもなし。なので、すんなり見学をオーケーしたら、何故かノマドさんにすげー驚かれた。
何でも。薬のレシピとは薬師にとって秘中の秘であり、喩え同業者であっても門派が違えばレシピはおろか、調合している姿すら見せないのが普通だと言われた。
ノマドさんも、俺がブチギレるのも覚悟の上での発言だったらしい。
とはいえ、俺は別に薬師じゃないですしおすし。それに、『アンリミ』での調合方法が、そのまま使えるとも思えないしな。
なので、見たい人はお好きにどうぞということで話がまとまり、で、結局この場にいる全員で、ノマドさんの調薬小屋へと向かうことになった。
ソアラは薬師見習いだからというのは分かるが、アイラちゃんは完全に野次馬だろうな。
ノマドさんの師匠の蔵から少し離れ。ぽつんと佇む小屋が一つ。
ここがノマドさんの調薬小屋らしい。
「また、随分と防犯対策が厳重ですね」
先ほどの、レシピは極秘、という話しを証明するかのように、目の前の小屋の扉には物々しいほどに頑丈そうな鍵か取り付けられていた。
「この小屋の中には、薬のレシピ以外にも、マンドラゴラの研究資料もありますからね。
その中には“マンドラゴラの毒性を長く維持させる方法”などもあるので、悪用されると危険なんですよ」
と、涼し気な顔で言う。
そういえば、この人マンドラゴラの研究なんてのもしてたっけ。
てか、なんで“毒性を維持する方法”なんて研究してるんだ? 誰か毒殺でもする気なのかと勘ぐってしまう……
「どうぞ」
ガチャリと、ノマドさんは懐から出した錠で鍵を開くと、俺達を小屋へと通してくれた。
「おじゃましま~す」
小屋の中は、意外……といっては失礼なのかもしれないが、思っていたよりずっと綺麗で整理整頓がいき届いていた。
もっとこう、色々とごちゃごちゃしているイメージがあったのだが、これはノマドさんの性格の表れだろうか?
ちなみに、ソアラとアイラちゃんの部屋を覗いた時は、結構散らかっていたからな。
まぁ、それはさておき。
「ここのテーブルを借りても?」
「ええ、どうぞ」
と、目に付いたテーブルの上を少し空けてもらい、準備開始。
まずは、調薬道具の準備からだな。
事前にチェストボックスからインベントリに移しておいた調薬セットを、空けてもらったテーブルの上に展開する。
そこに、薬研に乳鉢、上皿天秤(分銅付き)、アルコールランプ、薬匙と薬皿のセットが一瞬で並べられた。
ちなみに、これで一つのセットなので、インベントリの枠を一つしか埋めない親切設計である。
次に、これまた事前に用意しておいた、タコ壺程の大きさの錬金窯(小)を空いている所に置く。
「こちらの道具は私にも見覚えのありますが、その壺は?」
錬金窯(小)を何処に置こうかと微調整しているると、ノマドさんからそう問い掛けられた。
「あ~、なんというか、錬金術を使う際に必要な物、ですかね」
この錬金窯の中に、必要な素材を入れて調合開始ボタンをポチっとするとアイテムが出来上がるのだが、詳しく聞かれても説明出来ないので簡単にそう答えておく。
それで納得したわけではないだろうが、ノマドさんは「ふむ」と一つ唸るとそれ以上は何も聞いて来なかった。
「さて、では始めますか」
ということで、ここからが本番だ。
「では材料の用意から。
今回作るのは、秘薬丸という薬です。必要な素材は、竜血晶、エルダートレントの根、千年人参、麒麟の角の四つです」
ノマドさん達が見学しているということもあり、俺は講義風に素材や制作手順などを解説しながら秘薬丸の制作を進めていく。
それを聞いて、ノマドさんが慌てて書ける物を用意し、メモを取り始めた。
いや……多分、メモしても何の参考にもならんと思うが……とは思うが、口には出さないでおく。
ちなみに、エルダートレントの根、千年人参は漢方ドリンクの制作材料でもある。
これにハチミツを加えたのが、漢方ドリンク(ハチミツ味)だ。
更に余談だが、千年人参は昼にバーベキューにして食べた、ニンジンをドロップするモンスター、ジェットニンジンの親玉モンスターである、プラズマジェットニンジンからドロップするアイテムだ。
外見は、ニンジンのバケモノが背中にドデカいブースターパックを背負っているような姿をしている。
俺はこのプラズマジェットニンジンがドロップする、“プラズマジェットブースターの残骸”というアイテムに用があったため、奴を乱獲していたのだが、その副産物としてニンジンも千年人参も大量に保有していた。
用があるのは親玉のプラズマジェットニンジンだけなのだが、取り巻きとしてジェットニンジンが大量に湧くので、まとめてデスした結果なのデス。
なんて話はさておき。
「まずは、薬研で各素材をある程度細かくしていきます」
薬研を使うのは、竜血晶を除いた三種類だ。
この時注意しなくてはいけないのが、粉にしてはいけない、ということだ。
この工程で行うのは、あくまで素材を程よく小さくすることである。
これが次からの工程で重要になってくるのだ。それが、磨り潰し度と乾燥度である。
有志諸兄の努力により、秘薬丸を調合する上での最適解というのが出されていた。
それが、エルダートレントの根、磨り潰し七三、乾燥四六。千年人参、磨り潰し五六、乾燥八八。麒麟の角、磨り潰し九三、乾燥六〇。
これらを、竜血晶一に対して、エルダートレントの根三、千年人参四、麒麟の角二の割合で調合するのがベストだとされている。
それぞれの数値についてだが、これは数字が大きい程細かく、また乾燥していることを表している。
つまり、薬研の段階で素材を細かくし過ぎてしまうと、取り返しが付かなくなってしまうのである。
ちなみに、これらの数値は別に暗記しているわけではなく、調薬セットの機能の一つ、調合メモにサイトからコピペした内容を貼り付けておいたものだ。
いちいち、こんな細かいこと覚えてられるかっ!
また、この作業は乾燥でも大きな意味があり、細かくし過ぎると火に掛けた際に一気に水分が飛んでしまうため、微調整が難しくなってしまうのだ。
かといって、素材のままでは水分が飛ぶのが遅くなり、最悪素材が焦げて品質が劣化する。
後でも細かく出来るようサイズは大きめに、それでいて水分の抜けが遅くも早くもないようにするのが大切なのだ。
と、いうことを説明しつつ次の工程、乾燥へ。
俺は、大雑把に細かくした素材をそれぞれ薬皿に取り分けると、皿ごとアルコールランプの火に掛ける。
ちなみに、このアルコールランプ、どれだけ使っても中のアルコールはなくならないんたぜ? ふっしぎぃー。
で、素材の上には現在の乾燥度がAR表示されているので、それぞれのタイミングを見て引き上げる。
乾燥させ過ぎたから水を加える、なんてことをすると、品質が一気に劣化するので一発勝負だ。
で、ここからはスピード勝負である。
乾燥度が整ったところで、素材を乳鉢に移して、それぞれに適した段階まで更に細かく磨り潰して行く。
乾燥と同じく、現在の状態がARウインドウに表示されるのでそれを見ながら慎重に、だ。
ただ素材の水分量は、乾燥が終わったからといって常に一定ではない。
周囲の環境、また、ある程度時間が経つと変動を始めてしまうため、ここでもたつくと折角の調整が無駄になってしまうので、慎重かつ迅速に行う必要がある。
一昔前だったら、ベストな状態になった物をインベントリにしまってしまえば、それ以上の状態変化を止めることが出来たのだが、運営様に対策を取られてしまい、加工中の素材アイテムをインベントリに入れると、状態値がランダムで変化してしまう仕様になってしまったのだ。
運営めぇ……余計なことをぉぉぉぉ……
まぁ、そんな運営の裏をかいて、調整に失敗した素材を敢えてインベントリにしまい、希望する値が出るまで何度も書き換えやり直す、という利用法もなくはなかったりする。
が、何度も出し入れするのも割りと面倒なので、この方法を利用するのは、本当に最後の手段の時だけだろうな。
んで、すべてが揃ったところで計量。これも手早く行わなくてはいけない。
しかし、調薬に関してはこの計量がすべてだといっても過言ではないため、絶対に手は抜けない。
今までどんなに素材を慎重に加工してきたとしても、ここで失敗すればすべてが水の泡なのだ。
まずは分量のベースとなる竜血晶をナイフで削り、量を決める。
俺は上皿天秤を使い、正確に重さを量り、計量が終わった素材を錬金壺へと放り込んでいく。
すべての素材が投入出来た段階で、錬金窯にMPを供給。
供給するMPの最適量は、投入した素材の種類と量によって数式で導き出すことが出来ることを、有志が発見していた。
偉いぞ諸兄達っ! 解析職人に栄光あれっ!
その数式によって導き出された結果は289。
MPの供給が終わったところで、AR表示された調合開始のボタンをポチっ!
すると、ぼふんっ! と、錬金窯から白い煙が上がる、というお決まりのエフェクトが発生し、調合は無事完了となった。
「きゃっ!」
「「っ!!」」
突然の爆発に、アイラちゃんは小さく悲鳴を上げ、ソアラとノマドさんは目を点にしていた。
さて、これで出来上がっているはずだけど……
俺は、錬金窯のインベントリへとアクセスすると、【秘薬丸 品質7】が一三錠出来上がっていた。
分量的には一〇錠分投入していたのだが、俺は完成品を三割増しされる錬金スキル【調合効率化】を保有しているので、ちょっただけお得になるのだ。
品質は7。まぁ、悪くはないな。
上手く行っていた割に品質が若干低いのは、こう言ってはなんだが、使った竜血晶の品質が6だったからだろう。
もう少し高ければ8、9は行けたと思うが、まぁ、7でも十分なので問題なしだ。
俺はインベントリから秘薬丸を取り出すと、それを丸薬用の保管ケースへと移し、それをノマドさんへと差し出した。
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