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八一話
しおりを挟むというわけで、やって来たのは自由騎士組合前。
さっさと中に入り、受付嬢にブルックからの呼び出しの件について尋ねると、もの凄く丁寧な対応で組合長室前まで通された。
ちなみに、また知らない子だった。
この対応……どうやら、俺がどこぞの王侯貴族だなんて与太話を信じてる一人っぽいな。
後でブルックに、俺は何の変哲もない一般人だと職員に説明するよう頼んでおこう。
「ギルドマスター、スグミ様がお見えになりました」
「……おう、通せ」
中から返って来る野太い返事を確認すると、受付嬢が静かに扉を開き「どうぞ」と入室を勧める。
俺がそれに従い部屋に入ると、開いた時同様、今度は静かに扉が閉まった。
しかし……こりゃ一体なんだ?
部屋に入り、周囲を見渡し軽く言葉をなくす。
見る限り紙、紙、紙、紙、紙、紙、紙、と無数の紙で部屋が埋め尽くされていたからだ。
以前俺達が来た時に座ったソファやテーブルの上は言わずもがな、床の上に至るまで紙で埋め尽くされていた。
しかも、紙が紙の上に積もり山を作っているほどだ。
適当に、足元に落ちていた一枚を拾い上げるとそこには、
“商業区における、老朽化した石畳の張替え工事に関する費用の見積もり”
と書かれていた。
他の紙にもちらりと視線を向けてみるが、書かれている内容はどれも似たり寄ったりで、支払い請求書やら、予算の請求に何かの要望書など、そんなことが書かれていた。
どうやらこれらの紙の山は全部、何らかの書類のようだ。
でも、なんでこんなものが自由騎士組合であるブルックの部屋にあるんだろうか?
なんて考えていると、
「セリカから話を聞いたが、バハル邸では随分な大活躍だったそうじゃないか」
と、ブルックの声だけが聞こえて来た。
それもそのはず。
本来なら、入り口正面にあるデカイ執務机に座っているブルックの姿が見えるのだが、今はこれまた机の上で書類が高層ビル群を建築している所為で、その姿が遮られていた。
「俺は少し手を貸しただけで、別に大したことはしてないよ」
「はっ!! あの小生意気なギュンターをとっ捕まえて“大したことはない”とは、謙虚なんだかデカく出てるんだか分かんねぇな。一体どうやってあいつをシメたんだ?
言っちゃあなんだが、オレとヤり合った時のお前さんの実力じゃ、奴には勝てないと思うんだが?」
この人は、ホントいいセンスをしてるな。
確かに、基本状態の黒騎士だったらギュンターには勝てなかっただろう。
「オレの操る人形は、三段階のパワーアップを可能としています。その意味が分かりますね?」
そう。三段階なのだ。
一段階目の【潜在開放】。そして二段階目の【蟷螂之斧】。そして、最後のもう一つ。
ただ、最後のヤツは効果が特殊過ぎて、使いどころが非常に難しいのだ。下手なタイミングで使うと、むしろ即負けし兼ねないからな。
今回は、使えそうなタイミングがなかったので二段階止まりだった。
「ほぉ~、そいつはすげーじゃねぇか。ちなみに、オレとヤった時は何段階目だったんだ?」
「基本状態だな」
「マジかよ……」
そんなブルックの呟きは、感心しているような、それとも何処か呆れているような、そんな不思議なニュアンスを秘めているように、俺には聞こえた。
「で、用件は? そんな話をするために、俺を呼んだわけじゃないんだろ?
てか、なんかすげー忙しそうだけど……特に急用でもないなら、日を改めようか?」
この状態で個人の用事を優先するのは流石に気が引けたので、そう提案するのだが、
「いや、その必要はない」
と、あっさり断られてしまった。
「むしろ、今を逃したら、それこそしばらくは顔すら合わせられなくなるくらい酷くなるだろうからな。
済ませてしまえる用事は、さっさと片付けておきたい」
「そうか、分かったよ。それにしても……なんなんだ? この書類の山は?」
「小娘にしてやられたんだよ……」
俺が尋ねると、ブルックは苦々しそうな声でそう返した。
「小娘? セリカのことか?」
「ああ。あいつ、オレの断りもなく勝手にオレをこの街の臨時代官なんかにしやがって……
その辺りのことなら、オレよりお前の方が詳しいんじゃないか?」
「あ~……そういえば、バハル邸でセリカがグリッドとそんな話をしていたな」
「その所為だ。
ただバハルとクズームがおっちんじまっただけなら、ここまで酷くはならねぇんだろうが……
今回は政に携わっていた職員に騎士団員、その全員が事件に関与していないかの取り調べを受けてるもんだから、仕事どころじゃなくなっちまっててな……
どこもかしこも上へ下への大騒動。
お陰で、それらの業務の一切合切が、臨時代官であるオレの所に流れて来て……このザマってわけだ。
まぁ、白が確定した奴らから解放されてはいるが、落ち着くのは何時になることやら」
「それはまた、ご愁傷さまで」
そんな苛立たし気に愚痴を零すブルックの言葉を聞いて、ふとセリカがポツリと漏らした言葉を思い出した。
“周囲からは文句は出ないだろう”って、あいつ本人からは文句が出ることは確信していたな。
ひょっとすると、宿屋で別れたのもブルックと顔を合わせたら絶対に怒られるから、適当な理由をつけて逃げ出したのでは……? と思うのは、流石に勘繰り過ぎか。
「っと、そうだった。別にお前に愚痴を聞かせるためにここへ呼んだわけでもなかったな。散らかっていてすまんが、渡す物があるからこっちへ来てくれるか」
「おお、分かった」
と、ブルックが呼ぶので、僅かばかり存在する足の踏み場を器用に渡り歩いてブルックの下へと向かう。
執務机を迂回し、ブルックの横へ。
「で、渡す物ってのは?」
お互い顔が見える状態まで近づいてからそう尋ねると、ブルックが机の引き出しを開け、何かを取り出し俺へと向かって差し出した。
「ほれ。これがお前さんの組合証だ。受け取れ」
「ああ、やっぱり呼び出しの理由はコレだったのか」
俺は差し出された組合証を礼を言ってから受け取り、しげしげと観察する。
それを一言で言い表すなら、軍人なんかが首からぶら下げているアレ、所謂、認識票のような物だった。
銀色の小さな金属板に名前などが刻印されており、左の端には小さな水晶の様な透明な石が嵌められていた。
反対の右の端には、小さく穴が開けられ、そこから細く長い革紐が通されている。
革紐は、これを使って首から下げておけ、というこなのだろうが、この石は何だ? 装飾の類か何かだろうか?
組合証には名前以外にも、アグリスタで発行したこと、責任者がブルックであること、おそらく組合員番号らしき数字の羅列、そして銀十級という文字が刻まれていた。
また、文字は打刻されているだけでなく、裏側には浮き出し文字の加工も施されている。
クレジットカードやキャッシュカードでよく見るアレだ。何気に手が込んでいるな。偽造防止だろうか?
ただ、あれらは凸部が読めるようになっているが、こっちは凹部が読み取り面になっている。
「なぁ、コレを渡すだけなら、わざわざブルックがしなくても職員の誰かにでも預けておけばよかったんじゃないか?」
確かに貴重なものではあるかもしれないが、俺としては、こんな忙しい時に物一つ渡すだけに時間を掛けるのはバカバカしいと思ってしまうのだが……
「そうしたいのは山々だが、そうもいかない理由がるんだよ」
と、いうことらしい。
「それも含めて今から説明するから、取り敢えず大人しく聞いておけ」
「了解」
そんなわけで、俺はブルック組合長による“自由騎士講座”を聞くことになった。
以下、要約である。
まず、自由騎士には一般的に五つの階級が存在する。
木簡級、鉄級、銅級、銀級、金級の五つだ。
その上に、更に特殊な階級が存在するらしいのだが、今は気にする必要はないと、ブルックにそう言われた。
どうしても気になるようなら、後で受付にでも聞けば説明してくれるとか。
というわけで、取り敢えず基本である五つの階級の説明から受けることになった。
まずは一番下、見習いの木簡級。
基本、自由騎士の階級は、手にしているタグの素材と=である。
つまり、見習い君に渡されるのは、木の札で出来た階級証で、これを通称“木簡級証”と呼ぶ。
そう考えると、俺のギルドタグは銀製ということだな。
で、これはまだ自由騎士とは認められていないようなひよっこが、自分に適性があるかどうかを知るための所謂、試験期間という状態だ。要は仮免だな。
この試験期間を経て、見事合格出来た者だけが晴れて自由騎士になることが出来る。
とはいっても、所詮は見習いの試験。受けられる仕事内容は雑用クラスのものしかないので、能力以前に真面目に仕事をしていれば誰でも合格出来るらしい。
そのため、合格率は脅威の九割越え。
自由騎士に最も必要なのは、堅実性と勤勉性であり、ここで手を抜くようでは自由騎士はやっていけない、とはブルックの談だ。
で、試験を合格した駆け出しの新人自由騎士に送られるのが、鉄で出来た階級証の“鉄級証”と鉄級自由騎士の称号だ。
この階級になって、初めて自由騎士を名乗ることが許されるようになる。
しかし、見習いより受けられる仕事の種類が少し多いだけで、本質はあまり変わっていない。
また、討伐などの危険な仕事は受けられないうえ、薬草の採取など街の外へ出る仕事も基本は受注出来ないので、専ら街中での雑務が基本だ。
ちなみに、何故、金属証の中で銅ではなく鉄が一番下なのかというと、鉄は金属の中では腐食に対する耐性が非常に低いからだそうだ。
何の防腐処理も施していなければ、鉄なんて放置しているだけで簡単に錆びてしまう。
事実、一昔前までは鉄のそんな腐食しやすい特性から“卑金属”なんて呼ばれ、金属の中では一つ下に見られていたくらいだ。
スポーツ大会などで送られるメダルが、金・銀・銅と鉄が含まれていないのはその名残といえるだろう。
そんな金属の中で高い強度を持ちながら、状態を維持するのに手間が掛かることから、“鍛えれば光る物があるかもしれないが、現状は手間ばかり掛かる”という新人になぞらえているのだと、ブルックは話してくれた。
他にも、才能のバロメータとしても役に立つという。
タグが全部錆で覆われてしまう前に階級を上げられないようでは、これから先、自由騎士として生計を立てて行くのは難しい、ということなのだとか。
で、晴れて“鉄級証”を卒業した者に与えられるのが“銅級証”だ。
銅級自由騎士、この階級になってようやく“一人前”として扱われるようになる。
討伐依頼や護衛依頼など、危険度の高い依頼が受注可能になるのもここからだ。また、評価の内容が少し変わり、階級に加えて等級というのが追加される。
階級というのは、鉄級とか銅級のことで、等級はそこに付属する数字のことだ。
俺の銀十級なら、銀が階級で、十級が等級を表している。
等級は十段階あり、一番下が十級で一番上が一級だ。
一口に銅級といっても、質はピンキリであり、そのピンやキリを表したのが等級というわけだ。
そのため、鉄級証では、受注不可能な討伐関係の依頼が受けられる階級にはなるが、銅五級未満の者は単独での討伐や護衛の依頼は受注出来きない決まりになっている。
銅五級未満の者が討伐・護衛の依頼を受けるには、銅十級以上六級以下の者三名以上でパーティーを組むか、パーティー内に銅五級以上の者が一名以上同伴するかしないといけない。
一人前とはいえ、等級が低いうちはまだまだ新人扱いということなのだろう。
ちなみに、等級は依頼の達成数や仕事の成果などに応じ昇級していき、長期間依頼を受けなかったり、格下の依頼ばかり受けていたりすると降格する。
その上が“銀級証”だ。俺が貰ったやつだな。
銀級自由騎士。ここからが一流の証とも呼ばれる階級になり、ここに至れる人はそうは多くないらしい。
大体、銅一級騎士の三割くらいが銀級になれる程度で、殆どの自由騎士はその生涯を銅級で終えるのだそうだ。
この銀級をスポーツ選手で例えるなら、十級が将来有望な若手スポーツ選手くらいで、一級がプロといった感じか。
ここまで来ると受けられない仕事は殆どなく、また、指名しての依頼が来るようになる。
しかも三級以上の上級ともなると、名義貸しだけで収入を得られるようになるという。
“銀上級の○○様御用達!”と銘打つだけで商品がバカ売れするらしい。
ホント、スポーツ選手のスポンサー契約みたいだな、って思いました小並感。
で、俺、その銀の十級貰ってんスけど、いいんスかね……これ。
一応、本当にコレでいいのかブルックに尋ねたら、
「構わんさ。むしろ、ギュンターをシメるお前ほどの実力なら、更に上の金級をくれてやっても構わないんだが、組合長の権限で与えられるのが、銀十級までだからな」
ということだった。
要は、飛び級が許される限界が銀十級までということらしい。そこから先は、依頼を受けて地道に上げていくしかないようだ。
それに、今回は姪……つまり、セリカが世話になった礼も含まれているのだという。
ちなみに、何でブルックが組合証を手渡ししたのかというと、銀級の授与は組合長が直に行わないといけない、という規定があるからなのだとか。
また、銀級からのサービスとして、信用払いが可能になるという。
金品を預ける銀行機能だけなら、鉄級以上の自由騎士なら誰でも利用することが出来る。
俺も先日、自由騎士組合に三〇〇〇万ディルグを預けているからな。まぁ、その時はまだ自由騎士にはなっていなかったので、ややフライングではあるけど。
それを思うと、ブルックはあの時には俺を最低でも鉄級以上にはするつもりだったのだろう。でなければ、預貯金の話しなんて持ち出さなかっただろうし。
で、この信用払いというのは、自由騎士組合に加盟している商会限定ではあるが、現金を使わず組合証を用いて、組合に預けている預金から支払いを可能とするサービスだった。
簡単に言えば、クレジット決済みたいなもんだな。
「信用払いの時は、出された書類にタグで蝋印を押すだけでいい。一応、預金を超えた金額での決済も可能だが、負債状態が長く続いたり返済が滞ったりすると、自由騎士の資格剥奪、最悪、犯罪奴隷として騎士団に身柄を拘束される可能性もあるから気を付けろよ。
まぁ、銀級騎士にもなってカネに困るようなバカは滅多にいないが、そういうこともあると頭の隅にでも覚えておけ」
なるほど。このタグの凸加工はハンコを押すためだったのか。と、ブルックの説明を聞いて妙に納得した。
しかし、ただ判を押すだけなら、タグを盗まれでもしたら大変なことになるな、とブルックに言ったら、そうならないための細工があるのだとブルックは笑いながら言った。
「タグの端に小さな石が嵌っているだろ?
そいつは“記憶晶石”つってな。ある程度以上の魔力を流し続けると、そいつの魔力波を記憶するっつー特殊な石なんだよ」
“魔力”には模様というか波というか、とにかく形があり、それはひとり一人完全に異なる形状をしているのだと、ブルックは言う。
指紋やDNAのような感じだろうか?
そういえば、以前イオスが似たようなことを話していたことを思い出した。
イオスは、魔力を光として捉えられる特殊な眼、魔光眼というのを持っているらしい。
イオス曰く、魔力光は全員が違う色をしており、親兄弟でも似ることはあっても同一ということはないのだという。
しかも人間、エルフなど、種族ごとに異なった特徴を持っているらしく、変装していたソアラを一発でエルフだと見抜いたのも、この眼の力なのだそうだ。
前から変装していたソアラを、どうやってエルフだと見破ったのか謎だったのだが、話を聞いて納得した覚えがある。
その“魔力の形”を記憶するのが、この記憶晶石らしい。
「取り敢えず、そいつに魔力を流してみろ。今は無色透明だが、記憶が始まると薄っすらピンク色に光る。光が出たら暫く維持だ」
言わるままタグにMPを流すと、確かに石がピンク色に光り出した。
「記憶が完了すると、光の色が濃くなる。それが終了の合図だ」
暫しMPを流すと、ブルックが言ったようにピンクの光が一段濃くなった。これで記憶が完了したのだろう。
「もういいぞ」というブルックの言葉に従い、MPを流すのを止めると発光が収まった。
「石に色が着いているだろ?」
言われて見れば、さっきまで無色透明だった石が、今は薄いピンク色に染まっていた。
「それが記憶晶石が魔力波を記憶した状態だ。それで今後、お前以外の魔力には一切反応することはない。
身分の証明を求められたら、その記憶晶石を光らせれば身の証を立てられる」
なるほど。顔写真とかないから、こうして提示している証明書の正式な所有者であることを証明するわけか。
なかなかに面白い仕組みだな。
ちなみに、木簡級、鉄級、銅級に記憶晶石は嵌められていないらしい。なぜなら、喩えそれらの階級証を盗み、誰かが騙ったところで、周囲に与える影響が殆どないからだ。
先も言ったように、銀級は銀級というだけで、ある程度の信用と信頼を得ることが出来る階級だ。
それを悪用し、騙られでもしたら周囲に対する悪影響は計り知れない。だから、銀級以上からは所持者の証明というのが必要になってくる。
その証明をするのが、この記憶晶石というわけだ。
「とはいえだ。これはあくまで悪用防止の為の措置で、実際に大事な組合証を盗まれたとあれば、階級なんぞ関係なしに、自由騎士としての信用はがた落ちだろうがな」
と、ブルックは言う。
確かに、盗む奴が圧倒的に悪いことは間違いないが、盗まれる奴にも落ち度はある。
それが銀級ともなれば、何してたんだって話だよな。
スリを捕まえようとしていた警察官がスリに遭う、みたいなもんだ。そりゃ、信用だって無くすわ。
盗まれたのではなく、落としたり紛失したりしても同じことだ。
と、これで銀級の主な機能・サービスについての説明が終了した。
そして最後が“金級証”。
金級自由騎士。ここの階級は一言で説明するなら、雲の上の人、といった感じか。
銀一級をプロスポーツ選手だと表現したが、金十級で世界大会やオリンピックの常連選手クラス、それが金一級ともなれば、その世界の神やら伝説と呼ばれる人物に該当する。
野球ならベーブ・ルース、サッカーならペレ、バスケットボールならマイケル・ジョーダンといった具合か。
当然、相応の実力が求められるため金級へと至れる人物は本当に極僅かしか存在せず、現在、ノールデン王国内でも一〇〇人前後しかいないのだという。
この一〇〇人というのが多いの少ないのかは、俺にはなんとも判断が付かんけどな。
その内の一人がブルック本人で、階級は金七級とのことだった。
「足を失う前の全盛期なら、もう少し上だったかもしれんがな」
と、さらっと自慢するように笑って話していた。
ただ、金級に昇格するには、実力以外にもいろいろと手間な手続きが必要で、実力はありながら手間を嫌って銀一級で留まっている人間も少なくないのだとか。
その金級への昇格手続きが、一体どれだけ面倒なのかと興味本位で聞いてみたら、自由騎士組合長級の推薦状を三人分用意して、王都にある自由騎士協会本部で昇級試験を受ける必要があるのだと、ブルックが教えてくれた。
推薦を受けるだけなら簡単そうにも聞こえるが、組合長とてそうホイホイとは推薦状を出してくれるわけではない。
長年、同じ街で働き続け、信用と実績を積み重ね、そうしてようやく貰えるものなのだそうだ。
金級に至るには、実力も然ることながら、人格や性格さえも審査の対象になるのだという。
ただ単に腕っぷしが強いだけでは、絶対になれない。それが金級だ。
それを、最低でも三ヶ所以上の街で行わなければいけないと考えれば、確かに手間だわな。
ブルック曰く、何かとてつもなく大きな実績を上げれば、一発で三人分くらいの推薦を得られることもあるらしいが、そんなことが起きる方が稀だよな。
ちなみに、ブルックが金級に上がったのは、騎士団を退団する理由にもなったワイバーン戦で多大な功績を残したからだそうだ。
ワイバーン戦による怪我で騎士団を脱退することになったブルックに対し、ワイバーンの脅威に晒されていた四つの街から、感謝の意も込めて推薦を貰ったのだという。
こうして、騎士から自由騎士に転向し即日に金級に上がるという、前代未聞の偉業をブルックは成し遂げるに至った……らしい。
その時の自慢話を散々聞かされ、ようやく解放されたのは日が高々と登った頃のことだった。
一体、何時間拘束されてたんだ?
てか、自慢話する時間があるなら仕事をしろ! 仕事を!
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