上 下
4 / 10
1章

第4話 初めての食べ物とリィさんのお仕事

しおりを挟む
「何だかんだでたくさんもらっちゃったねぇ」

リィさんの私を抱えているのと反対の手は屋台街の人達からもらったものでたくさんだった。

「よいしょっと」

近くの座れそうなところに買った(もらった)物と私を降ろして、リィさんも座る。

「さてと!朝ごはん食べようか!チワワはどれがいい?焼きそば?オクト焼き?唐揚げ?」

袋からひょいひょいと出てくる食べ物はどれもいい匂いがして私の空腹感を膨らませていく。
ご主人の研究所で出てくるご飯といえばカチカチのパンか焼いた肉くらいだった。
そもそも、焼いた肉以外の匂いなど、薬品くらいでしか嗅いでいない。
さて…どれか食べようか…。

「ふふふ、迷わなくても全部食べていいんだよ?私の分もちゃんとあるから」

リィさんは自分のご飯を袋から取り出して食べ始めていた。
リィさんのはご主人がくれたパンと違って、ふかふかしたパンにソーセージと野菜が挟んであるものだ。
それも美味しそう…。

私も空腹感に耐えきれず、唐揚げと呼ばれた物を一つ食べた。

……うっまぁぁぁぁ!!

唐揚げに始まり出されたものを次々食べていく。

ふぁぁぁぁぁ!どれもうまぁぁぁぁ!!

この焼きそばとかいう物もオクト焼きとこいうのもうまぁぁぁぁ!
どれもご主人といた時には食べたことないものばかりだ。
特にオクト焼きにかかってるしょっぱいと甘いが混じったような茶色の液体がうますぎる。

はっ…もうない…。

「あ、もう食べ終わっちゃったの?チワワは食いしん坊だねぇ」

「くぅぅーん…」

私は少し切なげな声を出した。
はぁ…まだ食べたいなぁ…。
私は名残惜しくてオクト焼きの入れ物に残っていた茶色の液体を舐める。

「もーそんなに美味しかったのー?じゃあお仕事終わったらまた食べようねー」

「わん!」

リィさんが頭を撫でながらゴミを回収して、近くのゴミ箱へ捨てた。

「さて、ギルドに行こっか!今日もお仕事しないとね!」

リィさんは私をふたたび抱っこして歩き出した。
しばらく歩いていると、大きな建物が見えてきた。

「チワワ、ここがギルド。ここで冒険者の人たちは依頼を受けて、いろんなお仕事をするの。仲間を探したりするときもここね」

リィさんが説明しながら中へ入っていく。

「こんにちは、クレアさん」

リィさんは中に入って受付と書いてあるところの女性に話しかけた。

「あらぁ、リィちゃん。今日も採取の依頼かしら?そのわんちゃんは昨日の子かしら?」

「そうです!この子は私がしばらく飼うことにしたんです」

「あらあら、そうなのね。名前はなんていうのかしら?」

「チワワです」

「あらあらぁ、可愛いお名前ねー。よろしくね、チワワちゃん」

クレアさんが私の頭を撫でたので、手をペロペロと舐めた。

「可愛いわねぇ。あ、昨日の洞窟の依頼でいいかしら?」

「はい!お願いします!あ、チワワをしばらくお預かりしていただいてもいいですか?」

「もちろんいいわよー。うちの看板犬になっちゃうかもしれないわねぇ」

クレアさんは何か書類を取り出してさらさらと何かを書きながらふふふと笑った。

「じゃあ、ここに承認印を」

「はい!」

リィさんが四角い首飾りを外して、書類に押し当てると、『リィン・フライン』というハンコが押された。

「チワワ初めて見た?これは冒険者の身分を示す『証明印』っていうもので、冒険者はみんな持ってるんだよ」

リィさんは私に説明をしながら書類をクレアさんに渡した。

クレアさんはちょっと待っててねと言って書類を持ち奥へ行った。
そんな時に1人の男がリィさんに話しかけてきた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

辺境領主になった俺は、極上のスローライフを約束する~無限の現代知識チートで世界を塗り替える~

昼から山猫
ファンタジー
突然、交通事故で命を落とした俺は、気づけば剣と魔法が支配する異世界に転生していた。 前世で培った現代知識(チート)を武器に、しかも見知らぬ領地の弱小貴族として新たな人生をスタートすることに。 ところが、この世界には数々の危機や差別、さらに魔物の脅威が山積みだった。 俺は「もっと楽しく、もっと快適に暮らしたい!」という欲望丸出しのモチベーションで、片っ端から問題を解決していく。 領地改革はもちろん、出会う仲間たちの支援に恋愛にと、あっという間に忙しい毎日。 その中で、気づけば俺はこの世界にとって欠かせない存在になっていく。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

処理中です...