8 / 12
ずるい鼠は真面目な牛に恋をする
7.お互いの自己紹介
しおりを挟む
次の街に向かって歩いているなか、私たちは自己紹介をしてなかったということで、お互いのことを話し合うことにした。
「あらためまして、ウシワカと申します。歳は19歳で、牛族です。」
「私はネムです。歳は16で鼠族です。」
「……」
「……」
((は、話が続かない……!?))
私はもちろん、どうやらウシワカさんもあまり話が得意な方ではないらしい。
しばらく無言で歩いて5分ほどたっただろうか。
「う、ウシワカさんの家族ってどんな方ですか?」
私はとっさに思いついたことを聞いた。
「俺の家族ですか?この旅にでるまでは妹と2人で暮らしていました。今は預かってくれるところがあったので、いったんそちらへ。」
妹さんの話をしている時のウシワカさんはとてもいい顔をしていた。
そんな風に話ができる家族がいるのはとても羨ましいと思う。
「ご両親は…?」
「2人とも死にました。父も母も病で」
ウシワカさんはすごく辛そうに、でもどこか優しい表情で私に言った。
「ご、ごめんなさい…私…」
「いえいえ、気にしなくてもいいですよ。病はネムさんのせいじゃない。それにここで俺が怒ったり悲しんだりしても両親は帰ってきませんからね」
「ウシワカさん…」
あぁ、この人はなんて強い人なんだろう…。
私はウシワカさんの話を聞いててそう思った。
母が亡くなった日から私は今までこんなことを考えられたことがあっただろうか。母を失って寂しい、また会いたい、声が聞きたい、また抱きしめて欲しい、しかし、もう母がいないという喪失感が襲いずっと泣き続けていたのだ。
今でもたまに辛くなった時は泣いてしまう。
私もこんなに強くなれるだろうか…。いつかこんなふうに…。
「ネムさん?」
「あ、はい!すみません…ぼーとしちゃって…」
「大丈夫ですか?疲れたなら少し休憩を…」
「い、いえ!大丈夫です!」
「そうですか?疲れたら言ってくださいね」
「ありがとうございます」
ウシワカさんの笑顔を見て私はつい下を向いてしまった。
「ところで、ネムさんのご家族はどのような方なのですか?」
「私の家族は…父が鼠族の族長をしてて…母は亡くなりました…。私の母も病です…」
「そうでしたか…すみません…」
「謝らないでください…寂しいのは変わらないですけど…ウシワカさんの言う通り悲しんでもなにも変わらないですもんね」
「ネムさん…ネムさんはお強いですね」
私はウシワカさんの言葉に驚いてしまった。
私なんか全然強くない。お母さんが死んでしまったことを全然忘れられずにズルズルと引きずって生きている私なんか…。
「私なんかより…ウシワカさんのほうがよっぽど…」
「いいえ、俺なんかよりもずっとお強い心を持ってらっしゃると思いますよ。俺はさっきのは口先だけみたいなものです…。妹がいる手前で悲しんでなんていられない、だから親はいないものと諦めて生きてきたんです。ネムさんのように抱えて生きていくような強さを持っていないから…」
ウシワカさんは困ったような笑顔で私に言う。
確かに私のようにずっと忘れられずに生きている姿をいい風に言い換えるとそうなのだろう。
でも、私からすれば妹のため自分の気持ちを殺し生きてきたウシワカさんは弱くなんかない。
その後もしばらくは他愛もない会話をしていた。
そのたびにウシワカさんは少し自分を下に見ているように感じていた。
「あ、あれが街ですかね」
ウシワカさんが指さすほうにはおそらく目的の街だろうものが見えていた。
「あらためまして、ウシワカと申します。歳は19歳で、牛族です。」
「私はネムです。歳は16で鼠族です。」
「……」
「……」
((は、話が続かない……!?))
私はもちろん、どうやらウシワカさんもあまり話が得意な方ではないらしい。
しばらく無言で歩いて5分ほどたっただろうか。
「う、ウシワカさんの家族ってどんな方ですか?」
私はとっさに思いついたことを聞いた。
「俺の家族ですか?この旅にでるまでは妹と2人で暮らしていました。今は預かってくれるところがあったので、いったんそちらへ。」
妹さんの話をしている時のウシワカさんはとてもいい顔をしていた。
そんな風に話ができる家族がいるのはとても羨ましいと思う。
「ご両親は…?」
「2人とも死にました。父も母も病で」
ウシワカさんはすごく辛そうに、でもどこか優しい表情で私に言った。
「ご、ごめんなさい…私…」
「いえいえ、気にしなくてもいいですよ。病はネムさんのせいじゃない。それにここで俺が怒ったり悲しんだりしても両親は帰ってきませんからね」
「ウシワカさん…」
あぁ、この人はなんて強い人なんだろう…。
私はウシワカさんの話を聞いててそう思った。
母が亡くなった日から私は今までこんなことを考えられたことがあっただろうか。母を失って寂しい、また会いたい、声が聞きたい、また抱きしめて欲しい、しかし、もう母がいないという喪失感が襲いずっと泣き続けていたのだ。
今でもたまに辛くなった時は泣いてしまう。
私もこんなに強くなれるだろうか…。いつかこんなふうに…。
「ネムさん?」
「あ、はい!すみません…ぼーとしちゃって…」
「大丈夫ですか?疲れたなら少し休憩を…」
「い、いえ!大丈夫です!」
「そうですか?疲れたら言ってくださいね」
「ありがとうございます」
ウシワカさんの笑顔を見て私はつい下を向いてしまった。
「ところで、ネムさんのご家族はどのような方なのですか?」
「私の家族は…父が鼠族の族長をしてて…母は亡くなりました…。私の母も病です…」
「そうでしたか…すみません…」
「謝らないでください…寂しいのは変わらないですけど…ウシワカさんの言う通り悲しんでもなにも変わらないですもんね」
「ネムさん…ネムさんはお強いですね」
私はウシワカさんの言葉に驚いてしまった。
私なんか全然強くない。お母さんが死んでしまったことを全然忘れられずにズルズルと引きずって生きている私なんか…。
「私なんかより…ウシワカさんのほうがよっぽど…」
「いいえ、俺なんかよりもずっとお強い心を持ってらっしゃると思いますよ。俺はさっきのは口先だけみたいなものです…。妹がいる手前で悲しんでなんていられない、だから親はいないものと諦めて生きてきたんです。ネムさんのように抱えて生きていくような強さを持っていないから…」
ウシワカさんは困ったような笑顔で私に言う。
確かに私のようにずっと忘れられずに生きている姿をいい風に言い換えるとそうなのだろう。
でも、私からすれば妹のため自分の気持ちを殺し生きてきたウシワカさんは弱くなんかない。
その後もしばらくは他愛もない会話をしていた。
そのたびにウシワカさんは少し自分を下に見ているように感じていた。
「あ、あれが街ですかね」
ウシワカさんが指さすほうにはおそらく目的の街だろうものが見えていた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
(完結)私の夫は死にました(全3話)
青空一夏
恋愛
夫が新しく始める事業の資金を借りに出かけた直後に行方不明となり、市井の治安が悪い裏通りで夫が乗っていた馬車が発見される。おびただしい血痕があり、盗賊に襲われたのだろうと判断された。1年後に失踪宣告がなされ死んだものと見なされたが、多数の債権者が押し寄せる。
私は莫大な借金を背負い、給料が高いガラス工房の仕事についた。それでも返し切れず夜中は定食屋で調理補助の仕事まで始める。半年後過労で倒れた私に従兄弟が手を差し伸べてくれた。
ところがある日、夫とそっくりな男を見かけてしまい・・・・・・
R15ざまぁ。因果応報。ゆるふわ設定ご都合主義です。全3話。お話しの長さに偏りがあるかもしれません。
浮気くらいで騒ぐなとおっしゃるなら、そのとおり従ってあげましょう。
Hibah
恋愛
私の夫エルキュールは、王位継承権がある王子ではないものの、その勇敢さと知性で知られた高貴な男性でした。貴族社会では珍しいことに、私たちは婚約の段階で互いに恋に落ち、幸せな結婚生活へと進みました。しかし、ある日を境に、夫は私以外の女性を部屋に連れ込むようになります。そして「男なら誰でもやっている」と、浮気を肯定し、開き直ってしまいます。私は夫のその態度に心から苦しみました。夫を愛していないわけではなく、愛し続けているからこそ、辛いのです。しかし、夫は変わってしまいました。もうどうしようもないので、私も変わることにします。
今、夫と私の浮気相手の二人に侵されている
ヘロディア
恋愛
浮気がバレた主人公。
夫の提案で、主人公、夫、浮気相手の三人で面会することとなる。
そこで主人公は男同士の自分の取り合いを目の当たりにし、最後に男たちが選んだのは、先に主人公を絶頂に導いたものの勝ち、という道だった。
主人公は絶望的な状況で喘ぎ始め…
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる