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ずるい鼠は真面目な牛に恋をする
6.提案
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「ネムさん、少しいいですか?」
私が1人で布団の上にいるとウシワカさんが戸の向こうから声をかけてきた。
布団から起き上がり戸を開け、どうぞとウシワカさんを中に通した。
「おやすみでしたか…?」
布団を見たウシワカさんが申し訳なさそうに私に聞いてきたが、大丈夫ですよと返事をして私は座布団を2つ取り出して床に置いた。
どうぞといって2人で座布団に座る。
「それで、お話というのは…」
「はい、実は1つ提案…といいますか、お願いがあります」
「お願い…ですか?」
「神の宮まで俺と一緒にきてくれませんか?」
ウシワカさんの急なお願いに私は少し驚いた。
ウシワカさんほど強いなら私のような小娘をわざわざ一緒に連れていく意味もないだろう。
「その…どうして私を…?ウシワカさんなら私なんていなくても安全にいけますよね?」
そう言われるとウシワカさんがちょっと困ったような顔をして私をみた。
「いえ、ネムさんももう見たと思いますが…俺の方向音痴はすぐに治せるものではないらしくて…」
「あぁ…」
(そうか、方向音痴のせいで道から大きく外れてここにきたって言ってたもんね…。)
「ネムさんがもし1位の神様への願いをできる権利を狙っていないのであれば俺を神の宮まで案内してほしいんです。もし了承していただけるなら…神の宮まで俺が全力であなたをお守りします」
「……」
たしかに私には1位になって叶えたい願いなどないし、無事にたどり着けるかもわからない。
ウシワカさんと一緒に神の宮まで行けるのなら十二支に入る確率もだいぶ上がるだろう。
『誇りに恥じない結果を残せ』
こんな時に父の言葉が頭をよぎる。
トップでたどり着くというのを目標に行けと言われたのを思い出した。
ウシワカさんのこのお願いは私を安全に神の宮まで連れていく代わりに1位を譲ってほしいというものだ。
そんな甘えた心意気で私は大丈夫なのだろうか…。
「少し…考える時間をいただけませんか…?明日の朝には答えを出します…」
「……わかりました。失礼します」
ウシワカさんは部屋を出ていった。
「はぁ…」
私はため息を1つ吐いてまた布団の上に横になった。
(どうして私…お願いを聞いた時、嬉しい気持ちになったのかな…。ほんとならすぐにでも了承したかったけど…こんなところでお父さんの言う事を気にするなんて…)
いつまでもうじうじと悩み、他人の言うことに左右されている自分に嫌気がさした。
(私はどうしたら…)
『せっかくの旅を楽しんでみなよ』
ミスズのあの言葉思い出した。
(そうだよね…せっかくの旅だもん…楽しくすごしたい。それなら…)
ぐぅ…。
半分以上決意を固めたところでお腹がなったので、ご飯を食べに行くことにした。
食堂の人にお風呂があるといわれ、お風呂にいって部屋に戻ると山を登ったり山賊に追われたりと疲れが溜まっていたのかその日は泥のように眠りについた。
次の日の朝、荷物をまとめて宿を出るとウシワカさんがすでに外に出て待っていた。
「ウシワカさん、おはようございます」
「おはようございます。それで、お願いの件は…」
「ウシワカさん…私はウシワカさんの足を引っ張るかも知れません…なにも取り柄もないし、また何かに襲われちゃうかも知れません。それでもいいって言うなら…こんな私でもいいなら喜んでお供させてもらいます」
私の返事を恐る恐る聞くウシワカさんの表情がぱぁっと明るくなった。
「大丈夫です。あなたのことは俺が全力で守ります。この命に変えても。」
そう言うとウシワカさんが右手を出したので、私も右手を出して握手をした。
「さぁ、それではいきましょうか!」
「ウシワカさん!そっちは北。神の宮は反対です」
私の声を聞いてウシワカさんがまた顔を赤く咳払いを一回ついて私の指さす方へ歩きだし、私もその後ろをくすくす笑いながらついていくのだった。
私が1人で布団の上にいるとウシワカさんが戸の向こうから声をかけてきた。
布団から起き上がり戸を開け、どうぞとウシワカさんを中に通した。
「おやすみでしたか…?」
布団を見たウシワカさんが申し訳なさそうに私に聞いてきたが、大丈夫ですよと返事をして私は座布団を2つ取り出して床に置いた。
どうぞといって2人で座布団に座る。
「それで、お話というのは…」
「はい、実は1つ提案…といいますか、お願いがあります」
「お願い…ですか?」
「神の宮まで俺と一緒にきてくれませんか?」
ウシワカさんの急なお願いに私は少し驚いた。
ウシワカさんほど強いなら私のような小娘をわざわざ一緒に連れていく意味もないだろう。
「その…どうして私を…?ウシワカさんなら私なんていなくても安全にいけますよね?」
そう言われるとウシワカさんがちょっと困ったような顔をして私をみた。
「いえ、ネムさんももう見たと思いますが…俺の方向音痴はすぐに治せるものではないらしくて…」
「あぁ…」
(そうか、方向音痴のせいで道から大きく外れてここにきたって言ってたもんね…。)
「ネムさんがもし1位の神様への願いをできる権利を狙っていないのであれば俺を神の宮まで案内してほしいんです。もし了承していただけるなら…神の宮まで俺が全力であなたをお守りします」
「……」
たしかに私には1位になって叶えたい願いなどないし、無事にたどり着けるかもわからない。
ウシワカさんと一緒に神の宮まで行けるのなら十二支に入る確率もだいぶ上がるだろう。
『誇りに恥じない結果を残せ』
こんな時に父の言葉が頭をよぎる。
トップでたどり着くというのを目標に行けと言われたのを思い出した。
ウシワカさんのこのお願いは私を安全に神の宮まで連れていく代わりに1位を譲ってほしいというものだ。
そんな甘えた心意気で私は大丈夫なのだろうか…。
「少し…考える時間をいただけませんか…?明日の朝には答えを出します…」
「……わかりました。失礼します」
ウシワカさんは部屋を出ていった。
「はぁ…」
私はため息を1つ吐いてまた布団の上に横になった。
(どうして私…お願いを聞いた時、嬉しい気持ちになったのかな…。ほんとならすぐにでも了承したかったけど…こんなところでお父さんの言う事を気にするなんて…)
いつまでもうじうじと悩み、他人の言うことに左右されている自分に嫌気がさした。
(私はどうしたら…)
『せっかくの旅を楽しんでみなよ』
ミスズのあの言葉思い出した。
(そうだよね…せっかくの旅だもん…楽しくすごしたい。それなら…)
ぐぅ…。
半分以上決意を固めたところでお腹がなったので、ご飯を食べに行くことにした。
食堂の人にお風呂があるといわれ、お風呂にいって部屋に戻ると山を登ったり山賊に追われたりと疲れが溜まっていたのかその日は泥のように眠りについた。
次の日の朝、荷物をまとめて宿を出るとウシワカさんがすでに外に出て待っていた。
「ウシワカさん、おはようございます」
「おはようございます。それで、お願いの件は…」
「ウシワカさん…私はウシワカさんの足を引っ張るかも知れません…なにも取り柄もないし、また何かに襲われちゃうかも知れません。それでもいいって言うなら…こんな私でもいいなら喜んでお供させてもらいます」
私の返事を恐る恐る聞くウシワカさんの表情がぱぁっと明るくなった。
「大丈夫です。あなたのことは俺が全力で守ります。この命に変えても。」
そう言うとウシワカさんが右手を出したので、私も右手を出して握手をした。
「さぁ、それではいきましょうか!」
「ウシワカさん!そっちは北。神の宮は反対です」
私の声を聞いてウシワカさんがまた顔を赤く咳払いを一回ついて私の指さす方へ歩きだし、私もその後ろをくすくす笑いながらついていくのだった。
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