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ずるい鼠は真面目な牛に恋をする
3.旅立ちと出会い
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準備を終えた次の日の朝、私はお父さんとその他の鼠族代表の老人達に街のはずれで見送られていた。
「ネム。しっかりな、トップを取るんだ。」
「そ、そんなトップなんて…」
「そんな気持ちでどうする。お前はこの鼠族の代表なんだぞ。誇りに恥じない結果を残せ」
「……はい。頑張ってきます」
(何が誇りよ…ただ周りにアピールしたいだけのくせに…)
私はそのまま振り返り歩き出した。
気分としてはあまりよくはないが、初めて私だけで外に出る。
初めての体験。初めての旅。
これからどんなことが起こるのか少しのワクワクを感じていた。
(感じていた…はずなのに…)
「よーお嬢ちゃん。こんな山に1人とは物騒だねぇ」
「山賊にあってもしらないよーもうあってるけどな。へへへ…」
「しかもけっこう可愛いじゃん」
意気揚々と街を出て、最初の山で私の目の前に現れたのはいわゆる山賊と言われる人達3名。
(どどどどうしよーー!?え?こんな初っ端で私の旅おしまい!?ていうか生かして返してもらえるかもわからないし!)
背中に嫌な汗をかいているのがわかる。
ここで自分の運の悪さを恨み、この後何をされるのか想像もつかない恐怖が自分を支配していた。
しかし、恐怖に置かれていても正常に働いている部分があったらしく『逃げる』という判断を下した。
私はすぐに来た道を全力で走った。
「まちやがれ!」
「おえ!」
山賊の声が聞こえるが私は気にせずとにかく走った。
しかし…。
「待てっつってんだろ!」
「きゃっ!」
この山の山賊だけあって彼らにとっては庭も同然であろう。
すぐに追いつかれた私は山賊の1人にカバンを掴まれバランスを崩して転んでしまった。
転んだ勢いで山賊の手からカバンが離れて取られることはなかった。しかし、これでは捕まるのも時間の問題だ。
そう思っていた私の右手に木の枝が当たった。
(このままじゃ捕まる…でもこの荷物は絶対取られるわけにはいかない。だから…)
「やれるだけやる!」
私はミスズの弓を構えて拾った木の枝を弓につける。
枝が矢に変わり、山賊の足元に狙いをさだめる。
「こいつ、どこに矢を隠し持ってやがった」
とにかく私は山賊の足元に矢を射って足止めをしつつ走る。
走る最中で枝を折ったり拾ったりして矢を補充し、足止めをする。
何回か繰り返していると、狙いを定める時に私はあることに気がついた。
(あ、あれ?山賊って…2人だっけ…?)
そう感じた瞬間、後ろから私の両手が掴まれ動けなくなった。
「このガキ手間かけさせやがって!」
「きゃっ!離して!離して!」
途中から山賊が1人別れて先回りしていることに気づかず捕まった。
私はなんとか振り切ろうと暴れてみるがやはり男の大人である山賊は力も私の何倍もあり、逃れられなかった。
「よくやった!」
「さーて、身ぐるみ剥がせてもらうか」
山賊の2人が息を荒らげて私に近づく。
(あーあ…私の旅というか…人生ここまでかぁ…ごめんね、ミスズ…この弓、どこかに売り飛ばされちゃうかも…。お母さん…私もそっちに…)
私がもう諦めかけていた時に急に私の手を握っている力が弱まった。
その隙に私は山賊を振り払って横に飛び、私を掴んでいた山賊は倒れた。
そして、その山賊の背後には刀を持った男の人が立っていた。
「なんだてめぇ!」
「こんないたいけな少女1人を大の大人、それも男のあなた方が襲うのはいささか常識に欠けると思いますが」
「あぁ!?そんなこと聞いてんじゃねーよ!てめぇは誰かって聞いてんだよ!」
仲間を1人倒されたせいか山賊は怒りが顕になって怒声を上げている。
「あぁ、申し遅れました。俺は牛族十二支決定代表、ウシワカといいます」
そんな山賊の怒りもまったく気にする様子もなく、ウシワカさんは自己紹介を始めた。
「ネム。しっかりな、トップを取るんだ。」
「そ、そんなトップなんて…」
「そんな気持ちでどうする。お前はこの鼠族の代表なんだぞ。誇りに恥じない結果を残せ」
「……はい。頑張ってきます」
(何が誇りよ…ただ周りにアピールしたいだけのくせに…)
私はそのまま振り返り歩き出した。
気分としてはあまりよくはないが、初めて私だけで外に出る。
初めての体験。初めての旅。
これからどんなことが起こるのか少しのワクワクを感じていた。
(感じていた…はずなのに…)
「よーお嬢ちゃん。こんな山に1人とは物騒だねぇ」
「山賊にあってもしらないよーもうあってるけどな。へへへ…」
「しかもけっこう可愛いじゃん」
意気揚々と街を出て、最初の山で私の目の前に現れたのはいわゆる山賊と言われる人達3名。
(どどどどうしよーー!?え?こんな初っ端で私の旅おしまい!?ていうか生かして返してもらえるかもわからないし!)
背中に嫌な汗をかいているのがわかる。
ここで自分の運の悪さを恨み、この後何をされるのか想像もつかない恐怖が自分を支配していた。
しかし、恐怖に置かれていても正常に働いている部分があったらしく『逃げる』という判断を下した。
私はすぐに来た道を全力で走った。
「まちやがれ!」
「おえ!」
山賊の声が聞こえるが私は気にせずとにかく走った。
しかし…。
「待てっつってんだろ!」
「きゃっ!」
この山の山賊だけあって彼らにとっては庭も同然であろう。
すぐに追いつかれた私は山賊の1人にカバンを掴まれバランスを崩して転んでしまった。
転んだ勢いで山賊の手からカバンが離れて取られることはなかった。しかし、これでは捕まるのも時間の問題だ。
そう思っていた私の右手に木の枝が当たった。
(このままじゃ捕まる…でもこの荷物は絶対取られるわけにはいかない。だから…)
「やれるだけやる!」
私はミスズの弓を構えて拾った木の枝を弓につける。
枝が矢に変わり、山賊の足元に狙いをさだめる。
「こいつ、どこに矢を隠し持ってやがった」
とにかく私は山賊の足元に矢を射って足止めをしつつ走る。
走る最中で枝を折ったり拾ったりして矢を補充し、足止めをする。
何回か繰り返していると、狙いを定める時に私はあることに気がついた。
(あ、あれ?山賊って…2人だっけ…?)
そう感じた瞬間、後ろから私の両手が掴まれ動けなくなった。
「このガキ手間かけさせやがって!」
「きゃっ!離して!離して!」
途中から山賊が1人別れて先回りしていることに気づかず捕まった。
私はなんとか振り切ろうと暴れてみるがやはり男の大人である山賊は力も私の何倍もあり、逃れられなかった。
「よくやった!」
「さーて、身ぐるみ剥がせてもらうか」
山賊の2人が息を荒らげて私に近づく。
(あーあ…私の旅というか…人生ここまでかぁ…ごめんね、ミスズ…この弓、どこかに売り飛ばされちゃうかも…。お母さん…私もそっちに…)
私がもう諦めかけていた時に急に私の手を握っている力が弱まった。
その隙に私は山賊を振り払って横に飛び、私を掴んでいた山賊は倒れた。
そして、その山賊の背後には刀を持った男の人が立っていた。
「なんだてめぇ!」
「こんないたいけな少女1人を大の大人、それも男のあなた方が襲うのはいささか常識に欠けると思いますが」
「あぁ!?そんなこと聞いてんじゃねーよ!てめぇは誰かって聞いてんだよ!」
仲間を1人倒されたせいか山賊は怒りが顕になって怒声を上げている。
「あぁ、申し遅れました。俺は牛族十二支決定代表、ウシワカといいます」
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