獣たちに愛をこめてっ!

初昔 茶ノ介

文字の大きさ
上 下
35 / 61
2章.学園祭

新キャラ登場、羊族のネムノちゃん

しおりを挟む
学園祭1週間前の今日。私は数人のクラスメイトと一緒にエプロンを着て家庭科室にいた。

「それではこれからクッキーの作り方を皆さんに教えますので、一緒に作りましょう」

「「おぉー!」」

み、みんな気合い入ってるね…。
クラス対抗行事の補欠も最低1回は出場しなくてはいけないというルールらしく、その間クッキーを作れる人がいないということで、6人ほどクッキーを作る係を決めてローテーションで回していくことになった。
今日はそのクッキー作りを教えることになっている。

「それじゃあみなさん、こちらにレシピを…」

「あ、あの…」

私がレシピをだそうとすると女の子が手をあげながら話しかけてきた。

「えっと…たしか、ネムノさん?」

「は、はい…ネムノ・メープといいます。アイリスさんは私たちと同じクラスなんだから…その…敬語じゃなくてもいいと思います…私達が教えていただける立場ですし…。敬語の私が言うのも説得力がないですけど…」

ネムノさんがそんなことを言うとは珍しい。私のイメージではとてもおとなし可愛い女の子という雰囲気だったから。
羊族のネムノさんは羊の毛みたいにふわふわの髪とちょこっとついた耳と尻尾が特徴でいつもは何かの本を端で読んでいるタイプだった。

まさか…あの私のモフりたい衝動を掻き立てる女の子ランキング1位のネムノちゃんが話しかけてくれるなんて!これを気に仲良くなればいつかはモf…。

「アイリスさん?」

「あ…う、うん!それじゃあ普通に話させてもらうね!みんなも普通に話していいから!」

私がそう言うと他の人も笑ってよろしくねとかお願いしまーすなど返してくれたので、クッキー作りの指導に入ることにした。

「それじゃあ、このレシピにそって調理のやり方を教えるね。まずは…」

私は昨日作ってきたレシピをみんなに配ってから説明をしていった。
説明の後に実際にみんなで作ってみる。
みんな最初は恐る恐るという感じで作業をするが、だんだん上手くなっていった。

みんなの作業を見ていてネムノさんがレシピにない黒い粉を入れているのが見えた。

「ネムノさん?」

「ひゃい!?」

急に話しかけたからびっくりしたのか声が大きいし裏返っていてちょっと可愛かった。

「急に話しかけてごめんね。でもその粉に見覚えがなかったから…」

「あ、これは…簡単に言うとオーカの実を砕いて粉状にしたものなんですけど…普段はお湯に混ぜて飲むそうです。私は苦いからあんまり好きじゃないですけど…でもクッキーなら甘いし混ぜたら美味しいかなって持ってきてみたんです。」

「そうなんだ…少し味見してもいい?」

「え?いいですけど…苦いですよ?」

「大丈夫大丈夫!」

私は黒い粉を見て少し手に取って匂いを嗅いでから少し舐めてみた。

「これ…ココアパウダー!?」

匂いも味も前世のココアパウダーそっくりだった。

「ここあぱうだー?」

「あ、なんでもないの…こっちの話」

まさかココアパウダーがこの世に存在するとは…もしかしたらあれが作れるかもしれない…。

「あの、ネムノさん。このオーカってどこにでも売ってるの?」

「え?はい。市場にいけば普通に…」

「市場…ってどこにあったっけ?」

私は普段学校から家まで基本的に馬車移動なのでそこら辺の地理に全く詳しくなかった。

「あの…よかったら私が案内しましょうか?」

「ほんとに!?いいの!?」

私が困った表情をしているとネムノちゃんからのありがたいお誘い!これは乗るしかない!

私がネムノちゃんの手を握るとネムノちゃんは顔を赤くしながら俯いた。

恥ずかしがり屋さんなのかなぁ。私も人のこと言えないけど。

「は、はい…それで…アイリスさんにお願いがあって…」

「私のことも普通に話していいよ?私もネムノちゃんって呼ぶね」

「え…う、うん…アイリス…ちゃん」

か、可愛い!ネムノちゃんの顔真っ赤!

「それでお願いって?」

「えっと…それは市場でいうね」

「…?うん」

私は明日の放課後ネムノちゃんと買い物に行く約束をしてみんなの作業を見るのに戻った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...