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1章.入学

訓練から得たもの

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私が入学してから初めてのお休み。
その休日朝4時、ラクーン家の庭。

「おはようございます。お嬢様」

「お、おはよう…オキナくん」

訓練するとは言ったけど…こんな朝早くなくても…。前世でも私は朝が苦手だったなぁ…。

「お嬢様…大丈夫ですか?」

私を心配して声をかけてくれるオシロちゃんに大丈夫だよと返事をした。

「それでお嬢様。訓練の内容なのですが…」

「うん?なにするの?」

「まず、俺と試合をしてください。」

「……え?」

おかしいなぁ…まさかか弱い私と試合?ご冗談を…。

「俺の実力を知ってもらった方が色々アドバイスをしてくださるかと…」

えぇ…もっと他にも方法あるでしょ…。
でもそれで満足していただけるなら…。

「わかった。それじゃあ私がルールを決めていい?」

「はい、構いません」

「それじゃあ、ルールは相手を地面に倒した方が勝ち、ただし特性を使用するのは禁止で」

「お、お嬢様!?」

私のルールを聞いてオシロちゃんがまず驚いた。

「俺は構いませんが…それではお嬢様が不利では?」

「んー…たぶん、私が勝つから」

「……ほぅ」

私は何気なく呟くとオキナくんの目つきが変わった。

「それじゃあオシロちゃん、開始の合図お願いね」

「お嬢様がおっしゃるなら…」

オシロちゃんはしぶしぶ私たちから離れた。
私とオキナくんは向かい合って構えた。

「それでは…始めっ!」

合図と共にオキナくんが私を倒しにかかる。
オキナくんが私の腕を掴みそのまま倒そうとする。
私は掴まれている手を前に出して体の向きを180°回転しもう一方の手でオキナくんの手を掴み、背負い投げをした。

投げられたオキナくんは何が起きたかわからないのか困惑しているようだった。

「はい、私の勝ち」

私はニコッとオキナくんに笑うと手を出して立ち上がるように促した。

「お嬢様…いったいなにを…」

「これは…ある国の柔術っていう武術の技なんだけどね、体重移動と相手の力を利用して投げる技なんだよー」

私は前世で気になることがあればなんでも調べるというのは勉強のみならず様々な分野で働いていた。
そのうちの一つが武術である。テレビで柔道の試合を見るうちに日本の武術の仕組みが気になって、一時期護身術を教える道場にも通っていた。

「じゅうじゅつ?」

「うん。私が思うにね、オキナくんは真正面から突っ込みすぎだと思うんだよね。チカラでねじ伏せるというか…先手必勝というか…」

「しかし、速さを追求すればするほど力や実力が要求されてきます…。俺の実力不足のせいでクロバにも負けました…」

オキナくんは下を向きながら悔しそうに言った。

「この世界では特性があるから相性とか色々あると思うけど…。でも今オキナくんは体力測定で負けてる私に負けちゃったよね?」

「それは…」

「つまり、オキナくんは急ぎすぎなんだよ!これからはもっと相手を観察して、相手の力を利用する。そういう戦い方もあっていいんじゃないかな」

「そう…ですね。急いでも強くなれるものでもないですよね…」

「うんうん!少しでいいなら私もさっきの技とか教えてあげられるから、一緒に頑張ろ!」

「はい」

オキナくんが返事をして、一つ私は疑問に思ったことを聞いてみることにした。

「そういえば、オキナくんの特性って何?」

「それは…」

オキナくんは渋ったが、けっきょくその後特性を教えてくれた。しかし、それは驚くべきもので、その特性を活かす術を私が思いつくと、柔術なんて必要ないくらいの可能性があると発見した。

その後、オキナくんは新しく発見した特性の活かし方の自主練のためしばらく私が訓練に呼ばれることはなくなったのだった。

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