上 下
144 / 195
10章

妹の評価

しおりを挟む
「これは……! なんと複雑かつ精密な陣形成! そして魔力効率を重視しこの効果を生み出すだのに最低量の魔力で発動できるよう工夫されておる! そして最新の技術を使いつつ従来の魔石工学の技術も踏襲されておる!」

 さすが魔石工学の第一人者といわれるだけある!
 この魔法陣の素晴らしさに気づいてくれるなんて!
 私の設計図を褒めている時にゴードレットさんがハッと何か気づいたようにこちらを見た。

「サキちゃんはもしや、サキ・アルベルト・アメミヤという名前ではないかね⁉︎」

「え? あ、はい。そうですね」

 私が答えるとゴードレットさんが立ち上がり私の目の前にきて両手をガシッと掴んだ。

「お会いしたかった! あなたの書いた『二重層構造魔法陣接続論』を読んだ時は雷に撃たれたような気持ちでした! あなた様のお弟子のアリス・シャンス殿が書かれた『属性共存強化陣』の論文も非常に参考になる内容でした」

 あ、ゴードレットさん私とアリスが出した論文読んでくれたんだ。
 私が少し前にアクアブルムの魔石工学技術発展のためにと書いた論文と、アリスが考えた仮説を私と一緒に実験し書き上げた論文の名前が出てきてなんだかちょっと誇らしい気分になった。

「読んでいただいて光栄です。拙い内容でお恥ずかしい限りですが……」

「とんでもない! シスターズの出すものはアイデアに溢れ、魔術書塔の魔術師皆が一目を置いている存在。その三人を育てた天才とこうして話ができるとは……長生きはしてみるものじゃ」

 そこまでいわれるとなんだか照れちゃうなぁ。ん? 今、なんて言った?

「シスターズが一目置かれてるって、あの子達魔術書塔の人たちにまで有名なんですか?」

「あぁ、そうですね。魔術書塔の中に住んでいる魔術師は私を含めた紹介をいたしました三人だけですが、塔周辺に住んでいる魔術書塔所属の魔術師は新しい技術や論文が出るたびに大騒ぎですからね。中でも最近はシスターズのアリス様とプレシア姫様の論文に、アネット様の見たこともない魔法形状などそれはそれは大変でしたよ。紹介した二人もプレシア姫様の論文とアネット様の魔法再現にかかりっきりです」

 あの三人がまさかの研究者たちのアイドルになっていたとは。
 ん? ということは……。

「さっきの設計図通りに作るにしてもあの二人の協力も仰ぎたいところじゃな」

「確かに……私とおじいちゃんだけだとかなり時間がかかりそうですね」

「さっきの二人、私の名前を聞いてくれればちょっとは話をしてくれますかね?」

「あぁ、その可能性はありますけどあの二人はプレシア姫様とアネット様にかなりご執心ですからね……」

「本人に会えるとなればなんでもいうこと聞きそうじゃがのぉ」

「本人に会わせればいいんですね。任せてください」

 私は意気揚々と部屋を飛び出して先ほどのラルフさんの部屋へ向かった。
 ノックをしてから扉を開けて資料を踏まないようにラルフさんの近くへ行くとラルフさんは不機嫌そうに手を止めてこちらを向いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

双子の転生者は平和を目指す

弥刀咲 夕子
ファンタジー
婚約を破棄され処刑される悪役令嬢と王子に見初められ刺殺されるヒロインの二人とも知らない二人の秘密─── 三話で終わります

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

【完結】『それ』って愛なのかしら?

月白ヤトヒコ
恋愛
「質問なのですが、お二人の言う『それ』って愛なのかしら?」  わたくしは、目の前で肩を寄せ合って寄り添う二人へと質問をする。 「な、なにを……そ、そんなことあなたに言われる筋合いは無い!」 「きっと彼女は、あなたに愛されなかった理由を聞きたいんですよ。最後ですから、答えてあげましょうよ」 「そ、そうなのか?」 「もちろんです! わたし達は愛し合っているから、こうなったんです!」  と、わたくしの目の前で宣うお花畑バカップル。  わたくしと彼との『婚約の約束』は、一応は政略でした。  わたくしより一つ年下の彼とは政略ではあれども……互いに恋情は持てなくても、穏やかな家庭を築いて行ければいい。そんな風に思っていたことも……あったがなっ!? 「申し訳ないが、あなたとの婚約を破棄したい」 「頼むっ、俺は彼女のことを愛してしまったんだ!」 「これが政略だというのは判っている! けど、俺は彼女という存在を知って、彼女に愛され、あなたとの愛情の無い結婚生活を送ることなんてもう考えられないんだ!」 「それに、彼女のお腹には俺の子がいる。だから、婚約を破棄してほしいんだ。頼む!」 「ご、ごめんなさい! わたしが彼を愛してしまったから!」  なんて茶番を繰り広げる憐れなバカップルに、わたくしは少しばかり現実を見せてあげることにした。 ※バカップル共に、冷や水どころかブリザードな現実を突き付けて、正論でぶん殴るスタイル。 ※一部、若年女性の妊娠出産についてのセンシティブな内容が含まれます。

えっ、これってバッドエンドですか!?

黄昏くれの
恋愛
ここはプラッツェン王立学園。 卒業パーティというめでたい日に突然王子による婚約破棄が宣言される。 あれ、なんだかこれ見覚えがあるような。もしかしてオレ、乙女ゲームの攻略対象の一人になってる!? しかし悪役令嬢も後ろで庇われている少女もなんだが様子がおかしくて・・・? よくある転生、婚約破棄モノ、単発です。

転生悪役令嬢の考察。

saito
恋愛
転生悪役令嬢とは何なのかを考える転生悪役令嬢。 ご感想頂けるととても励みになります。

おれたちはサクラ色の青春

藤香いつき
青春
国内一のエリート高校、桜統学園。その中でもトップクラスと呼ばれる『Bクラス』に、この春から転入した『ヒナ』。見た目も心も高2男子? 『おれは、この学園で青春する!』 新しい環境に飛び込んだヒナを待ち受けていたのは、天才教師と問題だらけのクラスメイトたち。 騒いだり、涙したり。それぞれの弱さや小さな秘密も抱えて。 桜統学園で繰り広げられる、青い高校生たちのお話。 《青春ボカロカップ参加》🌸 各チャプタータイトルはボカロ(※)曲をオマージュしております。 ボカロワードも詰め込みつつ、のちにバンドやアカペラなど、音楽のある作品にしていきます。 青い彼らと一緒に、青春をうたっていただけたら幸いです。 ※『VOCALOID』および『ボカロ』はヤマハ株式会社の登録商標ですが、本作では「合成音声を用いた楽曲群」との広義で遣わせていただきます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。