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10章

妹達の語らい

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レオンさんのお家に行ってから数日後。

「お姉さまとお出かけ、嬉しいですわ!」

「私までついてきてもよかったのかな……」

「いいに決まっています! 私がきてくださいと言ったのですから。ね、先生?」

 私が作った空間拡張馬車の中でアネット、アリス、プレシアの三人が紅茶を飲む私に話しかけてきた。
 実はこの三人、貴族の間で密かに噂になっているのだ。
 言わずもがなアネットは現在、三学年の筆頭エースで将来有望と評価が高く、自分の息子と……などと思っている貴族家がいるほどだ。実技、座学ともに優秀なアネットのことを『次の英雄』なんてことをいう人もいるみたい。
 アリスはアクアブルムをはじめとする魔石工学業界の天才児と名前が広まりつつある。
 キールが商品開発の効率化やデザインをメインに活動してるのに対して、現在のアメミヤ工房新商品の魔法陣の1/3はアリスが開発に大きく関わったものなのだ。魔石工学は魔法陣の作成理論がかなり重要で、アリスと私の共同開発した魔力を出力結果と一緒に別の魔法陣へ移す仕組みがかなり斬新と話題になったのだ。
 そしてプレシアは治療師協会を初めとする多くの有名な治療師から注目を浴びている。最初はお姫様ということもあってお偉いさんたちが気を使っているんだと厳しい声もあったようだけど、私の教えやティルナさんからの冒険者ならではの回復魔法の技術を吸収して、独自の回復魔法論文をいくつも発表している。突拍子もないようなものから、未だに誰も思いつかなかった画期的なものまで、自力で評価を覆したのだ。治療院にも足を運んで実践を積む中、大怪我を負った急患を治したことで市民、治療師ともに評価が爆上がりしたんだとか。ファンクラブまでできちゃって『治療院の女神』とまで呼ばれるようになったと恥ずかしそうに言ってたっけ。
 この三人がいろいろな分野のところで私の名前を出すものだから、英雄の妹たちと意味を込めて『シスターズ』なんて呼ばれて貴族の間では話題に上がることがあるとパパとママが言っていた。
 私の知らないところで私が有名になっているとは思わなかった。誇らしい半分、ちょっと恥ずかしい……。
 そんな妹たちの話は当然本人たちにも入り、今では仲良し三人娘でたまにお茶をしてるらしい。

「それにしても、よく王様が姫様の国外出を許可してくださりましたわね」

 アネットが不思議そうに尋ねると、プレシアはふふんと少々誇らしげに鼻を鳴らした。

「それに関しては先生とアリスの話を参考にしたんですよ」

「私が余計なことを話してしまったばっかりに……」

 誇らしげなプレシアに対してなんだか申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせて伏せるアリス。
 王様は王妃様にもだけど、プレシアにも弱いからなぁ……。

「プレシア何したの?」

「お父様に今回の先生とのお出かけにご同行を許可しないなら私の魔法を夜な夜なお父様にかけて疲労のピークで朝を迎えるようにいたしますとお願いしました」

 ……プレシア、それはお願いじゃなくて脅しっていうんだよ?
 少し前のパパにした『お願い』の方法をアリスがプレシアに話したみたいだね。

「さすがプレシア姫様ですわ! しっかりとお姉さまの技を継承してますの! 私もいつか時が来たらお父さまに仕掛けてみますの!」

「あぁ……ご令嬢の皆様がどんどん悪い方向に……」

「アリスも何かあればお兄様に仕掛ければ良いのですよ」

 妹たち三人が戯れているのは可愛いけど内容が内容だけに看過はできない……。

「三人とも、ほどほどにね?」

「「「はーい」」」
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