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3巻

3-2

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「ねぇ、アニエちゃん。一つ聞いてもいい?」
「何?」
「どうして公爵家の……ブルーム家の養子になる話を受けたの?」

 アニエちゃんはブルーム家であまりいい扱いを受けていなかった。それなのになんでアニエちゃんは公爵家の養子の話を受けたんだろうってずっと気になっていたのだ。
 養子になるためには本人と親の同意が必要だ。
 だから、アニエちゃんは自分の意思で養子になっているはずなんだけど。
 アニエちゃんは真面目な顔になって言う。

「……聞いちゃったら、私のこと嫌いになるかもよ?」
「ならない」

 そんなわけない。これだけは自信がある。私は学園に来てからアニエちゃんが一番の友達だ。今さら何があったって嫌いにならない。

「即答ね……じゃあ、サキにだけ特別に教えてあげる。私の一番の友達だしね……って何ニヤニヤしてるのよ」

 そう言ってアニエちゃんは右手で私のほっぺをつまんで、うにうにする。

「いひゃいいひゃいぃ~」

 一番の友達――アニエちゃんも私のことをそう思ってくれていたことがすごく嬉しくて、ついつい頬が緩んでしまった。
 アニエちゃんは右手を離すと、「ふぅ……」と息を吐いた。

「このことはみんなには内緒なんだからね。フランやアネットちゃん、それとミシャとオージェにも」
「うん、約束」

 私が小指を出して見せると、アニエちゃんは首をかしげる。
 こっちの世界には指切りの習慣がないのか……。

「前に私がいたところでやってたの。約束を守る、おまじない」
「へぇ……こう?」

 アニエちゃんも小指を出す。
 そして私は、自分の小指とアニエちゃんの小指を結んだ。

「ゆーびきーりげんまん、うーそついたらはーりせんぼん、のーます」

 私が歌うと、アニエちゃんは驚いたように声を上げる。

「え⁉ 針千本呑まされるの⁉」
「ふふふ、私が嘘をついて、アニエちゃんの秘密を誰かに話したら……ね?」
「そ、そんな覚悟を見せなくても……まぁいいわ」

 そう言うと、アニエちゃんは夜空を見上げた。
 その表情はちょっぴり悲しそうで、何かに想いをせているようで。いつも明るいアニエちゃんとは別人みたいだった。そしてアニエちゃんは決心したように口を開く。

「私が養子になった目的はね、パパとママのかたきを見つけて……殺すこと」

 落ち着いた様子で話すアニエちゃんの声は、いつもよりもんで聞こえて、私の心に突き刺さった。

「え……?」
「順を追って話すわね。孤児として育った私は、生きていく力をつけるためにどうしても魔法を覚えたかったの。そのためには魔法学園に入学しなければならなくって。ただ私がもともといた孤児院から入学するのは、予算的に厳しいって子供ながらにわかっていたわ。孤児院の先生はすごくいい人だったけど、とてもわがままなんて言える状況じゃなかった」

 確かに魔法学園に通うにはある程度お金に余裕がないと難しい。
 もとの世界と同じで、学費がかかるのだ。
 そして魔法学園に入学してわかったのは、魔法は教えてくれる人がいないと、自分一人で上達するのはとても大変だということ。私にとってのネルや貴族の子供にとっての家庭教師のように、教育者がいなければ高いナンバーズや技能を習得するのは難しいのだ。
 まぁレオン先輩みたいに、通常の十種類の属性以外の属性を持つ魔法――特殊ユニク魔法を独学で覚えてしまうような例外もいるけど。そもそも特殊ユニク魔法自体、教えられる人が少ないし。
 アニエちゃんは続ける。

「でも、私はどうしても魔法を覚えたかった。そんな時に私にチャンスが舞い込んできたわ」
「ブルーム家の養子の話?」
「そうよ。ブルーム家に入ったら、この先一切のわがままを言わないとちかってでも、魔法学園への入学だけはさせてもらうつもりでいたわ。まぁ、私がお願いしなくても、当主のオドレイ様が公爵家に相応ふさわしい教育を受けさせるという方針だったから入学できたけどね。私はこうしてブルーム家の養子になったの。そんな時だった。私が捨て子ではなく実はもともと伯爵家の娘で、両親は殺されてしまったんだと知ってしまったのは」

 前にフランに聞いたことがある。
 アニエちゃんの生家であるオーレル家が、何者かに襲撃されたという話だ。
 アニエちゃんは話し続ける。

「それを聞いた時、私の中に黒い……ぐちゃぐちゃした気持ちがあふれてきたの。仲良くパパやママと手を繋いで歩く私と同じくらいの年の子を見るたびに、誰もいない隣を見てしまうようになった。そして私は理解したわ。ぐちゃぐちゃしたこの気持ちは……憎しみなんだろうって。どうして私の隣にパパはいないんだって、どうして私をめてくれるママはいないんだって、どうして私は普通じゃないんだって、取り戻したくても取り戻せない幸せを思うたびにその気持ちは増える一方で……誰に憎しみの矛先ほこさきを向けていいかもわからなかった。だからこの気持ちは私のパパとママを殺した人に向けることにした。魔法を覚えて、強くなって、その人になんでパパとママを殺したのか、どうやって殺したのか、全てを聞き出して、次は私がその人を……殺すんだ」
「アニエちゃん……」

 淡々と話すアニエちゃんは驚くほど落ち着いていて、でも覚悟を感じた。

「サキと最初にお昼を食べた時に、努力をする人が好きって言ったの覚えてる? あれは嘘じゃない。でもね、努力をする『私』は大っ嫌い……こんな汚い気持ちを持っている『私』なんて大っ嫌い……頑張るみんなを見て、みんなの姿に嫉妬しっとする『私』が、大っ嫌い……」

 そう言って、アニエちゃんは顔を伏せる。
 知らなかった。アニエちゃんはみんなのお姉ちゃんみたいで、しっかり者で、努力家で、たまに甘えんぼさんで……私の大切な友達だ。それなのに、こんなにもアニエちゃんが苦しんでいることに、私はちっとも気付かなかった……。
 そして、アニエちゃんの話を聞いても、私にはアニエちゃんの気持ちを本当の意味ではわかってあげられない。
 仲の良い親子をうらやむ気持ちはわかる。
 前の世界での私の親は酒癖が悪く、虐待してくるようなロクでもない人間だったから。ただ、そんなでも私の親だ。その存在に後押しされて努力できた時もあった。
 アニエちゃんにはそんな親すらいない……どんなに頑張っても『本当の親子』という理想を叶えることができないんだ……。
 ずっとアニエちゃんはすごいと思っていた。両親を失い、見知らぬ家の養子になり、周囲のプレッシャーをはねけて努力をする姿に、私はあこがれの気持ちさえ持っていた。
 でも、その努力の目的は復讐だったんだね……。
 少しだけ、悲しい……。
 黙ってしまった私に、アニエちゃんが尋ねてくる。

「どう? 私のこと、嫌いになった?」
「ならない」
「また即答なのね」
「でも……悲しいなぁ」

 私がそう言うと、アニエちゃんが不思議そうな顔をして聞いてくる。

「なんでサキが悲しくなってるのよ」
「私ね……昔、とってもひどい目にあってたの。たくさん働いて、たくさんつらい思いをして、それでも幸せになれなくて……親も私の心配なんてしない、むしろ私を傷つける時もあった。そんな時に私を辛い世界から助けてくれた人がいて、その人に言われたの。『復讐めいたことをしても、人の心は晴れません』って。私はアニエちゃんが大好きだから……頑張っているアニエちゃんが大好きだから……笑ってるアニエちゃんも怒ってるアニエちゃんも大好きだから。大好きなアニエちゃんが目的を成しげた時のことを考えたら、私はとっても悲しいよ」
「サキ……」

 気付けば私のほおを涙がつたっていた。

「サキ、泣かないで?」
「ごめんね……」
「ううん、私が間違ってるの。サキはやっぱり優しいね……それじゃあ、サキにお願いをしてもいいかな?」
「お願い?」
「もし……もし私が間違った道に進もうとしたら、その時は助けてほしいの。サキのことを助けたその人みたいに――お願い」
「アニエちゃん……」

 そう言ってアニエちゃんはいつものように優しく頭をでてくれた。
 でも、その顔はどこかさびしげだ。私は絶対に大好きなアニエちゃんに間違った道を歩ませるものかと、強く思った。

「サキ、こんなところにいたんだ。父様がさがして……ってどうしたんだい?」

 パパに頼まれたらしいフランが声をかけてきたので、私は首を横に振って答える。

「ううん、なんでもないよ。今行くね」

 私は立ち上がってパパの方へ向かう。
 人込みをすり抜けて、なんとかパパのもとへたどり着くと、パパが尋ねてくる。

「サキ、すまない。使用人のみんなにサキが養子になることを伝えてなかったからね。紹介させてくれるかい?」
「は、はい」

 頷いちゃったけどそれって……みんなの前に立つってこと⁉
 ど、どうしよう! 急に緊張してきた!
 言われるがままパパの後ろについていった先は、パパが最初に挨拶あいさつしていた台の上だった。

「みんな! 聞いてくれ!」

 パパが呼びかけると、メイドさんや兵士さんなんかが一斉にこちらを向く。
 ひぃ⁉ し、視線が、視線がこっちに⁉

「今回、僕が公爵家当主を継承した後、ここにいるサキがアルベルト家の養子となることが決まった! みんな、新たな家族を歓迎かんげいしようではないか!」

 パパがそう言うと、使用人のみんなは『わぁー』と盛り上がって拍手した。

「サキ様が養子なんて、今日はなんて喜ばしい日なんでしょう!」
「あの嬢ちゃんが加わるとなりゃあ、アルベルト家はもう安泰あんたいだな!」

 パパの言葉に、使用人のみんなはあちこちで私を歓迎するような声を上げた。
 みんなが温かく受け入れてくれるのは嬉しいけど、アニエちゃんの話を聞いた後だったから少し心苦しくて、私は複雑な気持ちになってしまった。


 報告が終わって、アニエちゃんのところへ戻ると、さっきの場所にはフランとアネットもいた。
 アニエちゃんはいつもの雰囲気で二人と楽しそうにおしゃべりしていて、私は少し安心した。
 三人は私に気付くとねぎらいの言葉をかけてくれる。

「サキ、お疲れさま」
「お姉さま、素敵でした!」
「これで、サキも公爵家の仲間入りだね」

 こうしてお祝い会は無事終了した。


 ◆


 お祝い会の後、私――アニエは自室へ戻って着替えてからベッドに横になる。
 アルベルト家での暮らしにも、今はだいぶ慣れてぐっすりと眠れるようになっていたけど、今日は眠れなそうだった。さっきのサキとの会話が頭をぐるぐると回っていた。
 どうしてサキにあんなことを話しちゃったんだろう。
 あの子の前だと、隠し事ができなくなっちゃうんだよね……。
 そんなことを考えていると、扉がノックされた。

「アニエ、少しだけ話せないかな?」

 聞こえてきたのは、フレル様の声。

「はい」

 返事をするとフレル様は、遠慮がちに部屋に入ってきて言う。

「こんな時間にすまない。今から休むところだったかな?」
「いえ、大丈夫です。なんだか眠れなかったので」
「そうか、じゃあ少しだけ失礼するよ」

 フレル様がベッドの近くに椅子を寄せ腰を下ろすと、私は尋ねる。

「話ってなんですか?」
「先日の公爵会議で、王様から次のブルーム公爵家当主の発表があった。詳しくは言えないが、僕の継承の儀の後に、ブルーム家当主の叙任じょにんの儀があるはずだ」
「そう……ですか。でも、詳しく言えないっていうのは、どういうことなんですか?」

 私はブルーム家の養子なのだから、次のブルーム家当主様がどんな人か、どの家の人か教えてくれてもいいと思うんだけど。

「それが、僕も詳しくは教えてもらっていないんだ。ただ王様が『お前ら、楽しみにしてろ。絶対驚くぞ』って……」
「ははは……あの王様らしいですね」

 王様とは公爵家の子供の集まりで何度かお話をさせてもらったことがある。遠くから見上げていた時は威厳があって近寄りがたいイメージだったけど、私たちの魔法を楽しそうに見たり、王子様や姫様と笑顔で会話していたりする様子を見ると、気さくないい人だと思えた。ちょっと子供っぽいとも思ったけど。
 フレル様は苦笑して言う。

「まったく、困ったものだよ。他の公爵家の当主にも聞いたが、どうやら誰にも教えていないみたいでね。ただ、近々君はブルームの屋敷に戻ることになりそうだ」
「わかりました……」
「不安だろうけど、王様は何よりも民のことを考える人だ。きっと今回教えてくれないのは、いつもの悪戯いたずらごころだと思うけどね」

 そうだ、あの王様の判断なのだからきっと悪いことにはならないだろう。

「サキやフラン、アネットちゃんと暮らせなくなるのは少しだけ寂しいですね」
「離ればなれになるわけではないんだ。いつでもうちに遊びに来たらいいさ」

 優しく微笑みながら言うフレル様に、私は頭を下げる。

「ありがとうございます。お世話になりました」
「こちらこそ、君がいてくれたおかげでサキもフランもアネットも楽しそうだった。特にサキ……あの子は君のことがとても好きなようだからね」
「フレル様、一つ聞いてもいいですか?」
「なんだい?」
「サキって、何者なんですか?」

 自慢じまんじゃないけど、サキが来るまでは私は学年の中で魔法も成績も一番だった。そんな私ですらサキの足下にも及ばない。それどころか国家反逆組織リベリオンと戦えるサキははるか高みにいるのだ。言い方は悪いかもしれないが、普通ではない。
 フレル様は真剣な表情を浮かべて聞いてくる。

「アニエはサキについて、どんな風に聞いてるのかな?」
「フランには両親に捨てられて、森で猫と一緒に暮らしていたと聞きました。それまでは周りの人から酷い目にあわされていたって……それ以外に具体的なことは何も聞いていません」
「そうだね。実は、フランにも詳しいことは教えていない。いや、僕たちもサキに関してはわかっていないことが多いんだ。ただ、最初は『人』に対してとても臆病おくびょうでね……そんな彼女を放っておけなくて僕は一緒に来ないかと誘ったんだよ。そうだな……賢い君になら、これは教えても大丈夫だろう」
「何をですか?」
「サキのスキルについてだ」

 サキは魔法もすごいけど、様々な武術スキルと変わった常態スキルを持っていた気がする。
 前に聞いたのは悪意を見ることができたり、ものを透かして見たりできるスキルだったっけ?

「森にいる時にネルから聞いた話なんだが……サキは精神耐性100%を持っているらしいんだ」
「えっ⁉」

 精神耐性100%⁉ 嘘でしょ⁉
 精神耐性のスキルは10%を獲得する時ですら、相当なストレスがかかるって本で読んだことがある。
 耐性スキルは武術や魔法のスキルなどと違い、肉体や精神に負荷をかけなければ獲得することはできないのだ。
 私も何度か自分のスキルを確認したけど、精神耐性のスキルなんてなかった。
 教会のスキルボードでスキルは確認できるし……サキが嫌じゃなかったら今度一緒に行ってみようかな。ってそんなことは置いといて、100%という驚異的な耐性スキルをサキが獲得しているのが問題だ。いったいどんな生活をしたら100%なんて数値になるの……?
 黙ってしまった私を見て、フレル様は頷いて言う。

「この話を聞いた時、僕も驚いたよ。それと同時に、余計にサキのことが放っておけなくなってね」
「そうなんですか……」
「だから少しずつ人と関わるようになっていくサキを見ていて、すごく嬉しかったんだよ。そして、その一番の功労者はアニエ、君だ」
「え……」
「優秀なサキに唯一弱点があるとすれば、人とのコミュニケーションが苦手なことだ。でもね、学園に通い始めてから少しずつ口数が増えていった。そして、話題の中に何度も君の名前が出てきたよ。優しくて聡明な君がサキと仲良くしてくれているんだと知って、僕はとても感謝していたんだ。ただ同時に心配もしている」

 そこでフレル様は声のトーンを落とした。

「アニエ、僕は昔から君の瞳の中に何か暗いものが見えるんだ……」

 フレル様にはサキに話した、私が抱いている暗い気持ちを見抜かれているのかもしれないわね。
 前にオドレイ様がボヤいていた。悔しいけどフレル様は、歴代の公爵家の中でも参謀としての才能がずば抜けているって。
 そんな人が私みたいな子供の考えを見抜けないわけがない。

「君は賢い子だ。でも、人にはわかっていても間違った道に進まざるを得ない時がある。そんな時、助けてくれるのは友人や家族なんだ。だから、これからもサキと仲良くしてほしい。そしてお互いに助け合って生きてほしいんだ。僕にはそれができなかったから……」
「フレル様……」
「僕からの話は終わりだよ。アニエ、この先どんなことがあっても、僕たちアルベルト家は君の味方だ。もちろんサキもね。だから、いつでも頼ってくれ」
「ありがとうございます」

 そこでお話は終わり、フレル様は部屋を出ていった。
 私、サキにカッコ悪いところ見せちゃったな……。
 私の辛さなんて、サキに比べれば全然大したことないかもしれないのに……やっぱり、サキは強いなぁ。
 私は複雑な気持ちを抱きながら、ベッドで眠りについた。



  3 貴族の装い


 お祝い会の一週間後。
 とうとう今日は私――サキのパパの家督継承の儀が行われる日だ。
 屋敷の中は朝からバタバタと忙しい雰囲気があった。
 継承の儀が行われるのは王城前の広場。何か大きなイベントがある時は、だいたいが王城前広場が会場になるらしい。
 パパとその父上でありアルベルト公爵家現当主のじぃじは先に王城へ向かったので、私たち子供組は後からママと一緒に広場へ向かうことになった。

「お姉さま! アネットの服、可愛いですか?」

 そう言ってアネットは私の前でくるりと回る。
 現在私たちは屋敷の一室で身じたくをしている。
 やっぱり貴族はこういうイベントにドレスを着ていくものなんだね。
 アネットが着ているのは淡い桃色のフリルがたくさんついたドレスだ。

「うん、とても似合っていて可愛いよ」

 私が正直な感想を伝えると、アネットはにっこりとして言う。

「ありがとうございます!」

 その時、扉がノックされてフランとアニエちゃんが入ってきた。
 フランも普段とは違う格好をしていた。ネクタイをして、なんだかいつもより大人っぽい。
 アニエちゃんもドレスを着ていた。
 アネットとは違い、フリルが少なめの赤色のドレス姿のアニエちゃんはアネットに向けて微笑んだ。

「アネットちゃん、そのドレス可愛いわね」
「ありがとうございます! お姉さまにも褒めていただけました!」
「あれ? サキはまだ着替えてないのかい?」

 私の格好を見て、フランが不思議そうに聞いてきた。

「うん。ドレスは用意してあるってクレールさんが言ってたんだけど……取りに行ってから戻ってこなくて……」

 私が答えると、アニエちゃんとアネットが口にする。

「でも、そろそろ着替えて向かわないといけない時間じゃないかしら?」
「そういえば、お母さまのお部屋からクレールの話し声が聞こえましたわ」

 ママの部屋? 何をしているんだろう……。
 みんなでママの部屋へ向かうと、部屋から屋敷のメイドさんであるクレールさんとママの声が聞こえてくる。

「ですから、こちらの淡い緑のドレスの方が、サキ様にはお似合いかと!」
「確かに緑も素敵よ。でも、こっちの白の方がサキちゃんの幼さと清純さが強調されて、より可愛さが増すに決まっているわ!」

 部屋に入ってみると、ベッドの上には子供サイズのドレスがたくさん並べられていて、ママとクレールさんが服を一着ずつ持ちながらヒートアップしていた。


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