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番外編
episode R & L 5
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初めてラロックさんを見たのは、四学年クラス対抗戦だった。
お父様とお母様、長女のタリア姉様と一緒に、次女のセニア姉様の対抗戦の観戦をしている時、セニア姉様のチームで活躍していたのがラロックさんだった。
ラロックさんは他の四学年の中でも頭ひとつ抜け出た実力を持っていて、その時の私はセニア姉様の応援をそっちのけでラロックさんばかりを目で追っていた。
風のように速く、力強い魔法を様々な工夫で繰り出し、相性が悪い相手も倒すラロックさんの戦い方は、カトリー家の習わし通りに雷魔法ばかりを練習していた私には輝いて見えた。
私も三学年の対抗戦を前日に行っているが、大した活躍もできず、雷魔法が効かない相手になす術がなかった。
そういうこともあり、私はラロックさんの魔法を、戦略を、工夫を、すべてを知りたいと思った。
そんなラロックさんはMVP発表で四学年MVPとなり、私は心から拍手を送っていたが、ラロックさんがMVPであることを快く思わない人たちもいた。
後からセニア姉様に聞いた話によれば、ラロックさんは『侯爵家の落ちこぼれ』と噂されていたのだ。
そんな落ちこぼれと言われる理由は、草魔法の名家であるブロクディス家の次男であるのに草魔法がうまく使えない、たったそれだけのことだった。
しかも、彼の実兄であるヒュリック様でさえ、ラロックさんのことを落ちこぼれと罵っておられるんだとか。
その話を聞いた私は部屋に戻ってからつい声を出してしまった…くだらないと…。
得意属性が使えないだけで落ちこぼれ?MVPを獲れるほどの魔法力があるのに侯爵家として恥ずかしい?本当にくだらない。
ラロックさんの実力を、努力を、才能を、どうして草魔法が使えないというだけで認めないのかと、不思議でしょうがなかった。
そして、私は学園である噂を聞いた。
ラロックさんが代表戦に向けて毎日訓練室で特訓をしていると。
気になって…こんな私なんかが力になんてなれないとは思うけど、せめてお茶くらいはとずっと影で見ては渡せずにいる日々が続いていた。
そんなあるときラロックさんは話かけてくれて、お茶を受け取ってくれるようになり、少しではあるけど話をできるようになった。
恥ずかしすぎて、水筒渡して走り去ってばかりだったけど…。
そして代表戦まで一ヶ月となった日、いつもなら水筒を渡して終わりなのに、その日はラロックさんは私に相手をしてくれと言ってきた。
私は喜んで相手を引き受けた。
少しでもこの人の役に立てる…そう思うだけで私は胸躍っていた。
カトリー家に伝わる移動の魔法の靴を持ってラロックさんの相手をして、とても楽しかったけど、やっぱりラロックさんはすごくて、あっさり私は負けてしまった。いや…ほとんど自滅かもしれないけど…。
壁に衝突して頭が少しくらくらしていたけど、大したことはないと思う。
でも…ラロックさんは私のことを…抱っこ…そう、いつぞやタリア姉様からお借りした本で読んだお、お、お姫様抱っこなるものをして医務室まで運んでくださったのです。
そこで少しの話をして…私はベットに横になった。
ここまで運んでくれた素敵な姿、照れながら出ていく可愛い姿、私と真剣に向き合って訓練をするかっこいい姿、いろんなラロックさんの姿を思い浮かべて、私ははっきりと自覚してしまった。
数ヶ月姿を追い、ちゃんと話をしたのは数日だけ…でも、はっきりとわかった…私は…ラロックさんが好きなのだと…。
好き…好き…はうぅ…。
私は一人で勝手に恥ずかしくなって、毛布の中に潜り込んだ。
お父様とお母様、長女のタリア姉様と一緒に、次女のセニア姉様の対抗戦の観戦をしている時、セニア姉様のチームで活躍していたのがラロックさんだった。
ラロックさんは他の四学年の中でも頭ひとつ抜け出た実力を持っていて、その時の私はセニア姉様の応援をそっちのけでラロックさんばかりを目で追っていた。
風のように速く、力強い魔法を様々な工夫で繰り出し、相性が悪い相手も倒すラロックさんの戦い方は、カトリー家の習わし通りに雷魔法ばかりを練習していた私には輝いて見えた。
私も三学年の対抗戦を前日に行っているが、大した活躍もできず、雷魔法が効かない相手になす術がなかった。
そういうこともあり、私はラロックさんの魔法を、戦略を、工夫を、すべてを知りたいと思った。
そんなラロックさんはMVP発表で四学年MVPとなり、私は心から拍手を送っていたが、ラロックさんがMVPであることを快く思わない人たちもいた。
後からセニア姉様に聞いた話によれば、ラロックさんは『侯爵家の落ちこぼれ』と噂されていたのだ。
そんな落ちこぼれと言われる理由は、草魔法の名家であるブロクディス家の次男であるのに草魔法がうまく使えない、たったそれだけのことだった。
しかも、彼の実兄であるヒュリック様でさえ、ラロックさんのことを落ちこぼれと罵っておられるんだとか。
その話を聞いた私は部屋に戻ってからつい声を出してしまった…くだらないと…。
得意属性が使えないだけで落ちこぼれ?MVPを獲れるほどの魔法力があるのに侯爵家として恥ずかしい?本当にくだらない。
ラロックさんの実力を、努力を、才能を、どうして草魔法が使えないというだけで認めないのかと、不思議でしょうがなかった。
そして、私は学園である噂を聞いた。
ラロックさんが代表戦に向けて毎日訓練室で特訓をしていると。
気になって…こんな私なんかが力になんてなれないとは思うけど、せめてお茶くらいはとずっと影で見ては渡せずにいる日々が続いていた。
そんなあるときラロックさんは話かけてくれて、お茶を受け取ってくれるようになり、少しではあるけど話をできるようになった。
恥ずかしすぎて、水筒渡して走り去ってばかりだったけど…。
そして代表戦まで一ヶ月となった日、いつもなら水筒を渡して終わりなのに、その日はラロックさんは私に相手をしてくれと言ってきた。
私は喜んで相手を引き受けた。
少しでもこの人の役に立てる…そう思うだけで私は胸躍っていた。
カトリー家に伝わる移動の魔法の靴を持ってラロックさんの相手をして、とても楽しかったけど、やっぱりラロックさんはすごくて、あっさり私は負けてしまった。いや…ほとんど自滅かもしれないけど…。
壁に衝突して頭が少しくらくらしていたけど、大したことはないと思う。
でも…ラロックさんは私のことを…抱っこ…そう、いつぞやタリア姉様からお借りした本で読んだお、お、お姫様抱っこなるものをして医務室まで運んでくださったのです。
そこで少しの話をして…私はベットに横になった。
ここまで運んでくれた素敵な姿、照れながら出ていく可愛い姿、私と真剣に向き合って訓練をするかっこいい姿、いろんなラロックさんの姿を思い浮かべて、私ははっきりと自覚してしまった。
数ヶ月姿を追い、ちゃんと話をしたのは数日だけ…でも、はっきりとわかった…私は…ラロックさんが好きなのだと…。
好き…好き…はうぅ…。
私は一人で勝手に恥ずかしくなって、毛布の中に潜り込んだ。
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