前世で辛い思いをしたので、神様が謝罪に来ました

初昔 茶ノ介

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番外編

episode R & L 1

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代表戦の壮行会が明日、行われるらしい。
私たちエルト代表選手は最後の特訓に励んでいた。

「ラロック!もっと距離を詰めるんだ!接近戦が得意な相手に対して極端に距離を開けちゃダメだ!逆にサキは魔法を使って距離を変えていかないといけないよ!ラロックに一定距離を保たれ続けているよ」

「うっす!」

「はい」

ラロック先輩と私の模擬戦を見ながら、レオン先輩が横でアドバイスをする。
私はアドバイスを受けて、手を前に出した。

第一シグルグランド」

「うおっ!?」

私は地面を少しだけ盛り上げラロック先輩の足元を不安定にする。
ラロック先輩はその地面にバランスを崩し、一瞬立ち止まった。

「ネル流武術スキル…陽ノ型・炎天華えんてんか

「う…!?」

私はラロック先輩に一気に距離を詰めて、その勢いを使ってジャンプし、上から手刀攻撃を行った。
ラロック先輩は両腕でガードしているが、そこでレフさんが攻撃が当たった声を上げる。

「はぁ!?今のは防いだだろ!?」

「手の先が…お腹に当たった…もん」

「んなもん攻撃にも入んねーだろ!?」

「もーラロックさん。そんなに意地にならないでくださいよ」

レフさんに抗議するラロック先輩をリリア先輩が止めながら、ラロック先輩と私に飲み物をくれた。

「くそっ…次こそぜってー勝つ…」

「のぞむ…ところ…」

「はは、二人ともやる気満々だね」

「もう…笑い事じゃないですよ。代表戦まであと一週間、今日で特訓は終わりなんですから」

お互いに睨み合うラロック先輩と私を、横でレオン先輩が面白そうに見ていた。
リリア先輩は心底心配そうにはぁ…とため息をついた。

「やる気のところあれなんだけど、今日はもう時間だよ。明日からはみんな体を休めて、体調を万全にすること。いいね」

レオン先輩に言われて、私たちは帰り支度を始める。
そして、4人で訓練室を出て玄関へ向かう。

「そういえば……去年の代表戦は……どうだったの…?」

ふと、気になったのでリリア先輩に聞いてみる。
すると、リリア先輩は困ったような笑顔になった。

「うぅん…実は私、去年は代表じゃないの。エルト開催だったから見てはいたんだけど…去年のことならレオン先輩かラロックさんのほうが詳しいよ」

「去年のことに興味があるのかい?」

「少し…ラロック先輩の……戦いっぷり…とか…」

「なんで俺なんだよ」

「なんとなく……?どうせ…レオン先輩は……めちゃくちゃだと思う…から」

「まぁ、それは当たってるな」

「めちゃくちゃとはひどいなぁ。ちょっと3人くらい倒しただけさ」

ほぼ全員じゃん!?
私が驚きの顔でレオン先輩を見ると、満足げなレオン先輩の顔が目に入った。
……自慢したかっただけだな…。

「でも、ラロックの話は僕も興味あるよ。ちょっと話を聞くためにも少し寄り道していかないかい?」

「はぁ?なんでそんな…」

「あ、私も聞きたいです」

「リリア…」

「それじゃあ…行きたいお店が…あります…」

「じゃあそこでじっくり聞こうじゃないか」

「決定かよ!?」

「サキちゃん、どこのお店?」

「商業区の…冬の木テラスって…お店」

「あぁ!そのお店、噂で聞いたことありますよ!可愛い店主さんが変わった料理を出してくれるって」

「よし、さっそく向かおうじゃないか」

「だから俺の意見は…」

「いいじゃないか。試合前に親睦を深めようよ」

「ラロックさん、いきましょうよ」

リリア先輩が言うと、ラロック先輩がしばらく黙ってからはぁ…と大きなため息をついた。

「わかったよ…ちょっとだけな」

「やった!」

こうして、私たちは冬の木テラスですラロック先輩の話を聞くことになった。
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