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2章:学園生活
試験前の先生達
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ある日の教員室。私はコーヒーを片手に、先日配布された各学年昇組試験の資料をながめていた。
とうとう試験三日前になったところだけど…リンちゃんがいろいろしてるみたいだし、今回の昇組試験は期待できそうです。
「セルフィア先生」
私は後ろから声をかけられたので、振り返ってみると、二組担任のえっと…ラ…ラ…。
あぁ、ダメです。名前が出てきません。確か二組に私と同じようにお子さんがいるのは覚えているのですが…。
「何か御用でしたか?」
「いえね、一言あいさつをしておこうと思いまして」
「ごあいさつ?いったいなんのですか?」
私はこの人は何を言っているんだと言わんばかりに首を傾げてしまった。
「三日後の昇組試験ですよ。この二組担任、ビトー・ランガイの息子の相手に、あの噂の20位の子を選んでくれたらしいじゃないですか。私の生徒を自分で教えられないのは残念ですが…」
あぁ、そうそう。ランガイ先生でした。このキザな話し方と、なんかムカつく態度があんまり好きじゃないんですよね…昔から。
このランガイ先生は私やレオンさんと同じ学年で、家が貴族のいわゆるおぼっちゃま体質なのだ。
先生の言葉で、何が言いたいのかを理解して、私はイスをクルッと回し、ランガイ先生のほうを向いた。
「別に私は、あなたの息子さんを合格させるためにゴウくんを選んだわけではないですよ?」
「なんですと?」
「あなたの息子さんごときでは、ゴウくんの足元にも及ばないと思いますが…一応、昇組候補生として選ばれている以上、相手を選ばなければいけないからしかたなくです。まぁ、お家の名を振りかざすあなたのことですから、20位のゴウくんを選んだのは自分の息子を合格させるためと思うでしょうね、フフフ」
「き、貴様!私だけでなく、息子まで侮辱するつもりか!」
そう言ってランガイ先生は魔筆を取り出そうとしたが、私は既に式を展開して風の刃をランガイ先生の周囲にしかけた。
「先に私の生徒を侮辱したのはどこの誰なのか、ご自分の胸に手を当て、考え直してください」
先生は明らかに怒りの表情を見せるが、あんなことを言われては私も引き下がらないし、むしろ怒りたいのは私のほうだ。
「私の生徒を侮辱するということは教員としての私を、引いては私の娘を侮辱するのと同じことです。この際だから頭の足りないあなたに教えてあげましょう。私が一組担任である以上は『権力』なんて力は一切、役に立たないものだということを理解なさい。私の生徒はみんな、常に努力と思考を止めない優秀な子達です。次に私の生徒を侮辱したのなら、立場とか関係ない…私がこの手であなたを…殺す…」
「く…この…」
私はにこやかに魔法を解除して、再び資料に目を落とした。
ランガイ先生は悔しそうにふんっと鼻を鳴らして、反対側に歩いて行った。
「ほっほっほ…『神速』の二つ名は未だ健在じゃのぉ」
次は聞き覚えのある声が後ろから聞こえたので、再び振り返ると学園長が歩いてきた。
「神速はやめてください…恥ずかしいので。それより学園長」
「なんじゃね?」
「リンちゃんに昔話でもしましたか?」
私の問いかけに学園長はまたほっほっほと笑った。
「ほっほっほじゃないですよ。あれからリンちゃんに魔弱病に加えて、他の不治の病についても質問攻めにあったんですから」
「それはそれは、君に似て勉強熱心なことじゃ」
「もう、他人事だと思ってますね」
「それで、聞いた後、リンくんはどうしたのかね?」
「……後日こんなものを持ってきました」
私は机に立ててあった資料を一つ取り出して、学園長に渡す。
学園長はそれをパラパラとめくっていくにつれ、先ほどまでの和やかな表情が厳しいものへと変わっていった。
「これを…リンくんが書いたのかね?」
「はい。我が娘ながら、末恐ろしいです…」
「むー…。すまんがリーネくん、この資料をしばらくわしに貸してくれんか?」
「え?えぇ、構いませんが」
「そうか、ではお借りしよう。それにしても…蛙の子は蛙とはよく言ったものじゃ」
「あら、そのカエルはどちらのことを言ってらっしゃるんですか?」
「はて、どうじゃろな。ほっほっほ」
学園長は資料を持って、学園長室に向かっていった。
私は仕事が一段落したので、紅茶でも飲もうと食堂へ向かった。
まったく…あの教員室にはコーヒーしか置いてないんですね…。教員室から食堂はけっこう距離があるから大変なんですよ。
「このっ!」
「ん…?」
今、訓練室からハナちゃんの声がしたような。
私はそっと訓練室の扉を開けてのぞくと、ハナちゃんと私のクラスじゃない男の子が模擬戦をしていた。
たしかあれは…二組の全色くん?得意属性が全色だから、なんとなく覚えてた。
「まだまだっ!」
「くっ!」
まさか、ハナちゃんに本気を出させてるなんて。ふむふむ、あの子が最近リンちゃんが気にかけてる男の子ね…。
フフフ、リンちゃんは将来、お医者さんになるのかと思ったけど、先生もいいかもしれないわ…さすが私とレオンさんの娘!これはますます三日後の試験が楽しみだわ!
私は再び訓練室の扉を閉めて、さっきよりも足取り軽く食堂へ向かった。
とうとう試験三日前になったところだけど…リンちゃんがいろいろしてるみたいだし、今回の昇組試験は期待できそうです。
「セルフィア先生」
私は後ろから声をかけられたので、振り返ってみると、二組担任のえっと…ラ…ラ…。
あぁ、ダメです。名前が出てきません。確か二組に私と同じようにお子さんがいるのは覚えているのですが…。
「何か御用でしたか?」
「いえね、一言あいさつをしておこうと思いまして」
「ごあいさつ?いったいなんのですか?」
私はこの人は何を言っているんだと言わんばかりに首を傾げてしまった。
「三日後の昇組試験ですよ。この二組担任、ビトー・ランガイの息子の相手に、あの噂の20位の子を選んでくれたらしいじゃないですか。私の生徒を自分で教えられないのは残念ですが…」
あぁ、そうそう。ランガイ先生でした。このキザな話し方と、なんかムカつく態度があんまり好きじゃないんですよね…昔から。
このランガイ先生は私やレオンさんと同じ学年で、家が貴族のいわゆるおぼっちゃま体質なのだ。
先生の言葉で、何が言いたいのかを理解して、私はイスをクルッと回し、ランガイ先生のほうを向いた。
「別に私は、あなたの息子さんを合格させるためにゴウくんを選んだわけではないですよ?」
「なんですと?」
「あなたの息子さんごときでは、ゴウくんの足元にも及ばないと思いますが…一応、昇組候補生として選ばれている以上、相手を選ばなければいけないからしかたなくです。まぁ、お家の名を振りかざすあなたのことですから、20位のゴウくんを選んだのは自分の息子を合格させるためと思うでしょうね、フフフ」
「き、貴様!私だけでなく、息子まで侮辱するつもりか!」
そう言ってランガイ先生は魔筆を取り出そうとしたが、私は既に式を展開して風の刃をランガイ先生の周囲にしかけた。
「先に私の生徒を侮辱したのはどこの誰なのか、ご自分の胸に手を当て、考え直してください」
先生は明らかに怒りの表情を見せるが、あんなことを言われては私も引き下がらないし、むしろ怒りたいのは私のほうだ。
「私の生徒を侮辱するということは教員としての私を、引いては私の娘を侮辱するのと同じことです。この際だから頭の足りないあなたに教えてあげましょう。私が一組担任である以上は『権力』なんて力は一切、役に立たないものだということを理解なさい。私の生徒はみんな、常に努力と思考を止めない優秀な子達です。次に私の生徒を侮辱したのなら、立場とか関係ない…私がこの手であなたを…殺す…」
「く…この…」
私はにこやかに魔法を解除して、再び資料に目を落とした。
ランガイ先生は悔しそうにふんっと鼻を鳴らして、反対側に歩いて行った。
「ほっほっほ…『神速』の二つ名は未だ健在じゃのぉ」
次は聞き覚えのある声が後ろから聞こえたので、再び振り返ると学園長が歩いてきた。
「神速はやめてください…恥ずかしいので。それより学園長」
「なんじゃね?」
「リンちゃんに昔話でもしましたか?」
私の問いかけに学園長はまたほっほっほと笑った。
「ほっほっほじゃないですよ。あれからリンちゃんに魔弱病に加えて、他の不治の病についても質問攻めにあったんですから」
「それはそれは、君に似て勉強熱心なことじゃ」
「もう、他人事だと思ってますね」
「それで、聞いた後、リンくんはどうしたのかね?」
「……後日こんなものを持ってきました」
私は机に立ててあった資料を一つ取り出して、学園長に渡す。
学園長はそれをパラパラとめくっていくにつれ、先ほどまでの和やかな表情が厳しいものへと変わっていった。
「これを…リンくんが書いたのかね?」
「はい。我が娘ながら、末恐ろしいです…」
「むー…。すまんがリーネくん、この資料をしばらくわしに貸してくれんか?」
「え?えぇ、構いませんが」
「そうか、ではお借りしよう。それにしても…蛙の子は蛙とはよく言ったものじゃ」
「あら、そのカエルはどちらのことを言ってらっしゃるんですか?」
「はて、どうじゃろな。ほっほっほ」
学園長は資料を持って、学園長室に向かっていった。
私は仕事が一段落したので、紅茶でも飲もうと食堂へ向かった。
まったく…あの教員室にはコーヒーしか置いてないんですね…。教員室から食堂はけっこう距離があるから大変なんですよ。
「このっ!」
「ん…?」
今、訓練室からハナちゃんの声がしたような。
私はそっと訓練室の扉を開けてのぞくと、ハナちゃんと私のクラスじゃない男の子が模擬戦をしていた。
たしかあれは…二組の全色くん?得意属性が全色だから、なんとなく覚えてた。
「まだまだっ!」
「くっ!」
まさか、ハナちゃんに本気を出させてるなんて。ふむふむ、あの子が最近リンちゃんが気にかけてる男の子ね…。
フフフ、リンちゃんは将来、お医者さんになるのかと思ったけど、先生もいいかもしれないわ…さすが私とレオンさんの娘!これはますます三日後の試験が楽しみだわ!
私は再び訓練室の扉を閉めて、さっきよりも足取り軽く食堂へ向かった。
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