魔法の数字

初昔 茶ノ介

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1章:魔法学園入学

夜の語らい

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お風呂から上がってママと部屋に戻ってから明日の予定を確認しているとレインがご飯を運んできた。

「美味しそう!」

「きれい…」

運ばれてきた料理はどれも見たことがないものだった。
赤色の焼き魚に変わった野菜を使った料理が並んで私はついつい興味をそそられてしまう。

「それではごゆっくりどうぞ。そちらの鐘を鳴らしていただければ器を取りに参りますので。」

「えぇ、ありがとう」

レインはまた一礼して部屋を後にする。

「ほんとにしっかりした子ね」

「むー…」

ママがまたレインを褒める。
レインは確かにしっかりしててかっこよくて…でもママが私以外を褒めるのを見るとちょっと胸が苦しくなる感じがした。

「私も…しっかり…する」

「あらあら、ヤキモチかしら」

ママに思考を読まれたことが恥ずかしくてつい下を向いてしまった。

「ふふふ…さ、早く食べましょう」

ママがそう言って料理を食べ始める。
私も料理を食べると食べたことのない味がしてとても美味しかった。
村ではママの料理かお祭りでたまに変わったものを食べていたくらいでこういうちゃんとした料理は食べたことがなかった。
いろいろ食べていくうちに気がつくとご飯は無くなり、ママも完食したようだった。

その後、ママとしばらくお話をしたりしているうちに眠くなってきたため、ママと一緒にベッドでに入って私は眠りについた。


ふと目が覚めるとまだ外は暗く、ママも眠っていた。
私はトイレに行くためにそぉっとベッドから抜け出して、部屋から出ようとしたが、暗くて怖かったためチキンを抱いてトイレに向かう。
トイレを終えて部屋に戻ろうとすると外から声が聞こえた。

つい、気になってしまい外に出て、声のする裏庭の方へ向かう。
そこには木刀を振るレインの姿があった。
すごくきれいな動きだと思った。例えるなら踊り。そう、レインの動きは流れるような動きでつい見とれてしまった。

「誰ですか!」

私はそっと壁際で見ていたつもりだったがレインにバレてしまったらしく、恐る恐る姿を表す。

「ご、ごめん…なさい…声が聞こえた…から…」

私の姿を見てレインは安心したように緊張を解いた。

「リン様でしたか。こちらこそ申し訳ありません…。うるさかったでしょうか?」

「ううん…トイレに行ったら…偶然…」

「そうですか…」

しばらくの無言…。これはまずいと思い、私はなんとか話をしようとした。

「さ、さっきの…すごくきれい…だった」

「さっきの…?あぁ、これですか?」

そう言ってレインは木刀をチラリと見た。

「さっきのは『舞』といって、そうですね…一種の踊りだと思ってください」

「そう…なんだ」

「はい、私の父…あぁ、この宿の主人ですね。前に父に教えてもらったんです。父は2年前までこの舞を使った変則自在の剣術で王族の騎士をしていたんです」

あの人が!?てっきりずっと宿を経営していたのかと…。

「なんで…やめちゃった…の?」

「…この街で事件が起き、その犯人は私を人質に無抵抗の父を攻撃したのです…その時右足に怪我をしてしまったんです…今は歩く分には不自由のないほどに回復しましたが、走ったりすると痛みがあるようでもう騎士は続けられないと…それで、母が営んでいたこの宿の経営をするようになったんです」

「そう…なんだ…。ごめん…ね?」

私はいけない事を聞いてしまったとすぐに謝った。
レインは少し微笑んで私の方を見る。

「いえ、気にしないでください。その時に私は強くなって、父の代わりに私が騎士になると誓ったのです」

レインはまっすぐな瞳で私を見ながら言った。
すごいことだと思う。私達はまだ子供で、将来は何になりたいとかなんて決意と共に決めれる子は普通はいないから。

「それに、その時父を助けてくれた方がいたんですが、その方はとても強くて、その人への憧れ…もあるのかもしれませんね」

「へぇ…その人も…騎士…?」

「いえ、その人は一般人です。なんでもただならぬ父の雰囲気を見て心配になってきたら襲われていて助けたと…」

「なんか…かっこいいね」

「はい、私は絶対にあの人、レオン様のように強くなりたいのです」

「え…?」

レオン…それは他ならぬパパと同じ名前だった。
それに2年前なら3才の私と会っている時期で王都にいてもおかしくない。

「どうかしました?」

「その人…の、特徴…わかる?」

「え?えっと…体が大きくて…あ、特殊属性の魔力を使っていました!」

パパだ…。絶対パパだ…。
確かに…パパそういうのほっとかなさそう…。

「あの…もしかして心当たりがあるのですか?」

「うん……たぶん…私のパパ…」

「え…えぇ!?」

レインは明らか驚いていた。それはそうだろう。ずっと憧れていた人の娘が目の前にいるのだから…。

「そっか…パパ…そういうこともしてたんだ…。」

やっぱり…自慢の大好きなパパだ…。
私はさらにパパが好きになった。
どんな人でも困っていたら助ける。まるで英雄みたいだ。

「ほ、ほんとに…レオン様の娘…なんですか…?」

「うん…パパは…特殊属性の魔力…だから」

私の言葉を聞いてレインが膝をつき頭を下げた。

「リン様。私をこれからリン様の騎士にしてください」

「れ、レインちゃん…?」

「私は、ずっとレオン様に恩返しがしたいと思っていました。だから私はこれからリン様のおそばについてお守りいたします…ダメ…でしょうか…?」

レインのまっすぐな瞳に私はちょっとたじろいでしまった。
騎士と言われても…でも新入生の新しいお友達ができるチャンス…。

「うん…これからよろしく…レインちゃん」

私の言葉を聞いてレインの表情がぱぁ
っと明るくなった。
そして、眠たくなってきた私はレインに部屋に戻ることを告げ、また眠りについたのだった。

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