魔法の数字

初昔 茶ノ介

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1章:魔法学園入学

記憶との対話

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私はみんなと別れてからどこへ行くでもなくとりあえず歩いていった。
ダメだなぁ…1日しか経ってないのに…パパに会いたいなぁ…。

「ううん…!約束…したから…頑張る!」

気がつくとパパと魔法練習をした川原に着いていた。

魔法…まずは私の得意属性を考えて…。
私の魔力属性は特殊…パパに教えてもらったのは空間と操作と時間。
空間は場所を入れ替えたりして瞬間移動ができて、操作は物体を動かすことができる。

「……地味」

便利だけど…目立つためにはやっぱりもっとすごい魔法を…。

「ダメ…考えるよりも…行動…」

私は魔筆を持って今使える限りの魔法を試していった。

「はぁ…はぁ…」

一通り使える魔法を試したが、全部普通な気がしてどうしていいかわからない。

「もぅ…いっ…かい…」

魔筆を手に取ったが力が入らず私は草の絨毯の上に倒れ込む。

「力…入らないなぁ…」

弱いなぁ…私は…。
あぁ…意識も遠くなる………。





「起きてー。ねー起きてー」

「ん…」

聞き覚えのない声に起されると周りが真っ白な場所にいた。
そして顔をあげると目の前には見覚えのある白い服をきた女の人がいた。

「あ、やっと起きてくれた」

「ここ…どこ…?」

「んーここはあなたの心の中とでも言いましょうか。」

「私の…心…?」

「そっ!あなたの精神世界。そして私は、あなたの前世!」

「私の…前世…」

綺麗な人…長くて黒い髪はつやつやして、スタイルもいい美人なお姉さん。

「もーそんなに褒められると照れちゃうなぁ」

「え…私…」

「ここはあなたの精神だよ?私にはもうなんでも筒抜けだよ」

「うぅ…」

急に恥ずかしくなってきた。

「さて、私のことはカリンお姉ちゃんと呼んでもらおうか!リンちゃん」

「カリン…お姉ちゃん?」

「うん、私の名前。それよりもリンちゃんはすごく困ってるようだね。お姉ちゃんに話してみ?」

「え…なんで…わかるの…?」

「私、あなたの精神世界にいるんだけどね、あなたが嬉しかったり、悲しかったり、気持ちが読み取れるの。それで、今のあなたの気持ちは…ずばり、『焦り』でしょ?」

「…うん」

「この精神世界って言うのはあなたの気持ちによって居心地が変わっちゃうんだよねー。だから、お姉さんがひと肌脱ごうかなって!あ、ひと肌っていっても服は脱がないよ?」

なんか…騒がしい人だなぁ…。

「いやぁ、生きてる時もそう言われてたよー」

また…読まれた…。

「でもね、私はそれでいいと思ってるんだ。騒がしいのも私の一部。長所は短所に、短所は長所になるものだから。つまりはプラマイゼロ!世の中はそういう風にできてるんだよ」

「……?」

「リンちゃんにもいつかわかる時がくるよ!それよりも今はリンちゃんのこと!何があったのかな?」

「実は…」

私はカリンお姉ちゃんに試験のことやこの世界の魔法のことやパパとの約束のことを話していった。

「なるほどなるほど…式が魔法にねぇ…なにそれすっごく楽しそうなんだけど!」

「え…?」

「だってだって!あのつまらない数式が魔法になるんでしょ!?それはもう全力で数学やっちゃうよね!」

「う、うん…」

何を言ってるかよくわからなかったがとりあえず同調しておこう。

「それならやっぱりいろいろ試さないとね!リンちゃんはどんな魔法を試したの?」

「さっき…言ったの…全部」

「全部!?魔力量とかよくわからないけど大丈夫なの?」

「わからない…でも力が入らなくなって…気がついたら…ここにいた」

「はー…なるほどなるほど…。じゃあ私ができることはあなたにヒントをあげることくらいしかできないか」

「……?」

お姉ちゃんはふむふむとうなづくと私の方を向いた。

「リンちゃん、数学の世界は数字だけじゃないんだよ」

「え…?」

「世の数学者達は数々の条件、法則を読み解き、それを数字によって表してきたの。そして、全ての数学の解が一つとは限らない」

「解は…一つとは限らない…」

「そう。だからさ、ほかの人にない物を、私の記憶を使ってもいいからリンちゃんだけの魔法を作ろうよ。大丈夫。なんてたってリンちゃんはこの天才科学者、カリンちゃんの記憶を持ってるんだから!」

「かがく…しゃ?」

「あぁ、科学者って言ってもわからないか。でもまぁ、リンちゃんは私の記憶を持ってる。今度は数字以外を使ってみるといいよ」

「数字以外を…使う…式…?それって…」

『……ンちゃ…。リンちゃーん!』

どこからともなくママの声が聞こえた。

「ママの…声」

「あ、お迎えがきたね。あなたは今眠ってる状態だから、もう現実は夜くらいだよ」

「え?」

「それじゃあねリンちゃん。また必要になったら、お姉ちゃんが出てきてあげるから、あなたは安心して今を楽しみなさい!バイバーイ!」

「待って!」


手を振るお姉ちゃんの姿が消え、目の前にはママの顔があった。

「リンちゃん!よかったぁ…帰ってこないから心配しちゃったよ…」

「マ…マ……?ごめん…なさい…」

私は眠気眼で謝るとママは涙目で顔をふった。

「ううん…無事でよかった…何をしてたの?」

「魔法の…練習…試験…あるから」

「リンちゃん…そう、でも魔力を使い切るまでやっちゃだめ!こんなふうに気絶しちゃうんだから!」

「う…ん……わかった」

「うん!ママとの約束ね!それじゃあ帰りましょうか!」

そう言ってママは私を抱っこして家に帰るのだった。
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