魔法の数字

初昔 茶ノ介

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1章:魔法学園入学

この記憶の正体

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先生の魔法教室が終わって4人で帰り道につく頃には夕方になっていた。

「それにしてもリンが特殊属性なんてね…やっぱり天才だったんだよ!」

「そんなに…すごいこと?」

「うちの父さんが言うには1万人に1人いるかどうからしい。それに特殊属性は固有魔法の発現が多い属性なんだ」

「固有魔法…?」

「その人個人にしか使えない魔法のことよ。簡単に言うと0~9じゃない数字で使える魔法。でも使える人なんてほとんどいないよ」

「え…?なんで…?」

「数字なんて無限にあんだぜ?その中で1つの数字を選ぶなんて無理だって」

ゴウくんに言われて納得した。
たしかに無限の数字の中から使えるものを探すなんて途方もない。

「今度はリンがなんの特殊魔法使えるか見てみないとね!」

「うん…」

気がつくと家についていた。
私達の家はそれぞれ私の隣にハナちゃんの家、向かいにゴウくんの家、その隣にクロくんの家とご近所さんなのだ。

「今日のリンの家はロールキャベツだね」

「ハナちゃんちは…お魚かな」

「そうかも。それじゃあねリン。また明日」

「うん。バイバイ」

ハナちゃんが家に入って行くのを見て私も自分の家に入る。

「ただいま…」

「リンちゃんおかえりなさーい!」

「ママ…痛い…」

「リンちゃんに会いたくて会いたくてママは狂っちゃいそうだったよー」

「表現が…怖い…」

「さ、手を洗ってご飯にしましょう!」

「パパは…?」

私がパパのことを聞くとママはちょっと困った顔をした。

「あー…パパは今日もお仕事…でもリンちゃんが怪我したってすごく心配してたわ…だから大丈夫よ…」

「…ん」

私はママの言葉を聞いて手を洗いに行った。
パパは何の仕事をしているか知らないが3才の誕生日以来家に帰ってきていない。
この世界には風魔法を応用した声を届ける連絡手段があるが、パパからの連絡はだいたいが真夜中であり私はほとんどパパの声を聞いてない。
正直、パパに会いたい…。
みんながパパとママに囲まれてる姿を見ていると心がざわつく感じがする。

パパがいない分、ママが私をすごく可愛がってくれるのは嬉しい。でもやっぱりパパに会いたい。会ってみんなとのことをたくさんお話したり、肩車してもらったりしたい。

私は手を洗って台所へ向かう。

「ママ…お手伝いする…」

「あら、ありがとう!それじゃあこのサラダを机に運んでくれる?」

「うん…」

私はサラダの入った皿をもって机に運んでいく。
その日はママのロールキャベツを食べて今日あったことを話をして…幸せな時間だと思う。
私が眠りにつくまでママが私についててくれるのも嬉しかった。
できたら…パパと会える夢が見たいな…。
私は薄れていくパパとの記憶をかき集めて眠りについた。


次の日、私はまだママも眠っている時間に目が覚めた。
ママを起こさないようにゆっくりとベッドから出る。
何をするでもなく、特に意味もなくパパの部屋に行った。そしてパパの椅子に座る。

パパは家にいる時もこの椅子に座って仕事をしていた。
その時に書いていた資料も難しくて3才の私には全然理解できなかった。
机に目をやるとその時に書いていた資料が置いてあり、なんとなく手に取った。

「…え?」

3才の時には理解はおろか読むことさえできなかった資料が読める。
いけない事とわかりつつ、ここまで来ると好奇心が勝ってしまい資料の内容を読み進めていく。

ーーーーーーーーーーーーーーーー
後天的な特殊属性魔力所持者に関する共通点。

特殊属性を所持しているものに接触し、話を聞くことで共通点があったためここに記す。

1、満6才までになにか強い衝撃が当たること。

2、魔力量が平均よりも高いこと。

3、知らない記憶が強い衝撃後1~3日以内に発現すること。

考察
2は魔力量が高くなければそもそも特殊魔法の消費魔力に追いつけないからと考える。
1と3に関しては確かではないが、おそらく3の『知らない記憶』というのは前世が絡んでくるものであり、1の『強い衝撃』のショックにより呼び覚まされるのではないかと考える。また記憶の発現により属性が元のものから特殊なものへと変化が起きるのが特殊属性の経緯ではないかと予想する。

まだまだ不確かなことが多いため、これからも特殊属性魔力の保持者に接触を続けていくつもりだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「前世の…記憶…」

私は資料を読みながらこれまでのことを思い出した。
まずは強い衝撃。これはあの爆発だ。そして記憶の正体は…前世での記憶だった。

『魔力量で言えば普通の人を遥かに超えてるよ』

先生の言葉を思い出す。パパの資料のことが私にはどれも当てはまっている。
私のこの記憶は前世のもので、その世界ではここよりも遥かに文明が進んでる。
その世界で『数学』と呼ばれるものがこの世界では『魔法』という形になっているのだ。

私は急に怖くなった。普通ではないこの状況を受け入れ難い。他の人とは違う。ハナちゃんやクロくん、ゴウくんと違う存在になってしまったような不安と焦り。

心が不安でいっぱいになっていく。そして私は再び寝室へ走ってママに抱きついた。

「ん…リンちゃん…?」

まだ眠っていたママが私の抱きついた衝撃で目を覚ました。
そして私の様子を見て眠気が飛んでいったのかガバッと起き上がった。

「リンちゃん!?どうしたの?どこか痛いの?」

ママは私の顔を覗き込み、すごく心配しているのが伝わった。
私は知らず知らずのうちに恐怖で涙を流していたのだ。

「ママ…ママ…私怖い…こんな記憶も…魔力も…いらない…」

「リンちゃん、何があったの…?」

私は怒られるかもと思いつつもさっきの資料のこと、記憶のことをママに話した。
ママは私の頭を撫でながらゆっくりとあやす様に優しく接してくれた。
そして私はママに話すことで安心したのか泣きつかれたのか、再び眠りについていた。
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